第六十の清掃:砂の国の魔王
「待て待て母よ。九頭竜美の血縁とは聞いてなかったのだが?」
余裕綽々で聞こうと思ったら、爆弾発言が聞こえてきて席からずり落ちた六道が問いかけると、夢月は門の向こうで高速移動中なのか、背景を彼方にやりながら何でもない事の様に告げた。
「言ってませんし。そもそも、結構昔に作った子供の子孫なので、私も会ったことありませんでしたし?」
「なんだって!?母よ、それは聞き捨てならないぞ!?」
「捨我がうるさいので、いったん閉じますね。そちらでお会いしましょう」
そう言って夢月は門を閉じ、静寂が辺りを支配する。
「……とりあえずだ。瞳くん、私の警護はもういいから、そちらのシスターに治療を。子供達を安全な場所へ」
「了解です。はーい、みんなー。こっちだよー」
「お姉さん、目の下黒いよ?どうしたのー?」
「お姉さんが働き者だって証拠だよー」
子供の相手は慣れてるのか、アースクロッサーを抱えたメルを横抱きにしながら、子供たちを連れて社長室を出る瞳を見送り、ヒカリは横に視線を向ける。頭を抱えた竜美がいた。
「え、両親殺されてお爺様は亡くなって天涯孤独だったのに、ひいひいひいお婆様が生えてきた?しかも見た目は私より年下って、どういうことです?」
「そういえば口調も同じですね。最強なのも遺伝ですかね?ウケる」
「……エコちゃん様?」
『な、なんだろうか』
「あの夢月さまにこの世界に来れるようにしてもらったというのは本当なんですの?」
『あ、ああ……僕たち五女神は全員、古くからの友人でもある彼女に恩がある。そして逆に、僕らは彼女に主導権を握られている。彼女の気まぐれひとつで、僕たちはこの世に接触できなくなるだろう』
『あいつを見てると懐かしい気持ちになるぜ。なんでだ?』
「懐かしいって……ドッくんは、比較的最近に生まれたばかりじゃなかったの?」
『俺について何か知ってるかもな!』
「さて諸君。本題に戻ろう」
そう告げた六道に視線が集まる。最強と呼ばれる竜美に睨まれてなお、六道は怯まなかった。
「由々しき事態だ。食の要である北海道を守護していた雪鬼組は壊滅、リーダーである氷室蒼牙も連れ去られた。北海道を保護するべく、ローネとボロウとミラース、現在療養中のリーンを除く幹部全員にダストルーパー部隊をつけて送り込み、ゴミリオンを殲滅。雪鬼組の設備を確保してもらっている」
「食の要を横取りするつもりですか?六道」
「勘違いしないでもらいたい。氷室がいない今、誰かが北海道を守り、新東京都を始めとした日本中に安定した食を供給せねばならないのだ。ひとまず、我らが引き受ける。落ち着いたら、シスター・メルに委ねるつもりだ」
「中学生上がりの大人子供に委ねる時点で悪い大人ですね」
「竜美さまシスター・メルより年下……というか今高校生……いたぁ!?」
追求をのらりくらりと躱され、無駄口叩いたウララの脛を蹴る竜美。すると、悲鳴に反応したのか、怜二が目を覚ました。
「ここは……?俺、確か氷室と……」
「起きましたの!怜二!」
「怜二さん!よかった…!」
「かかか、仮面ライダー様と目が!目がぁ!」
「竜美さま、目が合っただけで狼狽えるようじゃ話にならないんで、座ってましょ?」
そう言って、竜美をウララが落ち着かせている間にヒカリとサラが、救援に駆け付けた事、氷室は連れ去られた事、メルたちが無事な事、夢月の事、今いるのがチリヅカの社長室だと伝える。すると怜二は、ゆっくりと視線を六道に向ける。
「……六道、博士」
「記憶が戻ったようだ。五年ぶりだな八多喜怜二。今は博士ではないがね。複雑そうな顔だな?」
「……あんたは、殺人までやらせておいてミラを見捨てたのか…?」
冷えた目で睨みつけてくる怜二に、怖気を感じた六道。その殺意を感じたのを、悟られないように顎に手をやり、とぼけて見せた。
「ふむ?確かに、スポンサーとなった雲街憂世の意向で、ミラは解雇したが……それと何の関係があるのかね?」
「ミラは、高校時代の俺の同級生だ」
「……それは初耳だ。申し訳ない事をした。彼女は優秀な社員だった。私も、彼女を失って悲しい」
「……じゃあ、ミラは。遺体を、氷室に預けてたんだ……蘇生できるかもって」
「現在北海道は鎮圧中で、まだ不明だ。もし見つけたなら、丁寧に弔おう。雲街憂世には、伝えない」
「……その言葉、信じるよ」
かつての同士である男の言葉に頷く怜二。神妙な顔で頷き、六道は続ける。
