エーテル適性1億点TS転生オリ主   作:妄想壁の崩壊

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誤字脱字報告ありがとう。長めだよ。なんでこんな長くなったんだ…?

星見雅捏造多めなのでキャラが乖離し過ぎてたら今後修正するかもです。

地雷だったらホンマ御免。許してくれ。

保険にアンチ・ヘイトタグと一応ガールズラブタグを追加。

(11/10)6課のストーリー追加に合わせて二人称を少し変更しました
(12/22)雅の居合の際の負傷描写を変更しました。
(1/3)校正。描写、改行を修正。雅さんの左腕は義手ではなかったようです。


キャッチ-ザ-ホロスコープ

 

 

 

 

 

揺らめく線香の煙。墓石に水をかければ手入れが整っているためか、磨かずとも石に光沢が宿る。片手に抱えられるほどの花束を供え、両手を合わせ黙祷を捧げる。

 

輝夜家の発祥は、このさかえ村にあり先祖代々墓は村唯一の山寺の墓地に置かれる。歴代輝夜家の墓が並ぶ中、この墓に刻まれている名前は5人──祖母、祖父、両親、弟。

 

ただ名前を眺め、風に山木が揺れる音を聞きながら寂寥に浸っていると、誰かが砂利道を進む音が聞こえた。

 

『ンナンナ(輝夜様?来ていらしたのでしたら一声掛けて頂ければ宜しかったのに。……失礼、邪魔をしてしまいましたか?)』

 

音の方に向くと視界の下にボンプの姿。袈裟を着た僧侶ボンプだ。この村に居るということは、無論コイツも私がホロウの中で見つけ招いたボンプの一匹。

 

「いや、そんなことはない。住職、いつも墓の管理をありがとう」

 

『いえいえ、仏様のもとに彼らが安心して行けるようにする。それが私の役目ですから』

 

『宜しければ寺に上がってって下さい』と言うので招かれる。まぁ、もともと墓参りのあとに訪ねるつもりではだったが。

 

日用品なんかをお裾分けし、出された茶なんかを頂いて、世間話をした後に寺を出る。

 

空を見れば雲一つ無い青空だ。参道を見下ろせば村が一望出来る。ここだけを見れば、誰もホロウの中だなんて思わないだろう。

 

良い景色、良い天気だ。エーテリアス狩りに相応しい。

 

私は神仏に祈ったりはしないが、どうか安らかに眠っていてくれ。

 

行ってきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

H.A.N.D隷下、対ホロウ事務特別行動部、第六課。

 

星見雅(ほしみみやび)率いる言わずとしれたエリート集団。そんな新エリー都トップのチームと、かの伝説のプロキシ『パエトーン』がタッグを組んでいると知れば、多くのインターノット民達は驚くだろう。

 

あるいは一部の過激派(厄介ファン)は、自分達の推しの側に『パエトーン』が居ることに歯ぎしりして妬むかもしれない。

 

だが実際、この一時限りのドリームチームが現在していることはただの全力ダッシュであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Random Play』の店主そして『パエトーン』の片割れであるアキラは、今日は散々な日だと嘆く。

 

本来なら零号ホロウの独立調査員の資格試験を受け、妹と、ボンプ達……あと最近増えた押しかけAIも一応一緒に。家でちょっとした合格祝いでもしている頃だったろう。

 

だが現実はこうだ。試験中にいきなり常人に対処できないような超巨大エーテリアスが現れ、それを追っていたH.A.N.Dの部隊と遭遇。

 

そして勝手に試験内容を変更され、僕が──正確には僕の操るイアスの体が──物資として徴発されてしまったのだ。

 

おまけに彼らの戦闘に巻き込まれ、一度その超巨大エーテリアス『ニネヴェ』を退けたのにも関わらず、まだ調査に付き合わされている。

 

映画なら素晴らしい導入と展開だ。映画ならね?

 

まったく、人権と財産権の侵害だ。僕が『パエトーン』じゃ無きゃ訴訟を起こす。何が最年少の虚狩りだ、法廷では絶対に勝つね。もちろんFairyが。

 

『報告、マスターの体温が上昇。ステータス『苛立ち』を検知』

 

『まぁ無賃残業みたいな物だしね。知ってるFairy?私たちがビデオ屋を始めた理由の一つ。自営業がやりたくてさ、定刻労働とか残業とか嫌だったんだよね。新エリー都はもっと労働法を尊重すべきだよ』

 

プロキシ(違法のホロウ案内人)『パエトーン』の貴重な証言を記録しました。マスターたちが法廷に立つ時があれば『法律を尊重する精神はあった』と弁護します』

 

『うん、嫌な仮定はしなくていいからね』

 

「リン、ちょっと代わらないか?正直抱えられているとは言え、このチームの全力ダッシュは非常に疲れる。主に、精神が……」

 

『あはは、代わってあげたいのは山々だけど。私はもうタイムカード切っちゃったなー。定時退社最高!』

 

どこが山々だ。谷々の間違いじゃないか?

