今回は曇らせMAX。トラッシュVSガオス、そして……。楽しんでいただけたら幸いです。
あの日。神が我々を見捨て、世界に穢らわしいゴミが溢れ、そこから異形の怪物たちが現れ無辜の民を殺戮した審判の日。私は、シスターの一人として人々の避難誘導を手伝っていた。動物を模しているが決してかわいいものではない異形の怪人は、逃げ遅れた人間を喰らっていた。自衛隊や軍隊に警察が出動するも、手も足も出ず食い荒らされるだけ。迫りくる怪人の群れを前に。私は、神より与えられし巨大な十字架を構えて立ちはだかる。
『アースクロッサー!!……マルタよ。この数相手は拙的に無謀ですよ。死にに行くようなものです』
「地獄より彷徨い出でし怪物たちよ、この先には一歩も行かせません!」
『ジャンクキューブ・クロス!』
マルタの聖名を名付けられた私がシスターを志すのは当然だった。この名を与えられたのは天恵なのだ。故に私は、神を崇め無辜なる人々を守って見せよう。かの聖女マルタのように。ある時、いつもの様に神に祈っていた私は土の女神を名乗るセキカ様の寵愛を受けた。神に仇なす悪人達を懲らしめ改心させる、聖なる戦士「アース」に変身する力を与えられた。この力は、この怪物達から人々を守るために……!
「神よ、私に与えられた力は、このためにあったのですね……変身!」
『Ah~!Ah~!
希望の歌と共に変身した私は、勇気をもって立ち向かった。今よりは希望があるはずの明日へ繋ぐために。私の背には神に救いを求め、逃げ遅れた無辜の民がいる。彼らを守るために、私が逃げる訳にはいかないんだ!
「ぎぎゃああ!」
「ハアッ!」
飛び掛かってきた怪物の喉元にアースクロッサーの銃口を突きつけ、容赦なく撃ち捨てる。突撃してきた怪物の腹部に十字架を突き刺し、しかし怪物に胸部に爪を穿たれながらそのまま力いっぱい押し飛ばす。戦い方なんてまるで知らない。周囲は怪物に囲まれた。だけど、それがなんだ。人々を守りたい心はここにある。それさえあれば、無敵です!そうですよね、セキカ様!
……セキカ様?
瞬間、変身が強制的に解除されて。アースクロッサーも、砂と消えた。呆然とする私の真上に、砂でできた女神像の様な姿のセキカ様が、いた。
「セキカ様!?何で、こんな所で変身を解かれたら、私は……!」
『あぁ…。人間って難しいですね。拙には理解できません。自分が生きねば誰も守れないというのに、自ら傷ついて知らない誰かを守る。私の聖女はそうであってはならない完璧な聖女でないといけないのです。道満の時の様な、同じ轍は踏みません』
「何を、言って……!?」
『マルタ・
見捨てられた、と理解するのに何秒かかったのか。瞬間、背中から鋭い突起で串刺しにされ、持ち上げられる。口から赤い液体が溢る。そんな、嘘だ。私は、ただ人々を救おうとして、誰かの盾になろうとして。それの、何がいけないのですか、セキカ様。私は、嫌だ、こんな所で、死にたくない、死にたくない。私は、聖女マルタの様な、皆に慕われ愛されるシスターに……
足で背中を潰され、右腕がむしり取られる。殴り飛ばされ、左足が曲がらない方向に折り曲がる。左腕は噛み千切られ、右足はまるで意に介さない巨体に潰された。右目を抉り取られ、泣き叫ぶしかない私は、怪物たちの群れの中に無造作に投げ捨てられて。
こんな世界にしたのは誰か。神以外にできるものなどない。
私をこんな目に遭わせたのは誰か。セキカ様だ。彼女が裏切らなければ、私は。
私が、慣れもしないのに死に物狂いで戦ったのは、何の為だ。私が、マルタであるからだ。
―――――神は死んだ
そう理解した時、深い絶望と怒りが込み上げてきた。それは、ドス黒いエネルギーとなって、怪物達に降り注ぎ、地獄の怨嗟を上げながら、私は怪物の群れに飲み込まれていった。
目を覚ます。何だ?この光景は。まるで、地獄か世紀末の様な……それに、身体も違和感がある。私は、どうなった?起き上がり、割れたガラス窓に身体を映す。そして、その事を後悔した。そこに映っていたのは、怪物だったのだから。それでも……と、立ち上がる。何年経ったかは知らないが、私の教会には困っている人々が、いるはずだから。私が導かなければ、私が……どの手で、導くんだろう?
