前世も現世も、人外に囲まれた人生。   作:緑餅 +上新粉

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 vsライザー戦のレーティングゲーム、最終回。
 今回のタイトル Conclusion は『終結、終局』という意味です。


File/24.Rating Game -Conclusion-

『Dragon booster second Liberation!!』

 

 

 おお...すげぇ、力が湧いてくる!お前が何かしてくれてんのか?

 そんな疑問を受け取ったのか、籠手から響く謎の声は再び俺へ返答した。

 

 

『いいや、俺に回復能力はない。ただ、籠手を介して貰った魔力をお前に渡してるだけだ』

 

 

 貰ったって、誰に?と聞きたかったのだが、振るわれるライザーの手や足から逃れることで思考は精一杯だった。

 威勢よく突っ込んだはいいが、策も何もあったもんじゃない。文字通り捨て身の突貫だったのだ。

 

 

「バカな!あれだけ痛めつけられて、あれだけ疲弊していたというのに、何故動ける!?」

「はは!眠っていた力が目覚めたって展開は、少年マンガとかでよくある事だろうが!」

「訳が、分からん!」

 

 

 苛立ち紛れに放たれた拳を交差した腕で受け止め、今度はこっちが仕掛ける。

 追撃してきた奴の膝を肘で受け、浮いていた手を掴んで引き寄せた。そこへ、膝を止めるために引いていたもう片方の手でアッパーカットを繰り出し、ライザーの顎を打つ。

 

 

「ごふっ!」

 

 

 悠に五メートルは打ち上げたところを、軽く溜めたドラゴンショットで更にもう一撃。

 見事直撃して盛大な爆発が起こり、その余波が俺の身体を打つ。確かな手ごたえを感じたが、俺は警戒を解かずに構え続ける。

 

 

『む、相棒!避けろッ!』

「ッ!」

 

ドッグアアァァン!!

 

「チッ!」

 

 

 籠手から響いた声のおかげで、ユーベルーナの乱入攻撃を辛うじて回避出来た。くそ、またお前かよ!いくら多少は元気になったからって二対一はキツイっての!

 上がった息を整えている所を、更に女王の連続爆撃が襲い掛かる。本当に容赦がない。

 と、ここで傷が全快したらしいライザーが前に出て来た。

 

 

「やめろユーベルーナ!コイツは俺が倒す!」

「!ですがライザー様、この男は油断なりませんわ!」

「リアスはあの兵藤一誠がお気に入りらしい。だから、俺自らの手で痛めつけるところを見れば多少は従順になるだろうよ。絶好のチャンスを邪魔するな」

「....分かりました」

 

 

 ユーベルーナを下がらせたライザーは、下卑た笑みを浮かべながら炎を展開させて突っ込んで来る。本当に性格悪いなコイツ!増々部長を渡す訳にゃいかねぇ!

 俺は歯を食い縛って、残り少ない体力を削りながら身体を動かし続ける。そんな俺へ、場違いな程落ち着いた声が掛けられた。

 

 

『相棒、いいか?俺が合図したら、左手で奴の腹あたりへ一発入れろ』

(へ?!な、なんで)

『四の五の言うな。やらんと負けるぞ?』

( ッ、分かったよ!)

 

 

 俺は渋々ながらもその声に従うことにした。どのみち、このままではスタミナ切れでコッチが先にぶっ倒れる。そう決心したとき、ライザーは己の攻撃が当たらないことに痺れを切らしたか、俺の目前で動きを止めると両手を合わせて構えた。瞬間、その手にみるみる炎が集まって行く。

 コイツ、俺じゃダメージを与えられないと踏んで、わざとこんな隙だらけな態勢に...!

 しかし、悔しいがこれは最善策なはず。俺にはもうドラゴンショットを出せるくらいの余力はないし、ライザーの大技を止める術が─────

 

 

『相棒ッ!!今だッ!』

「はっ?!お、おう!!」

 

 

 予想外のタイミングで合図が出されたが、咄嗟に避ける動作を中止して左腕へ意識を向ける。

 

 ライザーはこの拳で何度も殴った。...そして、何度も傷を再生されて振り出しに戻った。今更この一撃で奴をどうにかできるなどとは到底思えない。...が、

 

 

「ど、おりゃああああああああッ!!!」

 

 

 ─────何故だろう。今この状況に限っては、勝てる気しかしないッ!!!!