 

揺さぶられる視界から気を紛らわす為に通信に集中しているとチームの動きが止まった。

 

「課長、先行している浅羽隊員から通信です」

 

通信を確認していた桃髪の女性──月城柳(つきしろやなぎ)が通信機に手を当てながら言う。

 

『もしもーし、こちら斥候の浅羽悠真(あさばはるまさ)。課長たち聞こえてますかー?』

 

「あぁ、問題無い」

 

「ボンプちゃん大丈夫?疲れちゃってない?」

 

イアスを抱えていた青鬼の少女──蒼角(そうかく)が心配そうに覗き込んでくる。

 

「ンナンナ、ダイジョブンナ。頭とお腹をシェイクされてるみたいだ、ウッ……」

 

『ストップ、お兄ちゃん。今エチケット袋持ってくるから』

 

「蒼角、静かに。浅羽隊員、何か問題でもありましたか?」

 

『なんでか分かんないけど、『ニネヴェ』が停止した。座標は送った通りね』

 

どうやら追っていたエーテリアスが止まったようだ。これでやっとダッシュから解放されるかもしれない。

 

「……妙ですね。課長からあれだけの攻撃を喰らっていますから、本来なら我々から離れるように移動し続けるはずです」

 

「本任務の目的はあくまで対象の行動データの収集だ。異常があればすぐに撤退することも視野に入れている」

 

流石星見雅様は分かっていらっしゃる。もう十分働いたし、早く帰ろう。そろそろ三半規管が限界だから休ませてほしい。

 

「そうですね……浅羽隊員、一度こちらに来て合流を──」

 

『待った……ビルの屋上に人影が見えるんですけど?』

 

「……!?すぐに確認します」

 

手元の情報端末で何かを調べ始める。

 

「……登録されている調査員の中で、このあたりの調査を行っている人物は居ません。恐らくは違法のホロウレイダーかと思われます」

 

「(違法のホロウレイダーか、耳が痛いな……ホントに痛いぞ !?)んな!?」

 

「ボンプちゃんの耳、もちもちしてるね〜」

 

物理的な痛みが耳を襲う。ちなみに蒼角は見た目に反してかなりの怪力の持ち主だ、耳が引き千切れそう。

 

『報告、マスター。付近に生体シグナルと強力なエーテルエネルギーの塊を感知。これは……未知のシグナルパターンです』

 

「ンナンナ、ヤメテンナ……いたた。それで、Fairy?未知のなんだって?」

 

適当に誤魔化して蒼角の手を振りほどき、Fairyからの通信に集中する。

 

『未知の生体シグナルパターン。人とエーテリアスを複合したようなパターンです』

 

『ごめん、聞き間違いかな?もう一回言ってくれる?それとももしかして』

 

「Fairy?人とエーテリアスのシグナルは全然別物だ。たまたま同じタイミングでパターンを拾っただけだよ」

 

『──早速壊れちゃったかぁ。あーもう、山程電気代掛かってるのにこのポンコツAIは。あんたのことだよFairy、ちょっと聞いてる?』

 

『データ解析中……サルベージ。該当データ無し。検索中……』

 

「Fairy……?」

 

様子のおかしいFairyをよそに、六課の無線に緊迫した声が鳴り響いた。

 

『報告!『ニネヴェ』がそいつに近づいていってる!』

 

「行くぞ」

 

「はい、課長。浅羽隊員、その場で観測を続けてください。我々も目視できる位置まで移動します」

 

「ボンプちゃん、もっかい走るからしっかり掴まっててね」

 

「ンナ……ンナ……ンぶェ……」

 

『わわ、お兄ちゃんしっかり!今バケツと新聞紙とお水と酔い止め持ってくるからね!わーっ!Fairyなんとかして!』

 

『……検索中。ただいま、何とかすることが出来ません。音楽『頑張れ助手二号』を再生します。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒廃し、ホロウ内の強力な力場によって残骸漂うビル郡。その一角の屋上に人影はある。

 

都市に溶け込む迷彩のような灰色の外套を身に纏った女性。顔の上半分はフードで、下半分はマスクで覆われており、素顔を確認することが出来ない。

 

浅羽と合流し、彼女を目視出来る位置に着いて既に数分が経過。その間、『ニネヴェ』も動かない。まるで交信しているように、向かい合って停止している。

 

「課長、遠距離用精密集音器の用意が出来ました。浅羽隊員の言う通り、仮に彼女が何かを話しているのなら、これで盗聴できます」

 

「あぁ、すぐに行ってくれ」

 

悠真から先ほど受けた、奇妙な仮説を元にした提案。

 

──彼女は話をしているのでは無いか?

 

相手は誰か。あの極超級エーテリアス。あり得ないことだ。だがどうにも奇妙な違和感が離れない。

 

長年の経験か、あるいは私のシリオンとしての本能から来る警告か。

 

その答えはもうすぐ分かる。

 

『………………無……件での……は不……か』

 

機械から掬い上げられた音が届く。

 

「……やはり、なにか話していますね。浅羽隊員。音量を上げられますか?」

 

「了解、幸い雑音も少ないから何とかなりそう」

 

雑音……たしかに、先程から妙に静かだな。

 

ビルの屋上は見晴らしが良く、数km先まで見える。だが視界の端から端まで、エーテリアスが一体も居らず、建物しか見当たらない。私は視力が良い。見落とすことなどあり得ない。

 

道理で静かな訳だ──む?

