白兎は狩人の誓いを   作:自堕落無力

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原作開始前
一話


 

 この下界に突如、出現したモンスターの世界にして魔窟であるダンジョンと繋がる大穴。そこからモンスターは這い出て侵略を開始したが古代のヒューマン、パルゥムに獣人、エルフにドワーフら亜人達は協力して対抗し、そうしてモンスターを『穴』まで追い返し、塔を立ててそれを蓋とし、封じる事で滅びの運命を覆した。

 

 そうした中で下界の者達が見せた『可能性』に魅せられ、超常の世界である『天界』より『超越存在』である神々はこの世界に降臨した。

 

 下界の者達と共存するため、自分たちの超常的な能力である『神の力(アルカナム)』を封じ、常人以下に能力を制限した。

 

 それだけでなく、下界の者達と密接的に関わるために自分が選んだ者に『神の恩恵(ファルナ)』という刻んだ者の『可能性』を引き出すための補助輪になるものを眷属とし、支えてもらう事にしたのだ。

 

 神と神に恩恵を与えられた眷属の集まりを【ファミリア】と言った。

 

 山奥の小さな村で暮らすヒューマンの少年であるベル・クラネルはその【ファミリア】と出会ったのだ。

 

 定住地を設けず、この下界の大陸を渡り歩いては『穴』へと追いやられるのを逃れて世界に蔓延っているモンスターの末裔を狩っている『狩猟』の派閥こと【アルテミス・ファミリア】と……。

 

 【アルテミス・ファミリア】の特徴としてはアルテミスが貞潔を司るが故に眷属の二十人全員が女性である事、そして常人以下に能力を制限している状態でも狩りを司るがゆえに女神自ら、前線で指揮を執りながら戦う事だ。

 

 狩りの女神アルテミスの『技と駆け引き』は『神の恩恵』によって超人となっている眷属すらも及ばない程に突き抜けているのだ。

 

 神の中には自分が司る事柄においては下界の誰もが及ばない超絶の域にある『神業』を有するものが居るのである。

 

 ともかく、ベルはそんな【アルテミス・ファミリア】と出会い、更にこの派閥は少し前に狩猟を行なった事やベルがモンスターに襲われたのもあって近くで繁殖して無いかの様子見も兼ねて一週間ほど、村近くの森で野営すると言った。

 

 そうして、ベルは【アルテミス・ファミリア】と関わる事になった。

 

 ベル・クラネルには物心ついた時には両親が亡くなっており、育ての親である祖父と二人で暮らしてきた。村の人たちも良くしてくれたし、祖父は数多くの英雄譚の本を持っていたのでそれを読み聞かせられる事で寂しくはなかったが、ベルは母性というものには無縁でふと恋しくなる事はあった。

 

 だからこそ……。

 

「アルテミス様」

 

「ん、どうした。ベル」

 

「えへへ、ちょっと呼んでみただけです」

 

「そうか」

 

 【アルテミス・ファミリア】の野営地にてベルはアルテミスの名を呼べば、アルテミスは微笑みかけて頭を撫でた。その心地良さとアルテミスから伝わる優しさと温もりが自分を満たしてくれるのでベルは幸せだった。

 

 それに……。

 

「本当、信じられないくらい可愛いなベルは」

 

「本当、こんなに愛らしい子初めて会ったよ」

 

 赤い髪を束ねたヒューマンの女性である団長のレトゥーサとムードメーカーのランテらも又、ベルに微笑みながら頭を撫でる。

 

 アルテミスの眷属たちも人懐っこく、子兎のように可愛らしいベルを好ましく思って積極的に可愛がった。

 

「んぅぅ……」

 

 アルテミスには『母』のように、眷属たちには『姉』のように接してもらう事でベルの恋しさは満たされた。

 

 だが、可愛がってもらうだけでなく……。

 

 

 

「アルテミス様、僕も神の眷属になって頑張れば英雄になれるんでしょうか?」

 

 ベルは英雄譚を読む中で英雄という存在に憧れ、自分もそういう者になりたいという夢があった。

 

