オラリオの西のメインストリートは一般市民が多く住んでいる地区である。魔石製品による世界中との交易を主産業とするオラリオは魔石製品を担う労働者を多く抱えている。
ギルドの計らいから生み出される雇用はダンジョンを求め訪れる冒険者以上の労働者を呼び寄せていると言われ、当然その彼等も都市に居着く事になる。
故に【ファミリア】に加入していない無所属の労働者の多くがこの西地区に住居を構え、彼等の家族も生活する事で大規模な住宅街を形成している。
そんな目抜き通りである巨大なメインストリート沿いには酒場や宿屋など多くの店々が並んでおり、その中でも大きな酒場が『豊穣の女主人』である。
女将も従業員も女性であり、女将のミアはドワーフであり、従業員はヒューマンに獣人、エルフと様々な種族にして容姿はそれぞれミアを除いて美女であり、美少女だ。
営業形態も独特であり、日中は女性を中心にした一般市民向けの『カフェ』としての営業をしているが夕方以降はダンジョン帰りの冒険者を客層とした『酒場』になるのだ。
そんな『豊穣の女主人』は毎日、客足が途絶えず、人気な店で評判も高い。
今日の早朝――『豊穣の女主人』は営業の準備を始めていた。
「シルさーん、手伝いに来ましたよ」
「はぁい、ありがとうございますベルさん」
営業の準備をしている『豊穣の女主人』へベルは入りつつ、シルへと声をかければ彼女は笑顔を浮かべながら、駆け寄った。
少し前に今日は忙しくなるからとシルから店を手伝ってくれないかと頼まれ、ベルは二つ返事で引き受けたのである。
「それじゃあ、早速着替えてください」
「いや、それは女物じゃ」
シルは自分も着ている制服を出しながら、言い……ベルは突っこむも……。
「まぁまぁ、たぶんいけるって」
「ふふ、女装するなら良い感じよね」
「クラネルさん、お願いします」
「面白そうだから、やるのミャ」
ルノアにクロエ、リューにアーニャがそれぞれ実はLV.4の【ステイタス】の能力を活かしてベルを捕らえる。
「や、やあああああっ!?」
ベルはそうして女店員の制服を着せられ、強制的に女装させられる事になった。
「ぁ、あうぅ……」
ベルは羞恥心でいっぱいになって震える。
「ベ、ベルさん。やっぱり凄く似合いますね」
「全然違和感ないじゃん。凄いよ兎君」
「女装少年……はぁはぁ」
「っ、とっても良くお似合いです」
「やるのニャ、白髪頭」
「ほ、褒められても嬉しくないですよぉ……ひゃあああっ!!」
ベルはそうして、シル達に髪や顔を撫で回されたり、弄られたりして蕩かされるのであった。
ともかく、ベルは働き始め……。
「凄く似合ってるぜ、ベル君」
「ベル様、良くお似合いです」
「良いじゃん、ベル」
「女っぽいとは思っていましたが……」
「ベル君、凄い……」
どこからか話を聞いたのだろう……ヘスティアにリリルカ、ナァーザにアミッド、エイナが店を訪れ、ベルの姿を賞賛する。
「ベル、大変良くお似合いですね。ふふ、本当に素晴らしいです」
「ベル君、こんな魅力が……」
「本当に良く似合ってるな」
アスフィにローリエとルルネも訪れ、やはり絶賛する。
「ベルー、ほんっとうに可愛いですねー、すっごく癒されますー!!」
「はは、まったくもって可愛らしいな」
『戦いの野』で激務に励んでいるヘイズや工房で武具や防具を鍛造している筈の椿もやってきてベルの女装姿を楽しんでいく。
「うおおおおっ、リアル男の娘やああああっ!!」
夕方になると『遠征』を終えた打ち上げのため、『豊穣の女主人』へとやってきた【ロキ・ファミリア】の主神で朱色の髪を後ろで結っており、細目な瞳すら見開いているスレンダーに過ぎる女神のロキが大興奮した。
「ベル、とっても可愛いよ」
「ふふ、可愛い弟が現れたと思ったら、可愛い妹まで出てきたな」
「違和感、まったく無いって凄いね」
「本当、可愛いわね」
「可愛いですよ、ベル」
そして【ロキ・ファミリア】のアイズにリヴェリア、ティオナにティオネにレフィーヤ達女性陣らも女装しているベルを可愛がり始めていく。
「んひゃ、くふ、んうう……」
色んな人や神に可愛がられているベル――今回、彼の愛らしい女装姿はいつもより見る者を引き寄せ、『豊穣の女主人』は今日、今までより一番の儲けを出したのであった……。