 

蒼角の様子が目に入る。普段は溌剌としている彼女が、妙におとなしい。あの徴発したボンプを胸に抱き、忙しなくあちらこちらに視線を向けている。

 

「蒼角、どうかしたか?」

 

「あぅ、ボス……蒼角、何だか嫌な予感がして……」

 

「お前もか?……私も先程から感じている。独り暗い夜道を歩けば、背後に視線を感じた時のような……陰鬱とした厭な感覚」

 

「課長……もしかしてそれはストーカー被害では?後で話を聞かせて頂きます。しかし、私は何も感じませんが……浅羽隊員は如何ですか?」

 

「俺?いや、何も?蒼角ちゃんも課長もシリオンだから、人よりニネヴェに当てられちゃってるんじゃないんですか?」

 

「うー、なんだか部屋に虫が入ってきたけど追い出す前に見失った時みたい……ゾワゾワするよぅ……」

 

集音器の音量が徐々に大きくなり、今度は声がはっきり、鮮明に聞こえる。

 

今は……目の前のことに集中しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六課のメンバーは嫌な何かを感じ取っているようで、空気が張り詰めている。

 

『うーん……なんかホラー映画の溜めに似てるかも?このあとのタイミングでジャンプスケア(跳び上がるほど怖いシーン)が来るやつ』

 

「リン、今集中しているから、静かに」

 

一同揃って、機械の発する音に耳を澄ました。ノイズが終わり、声が聞こえる。

 

『…………ても、これほど巨大なエーテリアスは初めて見た。』

 

女性の声……間違いなければ、ビルの上で『ニネヴェ』に話しかけている彼女の声だ。

 

彼女は一体何をして──?

 

『知っているか?『ニネヴェ』……共生ホロウは、多くの場合そこに存在するエーテリアスを殲滅するか、主とも言える一際強力なエーテリアスを討伐することで減衰させることが出来る』

『お前ほどのエーテリアスを滅せば……この零号ホロウも消滅し得るだろうか?』

『いずれにせよ、この街に二人も(ホスト)は要らない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『玉座はただ一つ』

 

「──ッ!?エーテル活性を検知!対象の側に裂け目が────」

 

『データ照合、解析完了しました。遅れて申し訳ございません、マスター。彼女は……』

 

疑問に、今まで何かを調べていたFairyが答えた。

 

召喚(コール)──『守衛(パラディン)』『(ドラコー)』。(ゲスト)を相手して差し上げろ』

 

『コードネームは、人呼んで『ホロウの女王』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重く、『ニネヴェ』の咆哮が響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────エーテリアスを使役する、伝説(実在しない)とされるホロウレイダーです』

 

「────強力なエーテリアス反応!?……ッ!『ニネヴェ』からの攻撃が来ますッ!」

 

『ニネヴェ』がビル郡を焼き付く程の熱線を辺りに見境なく放ち。

 

「総員、回避!!」

 

『お兄ちゃん危ないッ!!』

 

──すぐ目の前に、光が迫る。

 

気づく間もなく。星見雅は一瞬にして僕を抱き抱え、屋上から飛び降りた。

 

落下しながら、ボンプの体を通して状況を見る。

 

突如、裂け目から出現した大型エーテリアスが二体。見た限りではデュラハンと似た個体と、翼竜のような四肢と翼を持つエーテリアス。

 

「……Fairy、調査協会のデータにアクセスしてくれ。あのエーテリアスは記録にあるかい?」

 

『否定、未確認の新型エーテリアスです』

 

「一応聞くけど、脅威度は?」

 

『──観測の結果、保有するエネルギーは水銀級(最も脅威的)以上です』

 

地面に着地し、一同は崩れていくビルから距離を取る。

 

「一度態勢を立て直す。私がポンプを連れて先行する。ニネヴェの攻撃に巻き込まれないように、少し後を走れ」

 

「「「了解!」」」

 

優秀な彼らは突然の出来事にも動じず、すぐに対応した。

 

星見雅は僕を抱えたまま、瓦礫を足場にしているとは思えない速度で進んでいく。

 

『……良かった、お兄ちゃん。直ぐに私も前哨基地に行って、助けを──』

 

「落ち着くんだ、リン。君がそこでサポートをしてくれなきゃ誰がやるんだ?それに状況は思ってる程悪く無い。Fairy、さっき言ってた『ホロウの女王』について教えてくれるかい?」

 

『かしこまりました。『ホロウの女王』は零号ホロウ内で目撃情報がある都市伝説的ホロウレイダーです。彼女はエーテリアスを従える能力を持ち、そのことから女王の異名が付きました。そして様々な逸話からは、彼女が善性の存在であることが確認できます』

 

「そういうこと。現れたエーテリアスは脅威ではあるけれど、仮に彼女が制御しているのならばその限りじゃ無い」

 

『けど……。分かった。でも絶対、ちゃんとイアスを連れて帰って来てよ?』

 

「もちろんさ、ちゃんと分かってる。それに、いざとなれば僕も六課と協力する。『パエトーン』として。なぜなら」

 

『マスター……?』

 

「──イアスを助けてくれた恩人だからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん……やっぱり一つ提案なんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは……?」

 

比較的安全と思える物陰で私は足を止めた。

 

ビルの崩れた場所に見えるのは、ニネヴェと戦闘している二体のエーテリアスだ。

 

エーテリアス同士が争うことなど、本来あり得ない。……今日は予想外なことばかり起こるな。

 

「報告、六課三名、欠員無し。無事に追いつけましたね」

 

「ぜぇ、はぁ……一日にこう何度も走ることになるなんて……」

 

「ねぇねぇ、あれどうなってるの?」

 

後続の三人も到着した。全員、無事のようだな。

 

「分からない……だが、あのエーテリアスは、まるで傀儡のようだ」

 

繰り広げられている状況を観察する。

 

デュラハンによく似た大盾を持った個体がニネヴェの攻撃を弾き、体勢を崩したところで翼竜型が噛みつく。すぐに振りほどかれるが、口から炎を吐き出し辺りに生えていた根と取り巻きを全て焼き払った。その熱は離れたこちらまで伝わってくる。

 

炎を嫌い、ニネヴェが上空へと距離を取った所で、既に跳躍していた盾持ちが上から盾で殴りつける。

 

「──────!!!」

 

ニネヴェが声を上げながら、轟音ともに大地へと叩きつけられた。

 

