今回はトラッシュVSベノム再び。久々の主人公の活躍です。楽しんでいただけたら幸いです。
破壊の限りが尽くされた、ベノムが倒された跡地。汚染された酸性雨が降り注いでいるチリヅカの社員によって立ち入り禁止となっているそこで、蠢くなにかがあった。飛び散って道路や建物にこびりついていたベノムの残骸である廃液がひとりでに動き出し、一ヵ所に集束。女性の上半身を形作り、口を開いて空気を必死に取り込み始めた。
「っ、ぜはっ!はあ、はあ!……わ、私……はっ、はあっ、生きて…?」
空気を肺に取り込んだ上半身だけの女性……北内沙羅は人型の廃液の姿で深呼吸し、立ち上がろうとして崩れ落ちる。下半身はまだ形成されていなかったことに気付き、ショックを受けた顔を手で覆おうとして、それも廃液でできていることに気付いてサラは目を見開いた。
「……ああ、私。人間じゃないんだ……ちゃんと、死んでればよかったのに……」
『そんなこと言うなよ、相棒!俺達だから死ななかったんだぜ!また暴れよう!チリヅカの奴らを皆殺しにするんだ!ギャアハハハハハハッ!』
そんなサラの腰が歪んで形成され、耳障りな声でゲラゲラ笑うベノムドライバー。サラは必死に引きはがそうと試みるが、接着剤でもついているのかと錯覚するほど張り付いて離れなかった。
「あ、あなたは……いや!離れて!離れてよ!私はもう、誰も傷つけたく……」
『つれないな相棒!一緒になって暴れた仲だろ!俺達は一心同体!そして不死身の肉体を手に入れた怪物だ!一蓮托生なんだよ!そら治してやるよ!』
「やめて……放っておいて……」
徐々に下半身も形作ってサラの意思と関係なくひとりでに立ち上がり、雨に濡れて洗い落とされる様に、服を着た人の姿を取り戻していきゆっくりと歩いていくサラ。その顔は悲痛に歪んで必死に抵抗するも、ベノムドライバーに主導権を取られた身体はまるで言うことを聞かなかった。酸性雨を浴びて何ともないのが人でなくなった事実を助長する。
「……ごめんなさい、怜二さん、ヒカリさん……私は、あなたたちの、清掃員の敵みたいです……」
『トラッシュもエコーも幹部共も皆殺しだ!行こうぜ相棒!』
そしてサラは酸性雨に打たれながら新東京都の闇夜に消えていこうと、して。立ち止まる。
「探したよ、サラ」
「っ…!?」
その目の前に、傘を差した怜二が立っていた。サラは……正確にはベノムドライバーは動きを止め、主導権をサラに戻した。しどろもどろになりながら、狼狽えるサラ。
「え、あ、その、私……い、何時からそこに……」
「…君が、戻る直前からだ。嫌な予感がして、ベノムが倒された場所に戻って来たんだ。君がベノムだったのか……君が、あの惨劇を……」
「いや、ちが、わないですけど、私は……」
『何の用だ三下。俺達の餌になりに来たのか?ギャアハハハハハハハッ!』
言い訳にしようにもできないサラの腰でベノムドライバーが嘲笑する。
「……三下はお前だ。サラから離れろ、ベノム!」
『聞いたぞベノム!てめえ、サラは嫌がってるだろうが!』
『離れろ?聞いたか相棒?離れろだとよ!いいかよく聞け、俺達は一心同体!離れることはない!そして一つ訂正してやるぜ!俺達が世界を蝕む猛毒……ベノムだ!俺達がチリヅカを潰す邪魔をするな、喰らうぞ?』
「や、やめて……」
サラの右掌がゴボゴボと泡立ち、右掌からゴボゴボと黒緑の液体が溢れだし、ジャンクキューブ「毒」を形成。サラの抵抗虚しく、荒々しくベノムドライバーに装填、牙のスイッチを押し込まれたベノムドライバーが噛み砕く。
『ジャンクキューブ……ジューシー……!』
「怜二さん、逃げて……!私は、もう……ああ、あああああアアアアア!?……ヒヒヒッ、アハハハハハッ……変ッ身」
そして怜二に逃げるよう告げたかと思えば絶叫を上げ、落ち着いたかと思えば狂った笑みを浮かべたサラの掛け声とともに圧縮された廃液が広がって全身を包み込み、ドロドロとサラの体が溶けて巨体を形作っていく。
『マゼマゼ……!ベノミックス…!スベテノミコム!ベ―ノーム―!』
「サラ…!」
『相棒、どうする!?見たところサラはもう、人間じゃなくなって……』
「関係ない、サラは俺達の仲間だ。見捨てる選択肢は最初からない…!止めるぞ、トラ!変身!」
『おうよ!ジャンクキューブ!プレス!ジャストラッシュ!あっと驚く!アトミックブロック!』