 

 

「はっ、まだ分かってねぇのか馬鹿が!!俺は不死身なんだよ!そんな拳骨じゃあ傷ひとつつかん!...終幕だ、赤龍帝ッ!!」

『そのバカは手前だ!!ぶちかませ!必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)ッ!!』

 

 

 

 ─────そのとき。屋上にいた全員の目は俺の左腕に注がれていただろう。

 

 輝く黄の槍を生やした、赤い腕に。

 

 

 

「が...はっ!なん、だと...?」

 

 

 腹部を穿たれたライザーは、そんな呟きを漏らしたあとに光となって掻き消えた。

 そして─────

 

 

『キング、ライザー・フェニックス様が戦闘不能となったため、リアス・グレモリー様の勝利です』

 

 

 

          ***

 

 

 グレモリー先輩たちの勝利が決まった瞬間、思わず深い安堵の溜め息を出してしまった。

 あれだけ魔力をドライグへ与えて置いたのに、まさか五分と持たずに消えるとは...

 

 サーゼクスと、勝利をアナウンスしたはずのグレイフィアさんまで無言で固まる中、俺は腕を組んで先程の戦況を考察し始める。

 

 イッセーの拳から出現したのは、『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』。アイルランドの英雄、ディルムッド・オディナが所持していた二本の槍の内の一つ。

 ゲイ・ボウによって負わせられた傷は槍自体を破壊しない限り決して癒えない。そのため、一度深手を負ってしまえば治療の施しようがなく、簡単に失血死してしまう。

 今回は一撃の下にライザーへ致命傷を与えられたので、槍の呪いで回復出来ない状態となった彼は、修復される気配のないまま規定のダメージ量を越えて退場。もし、それより先にゲイ・ボウが消滅していたら、勝敗の結果は間違いなく逆だったろう。

 ライザーの決定的な敗因は、己の不死性を過信しての戦法だ。

 いや、なまじ警戒心が強い相手だったとしても、あの攻撃は予測できるか怪しいものではあるが...

 

 

「兵藤君が出現させた、あの奇妙な槍は一体...?フェニックスの御子息は不死身だったはずなのに、たった一突きで倒れるなんて」

 

 

 モニターを眺めながらようやく紡ぎだしたサーゼクスの言葉は、やはり驚きが大半を占めていた。

 彼も、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)についてはよく知っているだろう。

 何せ純血悪魔たちの多くを屠った二匹の龍のうちの一匹が封印された神器だ。持ちうる性質や特性もある程度押さえているはず。ならば、癒えない傷を与える槍など赤龍帝が持っていないことは分かると予測できる。

 

 さて、それより現状最も優先すべき問題が他にある。

 

 

「コウタさん。貴方、あの赤龍帝へ何か仕込みましたね?」

 

 

 もう俺を犯人だと断定しかけているこのメイドさんを何とかせねば、俺が冥土に送られてしまうからだ。

 

 

          ***

 

 

 さっき訪問してきた姫島先輩は所々痛々しい火傷が目立ったが、レーティングゲーム用に設置された医療設備は万全らしく、彼女は何の問題もないと俺を励まし、いつも通りのお姉さま然とした態度を崩さなかった。別に無理している感じではなかったから安心したが、本当はゲームの最後まで残る事が出来なくて悔しかっただろう。

 

 木場と小猫ちゃんは結構酷くやられていたが、二人とも俺と顔を合わすと途端に強がりを言いだすから困った。少しでも心配する口振りや素振りをすると木場は遠慮するし、小猫ちゃんは不機嫌になるし...。まぁ労いの言葉はちゃんとかけられたし、良しとするか。

 

 俺は最後となったイッセーのいる医務室の扉をノックしてから開け、先に来ていたアーシアさんとグレモリー先輩へ二人だけで話をさせてくれと頼み、白が基調の個室には男二人が取り残される。

 

 

「大分無茶したな。イッセー」

「ああ、見てたかコウタ。勝ったぜ?あのライザーにさ」

「あぁ、大したもんだよお前は」

 

 

 椅子に腰掛け、身体のあちこちに湿布や包帯を巻かれたイッセーに目を向ける。...見た目よりは酷くなさそうだな。アーシアの支援があったからこそなんだろうが。

 簡単な視診を終えたあと、横にしていた体を起こすイッセーに問い掛ける。

 