「……連携が取れているようですね。一体何が……?」

 

「あぁ。しかし、何かを忘れている様な……」

 

「さっきのお姉さんが指揮してるのかな?」

 

「あのさ……ちょーっと聞いて欲しいことがあるんだけど」

 

「浅羽隊員?どうかしましたか?」

 

「──さっきの女、『ニネヴェ』の攻撃の後から見てないけど……どこに行ったワケ?」

 

「「「…………」」」

 

未だ厭な感覚は消えていなかった。

 

「──覗き見とは、感心しないな」

 

機械越しにではなくはっきりと、私の背後から声が聞こえる。

 

わずかに反応が間に合わず、首に腕を回され銃口を突きつけられた。

 

「全員その場を動くな」

 

「──即座に、課長から離れてください。要求を受け入れなければ攻撃します。人質に意味はありません」

 

「まさか、課長を人質に出来ると思ってる?」

 

「あわわ、ボス!」

 

気を抜き過ぎていたな、仲間たちに心配させる結果となった。……また柳に怒られるな、不甲斐無い。

 

「……抵抗すれば仲間を殺す、少し話をしよう」

 

耳元で小さく囁かれ、口を塞がれる。

 

私の後ろに立ったのは人質にする為ではなく、戦闘を避け会話をすることが目的だからか。私以外を抑えれば私がすぐに動いただろう。

 

そして相手は恐らく、悟られない手段で隊員たちを攻撃できる。

 

「さて、何者か……曖昧な質問だな?月城柳。知りたいのは名前か?出自?経歴?それとも──私が(化け物)味方(人間)かと言う話か?」

 

嘲笑し、吐き捨てる様に宣う。表情は見えないが、言葉から強い感情が読み取れる。あるいは嫌悪感だろうか……?

 

発言を受けて、隊員たちの表情が険しくなった。

 

不味いな、空気が張り詰め過ぎている。私が人質にされていることは正直……すぐに振りほどけるのでどうということは無い。

 

問題は此処で、情報を得ること無く戦闘に陥ること。少しでも会話をして引き出して欲しいが、その余裕は無さそう──むぅ、本当に私のことは気にせずとも良いのに。

 

互いに何も話さず居ると彼女が静かに、今度は愉快そうに笑った。

 

「何が可笑しいッ!」

 

「ふふふ……済まない。面白くてつい、な。新エリー都トップの戦力を持つチームが、私一人に怯え過ぎだと思わないか?」

 

「……蒼角は何も面白くないよ」

 

「そうだな、失礼。さて、話の続きだ──お前たちにはどっちに見える?」

 

指を立て、まるで子供が純粋な質問をするかの様な仕草。

 

「……言いたいことははっきりと、仰って頂けますか?」

 

「……」

 

期待していた答えでは無かったのか、あるいは反応を楽しみたかったのか、今度は少し落胆してみせた。

 

「……答えは簡単。どちらでも良い。つまり結論は同じだ」

「私のことが新エリー都上層部に知られるのは好ましくない、故に、口封じ(記憶処理)させてもら──」

 

……決裂だ。

 

背後、脇腹に肘打ちを食らわせ拘束を振り解く。

 

「うぐっ……!は──ッ?」

 

攻撃を想定していなかったのか会心の一撃が入る。……撃って来ると思ったが、それなら構わない。

 

「六課、戦闘開始!」

 

私の言葉を合図に各員が攻撃を開始する。

 

「先手必勝、悪く思わないでよねッ!」

 

悠真が矢をつがえ放つ。対象は私に殴られた様子をおくびにも出さず、難なく避けられる。

 

「まだまだ行くよ──ッ!」

 

休む間を与えず、蒼角がその大きな刃旗を叩きつける。対象はその勢いを見て受け流す事よりも回避を選択した。

 

振り抜かれた一撃が地面を砕き、破片と氷風が舞う。

 

正しい判断だ。私とて蒼角の一撃を正面から受けることはしない。

 

だが、それが隙となる。

 

薙刀のリーチを活かし、中断突き。雷を纏わせた一撃はしかし、甲高い金属音とともに弾かれ──刀先は大きく弧を描き、下段。柳の卓越した技が足元を薙ぎ払う。

 

対象が後ろに大きく傾いた。

 

「二段構えです──今!」

 

「貰った──ッ!」

 

「──カツ・モツ・斬ッ!」

 

縮地、背後を取った。鯉口を切り、鞘からは氷炎が迸る。

 

「居合、抜刀──ッ!!」

 

左右及び後ろからの同時多発攻撃。確実に命中するはず──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いが、死んでくれるなよ?」

 

消えた。

 

予備動作は無かった。裂け目による転移では無く、ノーモーションのワープ。

 

そして代わりに現れた、硝子玉のように妖しく輝く物体。

 

一瞬の内に何通りもの思考を巡らせた。

 

物体から閃光が溢れ出す。

 

「ッ!総員防御!エーテル爆だ──」

 

伝えようにも間に合わない。

 

腕を前に出して体を隠し、衝撃に備える。

 

爆炎、轟音ともに吹き飛ばされ、かかる慣性に臓物が引っ張られた。

 

黒い煤とエーテルの塵が舞う。煙が晴れると敵の姿はやはり無い。神出鬼没、人数差を理解し一撃離脱で戦力を削りに来るつもりか?

