エーテル適性1億点TS転生オリ主   作:妄想壁の崩壊

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キャッチ-ザ-アポロ2

 

 

 

 

 

男の第一印象ははっきり言って胡散臭い。そのでっぷりと太った顔と腹を揺らしながら笑う姿は邪悪の一言で言い表せる。

 

しかし、今回私は招かれた身。そのことは顔に出さずにこやかに対応してやる。

 

「陛下などと……お戯れを。私のことはアリスで構いません」

 

「では私のこともヤマダとお呼びください。アリス閣下(・・)

 

「ではヤマダ大尉と」

 

「『元大尉』ではございますがね!」

 

閣下か。お祖父様もかつてそう呼ばれていた。奇しくも同じ敬称だ。ちょっと嬉しいかもしれない。このような状況じゃなければな。

 

止めさせようか?いや、そのままで良いか。どうせ止めた所で他の敬称を使いだす。無意味なことだ、聞き流そう。

 

内心そう思いながら、冷めた視線で観察する。執拗にへりくだった言動は私の機嫌を取るためか、それとも油断を誘っているのか。

 

辺りにいる兵士は数十名程。基地の中にも人の気配を感じる。規模は数百名、非戦闘員も含めて中隊規模か。そして違和感のある気配も複数。

 

戦闘に負けることはないが、今はまだその時じゃない。せっかく来たんだから、先ずは色々と聞かせてもらおう。

 

どうでも良い上辺だけの応酬を終え、私はタヌキ……ヤマダ大尉に基地を案内してもらうことになった。

 

「お荷物をお預かりいたします」

 

「分かった」

 

ヤマダ大尉の隣に控えていた秘書らしき女性に刀と銃を預ける。流石に武器を持ったまま入れてはくれないか。まぁ、ここはホロウの中だ。預けたところで問題は無い。

 

そのままタヌ……もうタヌキで良いや。タヌキの後ろについて行く。

 

背後に兵士が数名つく。護衛か監視か。気に留める程のこともないのでスルーすると、タヌキから質問が飛んできた。

 

「して、先程のことについて一つお聞きしたかったことがあるのですが」

 

「先程のことと言うと?」

 

「虚狩りと大型エーテリアス。それらと戦ったことについてですよ!星見雅、彼女はどうでしたかな?やはり手強かったですか?それとも歯牙にかけない程度?」

 

虚狩りと大型エーテリアス──星見雅とニネヴェのことか。もう一ヶ月と少し前の話だ。やはり私の存在が認知されたのはあの事件がトリガーなのか。ミスが祟るなぁ。やっぱりあの場で六課の記憶を消して置くべきだったな。

 

実力を試すためとは言えタイマンと言う名の舐めプを選んだのは私だが、星見雅の無力化に時間をかけ過ぎたな。なんだかんだ最後は助けてしまったし。私は彼女をどうしたかったのだろうか……。

 

私にとって彼女は主人になるはずだった人、遅咲きのヒーロー。そして、その強さはある種の憧れだった。もっともそれは幻想で、私の中の肥大化した理想像に過ぎなかったわけだが。

 

あれ、これ拗らせオタクと変わらないのでは?

 

「あぁ、よくご存知で。星見雅は、まぁ、私が想像していたよりは幾分か下でしたね。それより胸がすく思いと言っておられましたが」

 

邪念を払い、会話に集中する。

 

「えぇ、全くです。人類の天敵たるエーテリアスもホロウに依存した社会を良しとする市政府も、等しく人類にとって害悪でしかない。そうは思いませんかな?」

 

そう饒舌に語るタヌキ。

 

「概ね理解はします」

 

言わんとすることは分からないでもない。市政府は対ホロウ活動において非積極的だし、運営の不透明さは今に始まったことではない。

 

人類の存続に手段を選んでいられないのは分かる。だから本来忌むべきホロウを利用すると言うのもな。だが、基本として将来のホロウ撲滅に向けた姿勢くらいは示して欲しいものだ。

 

前世、つまりこの世界における旧文明においても似たようなジレンマはあった。化石燃料に頼りきった社会はそれを切り捨てることは出来なかったがしかし、少なくとも脱却しようとする姿勢はあったはずだ。古代から蓄積された燃料に頼ることは不健全で非持続可能的と認識し、それを改めようとする姿()()()

