ベル達は『下層域』の最奥であり、最後の階層である36階層にまで進んでいた。
ここでは33階層から35階層まで猛烈に暑いうえに夜など無い赤水晶の光が大砂漠をてらしつづけたそれから一転、『夜の砂漠』となる。
つまりは急に暗くなるし、今まで猛烈に暑かった熱気は無くなり、逆に寒気が36階層に足を踏み入れた者達に吹き付けるのである。
厳しい環境変化で追い詰めに来るこの階層であるが、一つだけ良い場所がある。
それまでは確保など無理であった水源を確保し、気温もちょうど良いので休むのに最適な『
故にフィンの指示もあって、遠征をしている【ロキ・ファミリア】に【ヘファイストス・ファミリア】に【ヘスティア・ファミリア】は野営をする事にし、それまで消耗した心身の回復に務めた。
こうして、しっかり休みをとると『下層域』最奥で最後の階層である36階層を抜けて37階層、つまりはダンジョンの真の恐ろしさであり、本領が発揮される『深層域』に足を踏み入れた。
「これが『深層域』……確かに雰囲気がなんか、違いますね」
ベルは37階層を見渡しながら、感想を言う。
37階層は『
そして『白宮殿』と呼ばれている所以はこの層域が白濁色に染まった壁面と巨大な迷宮構造で出来ているからだ。通路や広間の殆どが大きく、地帯の幅も十Ⅿを優に超えており、上級冒険者の視力でも天井の全てを見通せない程だ。
まあ、ベルは視力強化の【スキル】があるので天井の全てを見通せるが……。
そしてこの階層は階層中心に存在する次層への階段を王座に『城壁』というべき巨大な円壁、通称、『大円壁』が都合五つ囲んでいる構成だ。
この階層を進むならば大円壁の壁に錯綜する迷路を進んでいき、無数にある段差を昇り降りして階層の中心部を目指さねばならない。
この巨大な迷宮構造である階層全体の範囲領域は迷宮都市オラリオがすっぽり収まると言っても誇張にはならない。
なので進むだけでもかなり、過酷であるのだがこの階層の恐ろしさはやはり、産出されるモンスターの強力さに厄介さである。
外套纏いながらこの階層の薄闇に紛れる骸骨羊の『スカル・シープ』に骸骨の強力な戦士系の『スパルトイ』、リザードマンの上位種である『リザードマン・エリート』、凶暴性が凄まじく、狼頭人体の『ルー・ガルー』、鬼のモンスターである『バーバリアン』、猛毒の針を全身に纏う細長い体躯の竜である『ペルーダ』、魔法を減衰させる黒曜石で構成された『オブシディアン・ソルジャー』、階層間を穿孔して移動し、遥かに上の階層に現れる事もある『ワーム・ウェール』など本当に手強すぎるモンスターのオンパレードでしかもこんなモンスター達と遭遇し、交戦し続ける事になる。
次産間隔も短いのだ。
「さあ、此処からは僕も本気だ」
ベルは『深層域』に踏み入れた事で今まで預けていた矢筒を装備する。つまりは射手として本格的に動くのであった……。