 

……次に現れれば消える間も赦さず刻んでみせる。

 

「……全員、無事か?」

 

「けほっ……蒼角は大丈夫」

 

「浅羽隊員が少しばかり遠くに飛びましたが、問題ありません。損害軽微」

 

背後を確認する。たしかに瓦礫の中から腕が伸びている。

 

「こっちも……生きてますよ、なんとかね」

 

身体を起こし、破片を肩からはたき落としながら言う。

 

「今何が起こったの?」

 

「ただの前兆の無い瞬間移動だ。置き土産のある」

 

「瞬間移動を『ただの』って言えるのは課長だけでしょ……普通あの一瞬だけじゃ気付けないですって。俺はてっきり、自爆でもしたのかと思ましたよ」

 

「対象の能力はエーテリアスの使役に留まらないようですね。裂け目を自在にコントロールし、裂け目無しでも自己及び物体のテレポートが可能……あまりに実力が未知数です。浅羽隊員は撤退し、前哨基地に戻り応援を呼──ッ!!」

 

「それは許容できないな」

 

悪いが、何度も奇襲を食らう程愚かでは無い。

 

柳に向かう攻撃を──間に入り受け流す。

 

「それは、まさか『頸断(くびだち)』か?」

 

見覚えのある刀と似た形状だが、一体どこで……?

 

駄目だ。考えている暇は無い。

 

「どうあっても撤退を許さないつもりのようですが、こちらも押し通らせて頂きます!」

 

「ハルマサ、ここは私たちに任せて行って!」

 

二人が突貫するも攻撃は当たらない。

 

避け方が普通では無いな。足捌きでは無い。……まるで平行移動するように浮かんでいるのか。

 

視線が浅羽に向かった。また『跳ぶ』つもりだな。だが、

 

「消え──課長ッ!」

 

「お願い!」

 

 

 

「──させないッ!」

 

「チッ──勘が良すぎるな、狐ッ!」

 

刀が鍔迫り合い火花を散らす。

 

「悠真、早く行け!」

 

「クソッ、信じます!」

 

「行かせるとでも──ッ!?」

 

「──させないと言った!」

 

思考の隙を与えない程の連撃。敵の能力は脅威だが、武術の方はそうでは無い。太刀筋に才能は感じるも、師の巡り合わせが無かったようだ。

 

お前のその不運に、今は感謝しよう。

 

「……………召喚(コール)──」

 

「柳、蒼角、上だ!」

 

「──『巨人(アトラス)』ッ!」

 

上空に、裂け目が現れる。巨大な体躯、およそ十数メートル程あろうか、噂に聞くデッドエンドブッチャーのような四つ腕のエーテリアス。

 

増援を呼んだか。だが、私も一人ではない。

 

「ナギねぇ行くよッ!」

 

「課長の邪魔は……させませんッ!」

 

蒼角の旗に打ち上げられた柳が、そのエーテリアス目掛け(いかずち)を放つ。

 

電撃の衝撃を受け、そのエーテリアスは吹き飛ばされる。柳もまた宙を泳ぐように後を追い落下していった。

 

「ボス!向こうは私たちに任せて!」

 

隊の中でも最も精神的に幼い彼女が頼りになったものだ。

 

奴の視線が蒼角に向く。転移の前兆──『視線』と見切ったッ!

 

予想した通りの場所に現れた対象に、重い飛び蹴りをかましてやる。

 

「──ぐッ!!」

 

音が鳴る程強く身体を地面に打ち付けながら転がって行き、先程悠真が埋まっていた瓦礫に突っ込んだ。

 

「あぁ……痛いな。何も蹴らなくても良いだろう?星見雅。名前に似合わず、野蛮だな。」

 

「頭を強く打ってしまったようだな。血が流れているようだが、確認せずとも分かる──ネジが何本か外れているようだ」

 

「ふふ……思ったより口汚く罵るんだな。あぁ、にしても酷い。私はただ交渉をしたかっただけなのに」

 

「……減らず口を、そちらから口封じと言った癖に」

 

「口封じ……あぁ。それは酷い勘違いだ。私はただお前たちに記憶を失ってほしいだけだ。そういう侵蝕を引き起こせるエーテリアスがいる」

 

「見え透いた嘘を──ッ!!」

 

相手が仰々しく腕を広げ、生み出されるエーテル晶柱が私に迫る。

 

質量による攻撃、当たれば一溜りも無いが──当たらなければどうということは無い。

 

足を弾ませ、踊るように、滑るように柱の上を駆る。

 

先には、銀に輝く拳銃を構える彼女の姿が見えた。

 

銃声。

 

一発──剣を滑らせ、弾く。2つに割れた弾丸が私の左右に別れていく。

 

奇妙な弾丸……何か細工をされているな。

 

だが、それがどんなモノであれ対策は容易い。同じことだ。当たらなければ良い。

 

「お互いにメリットがある」

 

銃声とともに声を聞き流す。

 

二発──身をよじり躱す、踵で足元の結晶を砕く。

 

「お前たちは、何事も無く帰還できる」

 

また銃声、今度は二回。

 

三発、四発──蹴った結晶の破片に当たる。運が良い。

 

「私は秘密を守り、安全を脅かされない。違うか?それとも」

 

五発──を撃つ前に、手に取った破片を投擲。右手に当て銃を弾く。

 

「「──ここで共に殺し合う?(ここで共に殺し合う!)」」

 

2歩前進、対象は目の前。間合いに入った。

 

一閃──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──劈く金属音と光。

 

私の一太刀を相手の刀で止められた。

 

一瞬で空いた右腕に刀に持ち替えたか。だが……まさか片腕の膂力で止められるなんて!こんなこと今まで一度も──何故、両腕では無い?

 

驚く間もなく、次の攻撃が来る。

 

しまった、左腕──ッ!?