そして、私が見たのは信じられない光景だった。知らない女が、一目見ればシスターですらないとわかる若い女が、シスターの格好をして子供たちとじゃれ合っている。しかもその傍らにあるのは忌々しい十字架、アースクロッサー。セキカ様は彼女を選んだというのか。そこにいたのは私だったんだ。神に裏切られなければ、そもそも戦わなければ!こんな姿になってまで、戻ってきたのに……なのに、コんナのアンまリジャなイか。帰るんだ、私の居場所へ。返せ!私の、すべてをッッ!!!!
「ウオォオオオオッ!!」
仮面ライダーグラセンドに変身したマヤと暴走するガオスが激突する最中に、トラッシュドライバーを拾い上げアトミックブロックに変身するトラッシュ。ガオスは両腕をガス化させて肥大化、そのまま振るって薙ぎ払い、グラセンドとトラッシュは同時に腕を交差してそれぞれガラスの爪とブロックグローブで防御するも、防御だけ擦り抜け内側で実体化するという神業で攻略され、同時に吹き飛ばされてしまった。
「ぐあっ!?」
「小手先はそのままか!相も変わらんと
「マヤ、お前って変身すると性格変わるのか……というか、まさかオガミを襲って負傷させた仮面ライダーってお前か!襲ってくるのお前がいるからじゃないだろうな!?」
「こっちだって上の命令だったの!それに私がいても、ガオスがここを襲うはずないよ!」
「どっちが素だよ…?」
「落ち着いたらこっちだよ。名前はグラセンド。おn……じゃないや、トラッシュ。ここは共闘するよ!」
「……それしかないな!信じるぞ、グラセンド!」
立ち上がり、ジャキンジャキンと刃を擦らせて火花を散らすグラセンドと、ブロックグローブを打ち鳴らすトラッシュ。そして前傾姿勢でガスの腕をゆらゆらと揺らしながら複眼を怪しく輝かせるガオス。瞬間、炎を纏った爪を交差して叩き込んだグラセンドと、トラッシュの渾身の拳を、ガオスは腕が膨れ上がったガスの壁で防ぎ、切り離して炎で起爆させ、大爆発を起こして二人を吹き飛ばした。
「ぐああああっ!?」
「ぐううっ!?やばっ!」
ガオスはそのまま下半身をガス化させて空に舞い上がり、膨れ上がった両腕を交互に伸ばして次々と拳を叩き込んでいき、反応できたグラセンドがトラッシュを空中で蹴り飛ばし、潰され猛攻を受ける。
「あ、よかった……無事で……あぐっ!?」
「グラセンド!なんで、そんな体を張って……くそっ!?」
全身のボディがさらに細かくひび割れて、ダウンするグラセンドに何度も何度も拳を叩きつける。なんとか両手をついて四つん這いで着地したトラッシュにも、右手でグラセンドを攻撃したままガオスは裏拳の要領で間髪入れず巨大に膨れ上がった拳を叩き込み、咄嗟に防御するもすり抜けて意味をなさず、教会の壁を突き破って転がるトラッシュ。
「うわああっ!?」
「え、怜二さん!?」
「何が、どうなって……」
「シスターは、まだ治療中で……」
「真夜姉は!?」
「みんな、逃げろ……!」
子供達がパニックに陥る中、モクモクとサイケデリックなガスが教会内部立ち込め、四つん這いの巨大なケモノを形作っていく。もうそこに、理性の欠片も感じない。巨大なガスのケモノとなったガオスがトラッシュに噛みつこうと首を伸ばし、噛みつく瞬間に実体化するタイミングを狙ってアッパーで殴り飛ばしながら、子供達とは反対方向に誘導するトラッシュ。すると、子供達の玩具であろうものが目に入り、トラッシュは咄嗟にトラッシュドライバーを取り外して吸いこませる。
