仮面ライダートラッシュ   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。今回は久々に短編で、仕事中に思い付いた、掃除機×ゴミ×キューブがモチーフのオリジナル仮面ライダーです。単発ですが、続きも構想しているので反響次第で続きます。


第一の清掃:空飛ぶ掃除機

 廃棄物(ゴミ)。それは、人類の負の遺産。それは、人類の汚点。増やすだけ増やして、人間の知性の象徴たる炎ですら完全に消し去ることができず、埋め立て地などで綺麗に誤魔化されている、人類史の闇。

 

 ゴミがそう簡単に処理できず溢れ出してきた、薄汚れた近未来。見て見ぬふりをしてきたそれらが、なぜか異形の人型「ゴミリオン」となって動き出し、自分たちを捨てた仕返しとばかりに人を襲う事件が勃発していた。

 

 

『出たぜ!相棒!ゴミ野郎、もといゴミリオンだ!』

 

「掃除を始めよう、相棒!」

 

『トラッシュドライバー!』

 

 

 そんなゴミリオンを人知れず掃除する、ヒーローが一人。仮面ライダー、トラッシュ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、今日も素寒貧だあ……」

 

 

 寒空の下、ゴミで埋め尽くされた旧東京都の代わりに、近海の埋め立て地の上に建てられた人工島〝新東京都”。その公園のベンチに座り、キューブ状のハイテク端末で自分の口座の残高を見ながら嘆いているのは、薄汚れた水色のツナギ姿で幼さの残る茶髪の青年。名を、八多喜玲二(はばたき れいじ)。ゴミの溢れる現代社会、最も価値があるとされる職業「清掃員」の一人だ。ただし怜二は、清掃員稼業で覇権を握る「チリヅカ・コーポレーション」などの企業に所属していない、フリーの清掃員であり、大金を支払えない人々のために少ない報酬で清掃を行うのを生業としている人間だった。

 

 

「寒いしコーヒーでも買うか……」

 

 

 近くの自動販売機に端末をかざして操作し、出された缶コーヒーを手に取り「あちっ」とぼやきながらベンチに座る怜二。空腹で寒風に打たれる中、仕事の連絡が来るのを待ちながら、公園のベンチに座って缶コーヒーを飲みつつ平和な光景を眺める。

 

 

「平和だなあ」

 

 

溢れかえったゴミを処理するために、大金を支払わないといけない世界。そんな世界でフリーの清掃員に払われる給料などごくわずかであり。その日暮らしをしているのが現状だ。溢れかえったゴミで笑顔が失われそうだった世界が、よくもまあここまで平和を取り戻したものだと、ぼんやりと考える。

 

 

 今から5年前に起きた現人類の汚点「廃棄物症候群(トラッシュシンドローム)」。ある時を境にゴミが異様に増えて、人類の生活圏が脅かされた大事件。異臭や淀んだ空気で人類が参っていた時、「チリヅカ清掃」という無名の会社が立ち上がり、一ヶ月もたたないうちに〝埋め立て地に新たな人類の生活圏を作る”という方法を計画し実行し、見事解決してみせたのだ。今ではチリヅカ清掃あらためチリヅカ・コーポレーションは人類の救世主として覇権を握っている。そのチリヅカ・コーポレーションの成功にあやかっていくつか清掃員稼業を生業とする会社ができたわけだが。

 

 

 八多喜怜二は、清掃員の資格を手に入れたものの面接で落ちた落伍者だった。〝ろくにお金が無くとも清掃し、人々を笑顔にする”という立派な信念を掲げていたものの、結局は事業であり金がすべて。ボランティア活動したいなら他を当たれ、と落ちに落ちて落ちまくり、結局フリーの清掃員をやっている。するとキューブ状の端末にメールの通知音が鳴り響く。

 

 

「あ、仕事だ。今日も、頑張れ!めげるな、俺!」

 

 

 ベルトに下げられた袋に飲み干した空き缶を入れながら、八多喜怜二は走り出す。それを、物陰から見つめる何かが、一つ。

 

 

『見つけた。誰よりも潔癖で清らかな精神(ココロ)の持ち主…!あいつなら!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 古ぼけた箒と、その箒に備え付けられているちりとりを持って。八多喜怜二は、立ち尽くしていた。

 

 

「なんだこれ……」

 

 

 それは、新東京都中心から離れた、本土に繋がる橋に近い町。その一角がゴミ処理場でもないのに、ゴミの山に埋まってる。怜二の隣に立つ薄汚れた老婆が、プルプルと震えながら説明してくれた。

 

 

「ここはちょっと前まで子供たちが遊ぶ公園だったんだけどねえ……誰かがゴミを棄てた途端、歯止めが効かなくなってあれよあれよとこんなことに……いろんな会社にお願いしてるんだけど派遣された清掃員が軒並み失踪してねえ。私たち町のみんなが集めてももう少ししかお金が残ってなくて……」

 

「それで俺に。……お任せください!」

 

 

 一瞬考えてから、人々の笑顔のために、と奮起する怜二。箒を背中に紐で背負い、冷蔵庫など廃棄された粗大ゴミから片付けていく。

 