 

顔を反らし、殴打される。地面に受け身を取りながら、夕日に照らされキラリと光る、機械の腕の内から伸びる刃を見た。

 

確かな殺気を感じたが、やはり暗器か。あの左腕は義手か、それも絡繰を仕込んでいる。

 

「これで終わりか?星見雅?」

 

「まさかッ!」

 

ほんの一瞬の隙で、互いの生死が決まる全力の戦い。

 

あぁ……だが、感じる。

 

今まで生きた中で、感じたことの無い高揚と滾り。

 

未だ短い人生とは言え、私は、自分より強い強者にあったことが無い。

 

私より年齢も、実力も上だろうと思われる同じ虚狩りとは会うことは滅多に無く、ましてや手合わせなど以ての外。

 

旧都陥落の折、母上が私の世界(そば)から消えて、私の世界は色を失った。

 

それからは、ただこの世界(新エリー都)に殉じ、趣味だった刀剣集めで己の寂寥を慰めるのみの日々。

 

だが今は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「余裕そうだな、星見雅!そんなに笑顔(・・)を浮かべて──ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

一度攻撃を交わす毎に、命をすり減らしているような感覚。己の限界を超えたスコアアタック(人生の証明)

 

あぁ──楽しい。

 

剣を振れば、相手は期待に応えてくれる。それどころか超えてみせる。私との戦いを経て、彼女の太刀筋が成長して行く。

 

あぁ──嬉しい。

 

初めて現れた壁。初めて追いついてくれる人。初めて、私が守らなくても良い強者。

 

あぁ──愛おしい。

 

「無論、余裕だッ!お前の実力はそんなものか──ッ!」

 

「ハハハ──ッ!さては戦狂いの性質(バトルジャンキー)か、お前ッ!」

 

「そんな、まさかッ!──私も、知らなかった!!!」

 

対等な相手との戦い(触れ合い)がこんなに楽しいなんて──ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無限とも思える剣戟の応酬。口撃の殴り合い。

 

気がつけば既に日は沈んで、地平線へと茜色は去り、辺りは深い青に閉ざされて行く。

 

あれから……いかほどが過ぎたのだろう?

 

ひたすら全力に、ただ必死に時を忘れ、気がつけばどれだけ斬り合ったかも分からない。

 

無数に刻まれた斬撃の跡が、それを如実に示している。

 

だが私も一人の人間で、体力は無限ではない。次第に動きは精彩を欠いて行き、身体に受ける傷が増えていく。

 

「はぁ……くっ……。お前は、体力が無尽蔵なのか?」

 

「ふぅ……まだ続けるのか?ホロウの中で私のスタミナが切れることは無い。それよりも、少しは後ろにも気を回したらどうだ?武器を降ろせ。貴様が次一太刀振るう間に仲間を柱で潰すぞ?」

 

背後を振り返った一瞬、生み出された晶柱に正面からぶつかり、吹き飛ばされる。

 

「ッ卑怯な真似を──皆ッ!?」

 

地面に何度も転がり、静止する。火照った体が冷えると共に冷静になる。

 

面を上げると、気を失っている蒼角と柳が地に伏している姿が見えた。

 

「楽しそうだったな?忘れているようだから教えてやる。そして、追加だ」

 

そして裂け目が開き、全身ボロボロの姿の悠真が落ちてくる。

 

……後を()けられていたかッ!

 

「かはっ……すいま、せん課長ッ。しくっちゃいました……ッ」

 

もはや、応援は来ない。私も……体力の限界だ。万事……休すか。

 

でも、最後は己の欲するまま、自由を享受できた──

 

「対ホロウ事務特別行動部六課。人類の貴重な戦力。お前たちを失う事は私にとっても不都合、だがそのまま帰して私のことが知られても不都合」

召喚(コール)──『医療者(メディック)』、彼らに記憶処理を行え」

 

現れたのは、形容し難い姿をした悍ましくも神々しい、異形のエーテリアス。

 

──いや、駄目だ。私は何を一人で満足している?諦めようとしている?

 

それとこれとは話が別だ。先ほど感じていた感情も本心ではある。だが仲間の命を諦める人間にまで堕ちた記憶は無い。

 

「仲間には、手を出させない……っ!」

 

最後の気力を振り絞り立ち上がる。体は本当はもう動かない、傷は深くは無いが……逆転の手は無い。こちらの渾身の一撃は、既に片手で防がれている。

 

「傷つけられた仲間を見て慌てたか?星見雅。お前の敗因はお前未満の実力の仲間と居ること。そして自分を守れても彼らを守れない強さでしか無いことだ。なぜその程度の強さしかない?許されない怠慢だ。虚狩りは絶対強者で無くてはならない。単独でホロウを消滅させる程の強者。でなければ……再び悲劇が繰り返されたとき、誰が救えるんだ?」

 

「お前は、旧都陥落の生き残り、か……?だが、それは理想論、だ……ッ!」

 

虚狩りだからと言って、全てを救える訳が無い。私も今でこそ最年少の虚狩りと持て囃されているが、母上一人救うことが出来なかった。

 

彼女の心は過去に、囚われている。

 

「答えられないのか。……期待外れ。虚狩りは駄目だな。あの日、エリー都を捨てたとき。実質的にお前達虚狩りはホロウに敗北した。そして反撃の意気も無い」

 

「何を……」

 

「私は……凡人だ。ただ恵まれただけの。故に虚狩りを超えるには代償が伴う。でも……それで救えるならば『易い』モノだろう?」

 

「……」

 

身体が逃げろと警告してくる。彼女から漂う異様な気配。

 

