怪異蔓延るのが当たり前の平安時代。その日本最大の都、平安京にて。今まさに二人の陰陽師が怪異と戦っていた。
「抑えたぞ、晴明!」
「よくやった道満!
『当たり前だぜ!闇夜を照らす焔!』
狐の仮面を被った異形の姿をした人型が、腰の木製の扉がついた祭壇の様なバックルのついた木製のベルトを操作してスライド式の扉を開帳。扉の中に『火』の文字が浮かび、五本ある尻尾のうち一本に触れて飛び出した杖を手にし、先端に炎を灯して怪異……先日、源頼光が対峙したはずの怪異である、虎の顔をした蜘蛛の様な六本腕の人型をした怪物……土蜘蛛に打ち付ける。平安の世では治せない病を蔓延させる災害ともいえるそれが吹き飛んでいくも、六本腕を巧みに動かして体勢を立て直し、口から糸を飛ばして木に引っ掛け空に舞い上がる土蜘蛛。
「道満!」
「逃がしはせんぞ!急急如律令!」
しかし土蜘蛛は、晴明と呼ばれた狐の面の人物に道満と呼ばれた、顔色は悪いがそれが気にならないほど整った顔で、先端がゼンマイの様に巻かれている黒髪で長身の女が手にした札五枚を投げ、五芒星を描いて取り囲むことで、空中に縫い付けられてしまう。
「
『ボクだけを頼ってもいいんだよ!浄化の水流よ!』
『拙の力を受け取ってください!集え砂塵!』
さらに、いったん閉じたバックルを素早く二度開閉。『水』と『土』が浮かび上がると尻尾二本に触れて宙返り、右足に渦巻く泥の奔流を蹴り込んで土蜘蛛に叩きつけ、それは龍の形となって次々と土蜘蛛に体当たり。みるみる内に弱っていく。
「
『行くぞ晴明!串刺しの刑だ!』
『仕方ないわね……傲然と輝く
そして、いったん閉じたバックルを再び素早く二度開閉。『金』と『木』が浮かび上がると地面を尻尾で薙ぐと真下の地面から細く鋭い“木”が伸びて土蜘蛛を串刺しにすると、尻尾から形成された金でできた“ヴァジュラ”を晴明が蹴りつけて叩き込み、土蜘蛛は爆散。ガラクタが散らばった。そうして晴明が印を結んだ右の人差し指と中指を振るうと木が引っ込み、泥が消え、炎も“ヴァジュラ”も消えて何事もなかったかのように静まり返る。
「ふふっ、相も変わらず末恐ろしいな。“五行の女神の寵愛を受けし天才”殿?」
「はっはっは!揶揄うのはよしてくれ道満!彼女たちは力を貸してくれているだけだとも!」
道満の揶揄いに豪胆な笑い声を上げながらバックルの扉を閉じて取り外すと帯部分が消え、狐の仮面を被った異形から明朗快活な笑顔が眩しい白髪を腰まで伸ばした異様に整った顔の動きやすく改造された陰陽師の衣装に身を包んだ女性に変わる。彼の者こそは安倍晴明。ヒカリこと星霜綺羅羅の先祖であり、歴史上で最強と謳われた霊力を有する陰陽師である。男尊女卑の時代故に後世では男と伝えれているが、この時空では女であった。
『ボク達の力の扱い方がまた上手くなったね、晴明!』
『拙たちが見込んだだけはあります……』
『他の人間に比べれば……って、感じだけどね?』
晴明の手にある祭壇型のバックルから出てきてそう告げるのは、巫女を模した水の羽衣を纏った人型の龍の様な女性の造形をしている異形『
『オレたち全員に目を付けられたのに、それを利用しようってんだから末恐ろしいぜ』
『私たちの力を正義に使えるからこそ我々の寵愛を受けているんだ。恐ろしいのは際限なく湧き上がる怪異の方だ』
鍛冶職人の様な炎の着物を着崩して腰につけ炎の羽衣を纏った火山の擬人化の様な女性の造形をしている異形『
「今も信じられぬよ。日ノ本を守護する五行の女神がすべて晴明に力を貸しているなどとな」
『我としては道満、貴女の方が好みだけど?』
「光栄ながら我が身には余りますぞ金々羅殿」
