今回は、幹部ライダー二人目登場。謎が一つ明らかに…?楽しんでいただけたら幸いです。
『天へすっ飛ぶ!テンペスットボトル!』
「……くそっ、何処に行ったんだ?」
テンペスットボトルとなり空を駆りベノムを追跡するトラッシュ。しかし、あれだけ派手に暴れたにも関わらず、大都会であるとはいえ空から見渡しても何も見えない。むしろ消滅した街の一角を確認しようと野次馬が集まりつつあり、自分の姿もちらほら見つかり始めた。このままでは目立つと考え、いったんビルの屋上に着地する。
「トラ、なにかわかるか?」
『いいや、俺はなにも知らねえ。だけど一つだけわかるぜ。―――アイツは異質だ。俺やルーインズドライバーにゲッタのベルト、喋らないデリートのベルトはもとより。エコードライバーの奴も怪しさで言えば満点だが、ベクトルが違う。あれは、この世に存在してはいけない代物だ」
「ああ、それはわかるよ。……あんな惨劇、二度と起こしてはならない」
「どんな惨劇なのかしラ。お姉さん興味あるワ」
「っ…!?」
いつの間にか、給水塔の上で日光浴をしていた人物に驚き、身構えるトラッシュ。ここに来る際に誰もいないことは確認した。気取られずに現れ、リラックスすらしているのはただ者ではない。そこにいたのは、白衣を身に纏った床まで届く長いプラチナブロンドの髪の女性だった。
「……何者だ?」
『あんたは…!?』
「“それ”の開発者ヨ。ネリー・ホワイト。よろしくネ」
『ローネドライバー!』
絞るローラーが上についた小さな横を向いた四角いバケツの様なバックルとジャンクキューブを白衣の内ポケットから取り出したネリーは、ジャンクキューブをバックルに装填してから変形、バケツ部分を上に向けて腰に取り付けると紐のようなものが伸びてベルトになる。コポポポ……とどこからともなくバケツ部分の中が水で湛えられ、コキコキと右手で左手首の関節を捩じり、まるで雑巾を絞るような動きを取ると、ネリーは右手で左手首を掴んだまま左手でローラーを回した。
「今日は挨拶と……性能テスト。加減はしないから簡単に死んでくれないでヨ?」
「トラが目的じゃないのか…?」
『ジャンクキューブ……ウェット』
「変身」
すると打ち上げられたジャンクキューブがローラーにぶつかり、絞る様に細く長く引き伸ばしてネリーの眼前を通って打ち上げられ、ネリーの頭上で渦を巻くジャンクキューブは白い襤褸布の龍を形作り、蜷局を巻くようにしてネリーに巻き付き、絞られたかのように水が溢れ出してネリーの全身を包み込む。
『絞り……搾られ……溢れ落ちろ……ローネ……!』『ローネ!』
水が染み渡るようにして消えて現れたのは、女性的なスタイルを全面的に出している仮面ライダー。狐を模した白い毛皮のような形状の襤褸布を口元から上を隠すように被っている青色の複眼の仮面。首元に巻いた白くボロボロなマフラーをまるで包帯でも巻き付けるかのように全身に巻き付けており、黒いアンダースーツと忍者を思わせる形状の青い軽量アーマーで包まれた身体を強調していて腰から尻尾の様に先端が垂れ下がっている。
「仮面ライダーローネ。貴方も、搾られてみル?」
「ごめんだね!」
トラを取り返しに来たのだと考え、先手必勝とばかりに右手を振るってペットボトルから空気弾を発射してローネを狙うトラッシュ。しかしそれは、バケツから溢れた水がローネの前面で渦を巻いて広がり、空気弾を防ぐ。そのまま、水の球を形成して二つに分かれ、ローネの両脇で浮かんで待機する。
「なっ…!?」
「軽装甲だかラ一撃でも当てれば有利をとれルと思ったのネ?さすが、場数を踏んでいるだけはあるワ。でも、スペックが違うのヨ…!」
チュン!!
両手を広げるローネに呼応して、水の球が両手に集束。合掌してその先を向けると、圧縮した水を水流レーザーとして発射するローネ。トラッシュはギリギリ身を捩って空気圧で移動して回避、肩の装甲がえぐれて吹き飛んだ。
「ぐっ……」
「テンペスットボトルの弱点はその脆さよ。そして…」
チュン!!