「誰かが、やらなければならない。でなければ救えないし救われない」

「お前たちが出来ないなら……そこでただ見ていると良い」

 

──彼女の身体に、閃光が迸る。纏うはエーテルの嵐。響く心臓の鼓動。

 

「体にエーテルの(コア)が……まさかっ!?」

 

召喚(コール)──『終末の……ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衝撃。

 

直ぐ側のビルから煙が立ち上り、瓦礫と共に貫通した盾持ちと竜のエーテリアスが吹き飛ばされてくる。

 

『──────ッ!!!』

 

重機械の軋むような音を発するニネヴェ。

 

しまった……完全に忘れていた。

 

ニネヴェはこちらに向かって腕を前に出す。エネルギーが収縮していき、こちらに照準を定めている。

 

「戦闘の余波に気づいて漁夫の利を取りに来たか……まさかこうなるとはな」

 

「チッ──『守衛』、『竜』戻れ」

 

彼女の背後にエーテリアスが消えていく。真にエーテリアスを従えているようだ。

 

問題はニネヴェだな。

 

彼女と違い、私には避ける体力も無い。だがこの角度なら、仲間の盾くらいにはなれる。

 

既に場が白けたのか、彼女の様子は落ち着いている。もう私に、あの何かを見せるつもりはなさそうだ。

 

ものは試しか……。

 

「済まない……お前……名前が、分からないが」

 

「……なんだ」

 

「仲間だけでも、助命を請えないか?」

 

「さっきの今で言うか?嫌だ」

 

「そうか、無理な願いをしてしまい済まない」

 

……断られてしまった。

 

残された気力だけを頼りに、居合の構えを取る。

 

居合の真髄は本来、座して刀を収めた状態(非戦闘時)から抜刀する神速の一撃。故に力は要らず、ただ技と理を以って抜き、刃を添えるのみ。

 

「母上、我が身一生をかけて、斬れねば自害致します。願わくばこの刃にて、あの異形の業、絶たせて賜ばせ給え」

 

「平家物語か。祈る相手は神じゃなくて良いのか?」

 

「旧文明の、それもうんと古い文献だぞ?……意外に、博識なのだな……祈りでは無い。ただ己の全てを信じるのみ」

 

「そうか……見物だな」

 

「あぁ、見ていると良い」

 

光量が増していき、そして──ニネヴェの一撃が来た。

 

光が視界を埋め尽くし、ただ経験だけを頼りに抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──まだ死んでいない。

 

刀は光線を切り裂き、光が夜空に注ぐ星屑のように散っていく。

 

「見たか?まるで箒星のようだ……」

 

「残念だが……向こうはまだ諦めていないようだぞ」

 

「……あぁ、そうか」

 

募る光。二撃目を放とうとしているニネヴェ。

 

腕は過去一番の速度と衝撃にに耐えられず骨が折れている。体は動かない。籠手も悲鳴を上げている。

 

何より、満足してしまった。もう一度同じ技を繰り出す事は無理だ。

 

半ばで刀の柄を手放す。身体の力が抜けて行き、重力に抵抗する事を諦めて地面に額を付けた。

 

「母上──今、お迎えに参ります……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影が立った。

 

「お前……なにを?」

 

「下がれ、弱虫狐」

 

「……私は(おまえ)とは違う」

 

「もう誰も零さないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

召喚(コール)──『ただ揺り籠の中の夢に(ストローラー)』」

 

──彼女を中心に包み込むように展開される空間。

 

暖かい風が吹き、腕に抱かれる様な感覚。感じるのは、憐憫、慈しみ、あるいは寂しさか。

 

これは──彼女の心に触れている、のか?

 

『ニネヴェ』の光線を受け、視界が再び白く染まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙幕のように舞うエーテルの塵が晴れ、熱線で解れた外套からは、フードが外れ素顔があらわになった。

 

昇っていく三日月を背景に、見えた素顔は──桜のような髪と月のような瞳。

 

「………その顔、私は……何処かで──?」

 

「けほっ……諦めて去っていったか。今日は散々、邪魔をしてくれたモノだな、H.A.N.Dの犬、いや狐め」

 

呆けている私をそのままに彼女は言う。

 

「しかし、もう我慢ならん、穏便に記憶処理(エーテル侵蝕)してやろうと思ったが、過激に記憶処理(ぶん殴ってやる)に変更しよう。……どうした?なんとか言ったらどうだ?星見雅」

 

「名前を……」

 

「?」

 

「お前の……貴方の名前を教えて欲しい」

 

「……はぁ?」

 

「何処かで会ったことはないだろうか?昔見たことがある気がする」

 

「まだ殴ってないのにイカれたか?ある訳無いだろ」

 

「いや、たしかに面影が……やっぱり見たことがある。今より幼い頃、桜のような髪は黒髪だったはず。それに、その月のような瞳も──綺麗だ」

 

「は?何を……クソッ、時間切れか」

 

「月の君、あなたは」

 

──その時、無線機に通信が入った。

 

『こちら対ホロウ四課及び防衛軍イージス小隊!六課の皆さん、聞こえますか?聞こえていたら応答願います!』

 

「まさか救援が……?『こちら六課課長星見雅。未知の対象と戦闘し負傷。救援求む』」

 

『了解!座標を把握した!すぐ救援に向かう!』

 

「会って分かったよ星見雅──お前は、私の理想とは程遠い」

 

最後に何かされるかと思えば、それだけを言われた。

 

見下ろし一瞥する視線に見える、泣き出しそうな、迷子のような表情。

 

「待て──ッ!」

 

裂け目が閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、対ホロウ六課は救援に来たチームに保護されて前哨基地へと戻り、病院で治療を受けることとなった。