 

「とりあえず、一か所に纏めないと話にならないな……」

 

『そうだなあ。こいつはさすがに異常だぜ?』

 

「異常でも何でも、困ってるなら掃除しないと…」

 

『おお、力持ちだな!すごいぜ相棒!』

 

「そうだね、相棒……え、誰?」

 

 

 冷蔵庫を右手で担ぎ上げながら、甲高い声が聞こえた方を振り向く。そこには、ハンドルの様なものが両脇についた四角い穴が開いている、黄緑色の楕円形のボディからエメラルドグリーンに塗られた長方形の吸引孔が口の様に動いているハンド掃除機が宙に浮いていた。

 

 

「そ、掃除機が浮いて喋ったぁああああああああ!?」

 

『ただの掃除機じゃないぜ。俺は人呼んで、トラッシュドライバー!よろしくな、相棒!』

 

「相棒って何のことだ!?」

 

 

 トラッシュドライバーと名乗った浮かぶやけに馴れ馴れしい掃除機に思わずツッコむ。するとトラッシュドライバーはふわふわと浮かんで冷蔵庫の前に浮かぶと、吸引孔をくっつけた。

 

 

『まあ見てくれよ。こんな鉄くず、俺にかかれば……トラッシュ!トラッシュ!』

 

「お、おおおう!」

 

 

 すると冷蔵庫が分解されて吸い込まれていき、ボディの四角い穴に圧縮されて、鈍色のメカニカルなキューブとなってポンッと排出され、慌てて受け止める怜二。

 

 

『ジャンクキューブ!一丁上がりぃ!』

 

「な、なんだよこれ?」

 

『ゴミを圧縮して〝ジャンクキューブ”に縮めたんだぜ!どうだ、役に立つだろう?俺を持ちな、相棒!』

 

「確かに役に立つけど、なんで俺が相棒なんだ!」

 

 

 言いながら、ジャンクキューブをベルトから下げた袋に仕舞ってトラッシュドライバーの持ち手を握る怜二は、そのままゴミをトラッシュドライバーで吸い込んで次々とジャンクキューブに変えていく。不思議なことに、鉄や木などの種類別に作られるジャンクキューブは別らしい。

 

 

『いやあ、こんな丁寧に使ってくれて掃除機冥利に尽きるぜ!』

 

「それはいいけど、お前は一体何なんだ」

 

『俺か?俺はな……待て、相棒!下がれ!』

 

「え、なんで……っ!?」

 

 

 そのまま奥のゴミも掃除しようと向かった先で、異臭に顔をしかめる怜二。ゴミの異臭に紛れてわからなかった、生物的な異臭。恐る恐るゴミ山の陰に隠れながら先を窺うと、目を疑う光景が入ってきた。

 

 

「生ごみに過ぎない人間め……せめて俺の糧となれ……」

 

 

 ぐしゃっぐしゃっと、ドロドロに溶けたなにかを執拗に踏み潰す異形がいた。それは一見人型だが、腕が六本あり赤く輝くライトが眼の代わりになっているそれは、鉄くずで形成されていた。よく見れば胴体を鷲掴みにするように背中から錆色のクレーンのアームの様な装甲がついており、鷲掴みにされたゴミが蜘蛛を模した人型になったようにも見える。

 

 

「なんだ、あいつは……」

 

『ゴミリオンだ。スパイダーゴミリオンってところか。ついに生まれたってのか……』

 

「知っているのか、トラッシュドライバー」

 

『ああ、あいつらは……やべえ!』

 

 

 ドンッとトラッシュドライバーに体当たりされ、物とも転倒する怜二。なにすんだ、と文句を言おうとしたところで、ゴミ山を貫いてきたヘドロの糸が自分の顔があったところを貫通しており、嫌な汗を流す。トラッシュドライバーに助けられなければ、死んでいた。すると、スパイダーゴミリオンと呼ばれた怪人がのしのしと歩いてくる。そして、気付く。その作業着は。踏みつけにされていたのは、作業着だけ残してドロドロに溶けた人間だった。

 

 

「また人間が迷い込んできたか……こんなゴミ山に何の用だ」

 

『相棒、すまねえ!まさかここにいるなんて思わなかった!逃げるんだ!』

 

「お前、それ、人間…?」

 

「何を当たり前のことを。人間は生ごみだ。俺達ゴミリオンと同じ、ゴミだ。ゴミを処分して何が悪い」

 

 

 そう豪語するスパイダーゴミリオンに、怜二の中で何かが切れた。

 

 

「……取り消せよ」

 

「なにをだ?」

 

「人間は、ゴミなんかじゃない…!」

 

『相棒…!』

 

 

 そう啖呵を切った怜二に、感動したように震えるトラッシュドライバー。しかし、スパイダーゴミリオンはばかばかしいとでも言うように中央の右手を掲げる。そこから、ヘドロの糸が発射された。

 

 

「何を言おうと、貴様も生ごみにすぎん!」

 

「っ…!」

 

『させるか!』

 

 