 

「さてと。聞きたいことは山ほどあると踏んでいたんだが...そこのところはどうなんだ?」

「勿論あり過ぎるに決まってるだろ!籠手から聞こえた声、あの変な槍、不死身のライザーがなんで負けたのか!」

「まてまて、順を追って話すから一気に会話のボールをこっちへ投げ込まないでくれ」

 

 

 グレモリー眷属の中で一番元気なのは間違いなくコイツだろう。だれよりも酷い怪我してたってのに、ホント頑丈さだけはサーヴァントと比較しても遜色ないのではなかろうか。

 そんな余計な事は置いておくとして、俺はまず、言葉だけで簡単に説明できる話題から拾うことにした。

 

 

「じゃ、まず一つめだ。籠手から聞こえた声について、な」

「あ、あぁ」

「あれは赤龍帝、ドライグのものだ」

「...なッ!赤龍帝ってあの赤龍帝かよ?!戦争のときに封印されたんじゃなかったのかっ?」

 

 

 文字通り掴みかからんばかりの勢いで捲し立ててきたイッセー。

 これを予測していた俺は、語勢を変えることなく返答する。

 

 

「おいおい。なんのためにその神器が神滅具とか言う大層な名前になったのか考えた事無かったのか?」

「ま、まさか」

 

 

 イッセーは色を失った表情で左腕に赤い籠手を出現させ、手の甲にある宝玉をつついた。その瞬間、重々しくもどこか親近感を思わせる声が俺の脳内で響き渡った。

 

 

『おう相棒、随分魔力が回復してきたな。...む。お前もいたか、ツユリ=コウタ。今回は色々世話になったぞ』

『気にすんな。俺もよかれと思ってやった事だ』

『そう言ってくれると、此方としても気が楽だな。...カカカ!まさか、この俺が施しを受けるタマになるとは』

 

 

 自嘲気味な台詞を吐いているはずだが、声調は全くそんな感じなどしないくらい明るい。むしろ愉快さが窺える。

 そんな風に俺とドライグで会話していると、イッセーに異変が訪れた。

 

 

「っだー!なんなんだよお前ら!俺の頭の中で普通に会話しやがって!頼むからこの状況を説明してお願いします!」

『おお、相棒の感情が乱れに乱れているぞ。コウタ、落ち着かせると共に多少の現状説明をしたらどうだ』

『丸投げかよ薄情者!』

 

 

 しかし、今のイッセーにドライグを当てると逆効果だろう。少しでも普通の会話内容に戻さないと、コイツの精神はきっと持たない。

 幸い俺は人の子であり、それに即した価値観と倫理観を持っている。人間でよかったぜ。

 

 

「イッセー、まずは俺のことからだが...みんなの疑心暗鬼を避けるために、伝えないでおいたある能力が存在する」

「え...剣とかを出せる能力だけじゃないのか?」

 

 

 冷静さを取り戻したイッセーの問いかけに頷いてから、自分の目を指差しながら告げる。

 

 

「俺は他人の考えていることが読める。幸いオンオフの融通が効くから、読みたくない時...つまり普段はオフにしてる」

「じ、じゃあ俺の心のなかは一度も見てないんだな?!そうだな?!!」

「うおっ!そうだそうだ大丈夫だから揺らすなって!」

 

 

 肩を揺するイッセーは完全に我を忘れていた。どれだけ変な妄想してたんだよ...

 初めて会ってから一度たりとも使ってないと、五回ぐらい言い聞かせたところでようやく納得してくれた。

 

 

「で、ここからが本題なんだが...俺はこの読心の力を使ってお前の籠手にある宝玉を見ると、意識を半分くらい飛ばしてドライグと会話できる」

「い、意識を半分?それってどんな状態なんだよ」

「夢を見てる感じが少し近い...けど、かなり浅いくせして鮮明っていうか」

「なんじゃそりゃ」

「うまく説明できん。こればっかりは実体験して貰わないとな...って事で、意識トばすか?」

「トばさんわ!」

 

 

 試しに拳を握ってニンマリと笑ってみるが、やはり突っ込まれた。

 というか、あんまり遊んでいても時間が無駄になるだけなので、俺は一転して澄まし顔になると話を続けた。

 

 

