今回は前回のトラッシュ新フォームに引き続きエコー新フォーム登場。楽しんでいただけたら幸いです。
第二十七の清掃:泡沫の蜘蛛の糸
「それにしても、サラが無事で本当に良かったですわ!」
「ご心配おかけしました、ヒカリさん……」
怜二とヒカリとサラの三人は、今日も今日とてゴミ清掃の日々を送っていた。サラが仮面ライダーベノムに変貌した事件から数日、ベノムドライバーはあれ以来なぜか大人しくしていて引っ込んでおり、サラもおっかなびっくりで平穏に過ごしている。サラがベノムだとヒカリに伝えてこそいないが、二度と変身しないならそれはそれで問題ないというのが怜二とサラの結論だった。
カア!
カア!
カァー!
ガァー!
ギァー!
グエーッ!
「今日はカラスが騒がしいな……」
けたたましく鳴り響く鳴き声に視線を上に向けると、ゴミを狙うカラスの群れが電線に降り立っていて。
「……なんだ?」
「危ない!」
瞬間、放たれた手裏剣の様な羽が今の今までいたところに突き刺さり、咄嗟に怜二を抱えて跳躍したサラが「ぷぎゃっ」と地面に顔を打ち付ける。ベノムに変身しなくても人外なのは変わらないため、異常な身体能力を発揮し慣れてなかった結果だった。
「サラ速いですわね!?でも、今のは…!?」
『アレはただのカラスじゃねえぞ、相棒!』
「いやおかしいだろ!?ローネの話だと、絶滅した動物の怨念とゴミを合体させたのがゴミリオンだって……カラスは、まだ絶滅してないんだぞ!?」
「ゲヒャヒャヒャ!勘がいいじゃねえか!」
すると数匹のカラスが電柱の上に集ってゴミだったその肉体を合体、ゴキゴキと音を立てて人型を形作り、赤い複眼のペストマスクをつけて漆黒の羽毛の装甲に身を包んだ手足が鉤爪になっている姿をしているゴミリオン、クロウゴミリオンに変貌。どこか仮面ライダーを思わせるそのフォルム、そして存在しないはずのカラスのゴミリオン。あまりに不気味だ。
「サラは下がっててくれ。…もしものときはベノムに変身してもいい、俺が止める。自分の身の安全を優先して」
「わ、わかりました…!」
「心配しなくても大丈夫ですわ、例えチリヅカの幹部が相手でも、私達は負けませんわ!」
サラが逃げたのを確認しながらトラとエコちゃん様を腰に取り付け、ホルダーからジャンクキューブを取り出して装填する怜二とヒカリ。
『トラッシュドライバー!…ジャンクキューブ!プレス!』
『エコードライバー!ジャンクキューブ・ウォッシュ……』
「「変身!」ですわ!」
『ジャストラッシュ!あっと驚く!アトミックブロック!』
『エコードレス、響け……エコー……エコー……エコー……エコー……!』
ブロックと泡が弾け合い、怜二とヒカリはトラッシュとエコーに変身を遂げ、エコーがホーキージャベリンで舞い上がってクロウゴミリオンを回し蹴りで地上まで蹴り飛ばし、そこにトラッシュがブロックグローブを叩きつける。しかしその一撃を鉤爪で受け止めて見せたクロウゴミリオンは、鉤爪で固定するとそのままトラッシュを振り回して電柱に叩きつけた。
「おいおい手を放さないなんてお熱いな!シャルウィダンス?」
「ぐあっ!?」
「怜二!エコちゃん様、例の奴ですわ!」
『シャカシャカ!バブルランチャー!』
エコちゃん様の蛇口の上部を叩いてからひねり、泡立つ手を擦り合わせて巨大な泡を作り出し、それを発射するエコー。ゆっくりとだが放たれたそれはクロウゴミリオンにぶつかるなり破裂。内包されていた衝撃が襲い掛かり、パンパンパンッと破裂音と共に右腕、胴体、左足がひしゃげた。
「ゲッヒャアアアア!?」
「おおう…えぐっ」
「いてえいてえ……酷いじゃないかお嬢様。だが、俺相手には関係ないね!」
「え、なんで私がお嬢様だと知って……!?」
すると背中からバサッと黒い翼を展開するクロウゴミリオン。宙に浮かぶと残った右脚による回し蹴りでトラッシュを蹴り飛ばし、そのまま翼を振るって羽手裏剣を発射。咄嗟に泡を広げて防御しようとするエコーだったが、鋭利な羽手裏剣は泡を貫いてエコーの装甲に炸裂、爆発して火花を散らし転倒する。
「ぐうっ!?」
『ヒカリ!大丈夫かい?』
