グレモリー眷属の最終的な成長具合は勿論原作と違います。
『よう、また来たか。...にしても、まさか自分の相棒より先に会話できる相手が出来るなんてな』
『む...会話、か。俺はそんな感じじゃないんだがな』
『だが、俺の声は聞こえているんだろう?』
『ああ。でも何だか現実味がないような感覚がするんだよ。慣れてないだけだろうが、まぁこっちのことだから気にしないでくれ』
『そうかい。で、今回は何の用だ?以前は相棒のバックアップを頼まれた訳なんだが、そっちはお前さんの提供してくれた方法で続けているぞ?』
『ああ。ちゃんと小分けして送れよ?イッセーのスペックじゃ純正の魔力を受け入れる器がミジンコぐらいしかないからな』
『おうよ』
『で、肝心の要件なんだが.....これを預かってくれないか?』
『む───────ほう、これはまた強烈なものを突っ込みやがったな』
『確かにそうかもしれんが。取り合えず、そいつはお前の相棒が次の段階に進んだ瞬間、ポンッと出してやってくれ』
『おいおい、こちとら真面に相棒と会話すらできねぇってのに、こんなモンを表に出すのは無理だろうよ』
『いや、恐らく平気だ。俺がこうやって会話しに来るたびに、外界との接点は強まっているはずだからな。覚醒さえすれば、多少の相互干渉が可能になる』
『...なるほどな。分かった、確かに聞き届けたぞ。俺としても、最強の龍を宿している神器というプライドはあるからな。なるべく相棒の助けにはなりたい』
『へぇー、見た目に似合わず健気だねぇ』
『黙れ人間。幾ら思念体であろうと、俺の炎で受けた傷はお前の肉体にまで届くぞ』
『それはこっちの台詞だ蜥蜴野郎』
『────────カカカ!威勢のいいガキだ!いんや、本当はガキって歳じゃないんだろうな、お前は』
『..........世間話は此処までだ。俺は戻る』
『ああ、今の俺は話し相手がいなくて暇だからな。いつでも来てくれて構わんぞ』
『けッ、あんまり懐くなよ。そう心配しなくても、すぐにお前の相棒とお話できるようになるさ。────────────んじゃな、ドライグ』
『ああ。─────異なる魂を持つ者よ』
***
俺は腕や足を動かし、軽い準備体操をしながら、『
今日で修行最終日となった今、イッセーと最後の模擬戦をするのだ。六日前に戦った時からどれくらい成長したのか、実に見物ではあるのだが...
(レーティングゲームじゃ、相手は待ってくれないからなぁ)
目の前に倒すべき敵がいて、その人物が己の強化を目論んでいたなら、例え棒立ち状態でも確実にその場で倒すだろう。変身系のヒーローアニメで敵方がする行動としては極刑ものではあるが、残念ながらこの世界には魔法少女も仮○ライダーもいない。
一応、戦闘前か安全な場所でブーストをしておけとは言ってあるが...本番では不足の事態がつき物だ。
『Boost!!』
「そこまでよイッセー。今の状態でコウタとやりなさい」
「わかりました!」
『Explosion!!』
その声と同時に、イッセーから放たれる雰囲気が激変した。
ピリピリと肌を熱で炙られるような痛みが俺を苛み、ごく自然に視界へ映す存在を強敵と認識する。
侮れば殺られる...そう自らの直感が告げていた。念のため防護結界を二重にしておくか。
「待たせたな。行くぜ、コウタ!」
「あぁ、来い。....
地面から飛び出した二本の長剣を掴み、突っ込んでくるイッセーへ牽制の意を込めた刃を閃かせる。彼は挟み込むような俺の剣に焦らず、一方を避け、もう一方は籠手で防御しながら進み、接近を果たす。
ここまでは凡そ想定内。後は拳で殴ってくるか、勢いそのままにタックルか─────
「捉えたぜッ!」
「ッ───────それは!」
握られた拳の中には、赤いエネルギーの塊があった。...ヤバイ、あれはオーフィスレベルの威力だ!こんな結界じゃ木端微塵にされる!
尋常ではない危機を察知した俺は、両手に持った剣を触媒に、多少無理矢理ながらも構成を干将莫耶へ
ドッグァァァァァァン!!