「ドライグへ干渉した俺は、お前の覚醒を促すために、純正の魔力を修行中にいくらか渡してた。で、あの槍は最後の会話ついでに置いて行ったモンだ」

「槍...アレが、か」

 

 装着された籠手をまじまじと眺めるイッセー。今はもう槍と同化しておらず、普段通りの様相だ。

 俺はおもむろに手を掲げ、魔術回路を起こすとお馴染みの武具創造(オーディナンス・インヴェイション)を行使する。光が疾走った一瞬の後、その手中に例の黄槍が出現した。

 

 

「『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』。結論から言うと、この槍で負った傷は癒えない」

「なっ!マジかよ!?」

「そういう呪いが掛かってるからな。ちなみに、コイツ自体が折れたり、使い手が死んだりしたら呪いは解ける」

「そりゃ、ライザーがやられた訳だ...」

 

 

 作中では呪布で効力を殺す描写があったが、俺の能力はあくまで宝具として創造されるようで、それに付随してくるなんらかの物品は、また別のものとしてカウントされてしまうらしい。しかし、ここでは真名の露見を気にする必要はないので、あんまり意味はないと思える。

 俺は槍をくるりと一回転させた後に消した。と、それと入れ替わるようにドライグの声が俺の脳内へ響いてきた。

 

 

『...終わったか?相棒の素っ頓狂な声がこっちまでハッキリ聞こえてくる当たり、どうやら繋がりは完璧に回復したらしい』

「おぉ!なら、今までより強化のレベルを上げられるのか?」

「確かに上がるかもしれないが、やっぱり現状じゃ上限はあるぞ」

『うむ。強化をしようとも、その力を受け入れらるだけの強靭な肉体と精神力が必要だ。どちらかでも欠けたまま無理な強化をすれば─────容易く身を滅ぼす』

「......」

『強くなりたいのなら、そうなれるまで努力しろ。幸い、相棒の目の前には到達点に最も近い輩がいる。お前が歩むべき()()だけでも享受させて貰え』

「...ああ、分かった」

 

 

 真剣な表情と声音で頷いたイッセーは、ドライグに断ってから籠手を消失させる。

 そして、真摯な顔を持続させたまま、微量な不安も新たに含ませて、彼は真っ直ぐ俺を見据えた。

 

 

「コウタ....俺は今よりもずっと強くなれるか?部長や皆を…大切な人全員を守れるくらい」

「──────────」

 

 

 一瞬、言葉に詰まった。

 何故なら、イッセーの言葉は...あの正義の味方が宣っていた理想とあまりにも酷似していたからだ。

 

 ─────戦いに関係のない人々を巻き込みたくない。そう願った少年がいた。

 それは何時しか、世界の平和を願う純粋なものから、百を救って一を切り捨てるという合理的な行動理念へと変わってしまった。

 何も間違っていない、ある種究極の善を遂行しようとして、あの日から心の成長を止めた彼は、その生を終えようとも正義の在処を求めた。

 

 ─────強いだけでは為せない。目に映るもの全てを抱え込み、かつその中で悪逆の一切を赦さぬ暴力的な迄の善政を敷くなど。...否、そもそも人の身では不可能。

 

 そこまでではないにせよ、俺は愚直なほど真っ直ぐな意思を持つ目前の少年を応援したくなった。

 

 ある赤い騎士は言った。─────理想を抱いて溺死しろ、と。

 だが、そんなのは御免だ。叶わぬ想いに、叶わぬ願いに手を伸ばして何が悪い。

 俺たちが思考する理由は、より最善の結果を選び取り、その先にある結末を望んだものとするためではないのか。

 

 なら、それを抱えたまま泳ぎ続けられる方法を見つければ、きっと。

 

 理想などではなく、在る現実として己が渇望する未来を創れるのだろう。

 

 

「ああ、なれるぜ。絶対になれる」

 

 

 答えならある。

 今は遥か先で、歩むべき道すら分からないが...必ず辿り着ける筈だ。

 




 ─────"正義の味方"
 現在では子供だましの言葉だと笑うかもしれませんが、ふと童心に帰ってみると、そんな存在を心から待ち望んでいた、あるいはなろうとしていた自分が思い起こされます。

 本当は今も、自分の背負う不幸を丸ごと掻っ攫って行ってくれる、そんな都合のいい"正義の味方"を望んでいるのかもしれません。
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