晴明の傍でニヤニヤ笑うキキラの言葉に頭を下げる道満。対して晴明はなにやら悩んでいる様子だった。
『どうかしたのか?晴明』
「いや、森淋。今回相対したのは恐らく土蜘蛛だろう。だが土蜘蛛は、先日頼光殿が退治したはずなんだ。何故それが復活したのか……それに、これもだ」
そう言って土蜘蛛を形成していたガラクタの欠片を手に取る晴明。明らかな邪気を纏っているそれを、スイセンに差しだして浄化してもらう。
『ボクの力が必要なのかい!晴明!』
「そうだとも水染。ここにばらまかれた残骸全てを浄化してほしい。これを放置するのは危険だ」
『なんだ?それがどうかしたのか?』
『拙的には悍ましいことしかわかりませんが……』
カガリとセキカの問いかけに浄化された木片を手に晴明は頷いた。
「これは明らかに呪術によるものだ。何者かが呪術を用いてガラクタを媒介に土蜘蛛を再現したものを生み出したんだ。呪術というと、道満。君も確か使えたな?なにかわかるか?」
「うむ。私の呪術は血を媒介に付着した物体を強化する術であるが、恐らく同系統だな。怨念をガラクタに宿らせ異形の操り人形とする……動く器物、付喪神とでも呼ぼうか」
「付喪神か、言い得て妙であるな!なんにしても、大元を叩かねばなるまい。そのために……力を貸してくれ、篝、碩迦、水染、金々羅、森淋。道満もだ」
「フッ……晴明、相変わらずの我が
「はははは!笑える冗談だ!だが冗談でも朝廷に反逆するなどと言うべきではないぞ?」
快活に笑いながら五女神を侍らせ、帰路につく晴明と道満。摩訶不思議な鎧を身に着け物の怪を退治する源頼光及び頼光四天王と双璧を成す、都の守護者。それが安倍晴明である。
晴明は純粋な人の子ではない。父親が貴族で母親が妖狐という特殊な血筋を持って生まれた。故に最強の霊力を有し、故に貴族の血筋でありながら人から避けられてきた。そんな自分が普通の人間として過ごせているのは、ただの人間でありながら自らに匹敵する実力を努力で身に着けた道満がいたからだ、と晴明は自負している。人のいない竹林にある屋敷の縁側で五女神や道満と共に過ごすのは、そんな穏やかな日常の一つだった。カガリが喧嘩を売ってスイセンが買い、それを止めようとしたセキカが吹き飛ばされ、それを見て縁側に座っているキキラと道満が笑っている。そんな光景を眺めながら、晴明は傍らで自ら創り出した茶葉でお茶を人数分淹れていたシンリに問いかけた。
「なあ森淋よ」
『なんだ?晴明』
「私が果てたら、君達はどうなる?」
『……縁起でもないことを聞くな晴明。簡単だ、また自らの縄張りに戻って日ノ本を守護し続けるだけのこと。それが卑弥呼と我等の契約だ。
「彼の邪馬台国の女王か。……それならば、問題ないな。いやなに、私がいなくなったら誰が日ノ本を守るのだろう、とな。私も妖狐の娘とはいえ寿命はある。人よりは長く生きれるだろうがそれだけだ」
『そんなことを言うな、晴明』
「だが子供は残すつもりだ。私の子孫が君達と力を合わせて日ノ本を守り抜く……そんな未来が見えるよ」
「そこには私の子孫も含まれるのだろう?晴明よ」
「道満」
誰よりもこの国を憂いているからこその視座。そこに道満が会話に入ってきた。最近、誰と拵えたのか赤子を見せてきた女にとってタイムリーな話題だったようだ。
「私の血は濃いからなぁ……未来でも、私みたいな子孫が生まれるだろうさ」
「なら安心だ。私の子孫と道満の子孫、そして五女神が揃えば未来は明るいな」
『……本当に、そうかしらね』
『何の話だ?金々羅』
『何でもないわ……』
キキラの言葉にシンリが首を傾げていると、庭から爆発した水蒸気が上がった。カガリとスイセンが相討ちになったようだ。セキカとシンリが慌てて駆け寄っている。赤・青・黄・緑。色とりどりなはずのその光景は、キキラには灰色に見えていた。
