エコー誕生から一週間後の話。楽しんでいただけたら幸いです。
第八の清掃:死を招く下駄の音
現日本郊外、元本州神奈川の横浜ランドマークタワー跡地。
「これ、喰ってもいいのか?」
「ああ、好きにしてくれ。ゴミは喰われて餌にでもなった方がマシだ。そうだろう?」
「ふ、ふざけんな!」
激高して殴りかかったハシリターの男の拳を受け止め、握りつぶしたのは、顔が青を基調とした派手に塗られたマンドリルの意匠を持つゴミで形成された怪人、マンドリルゴミリオン。その横で、マンドリルゴミリオンにハシリターたちを襲わせた張本人である人物は嗤って、拳を握りつぶされ絶叫を上げる男を前蹴りで顔面を蹴り飛ばした。
「ぎ、ざまあ……いでええよお……」
「ゴミがやかましい。生きてても死んでも邪魔なお前たちが役に立つんだから喜んで糧になれよ」
『旦那。他の清掃員が来たようだ』
「ああ、タイムオーバーか」
すると、影が見えず響いた第三者の声に、その人物はため息を吐くと、懐から赤と白の鼻緒が付けられた灰色に塗られたメカニカルな二枚歯の下駄の様なものを二つ取り出すと、歯を重ね合わせて両端に引いて重ね合わせバックルの様なもの…ゲッタドライバーにすると、腰に取り付け鼻緒を模した捩じられたベルトが伸びて巻き付いた。
『ゲッタドライバ―!』
「ゴミリオンさんよ。いつもの頼むわ」
「いいぞ」
『ジャンクキューブ…ゲッタ!』
「これこれえ。変身」
マンドリルゴミリオンに手を差し出し、手渡された指で摘まめるほど小型のジャンクキューブを受け取ると、ゲッタドライバ―の歯を重ね合わせたことにより生じた隙間に放り込む。そして紅白の鼻緒型のハンドルを引いて挟むことでジャンクキューブを破壊すると、溢れたエネルギーが鼻緒の様な形状となり巻き付く様にその人物を包み込んだ。
『ケタケタ!ケッタ!ゲタゲタ!ゲタ!ゲッター!』
現れたのは、下駄を模した肩の装甲と鼻緒を模した注連縄にも似た胸部アーマー、藍色の袴を履いて脚が下駄の形状になっているのが特徴的な、Vの字の形状にした長方形のベージュ色の複眼を持つ仮面ライダーだった。カランコロンと足音を立てながら歩み寄ることで、男や逃げようとしていたハシリターたちを威圧する。
「ここからは第二の掃除屋、仮面ライダーゲッタだ。今から殺すけど、よろしくな!」
「待っ……」
瞬間、蹴り飛ばされた男の姿がかき消え、チャリンと音が響いたと同時に残りのハシリターたちから悲鳴が上がる。ゲッタはそれを首を傾げるようにして感情を感じさせない複眼で見ながら、カランコロンと足音を立てて追いかけ、その足を振った瞬間チャリンと言う音を上げてハシリターたちが消えていく。
「キヨミズの清掃員だ!ハシリターたちはここか……!?」
「うぇるかーむ」
そこに駆け付けた、“チリヅカ”には及ばないもののナンバー2の実績を持つ「キヨミズ・カンパニー」の清掃員たち。最近ゴミ捨て場を中心に現れる謎の怪人を相手にするために、正規の清掃員の標準装備になってる高圧の水を発射できる“水鉄砲”で武装している。しかし、そこにいるのはハシリターではなく、手をちょいちょいと動かして挑発するマンドリルゴミリオンその人。咄嗟に“水鉄砲”を向ける清掃員の横から、闇に潜んでいたゲッタが襲い掛かる。
「なっ…仮面ライダー!?」
「そうそう、仮面ライダー。悪く思うなよ?」
チャリン、チャリン、と音を立てて次々と清掃員も消えていく。そして最後に残った新人と思われる清掃員が慌てて逃げていくのをわざと見逃し、拾い上げたそれを集めていくゲッタ。その横で、マンドリルゴミリオンが何かを咀嚼している。
「これからも頼むぜ、相棒?」
「お前は悪い奴だが、役に立つゴミは嫌いじゃないぞ」
ゲラゲラゲラ!と悪意の笑いが轟き渡る。その翌日、新聞には「あの正義のヒーロー、仮面ライダーが殺戮か!?」という見出しの号外が出されたのは、言うまでもない。
夢を見た。燃え盛りゴミに溢れていく市街。天を仰ぐほどの異形の巨人。それに立ち向かう一人の戦士。そのあまりに巨大な腕の上に乗って駆け上り、次々と生えてくる腕を千切っては投げ、千切っては投げてただひたすら頭部に目掛けて突き進む。角の生えた赤色に光輝く巨大な眼の顔がこちらを睨んで咆哮を上げて極太ビームを口から放ち……それに飛び込んだ戦士の拳が、その頭部を殴りぬいた。