ベノムが拳を構えて殴りかかってきたのに対し、トラにジャンクキューブを放り込む様に装填、ハンドルを押し込みながらベノムの拳をローリングで回避し、落ちてきたブロックのエネルギーに飛び込んで怜二はトラッシュに変身。続けざまに振るわれた鋭い指による引っ掻きを、ブロックグローブで弾き飛ばす。
『ギャアハハハハハハッ!来いよトラッシュ!テメエのベルトもチリヅカのものだ!そうだろ相棒!お前も俺達の敵だあア!』
「ああア……私達の、敵……」
「サラ……絶対に助ける!」
ベノムドライバーの呼びかけに虚ろに呟くベノムに、トラッシュは改めて決意すると跳躍してアームハンマーの様にブロックグローブを頭部に叩きつける。ベノムはよろめいてビルの外壁に指の跡を付けながら体勢を立て直すと、前蹴りでトラッシュを蹴り飛ばし、トラッシュはビルの壁をぶち抜いてエントランスに着地。飛び込んできた仮面ライダーに恐れをなして中にいた人たちが逃げていく中、トラッシュはそれを気にする余裕もなく、投げ込まれてきた家族と思われる男女四人が乗ったままの自動車を受け止めた。
「ぐううっ!?い、今下ろすから落ち着いて……」
『相棒!来るぜ!』
『ギャアハハハハハハッ!ヒーローは大変だなア!守る者が、多いッ!』
パニックになってる中の人たちを落ち着かせながら自動車をゆっくり下ろすトラッシュに、ゴリラの様にナックルウォークして四つん這いになりながら突進してきたベノムの体当たりが炸裂。ギリギリ自動車を蹴り飛ばして回避させることには成功するも、自身は吹き飛ばされてまた壁を突き破りながら酸性雨の降り注ぐ外に飛び出してゴロゴロと転がった。
「くそっ……ここは、人が多い…!」
『場所を変えよう相棒!』
「そうだな…ついてこい、ベノム!」
『天へすっ飛ぶ!テンペスットボトル!』
テンペスットボトルにチェンジし、挑発しながら空を飛ぶトラッシュ。それに対しベノムは複眼を眉を顰めるように歪ませると、跳躍。ビルの外壁に張り付くと指を喰いこませながらすさまじい勢いでクライミング。屋上まで来ると、跳躍を繰り返してトラッシュを追いかけた。
『相棒が乗ってやるってよ、ヒーロー!』
「あそこだ!」
トラッシュが辿り着いたのは、未だ拡張途中の新東京都の端、開発地区。ゴミを埋め立てて新たな土地としていくそこは、酸性雨により人が少ないがそのまま残されたクレーン車などの重機やゴミ収集車が不気味さを醸し出している。最終的に四つん這いで走ってきたベノムは追い詰めたと言わんばかりにベノムドライバーで舌なめずりする。
『逃げ道はもうないようだな?ベノブラッシュ!』
「もう逃げるつもりも、必要もないさ!」
専用武器であるベノブラッシュを吐き出し手に取ったベノム。腕を振るったトラッシュの発射した空気砲を斬り弾きながら突進。ベノブラッシュを投げつけてそれをトラッシュが上に弾いた隙を突いて左手で頭をがっしりと掴むとそのまま人形でも手にしているかのように軽々と振り回し、地面に打ち付けられたトラッシュは軽装甲であるテンペスットボトルなのも相まってボロボロとなり、落ちてきたベノブラッシュを再び手にしたベノムに下から上に斬り上げられて吹き飛び、地面を転がる。
「まだだ…!」
『ライドラッシュ!ギアチェンジ!……
ならばとよろよろと立ち上がりながらリボルバイクに変身。タイヤシールドから弾丸をばら撒きながら背中のタイヤジャイロを高速回転させて突撃。弾丸を全て半液状の体で受け止めたベノムは体当たりしてきたトラッシュを右手だけで受け止めてにやりと笑う。
『そんなもんか、ヒーロー!』
「があ!?ああああああっ!?」
そのままタイヤジャイロごと背中をベノブラッシュで串刺しにされ、持ち上げられブンッと一振りで刃から抜けた体が宙を飛び、ゴミ収集車に激突。背中をつけて崩れ落ちるトラッシュ。
『パワーが段違いすぎるぜ相棒!やっぱりヒカリに助けを求めてソリッドアライブで……』
「……ヒカリには言えない。あんな優しいヒカリがこのことを知ったら、悲しむにきまってる…!」
『相棒……わかった、俺も踏ん張るぜ!』
