白兎は狩人の誓いを   作:自堕落無力

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三話

 

 

 ベル・クラネルは【ヘルメス・ファミリア】の主神であるヘルメスに団長であるアスフィ、副団長であるファルガーと一か月に一度の周期で交流をしていた。

 

『誕生日おめでとう』

 

「ありがとうございます、ヘルメス様、アスフィお姉ちゃん、ファルガーお兄さん」

 

「さぁ、これがプレゼントだよ」

 

 そして、ベルの9才の誕生日になるとヘルメスたちは祝いながら、誕生日プレゼントとしてベルがアルテミスから餞別として貰ったそれより性能は上で勿論、重さや弦の強さも上な短弓と長弓、短剣もやはり重さもあって高性能な物を贈った。

 

 冒険者が使う用の物なので重量などは仕方ないところはある。もっともそれも体を鍛える鍛錬になるのでベルはありがたく貰いながら、アルテミスから貰って使っていたそれを部屋に飾った。

 

 そうして9歳になっても変わらず、弓術に短剣術の鍛錬に励むベル。

 

 

 

「すぅ……ふっ!!」

 

 長弓を構えながら矢筒から一本の矢を矢筒から右手で抜きながら持ち、番えると弦を引き絞り、深呼吸しながら遠くの的へと意識を集中しながら精神内で矢が的に命中するイメージを創り上げると矢を放つ。

 

 ベルが放った矢は見事、的の中心を射抜いて突き刺さる。

 

 すると素早く次の矢を番え、そうしてまた矢を放てばすでに刺さっている矢を裂きながら、同じく的の中心に突き刺さる。

 

 これは継ぎ矢というものだ。

 

 これをすると矢の無駄にはなるのだが、1か月に一度はやってきてくれるヘルメスたちが矢を提供してくれるので矢の数は制限しつつも技術向上の鍛錬としてベルは継ぎ矢も行っている。

 

 そして、矢筒に入れていた最後の5本目の矢で継ぎ矢を行うと……。

 

「何か御用ですか、女神様……僕はベル・クラネルって言います」

 

 少し前から気配を感じていた者に対し、ベルはそちらを見やりながら訪ねた。

 

 ベルを見ていた者は女神であり、胡桃色の長い髪を頭の後ろで気品良くまとめていて、瞳の色は星海を彷彿させる深い藍色、美麗な容姿をしていて質素なカートルを身に着けていた。

 

 護身用だろう鞘に納めた剣を帯剣してもいる。

 

「ご、ごめんなさい。私はアストレアよ……覗くつもりは無かったんだけど、音がしたから……それにベル君の矢を射る姿がアルテミスみたいで驚いたの」

 

「っ、アストレア様はアルテミス様を知っているんですか!?」

 

 アストレアの口からアルテミスの名前が出たので嬉しくなりながら、驚く。

 

「ええ、彼女とは天界で同郷だったの……ベル君も知っていたのね」

 

「はい、だって……」

 

 そうして、ベルは嬉しそうにアルテミスとの関係をアストレアに話していく。

 

 その中でアストレアはこの場所を訪れた理由を言った。それはとある理由から旅をする事になったのだが、その際にヘルメスからベルに会うように勧められたのだとか……。

 

 

 

「……」

 

「ベ、ベル君?」

 

 アストレアと話をしたベルは彼女を見た時からなにやら心の中で悲しんでいるのを堪えているようだと弓術や短剣の鍛錬による深い集中をし続けた事で得た洞察力で見抜き、元気が出るようにアストレアを抱き締めた。

 

 

「元気になってください、アストレア様」

 

 アストレアより小さい身体で彼女に抱き着きながら、声をかけるベル。

 

「っ……ありがとう、ベル君」

 

 アストレアはベルに声をかけるとそのまま彼を深く抱き締め、そうして泣き始めた。

 

 アストレアはオラリオにて、冒険者としての活動とは別にオラリオの市民たちのために『治安維持』に励む正義の派閥、【アストレア・ファミリア】の主神だった。

 

 しかし、数日前のある日――『闇派閥(イヴィルス)』との戦いに向かった眷属たちが一人だけを残して死んでしまい、その最後の一人もアストレアにオラリオ外へ行くよう強く懇願。

 

 その眷属はどうしようもない程、悪への復讐を誓っていたのもあって少しでも楽になるよう、アストレア自身も心を痛めながら『正義』を捨てるよう声をかけた。

 

 そうして、アストレアは眷属を失った深い悲しみと激しい傷心の状態だったのだ。そんな状態でベルからの純粋な優しさと温もりを与えられ、甘えるようにして感情を解放したのである。

 

 その後、アストレアはベルと少しの間、生活する事にし……。

 

 

 

「ベル君は良い子ね、本当に良い子……大好きよ」

 

「ひゃう、ん、はうぁ……」

 

「それになんて、可愛いのかしら」

 

「あふ、んひゃ、や……あはは、く、擽らないでくださいぃ」

 

 基本的にアストレアはベルを可愛がり、甘やかし、悪戯などをする事でベルを蕩かせていった。

 

 それとは別にアストレアはベルの鍛錬に協力した。

 

 アストレアは『正義』を司り、天界では裁きを下す女神であった。つまりはアルテミスのように『武闘派』であり、剣が象徴の一つ……よって、剣による『技と駆け引き』は卓越していた。

 

 彼女もアルテミスの様に自分の眷属を鍛えた事さえあるのだ。

 

 

 

「ほらほら、頑張ってベル君」

 

「はぁ、はぁ……はいっ!!」

 

 アルテミスもそうだったが、アストレアもまた短剣を使うベルに対し、スパルタな鍛錬を与えたのであった……。

 

 

 

 

 そうして……ある日の夜。

 

 

 

「ベル君、私にはまだやらなくちゃならないことがあるの……だから、明日旅立つわ」

 

「そうですか……淋しいですけど、でもアストレア様が最初に会った時より元気になってて良かったです」

 

「それはベル君のお陰よ。本当にありがとう……んちゅ」

 

 夜空の中、散歩をしながらアストレアはベルに旅立つ事を告げ、ベルは残念がりながらも受け入れる。そして、アストレアはベルに礼を言って、額に口づけした。

 

「ん……あ、ありがとうございます」

 

「喜んでもらえて良かったわ……ベル君、アルテミスが月から貴方を見るというなら、私はあの星々から貴方を見ているわね……ただ、我慢できなくなったら私は会いに来るけど」

 

「いつでも、来てください」

 

「ええ、そうさせてもらうわね」

 

 ベルとアストレアはそう、言葉を交わし笑い合う。

 

 こうして、翌朝にベルは旅立つアストレアを見送るのであった……。

 

 

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