「ぬぐぉ!」
腕へ凄まじい衝撃が伝わり、後方へ弾かれそうになるのを堪える。どうやら、結界を二重展開させた俺の選択は英断だったらしい。
やがて衝撃が止み、罅割れた陰陽両の剣を下げた途端...目を見張った。
なにせ、俺の両脇にあった地面が深く抉りとられ、自分の立っている場所のみが浮島のようになっていたからだ。
大部分の威力は割いたはずなので、地を吹き飛ばしたのは弾いた余剰分の力だろう。だとすれば、イッセーの放ったあのエネルギー球は山ひとつ消し飛ばすくらいの威力があってもおかしくない。
「はぁ、はぁ....ど、どうだ」
「威力は誉められたモンだが、その消耗具合は致命的だな」
「やっぱりか、くそ...」
イッセーはその場に寝転ぶと、眉を歪めて悔しそうな声をあげた。しかし、グレモリー先輩は彼に向かって満足そうに微笑んだ。
「ふふ、大丈夫よイッセー。あれだけの威力じゃレーティングゲームで使うのは無理だけど、もう少し出力を落として放つようにすれば連続して撃てるし、消耗も少ないわ」
先ほどのは紛れもなく上級悪魔の攻撃に匹敵する一撃だった。あの分なら、元の4割くらいに落としてもフェニックスの悪魔一人を脱落させるに足る威力があるだろう。
確かに、赤龍帝の持つ力の全てを使いこなせれば、山どころか国一つ潰せるんじゃなかろうか。先代たちが力に溺れたのも頷ける。
「にしても、筋トレと走り込み、打ち合いだけでここまで伸びるとは思わなかったな」
「基礎的なことばかりだったよね。イッセー君の鍛練メニューは」
「なんだ木場。喧嘩なら買うぞ」
「イッセー、その気概は明日のフェニックス戦にまで溜めとけ」
「ぐぬ、分かったぜ」
イッセーが退いたのを確認してから、俺は真打ちである小猫ちゃんを呼ぶ。
今回の鍛練では特別なメニューをこなして貰い、内に眠る仙術の模索をしていたのだ。内容の考案は無論黒歌である。
ノートで依頼したのだが、彼女の複雑そうな表情が目に浮かんだ。早くこの関係をなんとかしてやらないとなぁ。
「まだ、安定しないけど...」
少し自信無さ気に、しかし明確な意思を持って歩み出た小猫ちゃん。この分なら、やる前から失敗という結果はなさそうだ。
彼女は両手を少し上げ、目を瞑ってから沈黙する。ひたすらに、沈黙。
俺を除く全員が心配そうに小猫ちゃんを眺める中、ついにその変化は訪れた。
今もなお微動だにしない四肢から、黄金色のオーラが零れ始めたのだ。さらに頭から白毛の猫耳、臀部からも同色の尻尾が生えた。
「な、なにぃ?!小猫ちゃんから猫耳と尻尾が...かわええ!!」
「なっ!コウタ、まさかこれって!?」
「はい。これは仙術の気です」
「でも、小猫ちゃんに仙術は...」
「俺、ロリに目覚めそうだ!」
「イッセー、テメェちっと黙ってろ!」
そう。グレモリー先輩が驚愕し、木場も疑わしげな表情をしてしまうのも重々承知だ。何故なら、過去のトラウマから小猫ちゃんは仙術を忌避していると知っているからだ。
だが、彼女は嫌うとともに、その能力を制御したいという強い思いにも苛まれている。言い方は悪いかもしれないが、その感情を鍛錬に利用させてもらった。
「...っは!く、ぅ...」
「っとと、大丈夫か?小猫ちゃん」
「う、うん...」
維持する精神力を切らした小猫ちゃんは、グラリとよろめいて倒れそうになってしまう。が、そうなることをあらかじめ分かっていた俺が、隣から素早く腕を伸ばして抱き止めた。
少し辛そうだったので、背中を擦ってやりながら元気づける。
「上出来ね。克服とはいかないまでも、向き合えるだけの覚悟を小猫から引き出すなんて....」
「本当、コウタ君は皆をいい方向へ導いてくれますわね」
「あぁ、猫耳が消えた....チクショウ」
「先輩方ありがとうございます。アーシアさん、今こそイッセーにアレを」
「は、はい!...これもイッセーさんのより良い未来のためです!アーメン!」
アーシアは胸の前で十字を切ったあと、修行期間中に俺が必死こいて教えた唯一の魔術を行使する。
それは──────────
「ガンドッ!」
「おぶぅ?!」
指を銃に見立てて発射したのは、北欧にて人差し指で指さした対象へ病を誘発させる魔術、ガンド撃ち。