機械の鎧がショートを起こし火花を散らしながらも、なんとか立ち上がるトラッシュの足元に、ぶつかられてエラーを起こしたゴミ収集車に内蔵されていたゴミが転がり落ちる。それは、カラフルな粘土でできたデフォルメされた人型のなにかのヒーローの様なキャラクターのオモチャだった。本来は子供を喜ばせるためのそれは、今ではれっきとしたゴミだった。
「……賭けてみるか。こいつに!トラ、吸いこめ!」
『おうよ!』
粘土のオモチャを吸いこみ、作り上げられたのはカラフルなしっとりとしたジャンクキューブ「粘土」。空中に飛び出したそれをトラッシュドライバーに装填し、ハンドルで押し込まれたそれは、普段と異なりぐにゃりと歪んだだけでひび割れもしなかった。
『ジャンクキューブ!プレス!』
現れたのはカラフルに彩られた粘土のキャラクター。手を振って笑顔を浮かべたそれは、トラッシュを抱きしめるようにして重なった。
『マットラッシュ!得体のしれない!エキゾチックレイ!』
『……なんだ?』
現れたのは、赤・青・黄でカラフルに彩られたアメコミのヒーロー然とした上半身だけ筋骨隆々のフォルムのトラッシュ。両腕が粘土で形成されており、まるで丸太の様に太い。黄色い顔は右の複眼が赤で左が青い複眼となっており、笑顔を浮かべているようにも見える。
「……サラ。俺は、お前のヒーローになる。なってみせる」
『お前の助けなんていらねえんだよ!』
ベノブラッシュを突き出しながら突撃するベノム。その刃を、まるでゴリラの様に太い掌でトラッシュは握って受け止める。
『なっ……!?』
「うおおおおおおっ!」
左手で刃を握ったまま右手を後方に構え、その瞬間拳が二倍に膨れ上がり肥大化。質量の塊と化したそれで、胴体を殴りつけベノムを吹き飛ばすトラッシュ。そのまま追いかけ、次々と拳を叩き込んでいく。
『この……図に乗るんじゃねえ!…!?』
「おっと…!?」
殴り飛ばされたベノムが近くにあった鎖を手に取り振り回して投げつけるも、トラッシュは鎖を避ける形に上半身を歪めて回避。変幻自在の粘土のボディに、トラッシュもベノムも面食らうも、すぐ正気に戻ったトラッシュがぐにゃりとしたまま変な体勢でベノムを殴り飛ばす。
「今だ!」
『トラッシュ!エキゾチックフォール!』
『こんな、こんなふざけたやつにぃいいい!?』
三回ハンドルを押し込み、巨大な掌で自身を覆う様にして丸まるトラッシュ。カラフルな粘土のボールの様になった体を跳ねさせて、勢いよくベノムにのしかかり、爆発。あとに残されたのは、変身が強制解除されて溶けるように元に戻ったサラを横抱きにするトラッシュ・エキゾチックレイの姿だった。
《「怜二!サラを見つけたんですの!?」》
「ああ。すぐに一緒に帰るよ」
数分後、雨が止んだ空を見上げながらヒカリに連絡を終えた怜二。ひとまず、サラがベノムであることは告げなかった。そのことに、傍でプルプル震えていたサラは恐る恐る問いかけた。
「あの……ベノムドライバーは、まだ私の中に残っています……アイツの言う通り、私は離れられません……怜二さんとヒカリさんを襲わない、と断言できるわけでもないのに、なんで」
『心配するなよサラ!あんなやつ、また出てきても俺達がボコボコにしてやるからよ!』
「トラの言う通り、何度でも助けるさ。それに仲間だとか、は正直関係ないんだ。絶対に困っている人を見捨てられない……っていう俺の性分もあるけど。ただ、ヒカリとサラの悲しむ顔を見たくない、そんな我儘さ」
「…!」
そう言って見せた怜二の笑顔に、サラは胸の奥が熱くなるのを感じ、赤くなった顔を背けた。そうして、怜二とサラはヒカリが待つ我が家への帰路を進むのだ。
トラッシュの新フォーム、エキゾチックレイ。名前はエキゾチック+クレイ(粘土)から。モチーフはあんまり詳しくないんですけどアメリカのアニメの「ポパイ」と「僕のヒーローアカデミア」のオールマイト、そして「PoppyPlaytime」のDoey_the_Doughmanです。彼を見て思い付いた形態となります。能力は肉体の自在な変形。ただし氷とかの属性攻撃に非常に弱くなってます。
オモチャもゴミと言えばゴミよね、と。そもそもこの小説自体トイストーリー3のゴミ集積場を参考にしてるから今更感ありますが。
ベノムの正体を知った怜二。ヒカリには内緒にして元の関係を取り戻したいようで…?
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