氷室のライダー、グレイス初陣。楽しんでいただけたら幸いです。
チリヅカ・コーポレーション社長室。道中に立ちはだかった平社員の清掃員のみならず、幹部のオボロやネリーすら一蹴してここまで辿り着いた氷室は、社長の椅子に座る六道を睨みつけていた。傍らでは凛がリーンドライバーを手に警戒している。
「それで?チリヅカの商品を外国に売り込んで日本を窮地に追い込んで、なにか申し開きはあるか?六道。食料の供給を断たれても文句は言えないよなあ?」
「勘違いしないでもらいたいな氷室蒼牙。これは日本が進化するために必要なことだ。我等の新商品「ダストルーパー」「王のジャンクキューブ」が世界の市場を独占した。これより、戦争を仮面ライダーとゴミルギーが支配する世界が始まる!」
「そんな世界、誰も求めてねえよ。日本は立て直しに必死だ」
「その立て直しのための犠牲だ。ゴミルギーの有用性を世界に示し、確固たる地位を築くためには餌を巻き、完膚なきまでに叩き潰し、証明するしかない。そのためには英気を養える食料は必須だ。考え直してほしい」
「戯言を。単に利益が欲しいだけだろう貴様は」
自信満々に六道が告げた言葉を一蹴する氷室。六道は眉根を寄せて、手を上げる。それを見て、凛は嫌そうにリーンドライバーを腰に取り付け、ジャンクキューブを細分化させて散らばらせる。
『ジャンクキューブ……シュレッド』
「正直気は乗りませんが……命令ですので!変身!」
『リーン・エントリー』
『シュレッド……ショーニング!
凛はジャンクキューブだった御札が全身に張り付いて、仮面ライダーリーンに変身。自らの体に張り付いているジャンクキューブだった御札を触れてコピーされた御札を手に取りリーンドライバーに挿入して切り刻んだリーンが全身に紫電を纏って電気信号で身体強化を行い、加速。全力で殴りつけるリーンだったが、氷室は殴り飛ばされることなく、右掌で容易く受け止めさらに体を撃ち抜く電撃を耐えて見せた。
「なっ…!?」
「いい拳だった。話し合う
『トラッシュドライバー零ォ……。だりぃ……お前ひとりでいいだろう氷室よぉ』
リーンを投げ飛ばし、懐から横にした冷蔵庫を模した長方形のバックル「トラッシュドライバー零」を取り出す氷室。パカパカと蓋が開いて気だるげな声を出したそれを腰に取り付けると氷が腰まで伸びて砕け散る様に蒼いベルトが巻かれ蓋が下に開き、氷室はジャンクキューブを取り出して天高く放り投げると落ちてきたそれをキャッチし流れるようにバックルに装填。すると急速に冷凍されてジャンクキューブが凍り付いていき、トラッシュドライバー零から漏れ出た冷気で氷室の指先も凍り付き、氷室の周囲は氷に覆われ小さな氷河期となる。
『ジャンクキューブ・フロスト……』
「けじめはけじめだ。さっきの餓鬼と違ってこいつらは俺を殺しに来た。ならこっちも本気で行かねえとなあ?」
「……ただの人間では多大な負担がかかり、文字通り凍結された初期型トラッシュドライバー……君の手に渡るのは完全に想定外だったよ」
まるで賛美歌の様な壮大なメロディーが鳴り響くそれは、トラッシュドライバーと同じくゴミ処理を目的とし、その手段として「冷凍」を選んだネリーが制作したドライバー。しかし変身者の肉体を壊死させる冷気を放つそれは危険すぎて封印されていた。それを手に入れたとは知っていたが、ここまでとはと冷や汗を流す六道。
九州の九頭竜美、四国の金乃流希奈は怒りを買ってもまだわかりやすくて御しやすい。しかし、廃棄物症候群以前の旧時代から根っからの筋者である氷室は違う。怒らせてはならない相手を怒らせてしまったと再確認する。凛に手出しさせるべきではなかった。あわよくばここで始末できればと高を括っていたが、まさか生身でアレを耐えるとは想定外だ。肉体の強度以前に、我慢強さ……精神力が強すぎる。
「お前らが捨てたもんだ。誰が拾って使っても文句は言わねえよな?」
「ぐっ……」
「覚悟しろ、お前は冷凍処分だ。変身」
怯むリーンの前で、蓋を閉じて溢れ出る冷気をバックル内に閉じ込める氷室。すると出口を失った冷気を伴ったゴミルギーが、トラッシュドライバー零を中心に凍り付かせるという形で氷室を包み込んでいき、氷像となる。
『冷凍ぉ!ジェネレイトぉ!グレイトぉ!アイス!ナイス!グレーイス!』
先程までの気だるげな声が嘘のような熱血な音声と共に罅割れて、変身が完了する。真っ白な冷蔵庫の様な氷塊の様な長方形のアーマーを上半身に纏った、青みがかった白で彩られたアンダースーツの上に騎士甲冑染みた氷のアーマーを四肢に纏った姿。凍てつく海を思わせる青い複眼の頭部は氷の牙に噛みつかれたような形状をしており、まるで獣を彷彿とさせる。その仮面ライダーはゴキゴキと首を動かし、前傾姿勢で構えるとリーンを睨みつける。
「仮面ライダーグレイス。この姿を見たからには、凍えて眠れ」
「そんな旧型…!」
「待て、巻野君!」
『シュレッド……ショーニング!
