白兎は狩人の誓いを   作:自堕落無力

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三十七話

 

 

 昨日のダンジョン探索では18階層にある『リヴィラの街』で起こった【ガネーシャ・ファミリア】所属のハシャーナ・ドルリアの殺人事件に巻き込まれた。

 

 とはいえ、ベルはそれに自分の視力を活用してひとまずの解決をしたのだ。そうして、翌日である今日は改めて【アルテミス・ファミリア】の者たちにおいては変わっているが、後は昨日と同じ人員でダンジョン探索をした。

 

 

 

「じゃあ、僕達はこの先の階層も探索する。帰りも気をつけるようにね」

 

「ではな、ベル」

 

「またね」

 

「ベルとの探索は楽しかったよ」

 

「癒しをありがとうね」

 

「気をつけて」

 

「本当、私より兎してますね。ベル君」

 

 そうして24階層にて【ロキ・ファミリア】のフィンにリヴェリア、アイズにティオナ、ティオネにレフィーヤと最近、LV.3になったばかりでマッピングの能力に優れるという緑の毛並みの兎人(ヒュームバニー)の女性たちと別れる事になる。

 

 何故なら、フィン達は『深層域』まで潜って武器を整備したり、新調したりした者たちの分の金を稼ぐ目的があるからだ。

 

 

 

 

「そちらこそ、お気をつけて皆さん。色々と教えていただきありがとうございました」

 

 24階層までの道中、魔石や『ドロップアイテム』、高額で取引される薬物の原料となる薬草の収穫を手伝ってもらったりしたのだ。

 

お礼を言いながら、ベルは帰還を始めた。そうして、バベル内にてある程度の仕分けをすると換金のためにギルド本部に向かったのだが……。

 

「そらあ、もっと高く買い取ってくれよおっ!!」

 

「あく……」

 

 ギルド本部内では冒険者の男がエイナを捕まえており、しかも剣を持って首に押し付ける事で人質にしていたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は少し遡る。

 

 

 

「おい、これぽっちの筈がねえだろうが。もっとしっかり勘定しろよ」

 

「いちゃもんも大概にしろ。こっちは何年もこの仕事をやって来てるんだ。俺の目が節穴な訳ないだろうがっ!!」

 

 ギルド内の換金所スペースにてヒューマンの男の冒険者が魔石とドロップアイテムを換金した鑑定職員へと食ってかかっていた。

 

 別にこうした出来事はありふれたものではある。

 

 命を賭けてダンジョン探索へ向かい、魔石とドロップアイテムを収穫するのだからどうしても多く、見返りを求めたいだろう。

 

 故に予想と違って低く見積もられたらショックを受けたり、怒ったりするのも理解はできる。

 

 

 

 

 ただ……。

 

 

 

「(また、【ソーマ・ファミリア】)」

 

 【ソーマ・ファミリア】の冒険者は連日、鑑定職員と揉めている。異常とも言えるぐらいに金に執着をしているのだ。

 

 最初こそ今にも手を出しそうな様子を見せたりしたので他の冒険者たちなど警戒はしていたが、そこは【ソーマ・ファミリア】の冒険者達も弁えているようなので最終的には折れて項垂れたり、文句を言いながらも換金のそれを受け取って去っていく。

 

 文句を言うだけだと皆、警戒すらもしなくなっていた。なので他の職員などはいつもの光景だと顔こそ顰めたりしながらも業務を行っていたりした。

 

 エイナも掲示板での作業をしなければならない事があったためにそこへ向かおうとしたのだが……。

 

 

 

 

「くそがあっ!!」

 

「きゃっ!?」

 

 突如、日常は非日常となり、既知は未知となる。

 

 

 

 【ソーマ・ファミリア】の冒険者は昂ぶった精神のままに狂行に走ったのだ。目に付いたエイナへと接近するままに人質に取ったのである。

 

 

 

「お仲間の命が惜しかったら金を出しやがれ……そらぁ、もっと高く買い取ってくれよぉっ!!」

 

「あく(ベル君……)」

 

 冒険者はエイナの首に剣を押し付けた事で軽く首の皮が裂け、少しの血が流れる。

 

 エイナは目を瞑りつつ、ベルの事を想った。

 

 

 

 

 すると空中から山なりに何かが落下し……。

 

 

 

「ぐあああっ!?」

 

 それは冒険者の男の肩へと突き刺さり、その衝撃と痛みに冒険者の男は仰け反り、エイナの身を解放する。

 

 

 

 

「えいやっ!!」

 

「ぶぐっ!!」

 

 そして、駆け跳ねてきた者が体勢崩れて無防備な冒険者へと長弓を振るって床へと打ち倒した。

 

 

 

「大丈夫ですか、エイナさんっ!!」

 

「うん、大丈夫だよ。ありがとう」

 

 本当に心配そうに言うベルへと安心させるように、自らも安心するためにベルを抱き締めた。

 

 

 

 

「良かった、本当に良かった」

 

「心配かけてごめんね」

 

 そうして、ベルもエイナを抱き締めるとエイナは背中を摩るようにしてベルを安心させながら、謝るのであった……。

 

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