今回は流石にイッセーを不調でブッ倒す訳にはいかないので、呪いの効力を弱め、その分魔力の濃度を上げてある。そのため、物理攻撃ランクには高得点を付けられるガンドとなった。ま、流石にあの
「あ、アーシアさん。イッセー君動いてないけど大丈夫?」
「はわわ!やり過ぎちゃいました!すみません大丈夫ですか!?」
パアァァ
「か、回復させるのね」
「ふふ、これが世に言うショック療法というものなのでしょうか」
頭から煙を出して目を回すイッセーのお蔭で、決戦間近だというのに明るい雰囲気が溢れる。だが、やはり皆どこかで引き摺っているらしい。
ライザーはフェニックスであるが故に、不死身だという事実を。
***
グレモリー対フェニックスのレーティングゲームは、今日の零時丁度となっている。現在は午後十一時五十分、今頃オカ研の皆は部室に集まっている頃だろう。
当の俺は、旧校舎の外からぼんやりと深夜の夜空を眺めていた。
「不死身、ねぇ....」
雲が月の光を遮る中、俺はライザー・フェニックスとの会話を思い出す。
ライザー陣営の待機場所には割と楽に通せて貰えた。侵入ももちろんお手のものだったんだが。
一応上辺だけの口実として、『ゲームの意志確認を目的としたグレモリー側の使者による訪問』。ということにしておいた。
今更意思確認もなにもないと思うだろう。しかし、この見え透いた嘘には、相手へ腹の探り合いをさせてくれと、暗に申し出ている主旨を込めていた。
問題は、そこに含まれた俺の意図を先方が汲んでくれているかどうかだったのだが─────────
「ほう、お前がグレモリーの使者か。─────で、何が目的だ?戦術、戦力分析か?...いいや違うな。この時間では対策を立てる猶予すらないだろうよ」
問題なく、ライザー・フェニックスは気付いてくれていたようだ。流石はグレモリー家次期当主の婿殿といったところか。
さて、こちらも手短にことを済ますとするか。ライザーの眷属の中に俺のことを詳しく知ってる奴がいたら面倒なことになるからな。
「安心してくれ。俺が聞きたいことは一つだけだ」
「...いいだろう。言ってみろ」
「このレーティングゲームに勝ったら、リアス・グレモリーと本当に婚約するのか?」
「愚問だな。そして、その事実は最早揺るぎないものとなっている」
ワインレッドのソファに深く座り直しながら足を組み、口角を吊り上げ頬杖を突くライザー。これは気持ちの良いほど慢心しとるな。
しかし、それに足る実力を備えているのもまた事実。
ライザー・フェニックスが持つレーティングゲームの戦績は八勝二敗で、そのままでもかなりの勝率だ。問題は、その二敗すら懇意にしている家系への配慮でついた黒星に過ぎないということ。つまり、実際に十戦全勝する可能性は十分有り得た。
これはある意味、グレモリー家の皆が先輩を100%婚約するためにした八百長試合だ。...まさか俺に黙ってこんな事を裏で進めていたとは、全く侮れない人たちだ。
「ご存知の通り十日の期間を与えてやってはいるが、それだけで彼等の実力が向上しているとは思えない。ま、精々俺の可愛い下僕を一人二人退場させられればいい方だろうよ!」
「あー!酷いですライザー様!それって暗に兵士の私たちが負けるってことじゃないですか!?」
「そうですよー!」
「ははは、誰もそうとは言ってないだろう?」
ライザーの丁度背後に控える形で様子を見守っていた眷属のうち、二つの快活な声が響いてきた。口ぶりから察するに、彼の兵士だろう。確か八人満タンなんだっけか。
当の非難された本人は、じゃれて来る犬や猫をあやすような表情で二人をあしらってから、冷めた声と共に俺の方へ顔を向けた。
「さぁ、質問には答えた。こちらには色々準備もあることだし、早急に御退室願おうか」
「...ああ、分かった。だが、最後にこの質問だけ答えてくれないか」
「ん?何だ」
発言権を貰った俺は、ライザーの至近距離にまで歩み出る。
当然ながら彼の眷属たちへ緊張が走り、構えたり殺気を飛ばしたりする輩が出た。俺はにじみ出る戦闘意欲を抑えながら言葉を続ける。
「婚約の目的は何だ?」