それはその夜、突如として現れた。提灯に唐傘、石燈籠に鏡、襟立衣に牛車、釜に如意、水瓶に屏風、笈に囲碁版、絹織物に五徳、琴にお経の描かれた巻物、逆さになった柱に三味線、雑巾に茶釜、鈴に銅盤、草履に下駄、皮衣に棺桶、文車に瓢箪、土人形に琵琶、布団に箒、木魚にお面、これでもかとばかりにありとあらゆる捨てられていてズタボロな器物が異形の怪人、付喪神となって動き出し、都中の人々を襲う。化け灯籠の放った炎で家屋は焼かれ、人々は混乱に支配され逃げ惑う。まさに地獄。そこに、晴明と道満は到着した。
「これは、なんという…!?」
「もはや物の怪に化ける必要もないときたか。器物そのものが異形と化している……厄介だなこれは」
「反対側の羅生門では頼光殿とその四天王が対処しているらしい!我等も行くぞ!」
そう言って、木製の扉がついた祭壇の様なバックルを懐から取り出し腰に装着。カンラカラカラと音を立てて折り畳まれていた木製の札が組み立てられて腰に巻き付きベルトとなる。それ……『神儀ノ帯』を展開した晴明は掌印を結び、空中に五芒星を描いて目を瞑り、叫ぶ。
「
『
神儀の帯の扉が開き、呪文が唱えられるごとに漢字一文字が浮かんでは消えていく。そして五芒星が五色に光り輝いて顕現した五女神が晴明に重なり、五本の尻尾が伸びて白と黒の装甲が晴明を覆っていき、最後に浮かび上がった黒い狐の面が勢いよく被さって変身完了する。
『
現れたのは、赤・青・黄・緑・金のラインが胸部の陰陽玉を模した装甲を中心に全身に奔った白と黒の全身装甲の戦士。五色・五本の尻尾が腰に揺れ、ロングスカートにも見える。五女神の力を一つにまとめ、晴明の内なる狐を装甲として顕現させた姿。その名も『五神武装・神儀』現代風にするならば、仮面ライダー神儀であった。
「行くぞ道満!」
「うむ、晴明!」
「
『闇夜を照らし、貫く焔!』
瞬間、赤い尻尾の先端から炎を灯した神儀は加速。凄まじい速さで両手に金の拳と石の剣を装備し、すれ違いざまに殴りつけ、斬り捨てていく。さらに遠くへ人が襲われているのを見つけるや否や、武装を解除した両手を合掌させて指先から水流を発射して撃ち抜き、その隙を突いて襲ってきた付喪神は地面を踏みしめた神儀に合わせるように地面から生えてきた竹が槍の様に突き刺さり破砕する。
「有象無象よ、朽ち果てるがいい!」
その横では血の呪術を用いて爪を伸ばした道満が次々と付喪神を斬り捨て、身体強化した蹴りの一つで三体を薙ぎ払い、拳で胸部を打ち抜いていく。この陰陽師、肉体派であった。
「
「うむ、はっきりさせようぞ!!!」
「私がそうである事を!!」
「え……?」
神儀の胸を、凶刃が穿つ。殺意は感じなかった。胸から飛び出す紅い刃に、信じられないと背後を向く。それを握っていたのは、悍ましい笑みを浮かべた蘆屋道満であった。
これ史実通りにすると絵面がやばいことになるので女に変更したっていう。
晴明が変身する仮面ライダー神儀。この時点ではライダーですらないので便宜上仮面ライダー扱いです。古代オーズみたいなもん。ちなみに古代オーズと同じ800年前の仮面ライダーです。
地味に初登場、以前「NEXTSTAGE」でちらっと登場してた火の女神カガリと、完全に初登場な木の女神シンリ。スイセン、キキラ、セキカとともに木火土金水がモチーフでした。
そして全ての元凶にして晴明の親友、道満。その真意や如何に。というわけで後編に続きます。
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