「……メルがいない今、子供達に手は出させないぞ…!」
『ボン!トラッシュ!派手に吹っ飛びぃ!ハナビックリ!』
そうして生み出されたジャンクキューブを間髪入れず装填してハンドルを押し込み、変身したのはローカストゴミリオン戦以来となるハナビックリ。
「……アれは、おレたチを、イっそーしタ……」
教会の屋根の上から、四つん這いで持ってきたゴミリオンの腕を貪っていた、女の形をした怪物が、そうぼやく。トラウマなのか、若干震えていた。
「オガミ……俺はお前と、ゴミリオンとでも友達になれたと思っていたのに!」
「グウッ!?」
トラッシュのラリアットと共に丸い装甲、ハナビースに仕込まれた火薬が起爆し、ガスの身であるガオスは教会の壁を崩しながら吹き飛ばされる。自傷ダメージを受けながらトラッシュは、決して痛みからではない涙を、仮面の下で流していた。
『相棒……』
「ゴミリオンは、やっぱり……悪い奴しかいないのかよ!?」
「アァ……れいじ……?」
『トラッシュ!ハナビックラッシュ!…か~ぎや~!!!』
そんな悲痛の叫びと共にハンドルを三回押し込んだトラッシュは両腕を伸ばしてクルクル回転しながら、爆発により加速して高速回転しながら突撃。連鎖爆発が発生し、その全てを懐で受けたガオスは全身に引火。天高くトラッシュと共に打ち上げられ、大爆発。盛大な花火が灰色の雲を吹き飛ばし、青空に広がった。
「かーギギやー?」
ガクガクと顔を小刻みに揺らして首を傾げた女の怪物は、まるで飛蝗の様な跳躍で屋根の瓦を粉砕し、その場から去っていった。
「……はあ、はあ……」
「本当に無茶だよね、お……トラッシュは」
「グラセンド……」
変身が解け、満身創痍で落ちてきた所を、グラセンドに受け止められる怜二。変身を解いた真夜が取り出した包帯と塗り薬を手に、やけに手際よくテキパキと治療を行う。火傷ぐらいで済んだ怜二は、包帯に巻かれた姿で瓦礫に座って黄昏ていると、教会からメルとミカが出てきた。
「怜二!子供達から襲われたって聞いたけど、あたし達がいない間にいったい何が……」
「……その顔。何かあった?それに、落地真夜もボロボロね」
「……オガミが、乱心した。ここを襲ってきて、迎え撃った。自我がない怪物の様だった……」
「そんな……オガミさんが!?」
「フッ……所詮、そいつもゴミリオンだって、分かってたじゃない。珍しい事じゃないでしょ?」
「あいつは!オガミはそんな、やつじゃ……」
それ見た事かと、嘲笑うミカに言い返そうとして、襲われた当事者な為に言い窄める怜二。その後ろで、マヤがじっと様子を窺っている。
「氷室だって、悪い奴じゃ無かっただろ!?」
「一応、矜持を重視する男だってのは分かるわ。でも、今の氷室だって信用できないのよ。怒りに任せて殺戮をする様な男が、此処に運び込まれたあの女の子を始末する様に命令した……とても、しっくり来るわね」
「氷室は俺に託したんだぞ!それを……」
「私は、現在進行形で信用してないわ。これこそ、人間の心という物よ?」
「くっ……!」
『ライドラッシュ!マシントラッシュトライカー!』
そう言われて、悔し気に踵を返す怜二。バイクを召喚し、跨ってエンジンを吹かした。慌てて駆け寄るマヤを後部座席に乗せ、備え付けのヘルメットを共に被った怜二は告げる。