 

……聞いた話では、あのボンプの持ち主、丁度資格試験中だった男とその試験官の女性が救援を呼んでくれていたそうだ。

 

私たちチームの帰りがあまりに遅いと思って待っていたら、彼のボンプだけがホロウの外に出てきて位置情報を得ることが出来たらしい。

 

まさに九死に一生、命の恩人だ。

 

私たちが今回経験した事、遭遇した相手についてはH.A.N.D幹部の間で共有された。治療後、今後について話し合うことになるだろう。

 

「あ、課長ー。もしかして課長もサボりですか?」

 

病院の屋上で鉄柵にもたれ星空を眺め黄昏れていると、悠真が入院着を着崩した姿でやって来た。

 

……大方、書類を書くのが嫌になって逃げてきたのだろう。

 

だが、彼女からは逃れられない。

 

「──浅羽隊員?看護婦の方から苦情が来ていますが?」

 

「ハルマサ、ゴメーン」

 

「ゲッ……副課長。いくらなんでも早過ぎない?」

 

案の定、扉からメガネを白く反射させ険しい顔をした柳が、片手にエリザベスカラー(動物が治療の後顔に着けるもの)を着けた蒼角をぶら下げてやって来た。

 

「ま、待った副課長。治療中とは言え実質休み──痛たたたッ!」

 

「診察書は効率的な治療の為に必要な物です!」

 

耳を捻り上げられ苦悶の声を上げ制裁されている。哀れ悠真。なむみ。

 

「ふふ……」

 

「?ボス、なんだか嬉しそう?」

 

蒼角が私が笑ったのを見て不思議そうに尋ねる。

 

「いや──無事に帰って来れたと思ってな」

 

「そうだね!蒼角も嬉しいよ!」

 

「あぁ、そうだな」

 

ホロウの中で出会った彼女──確か、聞いたコードネームは『ホロウの女王』だったか。界隈ではそれなりに知れた、存在しないと思われていた存在か……。

 

また、何処かで出逢うだろうか?

 

「──春嵐 ()()し花は 散りぬれど 水面(こころ)に浮かぶ 月星桜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一目惚れしちゃったってこと?」

 

「痛──は?蒼角ちゃんなんて?」

 

「え……っ。嘘ですよね課長?」

 

「……次はきっと逃さない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、大変だったね」

 

「そうだねリン。あの時提案してくれた──『ホロウの女王』と戦闘になったら、一足先にホロウを抜け出して助けを呼びに行こう──なんて事、良く思いついたもんだ」

 

「うん、まぁね。ある意味、そう簡単にやられないって六課の人たちを信じられたおかげかな」

 

「なんにせよ正体を隠し通せて良かった。それにしても、とんでもない事に巻き込まれたかもな」

 

「Fairyもいるし、今更じゃない?」

 

「……確かに」

 

『心外です』

 

「ならあんたの規約ついてもっと詳しく教えて欲しいんですけどー?」

 

『助手二号、何度も申し上げますが規約については(以下略)』

 

「い、以下略するなー!」

 

「やれやれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

レイ教授「敵対した未知の存在、『ホロウの女王』についてだが……まさか実在していたとはな」

星見「済まない。あの緊迫した状況ではああする他無かった」

レイ教授「謝らなくてもいい。私は戦闘に関して造詣が深い訳では無いからな。仮に次の機会があれば友好的なアプローチを頼むよ」

星見「確かに、今回は袖にされてしまった。いきなり名を聞くのははしたなかったな。貞淑なお人のようだ。次はもっと有効的なアプローチをしよう」

レイ教授「???」

星見家「それに、あの顔……確かにどこかで──」

 

アリス「星見雅──もっと冷静で、動じず、強く、多くを救える英雄だと思ってたのに……あれではただの強い『人』だ」

 

 




『六課のみなさん』
次のストーリーでメインになりそうですね!いやー楽しみ。

いやムービー少なくて口調分かんないから!違和感出たら絶対修正するからな!

『裂け目無しのテレポート』
Q.そんなの出来るの?

A.タナトスがいつもやってるので当然主人公も出来ます

『さかえ村』
エリー都→エリート→精鋭→せいえい→盛栄→さかえ

『主人公』
強さを得るためには人を捨てなければならないはず、虚狩りがあの場にいれば、皆を救えたはず──そう思っていたかった。

代償は、決して『安く』は無い。

『守衛《パラディン》』
大盾を持つデュラハン型エーテリアス。
かつて誰かを守った誇り高き軍人の成れの果て。

『竜《ドラコー》』
翼竜の姿をした獣形エーテリアス。
かつて竜に憧れ、強さを求めたシリオンの成れの果て。

『巨人《アトラス》』
デッドエンドブッチャーのようで、さらに一回り大きい体格をしたエーテリアス。
かつて力でその名を旧都のストリートに轟かせた荒くれ者の成れ果て。

『医療者《メディック》』
白衣を纏い、四肢から触手を生やした人型エーテリアス。
かつて慕われ、多くの患者を治療してきた医療者の成れの果て。

【後書き】
「どうして完凸-レベル60-スキルオール16-サブオプション厳選しない?許されない怠慢だ。最高スコアを超えるには石割が伴う。でも……それで推しが輝くなら『易い』モノだろう?」
と言うわけで主人公は虚狩り反転アンチになりましたとさ。すまんまだ出て来てない虚狩り達。貴方方が裏でどんなに頑張ってたとしても、筆が走っちまったもんはしょうがない。恨むならところ天の助か邪兎屋のニコを恨め。

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