前世も現世も、人外に囲まれた人生。   作:緑餅 +上新粉

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ネタ成分が予想以上に豊富となりました...
原作の内容に入りさえすれば、少しはシリアス分が復活するはず!


File/08.はぐれ悪魔

 俺が木場と、グレモリー眷属の駒役をかけて戦った数日後。

 あれからの生活にこれと言った変化は....うーん..

 

 

「なんで僕はオカルト研究部(ココ)にいるんでしょうかね?皆様方」

「今更何言ってるのよ、コウタ」

「...えっ?おかしいのって俺?」

 

 

 残念ながら生活は激変しています。何故かというと、放課後になるたびに塔城さ...ゲフンゲフン。小猫ちゃんが、俺を引きずるようにしてこの部室まで連行するからです。

 そして、更に不可解なのは俺の存在がナチュラルに受け入れられているこの状況ですよ!何故!why?!

 

 

「いや、おかしいのは俺ではないはずだ。じゃあこの状態を説明するには、誰かが魔法とかマジックとかイリュージョンを使ったとしか...」

「三つともほぼ同じ意味じゃないの....あのね?貴方はこの部活、オカルト研究部の部員になっているのよ」

「え?いやいや、俺は拒否、して......ないな」

「そう。貴方が辞退したのは、あくまで私の眷属となる提案のみ。入部できない訳じゃないわよね」

 

 

 屁理屈ではない。確かにこの話を聞いて納得しない奴は少数だろう。

 だが、無理矢理というのは感心しな――――――――

 

 

「あとね、小猫は今年入部したてで不安な気持ちが大きかったと思うの。...だから、あの子と仲のいい同年代の貴方が来てくれれば、少しは楽になるんじゃないかって、ね」

 

 

 うわ、そんな言い方はズルい。ここで否定すれば小猫ちゃんまで傷つくじゃないか!

 なかなかの手腕だが、俺に勝った要素があるとすれば...

 

 

「いいですよ。この部活楽しそうですし」

 

 

 俺がオカルト研究部を気に入ってしまったことだ。

 だから、別段断る要素などないのである。

 

 

 

          ***

 

 

 

 

「コウタさん、一緒にお昼食べましょう?」

「おぉう」

 

 

 俺がオカルト研究部へ入部した(事を知った)次の日。

 四時限目の授業が終わり、椅子に背中を預けて大欠伸しているところへ小猫ちゃんがやってきた。そして何故か、椅子を傾けて上を向いた状態の俺の頭が、彼女の細い両腕によってガッチリとホールドされる。

 驚いて少しバランスを崩したが、小猫ちゃんの舵取りで事なきを得た。おお、首から上だけ凄く気持ちいい...

 

 

「これいいな。本格的に眠たくなって来た」

「ここでは駄目です。....皆から向けられる視線も痛いので、外へ行きましょう?」

「何?....おあっ」

 

 

 小猫ちゃんの腕の中でポワポワしていると、女子連中からはニヤニヤとした生暖かい視線を、男子連中からは凄絶な憎しみのこもった視線をぶつけられていた。

 ぜ、前世で思い描いていた理想の光景ではあるが、こうして体感してみるとかなり怖い!という事で逃げるっ!

 

 

「それが俺のジャスティスッ!」

「急に何を....ひゃんっ!」

 

「おい栗花落!テメェいつの間に塔城さんと仲良くなりやがった!」

「信じねぇ、俺は信じねぇぞ!あの寡黙で無感動な塔城さんが、自ら男へアプローチするなどぉ...!」

「お前を殺すが俺は死なん!」

「誰か鋭利な方の彫刻刀貸せ!二度と塔城さんの御尊顔を拝めねぇように、アイツの目ン玉くり抜いてやるッ!」

 

 

 迫りくるカノジョイナイ系男子からの殺意を躱し、小猫ちゃんの手を取ってから引き寄せて御姫様抱っこする。うほぉ!土壇場でもう一個夢が叶ったぜ親父ィ!!

 そのまま教室を飛び出し、突き当りにあった下の階へ続く階段の角に隠れてから、迷彩術式を組み上げて発動。追手をやり過ごした。

 てか、最前線を走ってたのは獅子丸と樹林だったな....目がマジだったのが気がかりだ。

 

 

「うっし、じゃあ外へ...って小猫ちゃん?」

「~♪」

 

 

 あまり長い間御姫様抱っこを続けるとイヤだろうと思ったのだが、とうの彼女は俺の背中へ手を回し、胸元に顔を埋めていた。...恥ずかしかったのだろうか?

 

 

「まぁいいか。役得役得ってな」

 

 

 俺は小猫ちゃんの白いさらさらな髪を撫でながら、あまり揺らさないよう静かに階段を降りはじめた。

 

 

 

          ***

 

 

 

 さて、紆余曲折あったが無事に庭へついた。

 小猫ちゃんには御姫様抱っこを止めて貰い、ちょこんと俺の隣に座っている。

 

 そして、今は俺が呼び寄せた(結界をくりぬいたとも言う)猫数匹を周りに侍らせながら昼飯をつついている。

 

 

「そういえばさ」

「ん....はい?」

()()()()って何で俺と話す時は敬語なんだ?同じ学年なのに」

「...........................」

「?...あっ、小猫ちゃん」

「よろしい」

 

 

 木場との一戦以来、小猫ちゃんは呼び方が下の名前じゃないと不機嫌になる。となると、少しは心を許してくれたのかな?

