オラリオには数多くの【ファミリア】があり、零細から最大大手までの勢力やダンジョン系や商業系派閥の系統まで本当に様々である。
そんな【ファミリア】の中で【ソーマ・ファミリア】という派閥があった。系統としてはオラリオ特有のダンジョン系になっているが、ダンジョンで獲得する魔石や『ドロップアイテム』を換金したのを元手に副次的な活動として酒を造っている。
しかし、実は酒造りこそが【ソーマ・ファミリア】としては本業である。
何故なら主神であるソーマは酒造りの神だからだ。だが、ソーマの酒造りに関する想いは度を越しており、彼は酒を造る事にしか興味が無かった。
派閥の運営にすら興味なく、本当に酒が造れるのならそれで良く、眷属に対しては酒を造る金さえ稼いでくれればそれで良いので交流さえも最低限である。
そんなソーマだが酒造りの実力は凄まじかった。眷属たちがもっと金を稼げるようにと特別な酒である『
完全に眷属たちの心を酔わせて虜にしたのだ。
その結果、眷属たちは『神酒』を味わい続けるためにどんな手を使っても金を稼ごうとするようになり、自派閥の眷属どうしで騙し合い、裏切り合いの無法状態と化した。
更に団長である人物はこの状況を良しとし、主神が派閥の運営に興味を示さないので自分が独占、私物状態とし己が欲望を満たすため、独自に悪事を働くなどしたために余計に【ソーマ・ファミリア】の状況は悪くなっているという。
「ただ、今回の事はザニス団長にとっては予想外の失敗ですね」
今日、冒険者がギルドの職員に手を上げるという事態が起こった。
その冒険者とは【ソーマ・ファミリア】の団員であり、手を上げられたのはエイナ・チュールという受付嬢だ。
【ソーマ・ファミリア】の団員がエイナを人質に強盗しようとしたのだ。
幸いにしてベルは間に合い、エイナを救い出しつつ【ソーマ・ファミリア】の団員を制圧したのである。
その後、ベルはリリルカに【ソーマ・ファミリア】の事を聞くとリリルカは自派閥の内情を明かし、今回の事はザニスの失敗だとも言った。
本来はこうした行動をしそうな者は監禁したりするのだという。
「どのみち、放っておけないよ」
今後、一般市民にまで手を出してもおかしく無いし、何より自分の大事な人に手を出されそうになった事でベルは怒っていた。
「はい。間違いなく、しばらくの間雲隠れするでしょう」
今回の事で【ソーマ・ファミリア】は【ガネーシャ・ファミリア】による監査が入る事になっているのだ。だがらこそ、悪事の証拠などを隠す事は間違いないと言った。
「そんな事、させない」
「うん、それじゃあ倒しにいこっか」
「俺達も手伝う」
「悪事を見過ごせないのは自分も同じです」
「私も手伝いますよー」
「私達も力を貸します」
こうして【ソーマ・ファミリア】に対してベルは戦う事を決めると【アルテミス・ファミリア】の団員達は頷き、ヴェルフと【タケミカヅチ・ファミリア】の桜花たち、ヘイズと【ヘルメス・ファミリア】のアスフィたちも協力を申し出たのであった……。
二
【ソーマ・ファミリア】において重要な場所は都市の南東にある『神酒』を貯蔵する倉庫であり、酒蔵は左右五戸前ずつ並んでいる管理棟、傍には見張り塔もなると中々の施設だ。
そんな倉庫へ……。
「いくぞ、オリオン。皆」
『はい、アルテミス様』
下界では一般人以下にまで能力が制限されている神でありながら弓を手にし、腰には片手剣も帯剣しているアルテミスが叫ぶ。
彼女は確かに能力が制限されているがしかし、弓の技術に剣の技術など狩りの技能においては冒険者であっても勝てない程の『神業』の域にある。
今回、同行している【タケミカヅチ・ファミリア】の主神であるタケミカヅチも又、武の『技』においては冒険者ですら敵わない『神業』の域に達しているが……。
ともかく、ベル達は【ソーマ・ファミリア】の倉庫内へと侵入し……。
「はああっ!!」
魔法と【スキル】によって手にした超絶的な視力によって遠視と透視をする事で【ソーマ・ファミリア】の団員たち全ての動きを把握しつつ、索敵しながら弓による射撃、弓を使っての打撃、片手剣で切り伏せるなどベルは自身の戦舞によって立ちはだかる相手を倒しながら、仲間たちと共に進んでいく。
そうして……。
「逃がさないし、許さない!!」
「ぐあああっ!!」
襲撃されたため、素早く管理棟から逃げ出そうとしていた団長のヒューマンであるザニスの両脚を窓から見下ろしながら、長距離射撃によって射抜き、地面へと倒れさせたのだった……。