 

実現可能かどうかは据え置きだったが。

 

一方この世界ではそんな姿勢すら感じられない。漂ってくる思惑はこれに尽きる。即ち『現状維持』。ホロウから甘い蜜を吸い続け、そこから来るリスクには目を瞑るどころか蓋をして見ないことにする。

 

調査協会はプロキシ防止強化とかやってないで人材育成をしろ。必要なのは学者じゃなくてエーテリアスと戦える卓越した個人だろうが。

 

防衛軍も銃火器を配備するくらいならテューポーンのような大型兵器を量産してくれ。

 

虚狩りや私を見てみろ。銃でペチペチ撃たれても痛くも痒くも無いんだよこっちは。

 

それに対ホロウに使える軍事力を態々3つに分割するんじゃない、リソースの無駄遣いだろうが。

 

なおただでさえ少ない戦闘可能人口がアウトロー側に割かれていることを忘れてはならない。市民権がないと正規の仕事が出来ないから仕方ないとは言えだ。

 

うーんやはり、真に恐れるべきは有能な敵では無く無能な味方か。

 

……落ち着こう。こう言う世紀末世界だと大体組織が無能なのはいつものことだ。この前借りたビデオでもそうだったしな。そういえば今週はまだビデオ屋に行っていないな。期限はいつまでだったか。

 

「分かって頂けて大変喜ばしい!貴方のことを知ったときから、きっと話が合うと思っていたのですよ。貴方も新エリー都の明日を憂う者同志だと」

 

何を勝手に勘違いしたのか感極まった風に話すタヌキ。『我々と、共に新エリー都を!』と言っているところ悪いが、別に私は市政に干渉するつもりは無い。

 

私がホロウを潰すから、邪魔さえしてくれなければそれで良いんだ。もうなんか、期待していないから関わらないで欲しい。

 

それはそうとしてこのタヌキが気になることを一つ言った。

 

「『私のことを知ったとき』、とは?もしや私の存在は既に公に露呈していると?」

 

「いえ、いえ。心配せずとも偶然のことですよ。私には古巣に伝手がありましてね。古巣は、防衛軍は必死になって貴方を追っていますよ。閣下。奴らはよほどエーテリアスを従える貴方が怖いみたいですな。その力を恐れそして──」

 

「利用したがっている、ですか?ヤマダ大尉は良い耳をお持ちのようですね。きっといつの時代に生まれても頭角を現したことでしょう」

 

防衛軍から情報を引き抜いた、とだけ考えるのは危険だな。コイツはボンプ商人のネットワークを使って私に直接招待状を送ってきた。ご丁寧に調べ上げたのだろう。こいつは始めから私に目を付けていたのだ。

 

もしかしたら村の存在さえ認知されているかも知れない。

 

……でもやっぱり私がヘマして市政に正体がバレたのが大きいよな。

 

思わずため息が出た。

 

「して、ヤマダ大尉が私を招いた理由は?」

 

「はっはっはっ!閣下は知りたがりですな。とは言え、歩きながら話すことでもありますまい。後ほどじっくりと話し合おうではありませんか。ささっ、こちらへ」

 

会話もそこそこに、着いた場所は客室だった。

 

「詳しい話は、他の方も交えた会合で話しましょうか。それまでこの部屋でゆるりとお過ごし下さい。おい、そこのお前」

 

「はっ」

 

後ろをついてきた兵士のうちの一人が前に出る。

 

「彼を護衛に付けましょう。ご不便があれば彼に申し付け下さい……それでは、私は失礼して。1時間後に講堂でお会いしましょう」

 

『どうぞごゆっくり』。そう言ってタヌキは部屋を出て行った。私と兵士の2人を部屋に残して。

 

「何か問題でもございますでしょうか、閣下?」

 

視線が気になったのかそう聞いてくる。

 

「いや、何でもない」

 

部屋の入り口近くで姿勢良く立つ兵士を観察する。身長は私とそう変わらないくらいで、立ち姿からは軍人として良く訓練されたであろうことが伺える。

 

と言うか客人の部屋の中に置いていくなよ。どう見ても監視だろうが。不愉快な。せめて部屋の外にしろ外に。

 

それに女性の部屋に男性の兵士っておまえ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──こいつ、女か。

 

 

 

 

 




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