「……夢か」
胸を押さえながら布団から起き上った。また同じ夢だ。五年前からずっと見続けている悪夢。一体何なんだこれは。熱で焼ける激痛までダイレクトに伝わってくる。夢のはずなのに。
『相棒?大丈夫か?』
「……大丈夫だよ、トラ」
俺を心配して声をかけてくれた枕元に置いてあるトラを安心させるように撫でる。トラ、とは。ヒカリがエコードライバーのことを「エコちゃん様」と呼ぶもんだから羨ましがってトラッシュドライバーが俺にも名付けてくれと言ったので付けた愛称だ。ほら、なんか喋り方と言い虎を思わせないか?なんて。
「いつもの酷い悪夢を見ただけだ。俺は大丈夫」
『でもよ、バイタルが異常を示してるぜ。精神をゴリゴリ削られているはずだ』
「この間の毒よりはましだよ」
ヒカリが仮面ライダーエコーに変身してから一週間がたった。あれから出てくるゴミリオンを、デリートが来るよりも先に二人で倒し、無事資格を得たヒカリと一緒に清掃員として掃除を行う日々だ。ヒカリはこの日々が充実している様で、いつも輝くような笑みを浮かべていた。少し羨ましいな。
「怜二!怜二!号外ですわ!?」
『ヒカリ、ボクを振り回すのはやめてくれ』
すると、扉を開けて焦った様子のヒカリが入ってきた。高校生であるがゆえに俺より早起きでいつもご飯を作ってくれている。最初はひどいものだったが。何事かと視線を向ければ、その手には新聞とエコちゃん様が握られていて、ヒカリは新聞を開いて見せてきた。
「なになに……“あの正義のヒーロー、仮面ライダーが殺戮か!?”…はっ!?」
『おいおい、なんの冗談だ?』
仮面ライダー、とは世間一般ではデリートのことを指す。今では俺やヒカリ、トラッシュとエコーも知名度は上がっているが、それでも仮面ライダーという名は怪物から人間を守る正義の味方として浸透している。それが、殺戮!?
「貸してくれ!なになに……唯一生き残ったキヨミズの清掃員が語る!非道で残虐な仮面ライダーの正体!怪物と共謀してキヨミズの清掃員やハシリターを惨殺……だと?なんの冗談だ?」
「あの掃除屋という方がやらかしましたの!?」
「……いや、あいつはそんなことはやらないと思う。仮面ライダーを名乗ってゴミリオンと共謀している悪い奴がいるんだ。なにが狙いかはわからないが……」
「そんな……ふざけたやつがいたもんですわ!」
「神奈川県に出たらしいな。……行くか」
俺は起き上がり、着替えよう……として、興味深げなヒカリの視線に気づいてやめる。じっと見つめると、扉を閉めて外に出てくれた。
「失礼しましたわ。……私のホーキージャベリンで行きますの?」
「いや、さすがに目立つからバイクだな。どうしたものか、レンタルでもするか?」
『あ、それなら俺に任せてくれ。ほら、前にバイクをもとにしたジャンクキューブがあっただろ?』
「これか?」
デリートのをもとにして手作りしたキューブホルダーから、それを取り出す。タイヤの痕跡なのかゴムらしい部位があるのが特徴だ。
『外に出て使ってくれ相棒!』
「ああ、わかった」
清掃員の正装であるツナギに着替えて外に出る。ヒカリもいつの間にかツナギ姿に着替えてついてきた。俺は言われた通りに、トラッシュドライバーを腰に取り付けジャンクキューブ「バイク」を装填、ハンドルを押し込む。
『ライドラッシュ!マシントラッシュトライカー!』
「お、おお!?」
すると、アトミックブロックを模しているのか四角い部位が目立つロードバイクが目の前に形成され、どしんと音を立てて着地した。
「こんなこともできるのか…」
『運転は任せたぜ!相棒!』
『ヒカリ、しっかり掴まるんだよ』
「わかってますわ!」
そうして俺達は、新東京都を出て神奈川を目指して出発するのだった。
仮面ライダーゲッタとマンドリルゴミリオン、そしてマシントラッシュトライカー登場。怜二にもなにかあるようで?
下駄がモチーフのライダーはさすがに史上初だと思いたい。裏モチーフは鬼太郎です。
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