「しまっ!?」
咄嗟にリボルバイクにフォームチェンジしようとしたトラッシュの手からジャンクキューブを水流レーザーで吹き飛ばすローネ。転がったジャンクキューブを、操った水の球で回収し手に引き寄せると、水の球二つを合わせて水圧でぐしゃぐしゃに潰してしまった。
「へえ、バイクのジャンクキューブ……アナタの切札かしラ?開発者の私が、トラッシュドライバーの最大の強みであるフォームチェンジをさせると思う?」
「なら、こうだ!」
「アラ?」
両手を突き出し、宙を舞い加速してローネに突撃するトラッシュ。柔らかな胸部に顔から激突し、抱き着く形となる。
「情熱的な抱擁ネ……!」
「この手は使いたくなかったんだが!」
『トラッシュ!テンペスットライブ!』
右手でローネのマフラーを掴みながらベルトのハンドルを一回押し込み、左手でも掴んで全身の空気穴から空気を放出し、ローネを抱えたまま空に飛び出すトラッシュ。天高く打ち上がると、そのまま回転してローネを放り投げた。「アラー?」と軽い悲鳴を上げながら落ちていくローネ。仮面ライダーだからそうそう死なないだろう、とトラッシュが踵を返してその場を去ろうとしたとき。ふわりと浮いてローネがトラッシュの目の前に現れ、人差し指でこつんと仮面を突いてきた。
「なっ…!?」
「抱き着いたならわかると思うけど、私は軽いの。変身前よりもネ。それこそ風に乗れるぐらい軽いのよ」
『
ローネドライバーのローラーを回転させるローネ。すると、ローネのマフラーに閉じられた目が出現したかと思えば目を見開き、トラッシュを凝視。そのままローネの体を這うようにして動き、マフラーとそこから伸びていた装甲がローネと分離、変身の際に見せた狐のような顔の襤褸布の龍の姿を形作ってローネを守る様にとぐろを巻いて滞空する。
「私の相棒、シローよ。可愛いでショ?」
「こいつは…!?」
『相棒、こいつジャンクキューブが変化したものだ!凄まじいエネルギーを感じるぜ!』
「訂正するわ。ゴミルギーっていうのヨ?」
水で作った足場の上に着地した忍者の様な姿になったローネがそう言ったのを合図に、渦を巻きながら突撃してきたシローの体当たりを上空に飛んで回避するトラッシュ。しかしシローは身体をうねらせて自在に方向転換、空を泳ぐようにしてトラッシュに体当たりを仕掛け続け、トラッシュはペットボトル型の手甲を振って迎撃。やはり軽いのか簡単に吹き飛ばされるものの、手ごたえがない。さらには、周囲に展開された水の球を圧縮して合掌したローネの水流レーザーによる狙撃が襲い掛かり、トラッシュは致命傷になる水流レーザーだけは何とか避けるものの、その隙を縫って襲い掛かってくるシローの体当たりは避けきれず被弾していく。
「くそっ、すごく厄介だ……強すぎる!」
『しかもこっちは飛べるのテンペスットボトルしかねえ!フォームチェンジできたとしても落ちるだけだゼ!』
「他に飛べるゴミとか探しておくべきだったなあ!探すためとはいえソリッドアライブを解除するんじゃなかった!」
「……ソリッドアライブ?」
すると、パチンとフィンガースナップの音が鳴り、シローの攻撃と水流レーザーが止まる。シローをまた全身に巻き付け空を舞うローネは、トラッシュに近づき問いかける。
「なにそレ?私はそんな形態、設定した覚えはないわヨ?」
「……奇跡みたいな形態だからな。だけど、今はそれになれない」
『残念だったな!』
「……そう。なら取り引きと行きましょう。ソリッドアライブとやらのことを教えてくれたら、知りたいことなんでも一つ教えてあげるし、今回は特別に見逃してあげるワ」
「なんだって?……トラ」
『…悔しいが、勝てるビジョンが見えねえ。乗るべきだ』
ローネの提案に、乗ることにしたトラッシュは、エコーの「浄化」の能力とそれによるソリッドアライブについて語った。
「…ウィキッドゾンビを「浄化」して新形態に……なるほど、それならウィキッドゾンビのフィジカルを維持したまま制御できるわネ。でもそんなことができるやつなんて一人しか思いつかないワ……」
「今度はこちらから質問だ。ゴミリオンはお前たちチリヅカの仕業なのか?奴らは一体何なんだ」
「質問は一つだけヨ、坊や。…でもいいわ、教えてあげる。ゴミリオンは彼の王の“手”により、絶滅した生物の怨念にゴミで肉体を与えて作り上げられる人造の神。すなわち“付喪神”よ」
「つくもがみって、妖怪のあれか…!?」
「そう、妖怪!日本って素晴らしいワ!複雑怪奇な伝承!心が躍るメカニズム!私はその研究をするために来日したのヨ…!」
「お、おう……」
興奮してまくしたてるローネに引き気味のトラッシュ。それに気づいたのかローネはコホンと咳払いした。
「それにしても、私の知らない形態を作り出すなんてすばらしいワ。元々奪う気はなかったし、約束通り見逃してあげル。貴方だから使えるドライバーなのだから、大事にしてあげてネ」
「俺だから使える?それはどういう……」
「じゃあね」
そう言ってふわりと浮いてお辞儀をしたかと思えば、水の球で作った水流に乗ってすさまじい勢いで空中を流されていった。
「……なんだったんだ」
『生みの親ながらわからない奴だぜ……』
「うん、電話?」
すると電話がかかってきて、一度ビルの屋上に戻って変身を解いて出る怜二。相手はヒカリで、なにやら焦っている様子。あらかた聞いた怜二は頷いて電話を切ると、再び変身をして戻ろうとする……が。
『相棒、ペットボトルのジャンクキューブは品切れだぜ……また補充しないとな』
「なん……だと……?」
しょうがないので階段で降りることにして、戦闘していた時よりも疲弊したのは言うまでもない。
仮面ライダーローネ。モチーフはバケツと雑巾、そしてもうひとつ。シローのモチーフである付喪神の一種「白うねり」。名は体を表してる通りで、ネリー・ホワイトはそのまま「ネリー・白」でアナグラムで「しろーねり」でした。他の幹部もこの法則で見れば…?
明かされた謎の一つ。ゴミリオンの正体は、ゴミと廃棄物症候群の影響で絶滅した動物たちの怨霊を用いた付喪神でした。人間への殺意が高いのはそのせい。その王とはすなわち……?
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