「ッ」
どうやら、耳元で言われたことと、自分で思うよりも多量の威圧が込められていたことで、ライザーは少し返答に詰まってしまったようだ。
しかし、ここは彼の高いプライドが上手く働いたらしく、存外に早く立ち直ってくれた。
「...フェニックス家の地位、権威の向上が為だ」
「ふぅん」
興味なさげに生返事で応えたあと、左右両側から閃いた凶刃を強化済みの素手で受け止めた。...ったく、一端の剣士が敵の実力差を悟れなくてどうするよ。
二人が驚いている間に、掴んだ手から魔力を放出して剣を弾く。双方が予想外の斥力を受けて仰け反った所へ、腹部に軽い掌底を叩き込み壁側へ吹き飛ばした。
それを見たライザーが泡を食って立ち上がり、全身から炎を立ち昇らせるが、それよりも先に地面から飛び出した二本の剣が彼の顎を捉える。
「俺に戦闘意志は無い。先に手を出してきた、お前さんの『
「き、貴様は...一体」
スレスレで止まった剣を消失させてから、俺は驚愕に固まるライザーの眷属(本人含む)へ向かい、営業スマイルでこう答えた。
「なに、平和的なOHANASHIのみを望んでる、只のグレモリー側から派遣されたしがない使者だよ」
──────────改めて思い返すと、使者というよりは啖呵切って帰って来ただけの馬鹿みたく感じる。いや、間違いなくそうだ。
これ以降は軽率な行動を慎むとしよう。下手に警戒されては、寧ろ足を引っ張る結果になりかねない。
そんな風にぼんやりと考えていた所で、部室の窓から光が迸るのが見えた。
俺は深く呼吸をして脳内へ冷たい酸素を取り込んでから、ゆっくりと歩き出す。襲い来る睡魔の攻勢を欠伸で躱しながら歩みを進め、やがて目的の場所へ到着する。
躊躇なく扉を開け放った先に立っていたのは、銀髪のメイドさん。
「こんばんは、グレイフィアさん」
「ええ、こんばんわ。....何故か、こうやって話すのは随分と久しぶりな気がします」
「それもそうですね」
良く知る人物以外では、よく見ていないと気が付かない程の笑みを浮かべるグレイフィアさん。あら、意外と機嫌よさそうだな。
そんな俺の雰囲気を察したのか、彼女は小さくなりつつある転移魔方陣を眺めながら言う。
「リアスが率いていた眷属の皆さん、数日前とは見違えるほど精悍な顔付きになっていましたよ?....貴方の仕業でしょう」
「あー...まぁ、少しは」
「ですから、
「....グレイフィアさん。その
その質問を聞いた瞬間、彼女には珍しく明らかな驚きを呈しながら上体を僅かにのけぞらせた。
俺は悪戯っぽい笑みをわざと続けながら、居心地悪そうに目を逸らしたグレイフィアさんの返答を待つ。
「どうでしょうね」
「はは、そうですか。でも、俺がそれに協力するつもりはあるということ...一応伝えておきますね。どうせ
「....これ以上の御遊びは流石に考え物ですよ?」
それまでの空気を凍り付かせるほどの濃厚な殺気を漏らしたグレイフィアさんに対し、俺は消えた転移魔方陣の座標まで歩いて移動して、彼女へ背を見せながら明るく言った。
そう、『努めて』明るくに、だ。
「─────その遊びで俺に勝てたこと、あります?」
俺は殺気を投げかけられると、無意識に臨戦態勢へ移行すると同時、かなり気が短くなる。ちなみに、彼女が遊びで俺に勝てたことが無いというのは本当だ。
背後にいるグレイフィアさんは少し後悔したような気配を見せた後、その殺気をしまった。
「『それ』、どうにかならないんですか?」
「『向こう』では気迫で負けると不利だという事に気が付いたんです。まぁ、病気みたいな感じですね」
「次会うまでに矯正しておいてください。お願いです」
「それは無理な相談ですね」
割と切に頼み込んできているグレイフィアさんのお願いをバッサリと切り捨てながら、再び俺の足元で展開したレーティングゲーム現地への転移魔方陣へ、彼女とともに乗った。
魔術回路という概念なしに、何とかガンドくらいはアーシアへ教えられたオリ主。え?役に立つのかって?それは本人次第だね。
次回は遂にレーティングゲーム本番。
ああ、小猫ちゃんの終盤まで強制生存フラグは立ってますんで(ゲス顔)