「俺、氷室の所に行ってくる!オガミを倒した事も伝えないとだし、真意を問い質す!」
「それは、火に油を注ぐだけだと思うわ」
「それでもだ!」
そう言ってフルスロットルで去っていく怜二とマヤを見送り、ミカはため息を吐き、嗤った。
「あれが、アイツの怒りに歪んだ顔……見れて良かったわ」
「ミカさん?あたしは看病に戻るけど……どうかしました?」
「別に何もないわよ。後、貴女に丁寧語は似合わないわね」
「そんな!?これでも頑張ってるんですよ!?」
幕引きが近づく。しかしそれは、決して主役だけではない。笑いながら、メルに歩み寄ろうとしたミカの脚が止まる。それは、決定的な分岐点。接近してくる「力」に、清愛美華は惹きつけられた。
「全てを……返せェエエエエエエッ!!」
「危ない!」
それにいち早く気づいたメルが、ミカの手を引いて抱き寄せて、それ……十字架状に輝くエネルギー体から逃れ、爆発。二人揃って吹き飛ばされた、そこに。異形が現れた。
端的に告げるならば、人型の陸亀だろうか。鈍い鋼色の鋭い甲殻の様な鱗を全身に纏った身体の各部に、無数の暗い紫色の十字架めいた装飾があり、両腕の物は甲殻と一体化して手甲の様な武器となり、背中の物は甲羅よりも大きく、それ自体が武器や盾代わりらしい。そして、ミカが惹きつけられた、可視化される程の膨大なゴミルギーは、先日メルが変異した両面宿儺ゴミリオンと、同じ類だと示していて。それ即ち“人間が変貌した”ゴミリオン。その名を、聖女の祈りにより倒された悪竜の名を冠する怪人、タラスクゴミリオン。
「……シスター・メルだけじゃない、という事ね。これは、誰でも有り得るのかしら?」
「言ってる場合ですか!あたし達で守らないと、子供たちやあの傷ついた女の子が!」
『この怪物……聖女よ、粛正するのです!ジャンクキューブ・クロス!』
「分かってるわよ。皆を今、見捨てるのは“仮面ライダー”のする事ではないから」
『ジャンクキューブ……セット……』
「ッ! グオオオオオオオッ!!!」
アースクロッサーを構えるメルと、デリートナックルを構えるミカ。タラスクゴミリオンが何に反応したのか雄たけびを上げる中、それを打ち消すように引き金が引かれ、正拳突きが放たれる。
「「変身!」」
『Ah~!Ah~!
『メキメキ……!バキン……!ジャンクラッシュ・デリート……!』
「仮面ライダーアース。祈りなさい。天罰を執行します!」
「仮面ライダーデリート。まあ……
アースとデリートが並び立ち、守るべきものを背にタラスクゴミリオンと激突した。
先代アース、マルタ・ドラン・エアリーブ登場。以前の両面宿儺ゴミリオンと同じタイプのタラスクゴミリオンに変貌です。
エコちゃん様とかもそうだけど、実はかなり自分勝手な神々。貴女は聖女です!ってスカウトしたのに、少しでもずれたらすぐ見捨てる「神」という超越者の鑑。
トラッシュ&グラセンドVSガオス。ガオスがだいぶチートだとよくわかる。任意で物理無効、防御不可能の擦り抜け攻撃、体積変化でケモノ型にもなれる。ガスなんで爆発には弱いので、ハナビックリがまさかの活躍でした。謎の女の正体も少しだけ示唆。
様子がおかしいミカ。氷室のもとに向かう怜二とマヤ。新旧聖女対決。お気に召していただけたら感想ならびに評価、お気に入りしてくれると嬉しいです。
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