白兎は狩人の誓いを   作:自堕落無力

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五話

 

 

 『迷宮都市オラリオ』は下界の中でも人に亜人、神々が一番多く暮らしている大都市であり、当然居を有している【ファミリア】の数も一番である。

 

 何故、オラリオに集まるのかと言えば、古代においてモンスターが這い出てきたダンジョンの出入り口なる穴を白亜の巨塔であるバベルで蓋をしているのが要因だ。

 

 なんとダンジョンの出入り口に神の眷属にして冒険者は入る事が出来る。

 

 ダンジョンは未だ全容がつかめていない地下世界であり、下れば下る程に広大や複雑な階層となっていき、環境も過酷に……何よりダンジョンの壁から文字通り生み出され続けるモンスターの種類も強さも数も桁違いになっていく魔窟である。

 

 しかして外の世界では入手できない未知にして価値のある資源が多くあり、薬や武具に防具など様々な物に加工できる採取物、モンスターから取れる魔石に、魔石を摘出した際にモンスターの魔力が強く残っている部位が残る事があり、それは『ドロップアイテム』と呼ばれて武具に防具、薬など色んなものの原料になるそれを入手できるなど上手くいけば巨万の富を得られるし、モンスターとの戦闘では【ステイタス】の成長に繋がる【経験値(エクセリア)】を得られる。

 

 下界の者にとって、ダンジョンは己が野望や夢を果たすチャンスを掴める場でもあるのだ。無論、危険性は高く、命懸けにはなるが……。

 

 ともかく、そんな『迷宮都市オラリオ』へとベルは入り、そうしてアルテミスにヘルメス、アストレアとそれぞれ神友だというヘスティアに出会い、ベルは彼女の眷属となった。

 

 こうしてオラリオに新興派閥である【ヘスティア・ファミリア】が誕生したのである。

 

「ちょ、あ、あのヘスティア様……そろそろ僕はギルドに登録を……」

 

 【ヘスティア・ファミリア】の廃教会の地下室であり、生活空間にて昨日、ベルは寝るときに寝台が一つしかないのでそれはヘスティアに譲り、自分はソファで寝ていたが暁闇の時間帯に習慣でベルが早起きするとヘスティアが潜り込んでおり、抱き着いてきていたので少しびっくりしたが起こさないようにゆっくりと抜け出して鍛錬をして、終わるとシャワー室で身を清め、身支度を整えて朝食の準備をし、ヘスティアを起こし、共に朝食を食べた。

 

 

 ヘスティアの眷属となったベルはその日の翌日である今日、ヘスティアが【ファミリア】としての登録自体はしてあるというこのオラリオの全てを管轄しているという組織であるギルドに【ヘスティア・ファミリア】の団員になった登録と冒険者登録をする予定があるし、ヘスティアも屋台のバイトがあると言う。

 

「ボクもバイトがあるからね……ふふ、いやぁベル君の髪は撫で心地が良いなぁ、ベル君もこういうの好きみたいだしね」

 

「はうぅ……」

 

 ヘスティアは互いに出かける前にベルの頭を撫でたいと言って、屈むように言うとそれに応じたベルに対し、彼の頭を撫でてしばらく楽しみつつ、ベルを蕩かせていたのだ。

 

 そして、名残惜し気に言うと互いに廃教会を出てそれぞれの用事の場へと向かうため、別れたのであった。

 

 ベルはそうしてギルド本部のある北西のメインストリートへと向かった。此処では冒険者用の店や施設が多く並んでいるのが目立った。

 

 そのまま歩いて、白い石柱と壁で造られた神聖な万神殿(パンテオン)がギルド本部の中へと入った。

 

 そして、受付の元へと行けば受付嬢の一人でセミロングのブラウンの髪、エルフのハーフであるため、受け継いでいる尖った耳、端麗な顔であり、更にはスタイルも抜群でギルドの制服である黒のスーツとパンツを着ていても抑えようがない魅力を持っているエイナ・チュールが担当した。

 

 冒険者登録をするとダンジョン探索のアドバイザーを付けられるというので折角だからとお願いし、エイナが担当になってくれるのかと言えばベルが望むならと言ったのでこれもまた、お願いした。

 

 すると、面談用ボックスで待つよう言われたので待っているとエイナが極厚の本を三冊持ってやってきた。

 

「ダンジョンに行くなら、勉強は必要だよベル君」

 

「分かりました。よろしくお願いしますエイナさん」

 

 ベルはアドバイザーとなったエイナの言葉に従い、そしてこれから先も力を貸してもらう存在であるためにゴーグルを取った。

 

「え、か、可愛い……」

 

「どうも……僕としては複雑なんですけどね」

 