 モンスターの魔窟である『ダンジョン』の出入り口を封じながらも限られた者は出入りできるようにしているという大都市で『下界の中心』とも呼ばれる迷宮都市オラリオに住まう英雄達の話を書いた『迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)』はベルの愛読書である。

 

「それは勿論だ。ベルは英雄になりたいんだな」

 

「はい、いつかはオラリオに行きたいなって思ってます」

 

「そうか……だが、ベル。努力するのは眷属になる前からでも良いんだぞ?」

 

「え……」

 

「望むなら私が色々教えよう……半端は良くないから、厳しくするが」

 

「……はい、お願いします」

 

 そうして、ベルはアルテミスに戦い方を習う事にし……。

 

「そう、良いか……弓はこうして、こうだ」

 

 まずは弓を習った。ベルの傍にアルテミスがつき、手で触れて誘導、そうして弓に矢を番えさせ、弦を引き絞らせて的へと矢を放つ。

 

「当たったっ、でも弓を引くのって結構きついですね……的に当てなくちゃいけないのも大変ですけど」

 

「そう、弓は簡単なようで扱うのは難しい武器なんだ。だが、使いこなせれば強い」

 

「頑張ります」

 

 そうして、ベルはアルテミスの指導の元、弓の鍛錬と……。

 

 

 

「やっ!!」

 

「ふっ!!」

 

「あうっ!!」

 

 刃を潰した短剣を持ったベルは同じ剣を持ったアルテミスに対し、向かって行ったがアルテミスは難なく、ベルの片手剣を吹っ飛ばしその余波でベルは転んだ。

 

 アルテミスは弓だけでなく、剣も使えるのだ。そもそもにして自分の眷属に戦い方を教えてもいるのだ。

 

「凄いです、アルテミス様」

 

「ありがとう、ベル」

 

 ベルの称賛にアルテミスは笑顔を浮かべた。

 

 こうしてベルはアルテミスに戦い方を教えられながら、日々を過ごしていく。

 

「ぐへええっ!!」

 

「まったく、ベルに悪影響だぞ。恥を知れ」

 

 一つ――ベルの祖父が何度もアルテミス達の着替えやら水浴びなどを覗こうとする事をベルは申し訳なく思ったが……。

 

 

 

 こうして、【アルテミス・ファミリア】がベルの村近くに来て一週間後が迫ろうとする中……。

 

「明日、行っちゃうんですね」

 

「ああ、まだまだモンスターは世界各地に居るからな……」

 

「ですよね……忙しいのに今まで良くしてくれてありがとうございました。アルテミス様」

 

「ああ、こっちこそ楽しかったぞベル……ちょっと、こっちに来てくれ」

 

「はい」

 

 満月が浮かぶ夜中にてベルはアルテミスと話をし、そうして傍に来るよう招かれた。

 

 

 

「ああ、やはりベルは抱き心地が良いな」

 

「はうぅ……」

 

 アルテミスはベルを胸に抱き、背中を撫でたり頭や側頭部も撫で、ベルはその心地良さや温もり、感触に匂いを感じて蕩けていく。

 

「ベル、あの月を見ろ」

 

アルテミスは月を司る女神でもある。自分の象徴である月を指し……。

 

「あの月から私はベルを見守っている。寂しくなったらいつでも月を見てくれ」

 

「はい」

 

「それにこれが永遠の別れじゃない。お前がオラリオに行くなら、なおさらな……いずれ、会いにも行く」

 

「はい」

 

「ベル、私からお前が英雄になれるよう、『狩人(オリオン)』の名を贈る。頑張るんだぞ。そうしたら、とびっきりのご褒美を贈ろう」

 

「はい、はい……頑張って英雄になります。アルテミス様、大好きです」

 

「私も大好きだ、オリオン」

 

 アルテミスはベルに狩人を象徴する名を贈ると抱き締め、ベルもアルテミスを抱き締め、誓いを結んだ。

 

その後、ベルはアルテミスを見送りつつアルテミスから餞別として贈られた短弓、長弓、矢筒と矢に的を使って弓術の鍛錬、短剣を使っての剣技の鍛錬に励むのであった……。

 

 

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