恐怖のままに、六道の制止の声も聞かずに、コピーした御札を切り刻んで灼熱の火炎放射を放つリーン。しかし、グレイスが足を踏みしめるだけで床が凍結して生えた巨大な氷柱が炎を容易く受け止め、グレイスはそのまま氷柱をヤクザキックで蹴りつけて、真っ直ぐ横に吹き飛んだそれに、リーンはひらりと宙返りで回避。氷塊は壁を砕いて外に落ちていった。
「ま、まだまだあ!」
『シュレッド……ショーニング!
それを見て冷や汗を流したリーン、コピーした御札を切り刻んで、六道を背にして部屋ひとつ飲み込む津波を発生させ溺死させんとする。しかしその津波は、グレイスを飲み込む前にその手がかざされただけで一瞬で凍り付いてしまい、津波を発生させた地点にいたリーンも凍り付いてしまう。
「しまっ……」
「自分から冷凍されてくれるとは、手間が省ける……」
両手を交差させて握った氷を引き裂く様にバラバラにし、ゆっくりと歩み寄るグレイス。リーンは何とか右手の拘束だけ引っ張り出して、自分の指をシュレッドライバーに挿しこんだ。血迷ったわけではなく、リーンの最終手段を使用したのである。
『シュレッド……ショーニング!紙吹雪之巻!パラパラー!』
最終手段『紙吹雪之巻』。自身をシュレッドして複数の御札に分裂、万物を
「切れ端に触れなければただの紙だろうが」
「え、きゃあああああああああっ!?」
深呼吸し、ただ両の拳を振りかぶって連打するグレイス。それは、脅威の動体視力によって、切れ端に触れることなく、面のみを殴りつけるという神業。一秒で134発放たれたそれは、数秒ですべてのリーンを打ちぬいて、強制的に人型に戻して殴り飛ばす。
『さすが氷室だぁ……そこにしびれる、憧れ……はしねえな。ドン引くわ』
「そんな馬鹿な…!?」
思わずトラッシュドライバー零もドン引いたこれには、奥の手を使ったリーンの勝利を確信していた六道も驚愕。ゴロゴロと床を転がったリーンは、スーツがひび割れ血がにじんだ姿でふらふらと立ち上がる。
「はあ、はあ……」
「お前も可哀そうにな。そんな男の言いなりにならなければ、死ぬこともなかった」
「死ぬ気は、ありません……」
『シュレッド……ショーニング!
三枚の御札をシュレッドし跳躍、炎と雷と風を纏った右足を飛び蹴りの形で叩き込むリーン。対してグレイスはトラッシュドライバー零の蓋を開き、勢いよく閉じて内包されている凍結したジャンクキューブからゴミルギーを絞り出して冷気が迸る右拳を振りかぶる。
「いい根性だ!敵でなかったら俺の部下にほしかった!だがケジメはケジメだ!」
『グ
そして、虚空を振り抜くグレイスの拳。それだけで、前方の空間が凍り付いてリーンは空中に磔にされ、すかさず振りかぶった左拳による一撃で氷が一気に粉砕されていく。凍らせて身動きが取れない相手を確実に葬る一撃。しかしそれは。
「ああぁあああああああああっ!」
『ジャンクラッシュ・ヘブン……!』
稲妻を纏ったデリートナックラーを振りかぶったデリートが乱入、グレイスの左拳を相殺することで防ぎ切ったことで不発に終わる。
「ほう?」
「あ、ミ……カ……」
シュレッドライバーがオーバーヒートを起こし、強制的に変身が解除されて転がり力尽きる凛。スーツは原型を失い辛うじて服の
「この屑社長が迷惑かけたのは分かるわ。けれど、この子をこんなにも痛めつけた事、絶対に許さない……!」
「恋人か?それは悪いことをした……これもケジメか。何時でも相手になってやる。だが、今じゃない。俺を相手にしていたら、死ぬぞ?その女」
「……貴方だけは、この手で殺す!!」
「これで手打ちだ。命拾いしたな、六道」
デリートに睨みつけられ、六道に畏怖の視線を向けられ、グレイスはそのままエレベーターに乗り込み去っていった。
それから数時間後。公式に、食料の供給を止めると表明され、新東京都は混乱に堕ちることとなった。
氷室はちゃんと話し合うつもりで来たのに、六道にそんなつもりはなく最初から暗殺するつもりだったからキレた、というのが今回の顛末。
トラッシュドライバーの初期型、トラッシュドライバー零で変身する仮面ライダー、グレイス登場。モチーフは冷蔵庫、というか「冷凍処分」という概念。変身するにしても常人じゃ不可能というとんでも問題児となります。変身しなくても強いのに変身したら手が付けられるわけないよね。
リーンは犠牲となったのだ……と言いながら、相手が悪くなければ普通にチートな能力も披露してるっていうね。以前描写にあった、デリートこと掃除屋と恋人同士とも判明。社長には内緒の関係でした。
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