 エイナが少し驚きながら言えば、ベルは苦笑しながらエイナに言う。とにもかくにもエイナによるダンジョンの勉強は始まりスパルタなそれは途中、休憩を挟みながらも夕方まで続いた。

 

「幾らなんでも長くやり過ぎたね……ごめん、ベル君」

 

「いえ、それだけエイナさんが僕の事を思ってやってくれた事ですから、教えも分かりやすかったですし、ありがとうございます」

 

「そう言ってくれるんだね……こっちこそ真面目に頑張って勉強してくれるから嬉しかったよ」

 

「んっ、あう、え、エイナさん」

 

 エイナはベルに微笑むと頭を優しく撫で回していった。ベルはそれに嬉しそうにしながら受け入れると……。

 

「っ……じゃあ、お詫びも兼ねてもうちょっとだけ」

 

「んむ!? ふ、うぅ……」

 

 ベルの愛嬌たっぷりな反応に胸の中を疼かされたエイナはベルの顔を胸で埋めるように抱き締め、頭に側頭部を撫で回す。

 

「頑張り屋さんだねベル君は……偉い、偉いよ」

 

「あう、んく、ふ……」

 

 自分の優しさと温もりと感触によってエイナは更にベルを蕩かせていったのだった……。

 

 

 

 

 

 【ヘスティア・ファミリア】の団員登録と冒険者登録をし、エイナとのダンジョン勉強をしたベルは今日はダンジョンに行くため、オラリオに持ってきていた元はヘルメスたちが用意したバックパックに食料と水筒を入れた。

 

 そして、此方もヘルメスたちが用意した魔石袋や背中にバックパックを背負うため腰の後ろに矢の束を入れた矢筒を装備し、他は短弓に鞘を納めた短剣を装備してヘスティアに見送られながらまずは回復薬の調達のため、【ミアハ・ファミリア】の本拠兼店舗である『青の薬舗』に向かう。

 

「いっぱい買ってくれるなんてとっても良い子だね、ベル……これはサービスだよ」

 

「ひゃ、んむ、くあぁ……」

 

「本当に可愛いね、ベルは」

 

 体力を回復し、傷も治癒する回復薬に精神力の回復薬を幾つか買うとナァーザがご機嫌となり、ベルの頭を撫で回すと蕩けるベルに対し、舌舐めずりするのであった。

 

 因みにベルはオラリオに来る前、鍛錬をしていたがそれだけでなくモンスターの討伐もしていて、それで得た魔石やドロップアイテムの換金もヘルメスたちがしていたしこれに加えてベルがオラリオで活動するための将来の貯金としてヘルメスたちが彼に手伝いをさせたりもしながら小遣いを与えた。

 

 これらが貯まっているのでベルの手持ちの金はけっこうあったりするのだ……。

 

 ともかく、その後にベルはダンジョンのあるオラリオの中央に立ち、象徴ともなっている白亜の巨塔、バベルのある中央広場へと向かう。

 

 

 

「(っ、視線!?)」

 

 ベルは巨塔から自分に対し、無遠慮に見回す銀の視線とそれに込められた熱を感じた。

 

 それに対し、軽く手を上げると更にそれは強まった。

 

「何をしているんですか、お兄さん?」

 

「いや、誰かの視線を感じた気がしたからちょっと挨拶してみただけですよ。僕はベル・クラネル……最近出来たばかりの【ヘスティア・ファミリア】唯一の団員で団長です」

 

 ベルは身長一〇〇Ⅽでクリーム色のゆったりとしたローブを身に着け、栗色の髪をフードからはみ出させた愛嬌たっぷりで可愛らしく、スタイルは身長に似合わず、抜群な女性の問いに応じた。

 

 この下界ではどの種族よりも超低身長の種族が居た。それがパルゥムであり、見た目もどうしても子供のそれとなってしまうのだ。

 

 しかしてベルに声をかけた女性は背中に自分の身長よりはるかに大きいバックパックを背負っていた。

 

「これは丁寧に……私は【ソーマ・ファミリア】の団員、リリルカ・アーデと言います。ベル様……リリをサポーターとして雇ってもらえませんか?」

 

 リリルカはベルに対し、ダンジョン探索をする冒険者の支援をする役職であり、主にモンスターの魔石の摘出、『ドロップアイテム』の回収の手伝いと物資の持ち運びをするサポーターである自分を雇わないかともちかけた。

 

「ダンジョンに詳しい者がいるなら、それだけでありがたいです。よろしくお願いします」

 

「ええ、こちらこそ」

 

