白兎は狩人の誓いを   作:自堕落無力

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二話

 

 

 ベル・クラネルは【アルテミス・ファミリア】が去った日より、女神アルテミス直々に指導を受けた弓術と短剣術の鍛錬に励んでいた。

 

 弓術の鍛錬に必要な短弓に長弓、矢筒に矢と短剣の鍛錬に必要な短剣は餞別として貰った。

 

 そうして、矢には限りがあるので幾本かに限定しては的を狙い撃ち、使い回す形で駄目になれば廃棄するというやり方をした。

 

 基本的には弓矢を使えるように長弓、短弓の弦を引き絞り、立てた的に向けて矢を放つイメージと共に弦を放す鍛錬が主な弓術の鍛錬である。

 

 長弓は勿論の事、短弓を引き絞り放すだけで相当に筋肉が悲鳴を上げた。

 

 矢を実際に放つのも中々、難しく最初こそ苦労の連続である。

 

 しかし、休憩を挟みながら朝から夜近くまでアルテミスの指導、実際に見せた姿勢などを思い返し、深く集中して弓術の鍛錬に励むうち、ベルはある境地に達した。

 

 精神内に埋没し、その中で標的を視線で射抜くようなイメージを創り上げながら、矢を放てばイメージをなぞるようにその視線で射抜いた箇所に当たるようになったのだ。

 

 弓術の鍛錬の合間には短剣術の鍛錬として、やはり深く集中し、弓術の鍛錬のように精神内に埋没しながら、短剣で切り裂くイメージや貫くイメージを創り上げながら的である木々に斬撃や刺突を繰り出していった。

 

 これを続けるうち、切り裂くための線や貫くための穴が見えるようになって、それをなぞってみれば自分でも不思議なくらいに最高の攻撃を繰り出せるようになったのだ。

 

 ともかくとして、ベルは【アルテミス・ファミリア】と別れてから数か月たった今日も朝から鍛錬を始め……。

 

 

 

「すう……ふっ!!」

 

 短弓に矢を番え、弦を引き絞ると放す事で的に向けて矢を射出した。

 

 そうして的の中心にして円をなぞるように幾本の矢が突き刺さっていたのだが、最後の矢が中心を射抜く。

 

 

 

「お見事っ、本当に見事だよ!!」

 

「なんて弓の腕、感服です……」

 

「ああ、こんなに凄い弓を見たのは初めてだ」

 

 すると拍手をしながら、声を出した者が三人いた。

 

「ひうっ、だ、誰ですか!?」

 

 急に拍手されて声を出されたのでベルはびっくりしてしまう。

 

「おっと、驚かせてしまったようだね。俺は男神のヘルメス、君のお祖父さんとは知り合いで、ついでにいうならアルテミスとは『天界』で同郷だよ、そして、君の弓を射る姿はアルテミスにそっくりだった」

 

 中背で身軽そうな身体付きですらりと伸びた手足、旅人のような恰好で端整な顔つきと橙黄色の髪を羽付きの鍔広帽子を被った男神、ヘルメスがベルへと自己紹介した。

 

「僕がアルテミス様と……あ、ごめんなさい。僕はベル・クラネルです。よろしくお願いします」

 

 アルテミスそっくりだと言われたベルは嬉しそうにしながらも自己紹介をした。

 

 

「ふふ、丁寧な自己紹介ありがとうございます……私はヘルメス様の眷属で【ヘルメス・ファミリア】の団長をしているアスフィ・アル・アンドロメダと申します。よろしくお願いします、ベル・クラネル」

 

 ベルへと短い水色の髪だが前の一房だけ白く染まっており、理知に富んだ碧眼に銀の枠の眼鏡をかけて怜悧な色を帯びさせている美麗な容姿とどこか高貴な雰囲気を纏ったヒューマンの女性であるアスフィが自己紹介しつつ、近づいていく。

 

「アスフィさん、お姫様みたいに綺麗ですね」

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

「ふあっ……」

 

 アスフィはベルへ微笑みかけると頭を撫で回せばベルは心地良さそうにした。

 

「っ~~、ベル・クラネルは撫でられるのがお好きみたいですね」

 

「ふ、んん……は、はい」

 

「では、続けましょう」

 

「は、はぅぅ……」

 

 ベルの心地良さそうで愛嬌のある姿に実は毎日、ヘルメスから仕事を任され、過労死してもおかしくない状態にされているアスフィは癒されながら虜になり、だからこそベルを可愛がる事を続けた。

 

 もっと言えば、【アルテミス・ファミリア】の団員であるランテから髪を伸ばす事を強く熱望されたのでそうしており、村の女性に聞いて長さの調節はしながらも長髪にしていて、見た目は女性よりになっているのもアスフィを虜にした要因の一つである。

 

「俺は【ヘルメス・ファミリア】の副団長、ファルガー・バトロスだ。本当に君の弓には驚かされたよ」

 

 

 逞しい肉体を有する虎人(ワータイガー)青年がベルへと自己紹介した。

 

「因みにヘルメス様たちはどこから見ていたんですか?」 

 

『最初から』

 

「ぜ、全然気づかなかったです」

 

 ベルは弓術の鍛錬中、深く集中するがゆえにヘルメスたちにまったく気づいていなかった。それだけ集中していた事の裏返しだが……。

 

 因みにヘルメスたちが来たのはベルの鍛錬の手伝いをするためであると言い、矢の提供もあった。

 

ベルにとって一番、助かるのは……。

 

「ふっ!!」

 

「おっと……」

 

 無論、模擬戦の相手をしてくれる事であり刃を潰した短剣を持ったベルは刃を潰した剣を持ったファルガーへと向かっていく。

 

 ベルの凄まじい集中力に洞察力はファルガーからすればまるで間隙を捻じ込まれるかのようであり、それを衝くために放たれるベルの短剣の技は鋭く流麗であり、壮絶。

 

 獲物を抵抗許さず狩るための技として磨かれている。

 

 ベルのそれは自派閥内の眷属の中でも実力は上で戦闘経験もかなりあるファルガーの危機感を刺激させる程のものだった。

 

「よっとっ!!」

 

「あっ」

 

 もっとも対処できない訳では無い。そうして、ベルの短剣を捌いて弾き飛ばそうとしたがベルは上手く、勢いに任せるように離れる事でそれを防いだ。

 

「はぁはぁはぁ……お願いします」

 

「分かった」

 

 視線で問いかければベルは続けると言ったのでファルガーは付き合う。

 

 無論、アスフィも模擬戦の相手を務めたが彼女は更に……。

 

「ベル……本当に可愛らしいですね」

 

「ん、ふうぅ……」

 

「良いですよ、もっと委ねてください。もっともっと……」

 

 アスフィは食事を食べさせたり、ベルと一緒に風呂に入って洗ったり、寝るときはベルを抱き締めながら頭や顔を撫で回し、揉んだり弄ったり、擽り、耳元には艶があり、優しく甘い言葉を囁くなどして様々な世話をしながら甘やかし、可愛がる事で蕩かせていくのであった。

 

 【ヘルメス・ファミリア】とベルの関係はこの日から長く続いていく事になるのであった……。

 

 

 

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