今回はベノム大暴れ。楽しんでいただけたら幸いです。
「ン?」
端末の異常音に気付き、ネリーは動きを止めた。取り出して見てみれば、社外に設置された警報装置から社内の監視カメラに至るまで、侵入者を知らせる反応を示しているのが分かる。こうなったのは、今において他にはない。
「ああ、やっぱり来たみたいだワ。案外早かったわネ」
案の定の事態に、むしろ楽し気な様子を見せるネリーは、ふと視線を元の方に向ける。そこには、頬を上気させた同僚の姿があった。
「ほらほら、呆けてないで行くわヨ? 香子」
「で、でも……まだ始めたばかりなのに、ここで終わりなんてぇ……」
若干乱れた桃色のライブ衣装に包まれる身体を抱き、堪らない様子でミラ――加賀美香子が訴えかける。アイドルとしての姿でありながら、その時とは明らかに雰囲気が違う。薄暗いこの部屋での行為からでなく、ネリーには見慣れたその陰気な"素"の様子。およそファンには見せられないような扇情的な光景にネリーは大したリアクションをせず、淡々と諭すように返す。
「掃除屋は、大量に出現したゴミリオンの相手で手いっぱいみたい?終わったら続きをしてあげるワ。それじゃあ貴女も頑張れないでしょうしネ。だからもう少し残業しなさイ」
「うん……」
作法として、一つ涙に濡れる瞼にキスを落とせば、渋々と香子は服を整え出す。ここから出ていく際には、得意の技能で元の彼女に戻っているだろう。それから後、また相手をすることになるのだが……果たしてその前に満足してしまったら面倒だな、と素直に思うネリー。それはこれから向かう相手次第だが。
「まあ、せいぜい有益なデータを獲らせてネ、復讐鬼サン?」
『ギャアハハハハハハハハッ!邪魔だあ!』
ベノムドライバーが下品に嗤う。仮面ライダーベノムは街の中を疾走していた。立ちはだかるビルをぶち抜き、車を蹴散らし、前に立った不幸な人間を掴んでは投げ捨てて、変身者……否、宿主であるサラの正義感を少しだけ絞り出して殺人だけはせずに、チリヅカ・コーポレーションの本社ビルを目指して突き進む。ベノムの行動原理はベノムドライバーの食欲と暴れたい衝動、そしてサラの悪感情に突き動かされる。サラが今抱いているのは、怜二とヒカリの会話により思い出した、自分を棄てたチリヅカとその社長への憎しみ、否。憎悪。それはベノムドライバーの欲求と衝動と合致し、チリヅカを叩き潰すためだけに暴れていた。
「街を破壊するゴミリオンを逃がすな!いかせるな!」
「隊長!車がおもちゃの様に吹っ飛んでいきます!」
「へっ、あんなドロドロした奴なんかこの“水鉄砲”で吹き飛ばしてやるぜ!」
警官染みた役割であるチリヅカの清掃員が十数名立ちはだかり、手にした高圧水鉄砲で攻撃するも、並のゴミリオン相手ならダメージが見込めるそれを真正面から受けてなお、少し怯むだけで突き進むベノム。装甲車から高圧水流が放出されるも、それすら右掌を突き出し受け止めながら突進する。
『ギャハハハアハハハハハハハハッ!逃げまどえ、チリヅカのゴミ共!』
「「「う、うわああああああああっ!?」」」
そして、装甲車をひっくりかえし、清掃員を蹴散らし突破。かつての同僚に対して慈悲もないどころか殺意まであったその一撃は清掃員を打ち上げ、天高くから落下する。万事休すかと思われたその時。
「っ、危ないですわ!」
「ギリギリ間に合った…!」
ホーキージャベリンに乗ったエコーと、テンペスットボトルのトラッシュが乱入。空中で清掃員たちを受け止めていき、事なきを得る。2人を見て、急ブレーキで停止するベノム。エコーは清掃員を下ろして逃がしながら、初めて見るベノムに驚愕する。
「これが、例の謎の仮面ライダーですの!?でっかいですわね!」
「ああ、街の一角を破壊した張本人だ。今度こそ、止めるぞ!」
『覚悟しやがれ食いしん坊ベルト野郎!』
『あん?邪魔するなら八つ裂きに…っ、ちいっ。見逃してやるからどっかに行け。俺たちはチリヅカを潰すので忙しいんだ』
ベノムドライバーが意気揚々と返り討ちにしようとするが、当のベノムが臨戦態勢にならないのを確認すると右手をシッシッと動かして追い払う動きをする。それにキレたのはエコーだ。
「私たちを羽虫扱いとはいい度胸ですわ……!ぶちのめしてやりますの!」
『おっしゃあやっちまえヒカリ!…ジャンクキューブ!プレス!あっと驚く!アトミックブロック!』