 しかし、クラス内にいる他の生徒と彼女が話しているのを見るに、同年代で敬語を使って会話しているのは俺だけだ。その程度といえばそうなのだが、やはり壁を感じてしまうのが男の性。我ながらメンドクサイ性格だと思う。

 思い切って理由を聞いてみたところ、小猫ちゃんは暫し悩む素振りを見せ、チラチラと此方を伺いながら言葉を漏らす。

 

 

「コウタさんは...何処か大人っぽく見えるから、かな」

「?....雰囲気か?」

「恐らくそうだと思います。でも、敬語を止めて欲しいなら言ってください」

「あぁいや、理由があるなら大丈夫だ。一番やりやすい方にしてくれ」

 

 

 そう言ってから、黒歌が絶対に作ると譲らなかった玉子焼き(味の確認済み)を口内へ放り込む。なんだか急に家庭的な女を目指すとか言い出したから何事かと思ったな。

 小猫ちゃんはコクリと一つ頷き、それからまた昼食をつつき始めた。

 

 何品かトレードし、粗方食べ終わった頃...良く見知った顔が紅い髪を翻しながら校舎から此方へ歩いて来るのが見えた。

 やがて俺と小猫ちゃんの近くまで歩いてきたグレモリー先輩は、ふぅと深い呼吸をする。

 

 

「全く、貴方達がいるクラス内の皆に聞いても消息不明だっていうから、探すの大変だったわ。コウタの名前を出した瞬間、男子は何故か殺気立ってたし」

「うわ。それはスミマセン、グレモリー先輩。でも連絡してくれれば...」

「校内では基本的に携帯電話の使用が禁止よ?」

「あぁいえ、そうじゃなくて...これですこれ。昨日渡したヤツです」

「?このノートみたいなものかしら」

 

 

 俺は首肯した後、さっき取り出した、見た目は普通の小振りなノートを開いてからペンを使って、『こんにちは』と書いてみる。そして、そのすぐ下へリアス・グレモリーと付け足した。

 俺はペンを仕舞い、軽く手に魔力を込めてから紙面へ当て、上方向へスライドさせると....

 

 

「?何、震えて―――――ッ!これは....!」

 

 

 グレモリー先輩は手に持っていた例のノートを拡げると、最初の一ページ目へ凄まじい勢いで文字が書き込まれているのを見て驚愕の声を上げる。

 その内容は、今さっき俺が書いたものと全く同じ。だが、唯一違うところは、最後に書いたグレモリー先輩の名前が、俺の名前になっている事だ。

 

 

「凄いわね。これも魔術?」

「はい。原理機構だけではなく、発動時に必要な詠唱の術式まで組み込んだので、微量の魔力を込めた簡単な身振りだけで機能を発揮させられます」

 

 

 このノートは、俺を含めたオカルト研究部全員へ手渡した...のだが、その当時である昨日に説明をし忘れてしまい、只のノートだと勘違いさせてしまったようだ。

 しかし、この各ノートは魔力のパスが繋がっており、メッセージの後に書き込んだ名前を認識して送り届けてくれる、超便利アイテムなのだ。

 

 

「確かに、これは学園内で使うには適しているわね」

「面白いです」

「.....小猫ちゃん、喜んでくれるのは製作者側としてこれ以上ないほど嬉しいんだけど、澄まし顔で俺のところに落書きを大量投下するのヤメて」

 

 

 ちなみに、このノートには現代の携帯みたいな受信拒否システムはない。渡す相手は信用のおける人だけにしようね!

 漆黒に染まりゆく、かつて純白に彩られていた紙面を呆然と眺めていると、ノートを閉じた先輩が思い出したように言った。

 

 

「そうそう、此処に来た本来の趣旨を忘れていたわ。...小猫、コウタ。今日の放課後はちょっと付き合って貰うわよ?」

 

 

 

 

          ***

 

 

 

 

「うへぇ...酷い腐臭だな」

「恐らく、例のはぐれ悪魔が喰い散らかした人間でしょうね」

 

 

 放課後、約束通り部室へ行くと、部長から人を襲うはぐれ悪魔討伐の任務を聞いた。なんでも、ここら一帯を領地として持つ彼女へ上級悪魔から依頼が来たのだという。

 奴が潜んでいるのは寂れた工場の様な場所らしく、今はその中の探索をやっているのだが...

