昨日、ベルとリリルカにヴェルフの三人でダンジョン探索をしているとヘスティアとは神友にして武神である【タケミカヅチ・ファミリア】と接触した。
ベルの『技と駆け引き』が武神に教えを受けている眷属たちにとって敬意を表するに値する程であったからで特に命が一番、ベルの技に惹かれていた。
そうしてせっかく互いの主神が神友同士ならと一日明けた今日より一緒にダンジョン探索をしようという事になったのである。
『へぇ、タケのところと……うん、良いんじゃないかな』
ヘスティアにそれを告げると彼女は賛成した。
そうして、いつものように『青の薬舗』へと向かうため、西のメインストリートを歩いていると……。
「ベルさん、今日はちゃんとミア母さんに教えてもらいながら作ったので自信があります。頑張ったんですよ」
「有難く受け取らせてもらいますね」
『豊穣の女主人』からシルが声をかけて呼び止め、ベルに弁当を渡しそれをベルは受け取った。
そうして『青の薬舗』へと向かえば……。
「ベル、あの女と関わっちゃ駄目って言ったのにっ!!」
「いや、でも何度かお世話になってしまってるのでそういう訳には……」
「問答無用」
「だ、だから噛まないでぇぇ」
敵視しているアミッドとベルが交流しているのが気に入らないナァーザはベルにお仕置きの如く、責めて蕩かせた。
次に北西のメインストリートに行き、【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院にて今日、『中層域』である13階層を目標の探索域としている事から値は張るが、高性能の回復薬を買った。
「お気をつけて」
「んぅ……はい、ありがとうございます」
アミッドに頭を撫で回されながら、見送られて集合場所であるギルド本部へ……。
「なんだかんだ、ベル君の元には人が集まるみたいだね」
「はい、ありがたい事です」
エイナに苦笑されながらも頭を撫で回されつつ、見送られてベルはリリルカにヴェルフ、【タケミカヅチ・ファミリア】の者達とギルド本部を出てバベルへと向かい、そうしてダンジョンの中へと進んでいくのであった……。
二
岩窟の領域である中層の13階層は『上層域』である12階層までのそれと危険度が遥かに増す。敏捷性に優れていて集団戦闘が得意なアルミラージ、素早く動きながら口より火炎攻撃を行うヘルハウンドなど上層域のモンスターより厄介なモンスターが産出される場所であり、産出される数も上層域より遥かに多いのだ。
それだけモンスターと遭遇する機会も多くなるのである。
【タケミカヅチ・ファミリア】の眷属たちは13階層まで探索範囲を広げていて、何度か探索もしているとの事だ。
ベルは今回、自分合わせて9人である事や中層域が初体験であるのもあって弓の本質である遠距離戦に徹していた。そのため今回はリリルカにも頼んで矢を多めに持ってきているし【タケミカヅチ・ファミリア】からも必要とあれば矢を提供するとも言われていた。
そうして長弓にて、矢を放ってモンスターを射貫いていく事で前衛で戦う桜花や命、ヴェルフを支援するベル。
「ベルさん、どうしてそんなに矢を当てられるんですか?」
複数の矢を矢筒から抜いて纏めて射たり、次々と連射したり、様々な軌道に曲げながら射たり、上空にいての落下や壁や地面に当てて反射による軌道の変化であり、跳弾させたりとベルは様々な射ち方をしつつ、全て必中させていた。
『
「成程」
【タケミカヅチ・ファミリア】の中で一番、弓が巧い千草から質問されたベルはアルテミスがベルに弓を教える際に言った言葉をそのまま、言った。
その後は回収した魔石やドロップアイテムでバックパックなどがいっぱいになった事と13階層の難易度が厳しい事もあって、今日の探索は此処までと帰還しようとしたが……。
『う、うわあぁっ!!』
『グオオオッ!!』
モンスターの咆哮と冒険者の悲鳴が聞こえたのでその方向へと向かってみれば……キラーアントの時よりも遥かに多く、ヘルハウンドとアルミラージだけでなく、それより先の階層で出るライガーファングという巨虎のモンスターも含めた膨大なモンスターが冒険者達に襲い掛かろうとしていた。
「ふっ!!」
ベルは即座に体力と精神力を結構な量、込めて凄まじい威力の矢を放って十近い数のモンスターを纏めて消滅させる。
「リリ、これ大事なものだから預かって」
「え、ベル様……駄目ッ!!」
ベルはゴーグルを外してリリルカに投げ渡すとモンスターの群れの元へと駆けだしながら矢を連射していく。次々と射抜きつつ、縦横無尽に駆け跳ねて翻弄し、近距離の間合いになると更に体力と精神力を込めた強烈な矢の一撃を放ち、十以上のモンスターを纏めて消滅させながら射抜く。
「くっ、うおおおおっ!!」
激しい脱力感に疲弊に襲われながらもそれを気合と根性で耐えつつ、短剣を抜いて左の弓を杖としてモンスターを叩く事で破砕させつつ、右の短剣で切り裂き、あるいは穿っていく。
「ああああああっ!!」
モンスターの反撃に損傷させられながらもベルは次々とモンスターを屠っていく。
まったく怯まず、闘争心や殺意に尋常ならざる気迫を漲らせているベルにモンスター達は自分たちを狩り取る狩人のようだと威圧されていき、知らず下がっていく。
「しいっ!!」
その間隙にベルは弓を構え、矢を複数番えては放ち、次々と射貫く事で全滅させたのであった。
「っ、はぁはぁ、はぁはぁ……」
『……お、おおおおおっ!!』
激闘に勝利したベルに窮地から救われた冒険者達は勝利を讃える声を上げた。
「ふぅ……っ」
ベルは冒険者達の無事を確認すると笑みを浮かべるも激しく消耗した体力と精神力のそれにより、倒れようとしたのを何とか耐えた。
「ベルっ」
「リリ……ごめんね、無茶して」
「まったくですよ……まずはこれ飲んで、休憩してください」
直ぐに駆け付けたリリルカに謝ると彼女が差し出した回復薬と精神回復薬を飲み、【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院で買った高等回復薬も飲んで無理やり回復しつつ、休憩を始めた。
「なんて、凄い……あれは正に……」
「うん、ベルさんは間違いなく……」
「本物だな……」
「あいつと契約出来て本当に良かった……絶対に後悔させねぇからな」
ベルの見せた武威と勇姿に命に千草、桜花ら【タケミカヅチ・ファミリア】とヴェルフはそして、ベルに救出された冒険者たちもベルを英雄だと認識したのであった……。