「RKSの諸君、葛柳会のお二方。まずは謝罪をさせて貰いたい。氷室を連れ去った二人組のゴミリオン……仮称「ヤトノカミゴミリオン」「ツチグモゴミリオン」はどちらも我が社に属する人間、掃除屋こと清愛美華と、旧ソ連から買い取った特殊部隊ホーロドニー・スメルチの隊長、エリィが変貌したものだ」
「人間が変貌……先日のダークトラッシュと同じですわ!?」
「ダークトラッシュがまた出たのか…!?」
「その事については、後回しにしてほしい。人為的に生み出した物ではなく、自然発生したものだ。この条件は今の所は不明だが……しかし、我が社には責任がある。氷室を連れ去った理由は不明で、今も何処に潜伏しているか分からないが、ゴミリオンとなった以上は我が社の敵だ。だが、我が社が誇る戦力は現在全て、北海道にいる。そこでだ、君達の力を貸して頂きたい」
そう言って頭を下げる六道に、先日の事もあって不服そうなヒカリとサラ。竜美に至っては、立てた親指を下に向けて、拒絶していた。ウララも苦笑いを浮かべる中、怜二は頷いた。
「……怒りに駆られて氷室を殺すところだった。でも、何かがおかしいんだ。もしかしたら、アイツの仕業じゃないかもしれない。それを確かめて、もし違ったら謝るためにも……俺は、氷室を取り返す。手伝わせてくれ、六道さん」
「……怜二がそう言うなら、手伝いますわ」
「二人がそう言うなら」
「チリヅカを手伝うのは御免ですが、仮面ライダー様の為なら火の中水の中、何処へでも!」
「竜美さまの意向に従うよ」
「素晴らしい!」
両手を広げ、満面の笑みを浮かべる六道。手にしたリモコンを押して、壁一面のディスプレイに何かの映像を表示させた。
「ここからが本題だ。これは本来、トップシークレットなのだが……先刻、此処を訪れたエジプトの王から宣戦布告された!」
その言葉に、視線を壁へ向けた怜二たち。映ったのは、監視カメラの映像だろうか。斜めになった社長室で、六道と一人の男が対峙していた。身長は二メートルはあるだろうか。筋骨隆々の浅黒い肌の大男で、恐らく金粉が塗り込まれているのだろう、編み込まれた長髪と黄金の鷹めいた目が特徴的な、白くゆったりとしたズボンを身につけた、上半身裸に金の装飾品を幾つも身に着けた、如何にも王と言わんばかりの出で立ちだ。
《「お初にお目にかかる。我が名は、サンドルフ・アメン・ラー。今代のエジプトを治める王である」》
《「旧時代に、栄華を誇った大国の王よ。お会いできて光栄だ。先日は、大量のジャンクキューブの買い取り、誠に感謝する。それで何用かな?」》
《「話は簡単だ。我が軍門に下れ、チリヅカ。ゴミルギーさえ手に入れれば、もはや下手に出る必要はなくなった。我が力を持って、世界を下す。その尖兵となるがいい」》
《「……立場を分かって言ってるのかい?ただでさえ砂漠の国だ。我が国からの供給が無くなれば、滅ぶのは其方だ。ゴミルギーだけ手にした所で、それを転用できる
《「力ならある……魔女から頂いた、魔王たる力が。我、遂に力を得たり。故に我こそが、この国を。行く行くは、世界の全てを手に入れよう。今の我には、そうするだけの資格があるのだ。一日だけやる。我はホテル・チリヅカのスイートルームで待つ。よくよく考えることだ」》
《「魔女だって…?いや、それよりも……逃がすと思っているのか?」》
画面の中の六道が手を上げると、それが合図だったのか複数のダストルーパーが社長室に入り込み、銃口をサンドルフに向ける。それに対し、サンドルフは肩を竦めた。
《「君が、何も持って来ていない事は、身体検査で分かっている。宣戦布告にしても、場所を考えてやるべきだったな」》
《「部下を用意してたのが、お前だけだと思うのか?生憎と此方は、我が妻達だがな……!」》
瞬間、天井を貫いて六筋の光柱がサンドルフを囲む様に降り注ぎ、六つの人影が現れる。猫・牛・兎・蠍・獅子・コブラの特徴をそれぞれ有した、色とりどりの褐色美女六人に狼狽えるダストルーパーたち。美女六人は、全く同じ形をした四角錐状の穴が開いている円形のバックルを取り出すと、腰に装着。鎖が巻かれる様にベルトが現れ、それぞれ取り出したピラミッドを思わせる白銀の四角錐状のアイテムをバックルに装填。一回転させると、四角錐状のアイテムの底面に刻まれた、それぞれの動物のエンブレムが輝いた。
『『『『『『オラクルドライバー!ジャンクフォース・イン』』』』』』
《「「「「「「変身」」」」」」》
『オラクル・ゴッデス……バステト!』
『オラクル・ゴッデス……ハトホル!』
『オラクル・ゴッデス……ウェネト!』