 

 

「これは酷いな」

「そうね、やっぱり小猫を外に置いて来て正解だったわ」

「ふふ、確かにこれは気分を害しない方が異常ですわね」

 

 

 眉を顰めた俺の言葉に頷くグレモリー先輩と姫島先輩は、そこいらに転がる人だったモノを避けて周りへ注意を払う。強い明かりをつけたかったが、これは止めた方がよさそうだ。確実に吐く。

 

 と、探し始めて五分程経った頃、突如工場の外から轟音が響いてきた。

 俺たちは顔を見合わせ、すぐに工場を脱出する。...そこで目に飛び込んで来た光景は――――――

 

 

「中にはいなかったみたいですね」

「この場合、僕達の方が貧乏くじを引いたことになるの、かなっ!?」

『ギャアアアアアアアッ!馬鹿な、弱小の眷属悪魔なんかに、この私が!』

 

 

 工場の外には、探していたはぐれ悪魔の歪に肥大化した馬みたいな足を押さえて動きを封じる小猫ちゃんと、高速の斬撃でその四肢を刻む木場がいた。

 一足先に出ていた俺の隣に並んだグレモリー先輩と姫島先輩はその光景を見ると、『計画通り』みたいな顔をした。怖いっす。

 

 二人が善戦する中、グレモリー先輩は姫島先輩へ戦闘に参加するよう命じた。

当の先輩は渋ることなく...寧ろ嬉しそうな顔で翼を展開させて飛び立つ。そんな先輩を見送った部長は、すぐ俺へ告げた。

 

 

「いい機会だから、皆の戦い方と役割を教えておくわね」

「ああ、駒のヤツか」

「そうよ。コウタは眷属じゃないけど、グレモリーの名を背負ったオカルト研究部の部員なんだから、いざという時には連携が取れるようにして貰いたいしね」

 

 

 なんだか、いつの間にやら期待株となりかけているような気がするが、多分それは事実だろう。

 とはいえ、ある程度分かっていたことであり、今この場でいたずらに会話をややこしくしたくはない。

 

 

「まずは佑斗ね。もう知っているだろうけど、彼のピースは騎士。更に魔剣創造(ソード・バース)という神器も併せ持っているわ」

「へぇ、やっぱりThe騎士だな。神器もレア物だし」

 

 

 木場ははぐれ悪魔の腰あたりから生える人型の手を切り飛ばした。奴は木場の動きに全然ついて行けてないな。

 それなりに名のある悪魔だったのかもしれないが、力の無い人間ばかりを狩っていては、心だけでなく力まで堕落するというものだ。

 部長は次に小猫ちゃんへ目を向けた。

 

 

「小猫はあの小柄に似合わず、規格外なパワーを持つわ。駒は戦車、ね」

「道理で、小猫ちゃんに腕を握られた時は毎回骨が奇声を上げる訳だ」

 

 

 木場の猛勢で怯んだところを、彼女は一気に懐へ飛び込んで跳躍する。そして、華麗な空中半回転後――――――――

 

 

「吹き飛べ化物」

『ガッハ!』

 

 

 強烈な回し蹴りがはぐれ悪魔の顔面を捉え、巨体が軽々と打ち上がった。クッ、もう少しで下着が見えそうだったのに...無念。でもギリギリっていいよね。

 はぐれ悪魔は地響きを鳴らしながら落下し、うめき声を上げているところへ姫島先輩が近づく。

 

 

「朱乃の駒は女王よ。貴方と同じく、魔力を使った戦闘が得意ね。で、朱乃が主体とする攻撃方法は...雷」

「へぇ、姫島先輩は神器使いじゃないんですか?.....ってうお!」

 

 

 グレモリー先輩へ疑問の眼差しを向けた瞬間、はぐれ悪魔がいる方向から雷鳴と叫び声が迸った。

 ......その先では、思わず目を覆ってしまう程の酷い仕打ちが行われていたのだ。

 

 

「うふふふふふふ!さぁ、貴女も悪魔の端くれなら、悲鳴以外の嬌声を上げて御覧なさい?」

「やめっ―――アガッガガガガガッガガアァァ!!」

 

 

 姫島先輩は明らかにアレの気のある黒い微笑みを湛えながら、幾条もの激しい雷撃を放っていた。これは茶の間にはお見せできませんね。

 

 

「朱乃、そろそろいいわ」

「あらリアス、これからなのに....」

 

 

 名残惜し気な表情で人差し指を下唇へ当てる姫島先輩だが、グレモリー先輩は指でバッテンを作った。お二人とも、まだ目の前に敵がいますよ?すんごい睨んでますよ?

 一頻り会話をし終えた我らが部長は、唐突に顔から感情を消した。かなりの迫力だったので、俺まで少し寒気を覚えてしまう。

 

 

「はぐれ悪魔バイサー、何か言い残す事はある?」

「殺せ」

 

 

 簡潔な回答に頷いたグレモリー先輩は、その手に紅い波動を生み出し、一撃の下ではぐれ悪魔を消滅させた。

 

 強いな。能力もそうだが、何より....心が強い。

 

 だが、それを一人で保つには重すぎる。彼女もサーゼクスの意志を引き継いではいるが、あの彼でさえグレイフィアさんの存在があってこその強さだ。

 

 

「さぁ、引き上げるわよ」

 

 

 俺は彼女の近くへ行けない。近づける資格もない。だから支える事は出来ないだろう。

 しかし、グレモリー先輩には、きっと――――――――




イッセーに看取られる事無くバイサー逝去。



※挿絵は削除致しました。再掲載させるつもりは今の所ありません。
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