「くそっ……ヒカリ!」
「ゲヒャヒャヒャヒャッ!ボスがお前の身柄をお望みだ!大人しく俺様についてこい」
『ヒカリ、逃げるんだ。ボクたちじゃ相性が悪すぎる!』
「…ついてこい?お断りですわ……身柄が望みなら、殺すことはできないんじゃなくって?」
エコちゃん様の制止の声も振り切り、ふら付きながらも身構えるエコー。クロウゴミリオンはその態度が気に喰わなかったのか、蹴り飛ばされて立ち上がろうとしていたトラッシュの顔面を右脚の鍵爪で鷲掴みにし、飛翔。
「お前を殺すことはできない、だが仲間は違うぞ!」
「ぐっ…がっ!?」
『相棒!』
「っ、待ちなさい!」
天高く連れ去ったかと思えば勢いよく急降下し、後頭部からトラッシュを地面に叩きつけるクロウゴミリオン。再びトラッシュを連れて飛翔するクロウゴミリオンをエコーは慌ててホーキージャベリンで追いかけるも、凄まじい速度でビル間を駆け抜けるクロウゴミリオンに追いつけない。
「はな、せ…!」
「ゲゲーッ!図に乗るな!」
急激なGに対応しきれないトラッシュはなんとか殴りつけるも、クロウゴミリオンはびくともしないどころが激高して空中でトラッシュを放り投げ、翼を羽ばたいて羽手裏剣を次々とトラッシュの胴体に突き刺して、爆裂。トラッシュは凄まじい勢いで落下していき、低空飛行でその先に飛び込んできたエコーに受け止められてもろともに道路に墜落した。
「あいたたた……なんとかキャッチできましたわ……」
「ぐうっ……悪い、ヒカリ……」
『あ゛い゛ぼう゛ー!お゛れ゛、じん゛だも゛の゛がど!』
『ぼさっとしてないでボクのヒカリを守れ!』
「言われなくても…ぐはっ!?」
「ゲヒャヒャッ!てめえらじゃ俺に追いつけねえよ!」
右腕と左脚を負傷しているにもかかわらず、苛烈に攻め立てるクロウゴミリオン。トラッシュとエコーの反撃を素早い動きで回避し、左腕で斬り裂き、右足で掴んで投げ飛ばし、羽手裏剣が降り注ぐ。フォームチェンジの隙さえ与えない猛攻に、ソリッドアライブにチェンジすることもできなかった。
「きゃあ!?」
『ヒカリ!』
さらにエコーはクロウゴミリオンは腕を右足で掴まれて投げ飛ばされ、服屋のショーウィンドウに激突。そのまま倒れ伏し、変身が強制解除されてしまう。それを見てトラッシュは一瞬の隙を突いてジャンクキューブ「粘土」を取り出してトラに装填、ハンドルを押し込む。その性質上、壊れることなく手元に残り続けたものだ。
「なめるなあ!」
『ジャンクキューブ!プレス!…マットラッシュ!得体のしれない!エキゾチックレイ!』
「なんだあ!?」
エキゾチックレイに変身するなり、両腕を伸ばして掌を巨大化させることでクロウゴミリオンを拘束。しかし同時に羽手裏剣が胴体に炸裂し、爆発。トラッシュはクロウゴミリオンを拘束したまま蹲ってしまった。
「怜二…!」
立ち上がるヒカリだったが、変身に使ったジャンクキューブは既に消滅し、スペアも持ち合わせがない。ゴミがあれば回収できるのだが、周りにはない。慌てて周囲を探し回るヒカリが見つけたのは、恐らく採寸で余ったのであろう糸屑や布片だった。
「これも、ゴミ…ですわよね?エコちゃん様!」
『任せて!』
エコちゃん様の吸引孔から吸い込まれ、水槽の中に浮かぶとかき混ぜられて四角く、ジャンクキューブに変わっていくと内蔵された水が沸騰して蒸発したかと思えばジャンクキューブを乾かして蓋が開き、ふわふわなジャンクキューブがヒカリの左手に握られた。
「ふわふわ……何故乾かしたのですわ?」
『びしょ濡れの布なんて不快でしかないだろう?』
「配慮、感謝ですわ!」
『ジャンクキューブ・ウォッシュ……ドライ!』
そのまま蓋を開いたエコードライバーの水が抜けた水槽にジャンクキューブを入れて、上部のスライド式のレバーを右にずらすと、まるで綿あめでも作ってるかの様にふわふわとかき混ぜられるジャンクキューブ。すると押し出されるように左側面の排水溝からまるで糸車の様に滝の様な毛糸が溢れだし、毛糸玉の様にヒカリを包み込む。
「変身ですわ!」
『スレッドレス、紡げ……』
すると糸がほどけてヒカリに巻き付いていき、光輝いてその姿を変えていく。