『オラクル・ゴッデス……セクメト!』
『オラクル・ゴッデス……セルケト!』
『オラクル・ゴッデス……ウアジェト!』
発光と共に六人の仮面ライダーが、サンドルフを中心に現れる。それぞれの動物の特徴を有した仮面ライダー六人は、一瞬の内に全てのダストルーパーを戦闘不能に追い込み、サンドルフを中心に侍りながら、変身を解除した。
《「アーシャたちはドルフが大好きなんだニャ〜」》
《「パワーこそが正義なのだ!」》
《「ウフッ♡美味しそうな子がいっぱい……♡」》
《「ふわぁ〜とりあえず、適当に行きましょうよ〜」》
《「アンタ達如きが、ドルフ様に勝てる訳ないじゃない……!」》
《「この大きくなった自慢のボディで、相手してやるアル」》
猫の美女はサンドルフの肩に顎を乗せてニマニマ笑い、牛の美女は好戦的に拳を打ち付け、兎の美女は舌なめずり、獅子の美女は欠伸を行い、蠍の美女は六道を睨みつけ、コブラの美女はふんぞり返ると、サンドルフに2つのアイテムを差し出した。
《「エジプトの神性だと……!?水の女神たちとは違う、人間の体に憑依して融合する事で、顕現しているのか…!?」》
《「その通りだ。六人の女神が、我が妻である。そして……変身」》
『デザードライバー!ジャンクフォース・イン』
六人の美女を侍らせ、砂時計を模したパーツがついた円盤型のバックルを腰に取り付け、鎖が巻きつく様にベルトを展開。黄金の四角錐状のアイテムを取り出すと砂時計部分の上部に装填、猫の美女を始めに美女達が離れたサンドルフを中心に、砂時計を思わせる形状のエネルギー・オブジェクトが形成。バックルをひっくり返すと砂……の様に見えたゴミルギーの粉塵が落ちていき、同時にエネルギー・オブジェクトも回転してサンドルフにゴミルギーの粉塵が降り注いで、アーマーを形作っていく。
『デザートゥギャザー!涸れ、渇き、裁く……デザートラッシュ……』
荘厳な音声と共に現れたのは、逆さにしたピラミッドに三つ小さなピラミッドを乗せて王冠を模している頭部と、逆三角形のアーマー・ピラミッドを模した腰布が特徴的な、四角い部分がピラミッドの如く黄金の三角形になって、王を思わせる様なトラッシュめいた仮面ライダーだった。蒼い三角の複眼を輝かせ、赤いマントを背中に展開した魔王が名乗る。
《「仮面ライダーデザートラッシュ。理解したか?砂漠の如き絶望を。これより、我等が世界を支配する!」》
そう言ってデザートラッシュは、右手を振るって砂塵を巻き起こし、美女達も巻き込んで砂塵の竜巻となって天井を突き破り、飛び立って行く。其処で映像は途切れた。怜二は思わず上を見る。よく見れば、応急処置の跡があった。
「……と言う訳だ。割と本気で、世界の危機が迫っている」
「やべーですわね!?」
『あれはマジもんの神性だね。エジプトと言えば、数多くの神がいる土地ではあるけど、それが六体はヤバいよ。うん、ヤバい』
「エコちゃん様の語弊が死んでる……」
「……今までは私と氷室で日本を守ってた訳ですが、ちょっと手こずりそうですね」
「ゴミリオンだけでも厄介なのに、外国の仮面ライダーか……いや待て、なんで外国の人間が仮面ライダーの力を?」
六道の溜め息に、ヒカリ、エコちゃん様、サラ、竜美、怜二が続く。六道は先程まで“門”が開いていた場所に視線を向ける。
「私の知る限り、仮面ライダーの力を与えられる魔女なんて、一人しか知らない。そうだろう?我が母よ」
「えっと……弁明させてください?と私は釈明を要求します」
話を聞いていたのか、再び“門”が開く。其処には、申し訳なさそうな顔の夢月が、ホーキーストライカーの上で縮こまっていた。
仮面ライダーデザートラッシュ、仮面ライダーバステト、仮面ライダーハトホル、仮面ライダーウェネト、仮面ライダーセクメト、仮面ライダーセルケト、仮面ライダーウアジェト登場。
ジャンクキューブ、ジャンクオーブ、ジャンクリングに並ぶ新アイテム「ジャンクフォース」で変身する仮面ライダーです。デザートラッシュのモデルはベルト含めて最高最善の魔王です。デザートゥギャザーっていうファンキーな音声は「砂漠と共に」って意味。デザートラッシュがファラオで他の六人はエジプトの女神たちです。地味にスイセンたち以外にもちゃんと神がいると明かされました。
六道を信頼している怜二。北海道はひとまずチリヅカが制圧中。
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