 ベルは即答でリリルカをサポーターとして雇う事を決めると二人でダンジョンに入る。方針としてダンジョンに慣れるため、今日はアドバイザーのエイナにも言われたからと5階層までを行き来する事を告げれば、リリルカは了承した。

 

 そうして……。

 

「しっ!!」

 

 ベルは冒険者となった自分の能力を自覚しながら試していく。

 

 今までの鍛錬によって培い、磨き抜かれた洞察眼と同じく研ぎ澄まされた感覚にてダンジョンの物陰から姿を表したり、壁から産出されるモンスターに即時反応したり、あるいは事前に感知や反応しながら卓越した弓捌きと共にモンスターに照準を合わせていき、そのまま流麗にして迅速に矢筒から矢を引き抜き、弓に番え弦を引き絞って矢を放つという動作を行った。

 

 それは速射だ。数がいれば連射に変化すらもする。

 

 更にベルの放つ矢は直進、あるいは放物線を描いて標的へと落ちながら突き刺さったり、変幻自在の軌道を描きながら曲がる曲射であったり、床や壁に当たって軌道を変えるとそのまま標的に炸裂する跳弾なんかもあった。

 

【狩人求道】によりベルの弓の技はかなり上昇していたのだ。

 

 更に体力と精神力を込めて攻撃力を上げる能力を使う事で引き絞った矢が光り輝き、それを放って炸裂させればモンスターを消滅させ、同じ軌道上に居たモンスターもまた消滅させたりする。

 

「わ、わぁ……さ、流石は冒険者になる前からモンスター退治をしていただけあって慣れてますねぇ」

 

 リリルカが絶句しながらベルをなんとか賞賛した。

 

 しかし、モンスターを視認しないままに弓だけをベルが自分の死角から攻めようとしたモンスターへと向け、そのまま超速で矢を放ち、死角から攻めようとしたモンスターを射抜いて倒したというような超絶的な技量を見てからは……。

 

「……」

 

 言うべき事が見つからないため、絶句してしまった。

 

 その間にもベルは弓を持ちながら、モンスターへと向かって行き、近距離にて矢を放ったり、弓を棒のように振るう事でモンスターを打ちのめしたり、矢筒から引き抜いた矢をそのまま突き刺したり、短剣を抜いて斬撃や刺突に仕留めたり、蹴り砕いたりもするなど暴れ回る。

 

 モンスターを倒せば、ベルはリリルカとモンスターの死体から魔石の摘出に『ドロップアイテム』の回収を行った。

 

 同時に魔石を摘出した事でモンスターが消滅し、これによってモンスターの体を射抜いて刺さった矢だけが地面に残るのでそれの回収もする。

 

 1階層から5階層までを探索すると魔石袋の中身はいっぱいになっており、ドロップアイテムと袋に回収できなかった魔石を入れたバックパックも中身いっぱいになった。

 

 そして、一度バベルに戻ると換金所にて、魔石とドロップアイテムを換金するとひとまず、預かってもらった。

 

 そのまま、またダンジョンに向かうと5階層まで行き、再び荷物いっぱいとなったのでバベルに帰還。

 

 それを続けていき……。

 

 

 

「ベル様……リリはこれから先もサポーターとして貴方をお支えする事を誓います」

 

「大げさだよ、でもよろしくね」

 

 ジャック・バードという黄緑色の羽毛を生やした鶏のようなモンスターであり、倒せば最低一〇〇万ヴァリスの価値がある『ジャック・バードの金卵』を出すこのモンスターを発見し、即座に射抜いたベルは当然、金卵も手に入れそうして、この卵に関してはギルド本部で換金するとリリルカに今後のサポーター契約のものだと称して稼ぎを山分けにした。

 

 リリルカは大きく感謝しながら、誓いを述べたのでベルは苦笑しながらも受け入れる。

 

 

 その後、別れてベルは北西のメインストリートのとある店へと向かい……。

 

 

「ヘスティア様……今日初めて稼いだのでこんなもの買ってみました」

 

 そうして、ヘスティアに蒼い花弁を彷彿させる飾り付けのリボンに小さな銀色の鐘がついた二つの髪飾りを渡した。

 

 彼女の今、付けている髪飾りが痛んでいるのを見つけたからである。

 

「べ、ベル君……本当に君はなんて良い子なんだ」

 

「あ、ちょ、へ、ヘスティア様……」

 

「今日はたっぷりといっぱい可愛がってあげるからね……大好きだよ、ベル君」

 

「あく、んく、は、ふぁぁ……ふわあああっ!!」

 

 感動したヘスティアに抱き締められるとベルはヘスティアにより頭を撫で回され、顔を弄られ、体を揉まれたりなど心地良く蕩かされていったのであった……。

 

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