 覚悟を決める怜二だったが、トラッシュドライバーがヘドロの糸を受け止め弾き飛ばされたことで我に返る。吹き飛ばされたトラッシュドライバーはゴミの山に叩きつけられた。

 

 

『ぐっ……』

 

「鉄くずが。お前も溶かしてやる」

 

「やめろ!」

 

 

 咄嗟に取りだしたジャンクキューブの一つを、一心不乱に投げつける怜二。それは偶然角が眼に直撃し、スパイダーゴミリオンは唸って目を押さえてよろよろと後退する。

 

 

「ぐおおおおおっ……」

 

「大丈夫か!トラッシュドライバー…!」

 

『へへっ……水臭いぜ。相棒と呼んでくれよ、相棒……俺達、いいコンビだと思うぜ?』

 

「……お前はあいつを知っているんだろ。どうすればいい。どうすれば、アイツを止めれる?」

 

 

 弱った様子のトラッシュドライバーの持ち手を掴み、そう問いかける怜二に。トラッシュドライバーは嬉しそうに揺れた。

 

 

『そう来なくっちゃな、相棒!俺を腰に装着しろ!そしたら、お前を変身させられる!』

 

「わかった、こうか?」

 

『トラッシュドライバー!』

 

 

 未だに顔を押さえているスパイダーゴミリオンを尻目に、トラッシュドライバーを腰に押し付ける怜二。すると薄くてひらべったい掃除機のホースが伸びて、腰を一回転して吸引孔が反対側に吸着されることで、ベルトを形作った。

 

 

「お前、ベルトだったのか!?」

 

『んなことはどうでもいい!ジャンクキューブを装填して、ハンドルを押し込め!』

 

「あ、ああ……」

 

『ジャンクキューブ!プレス!』

 

 

 適当に取りだした冷蔵庫で作ったジャンクキューブを四角い穴に装填、その脇のハンドルを中央に向けて引く怜二。するとジャンクキューブが押し込まれ、内包されたエネルギーが放出されて、頭上にエネルギーのブロックが縦に三列三つずつ並び、落下して怜二を押しつぶすと、両サイドに出現した赤いエネルギーの拳が挟み込む様に圧縮。ブロックのエネルギーはスーツとなって怜二に纏われた。

 

 

『ジャストラッシュ!あっと驚く!アトミックブロック!』

 

「なんだ、今の歌?って、変わった!?」

 

『歌は趣味だ!気にするな!』

 

 

 灰色のボディースーツに、黄緑色の四角いアーマーが胴体を始めとして、両手両足両肩と装着され、アメフトのヘルメットを思わせる四角い頭部に、四角い複眼が赤く輝く。重装甲の戦士。

 

 

「なんだ、お前は!」

 

「俺もわかんないよ!?」

 

『名前はまだない!だから俺から取って、ただトラッシュと、そう呼べ!』

 

 

 スパイダーゴミリオンが、ヘドロの糸を飛ばしてきたので、咄嗟に両手を重ねて受け止める。四角いグローブの様な装甲は、容易く受け止めて見せた。

 

 

「これなら!」

 

「舐めるな!」

 

 

 ドンドンと重い足音を立てて近づき、右の拳を叩き込むトラッシュ。しかしそれは、左の三本腕で受け止められ、右の三本腕でボコボコと殴られるが、ビクともしない。

 

 

『こいつは鋼鉄だ!ビクともしないぜ!アッパーだ相棒!』

 

「おう!」

 

「ぐはあああああ!?」

 

 

 開いていた左腕でアッパーを叩き込むトラッシュ。スパイダーゴミリオンは打ち上げられ、落ちてきたところを前蹴りが叩き込まれゴミ山まで蹴り飛ばされる。

 

 

『今だ相棒!必殺技だ!』

 

「どうすればいい!?」

 

『ハンドルを三回押し込め!』

 

 

 言われるままに、ガコンガコンガコンと三回ハンドルを押し込んでジャンクキューブを圧縮、ひび割れて放出されたそのエネルギーが両足に集束。トラッシュは感覚のままに跳躍、全身を畳む様にして巨大なブロック塊になると、高速回転しながらスパイダーゴミリオン目掛けて急降下する。

 

 

『トラッシュ!アトミックラッシュ!』

 

「くっ、こんなゴミ共にぃいいいいいい!?」

 

 

 高速回転するトラッシュにスパイダーゴミリオンは押しつぶされ、ひび割れて爆散。ゴミ山の一角を吹き飛ばした。

 

 

『相棒!ナイスな掃除だったぜ!』

 

「掃除…これも、掃除か。あんな奴が他にもいるのか?」

 

 

 ジャンクキューブが砕け散り、トラッシュドライバーが外れて変身が解除された怜二は、傍に浮かぶトラッシュドライバーの言葉に思うところがあるのか、そう尋ねた。

 

 

『ああ。一匹出た以上、これからも出てくると思うぜ』

 

「……じゃあ、この掃除…続けるよ。よろしく、相棒」

 

『…おう!よろしくな、相棒!』

 

 

 こうしてのちに仮面ライダーと呼ばれる、トラッシュの戦いは始まった。




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