「チリヅカ……は限りなく黒かもしれないが、潰すなんてそんなことさせないぞ。それに俺達は人を探していて急いでいる、すぐ制圧してやるぞ!デカブツ!」
『……デカブツじゃねえ。ベノムだ』
ホーキージャベリンをクルクル回転させて穂先を突きつけ構えるエコーと、アトミックブロックとなりファイティングポーズをとるトラッシュに、ベノムドライバーは苛立たし気に告げた。
「なんだって?」
『気に食わねえから名乗ってやる。俺達は世界を蝕む猛毒……ベノムだ!“ベノブラッシュ”!』
そうベノムドライバーが叫んでベノムが胸部に手を突っ込み、ズボンと音を立てて入り込んだそこから引き抜いたのは、毛先を斜めにした
『てめえら、俺達の邪魔をするなら仮面ライダー落第だ!』
「くっ……なに!?」
「速い…!?」
ベノブラッシュを逆手持ちにして目にも留まらぬ速度で突進、すれ違いざまにトラッシュとエコーを斬りつけるベノム。長い腕によるリーチで全身を斬り裂かれたトラッシュとエコーの全身に、切り傷の代わりにベノブラッドが付着する。ダメージが全くないことに訝しむ二人だったが、それはすぐに効果が表れた。ベノブラッドが付着した装甲が腐り落ちて、トラッシュは素体に戻ってしまったのだ。エコーに至っては巫女服の様なアーマーが溶けて変身前の状態が一部露出した姿になっていた。
「アトミックブロックのアーマーが!?」
「エッチですわコイツ!」
『俺達の体はゴミすら溶かす廃液でできている。お前たち、ゴミを使って戦う卑しい奴らにとっては天敵だ』
「ま、まだまだ!」
『ジャンクキューブ・ウォッシュ……エコードレス、響け……エコー……エコー……エコー……エコー……!』
『このままじゃじり貧だぜ!あっと驚く!アトミックブロック!』
傍に転がっていた瓦礫を吸収し、アーマーを消して即座に再変身するエコー。トラッシュも予備のジャンクキューブでアトミックブロックに戻り、間髪入れずに振り下ろされたベノブラッシュをエコーがホーキージャベリンをトラッシュの前に突き出して防御。がら空きの胴体にブロックグローブによる一撃を叩き込み、ベノムを後退させる。
『ちい!面倒な奴らめ!』
「脳筋みたいな見た目の癖に意外と小技を使いますのね…!」
「こうなったらソリッドアライブで……ヒカリ、避けろ!」
瞬間、いきなり飛んできてベノムが跳躍して回避した火球からエコーを庇い、両腕を重ねて受け止めるトラッシュ。あまりの火力に防ぎきれたものの片膝をついたトラッシュを庇うように立ったエコーが火球が飛んできた方向にホーキージャベリンを向けた。
「何者ですの!」
「ここからは我々の仕事です。貴方たちの出る幕ではありません」
そこに現れたのは、仮面ライダーリーン。見覚えのないライダーに困惑するエコーをよそに、ベノム目掛けて高速で突進してきた武者……仮面ライダーボロウが手にした太刀を振り下ろし、ベノムが振るったベノブラッシュと激突。弾き飛ばされたベノブラッシュはドロドロに溶けて空に散った。
「……ふん、小手先が」
『誰だ、てめえら……!?』
「こんな雑魚のためにあたしたち全員呼び出されるとかありえないんだけど!」
ボロウ目掛けて殴りつけたはずの拳が、自身の頬に突き刺さり殴り飛ばされるベノムに文句を垂れるのは仮面ライダーミラース。さらに追撃で、空中にいつの間にか漂っていた仮面ライダーローネの水流がベノムに炸裂、水蒸気爆発が起きる。
「あラ。あのカラダ、水を蒸発させるなんてどんな性能してるのかしラ?そそるわネ」
『次から次へと……どうして俺達がチリヅカをぶっ潰す邪魔をする!?』
「私達がチリヅカの幹部だからですね」
並び立つローネ、ボロウ、リーン、ミラース。敵の正体を知り好戦的に目を吊り上げるベノム。両者の動向に注視して身構えるトラッシュ、エコー。三つ巴の戦いが始まった。
秘密の関係のネリーとミラ。ミラの真実もちょっとだけ。
ベノムの専用武器。掃除用具ではなく「汚す」ための道具である刷毛型のベノブラッシュ。ぬりぬり黒塗り。自分の体から取った廃液を塗りたくるだけで大体溶けるやばいやつ。
幹部集結。デリートはなぜか増えたゴミリオンの対応に追われてる模様。今回は新登場組の活躍どころだからしょうがないね。
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