『スレスレ……スレッド……スレスレ……スレッド……!』
そして毛糸玉が完全に崩れて現れたのは、藤色のアンダースーツにふわふわもこもこなドレス型の糸のアーマーの上に黒く堅い糸でできた蜘蛛の巣を思わせる装甲に包まれた、まるでウェンディングドレスを思わせる姿。頭部は白いフードを羽織っている様な形状で藤色の複眼が輝く。仮面ライダーエコー・スレッドレスである。
『ハタンキスカ!』
「……軽い!」
大体が湾曲した刃の斧であるフランキスカとハタキをモチーフにした、硬質化したハタキの形をした小型斧「ハタンキスカ」がエコちゃん様から射出され、右手に握り飛び出すエコー。体が軽い。泡による滑走移動やホーキージャベリンによる飛行こそできなくなったものの、まるで綿毛の様に軽い体で跳ねて、ちょうどトラッシュの拘束から無理やり抜け出したクロウゴミリオンに一撃喰らわせ、スカートを広げて左膝を曲げ、頭を低く下げて右手を地面につけて支えるまるで某蜘蛛男を思わせる体勢で着地するエコー。
「ギャアア!?お、お前……!姿を変えた程度で勝てると思うな!」
「不用意に伸びた糸に触れると怪我しますわよ」
そう言いながらハタンキスカを投擲。クロウゴミリオンは首を傾げて簡単に避けるが、エコーのアーマーから糸が伸びて繋がっており、ハタンキスカはブーメランの様にクロウゴミリオンの周りを何度も何度も旋回して、糸でグルグル巻きにして括りつけ、刃部分が糸に引っかかって縛り上げる。飛ぼうとして糸が身体に食い込み、火花が散るクロウゴミリオンは汚い悲鳴を上げる。
「ゲヒャッ!?て、てめえ……放しやがれ!」
「怜二を痛めつけた貴方を私が許すと思いまして?」
『ボクのヒカリを痛めつけた分も忘れないでよね』
そう冷めた声で告げたエコーは蛇口を開いてドライバー右のボタンを押し、蛇口から溢れだした糸の滝が束ねられ、右足に集束して前方で高速振動。そのまま右腕を引いて繋がったクロウゴミリオンを引き寄せる。それはまるで、断頭台に連れていかれる死刑囚の様だった。
「ひっ、やめろ…!?」
『エ・コード!…スレスレ・ッドストライク!!』
そして、目の前まで引き寄せられたクロウゴミリオンの胴体に回し蹴り。高速振動する糸が前方につけられた右足でギロチンでもするかの如く、真っ二つに切断されたクロウゴミリオン。
「ゲヒャ……!?お、覚えていろ……ボスは、お前を逃がしは……ギャアアアアアアア!?」
上半身だけになっても元気に喋っていたクロウゴミリオンだったが耐え切れず爆発、破片が周囲に飛び散った。
「ヒカリも新しい力を手にするなんてな」
『俺達も強くなってるが、頭抜けてるソリッドアライブはヒカリありきだしなあ。羨ましいぜ』
「そっちのエキゾチックレイ?もすごかったですわ。でもわたくしも怜二に負けていられませんわ!」
『ボクのヒカリはすごいんだからね!』
「2人とも無事でよかった……」
戻ってきたサラも合流し、三人で帰路につく怜二、ヒカリ、サラ。三人は知らない。クロウゴミリオンの襲撃がこれから始まる大事件の序章であることを。
喫茶店跡地に戻ってきた三人を待ち受けて居たのは、シルクハットを被って杖をついた和装の好々爺。
「お爺様!?」
「お前が家を飛び出したと聞いて心配したぞ、
「ヒカリ……この人は?」
「えっと……
「せ、星霜…!?」
驚くサラ。ピンと来ていない怜二。ばつが悪そうな顔を浮かべるヒカリことキララ。そんな三人を見て、菅良はニコニコと朗らかに笑っていた。
本来絶滅した生物の怨念から生まれるゴミリオンとはその前提が違う強敵ゴミリオン、クロウゴミリオン。
糸屑のジャンクキューブで変身する新形態スレッドレス。モチーフはモンハンライズのヤツカダキ装備と某蜘蛛男。
そして登場、ヒカリの正体「星霜綺羅羅」の祖父、星霜菅良。ヒカリの偽名「慧月光(としつき ヒカリ)」は星霜→年月→ちょっと捻って慧月、綺羅羅→キラキラ→光。安直だけど星霜は清掃から。
今章はヒカリがキーパーソン。
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