激突!! ゲッター対ガイアー   作:いぶりがっこ

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第十三話

「ウラエヌス…… 逝ったか」

 

ほの暗いコックピットの内部で、オールバックの男が深い溜息を漏らす。

手元のスイッチを切ると、ザーッ、という砂嵐のノイズが掻き消え、室内には静寂が戻った。

 

第五神体・ウラエヌスとの通信が途絶えてから、既に五時間。

 

最後に発せられた仲間の言葉と、直後の強烈な爆音から推測すれば、

ガイアーとの戦いに敗れたウラエヌスが、

搭載していた核爆弾の使用に踏み切った事は明白だった。

 

だが、今や夜明けを迎えようと言う時間帯になっても、

一向に地上は消滅する気配を見せない。

 

「つまりウラエヌスは、ガイアーの破壊は不可能と判断して、

 秋の島新島の爆破に踏み切った、と言う事か……」

 

誰に聞かせるでも無く、監視者の男が呟く。

最上の形とは呼べぬものの、それでも現状、監視者達の計画は予定通りに進んでいた。

 

まず第一段階、先行して日本に到着した男の神体【ラー】がマーズ達と接触し、

東京に攻撃を加えるとみせてゲッターを引き離し、両者を分断して時間を稼ぐ。

その間、残る神体・ウラエヌスは、

秋の島新島へと急行し、身動きのとれない再生中のマーズを襲う。

 

最悪、マーズが回復し、ガイアーの破壊が不可能となった時は、

秋の島新島に核攻撃を敢行し、マーズの拠点を奪う……。

 

ガイアーの奇襲により深刻なダメージを受けながらも、ウラエヌスは自らの任務を全うした。

残る神体は、ラーただ一機、ラーとガイアーのどちらが滅んでも、地球は消滅する。

人類抹殺を目指す監視者達の決死の戦いは、ついにその実現を間近にしていた。

 

「――だが、奴との決戦の前に、全ての不確定要素を取り除いておこう」

 

監視者達の計画に大きな波乱を与えた、異世界からの乱入者・ゲッターロボ。

 

ウラエヌス到着の時間を稼ぐため、ラーは、かの真紅の悪魔を相手に、

東京、名古屋、大阪と舞台を変えながら、散発的な戦闘を繰り返していた。

そして接触の結果、

ゲッターには既に神体に抵抗するだけの力は残っていないと、男は判断していた。

 

東より高速で接近する物体をレーダーに捉え、男が装置を動かす。

オブジェクトのように動きを停止していた黒球が、魔法のように音も無く宙に浮き、

ガシャリと開いた各部のハッチから、銀色の触手がニョキリと生え揃う。

 

「さあ、どうしたゲッター! この広島の地を、丸ごと焼き払われたいのか!?」

 

男の操作に合わせ、六本の触手はまうで生物のように自在にうねり、白色の輝きを灯し始め、

閃光と共に放電現象を巻き起こしては、無人と化した広島の中心地を丸ごと薙ぎ払っていく。

 

「うるせぇ! ちょこまかと逃げ回りやがって」

 

「来たか、ゲッター!」

 

「うおお! ゲッタービィームッ!!」

 

真紅の流星をカメラに捉え、黒球が放電を止め、周囲にバリヤーを展開する。

直後、視界を白色に染める一条の矢が、黒球目掛けて一直線に放たれる。

バシュゥッ、という音と共に二つのエネルギーが炸裂し、なお強烈な光が一面に広がる。

 

強烈な力の奔流は障壁の対消滅を引き起こし、

両エネルギーが掻き消え、不意に視界に朝焼け空が戻る。

間髪を入れず、アークの悪魔の如き異様がラーの目前へと迫る。

 

「バトルショットカッタァーッ!」

 

「バリアを貫いただと? ……だが!」

 

拓馬の叫びに合わせ、アークの右腕の分厚い刃がラーを襲う。

広島の空にギンッ、という金属音が響き……、

 

やがて、ズンッという重低音を鳴らし、

根元より圧し折れた無骨な刃が、無人のビルに突き刺さった。

 

 

「クソッ! カッターが…… うっ!?」

 

「フフ、惜しかったな、ゲッター、

 その程度の刃では、タイタンはいざ知らず、このラーには通用せんぞ」

 

対手が反動でよろめいた隙を突き、ラーの触手がアークの右足を絡め捕る。

 

元々、ラーは神体の中でも、特に堅牢な装甲を有する機体である。

間隙の無い球面のボディは衝撃を分散させ、相手につけいる術を与えない。

それでも、仮にアークが戦斧を有した万全の状態であったなら、

ある程度のダメージは見込めたであろうが……。

 

「ぐッ ぐあああァァッ!?」

 

「電撃か……! ううッ! やべェぞ、拓馬」

 

触手が力強い動きで翻り、

右足を一本釣りにされたアークが宙に舞い、近くのビルへと叩きつけられる。

高電圧でショートしたアークに、崩れ落ちるコンクリートが容赦なく降り注ぐ。

尚も瓦礫の山から身を起こそうとするアークの頭上に、黒球の威容が影を成す。

 

直後、黒球が一個の砲丸と化し、急降下してアークを襲う。

ドゴン、という轟音が炸裂し、衝撃でくの字に折れ曲がったアークが大地にめり込む。

 

「フハハ! どうしたゲッター! お前の力はそんなものか?」

 

「ぐあっ! な、なめんじゃぁねぇ!」

 

全身のダメージをものともせず、万力を込めて押し返そうとするアークの虚を突き、

黒球はふわりと浮きあがると、再び加速をかけ、

その全身を、幾度も幾度も幾度も容赦なく叩きつける。

 

爆音がテンポよく無人の都市に響き、

衝撃でアークの頭部がひしゃげ、前面の装甲が砕け散り、

肩口からドス黒いオイルが吹き出し、ねじ曲がった肘先から火花が散る。

 

やがて、痙攣するアークが反攻の余地を失った事を確認すると、

黒球は音も無く飛び上がり、遥か上空で静止した。

 

「ゲッターよ、貴様が我ら六神体を相手取り、

 単独でここまで戦い抜いた事、最後に見事と言っておこう!

 だが、ここまでだ! 貴様はこのヒロシマの地で、人類の業の深さを知って滅ぶのだ」

 

「なんだと?」

 

「お、おい! 拓馬、アレは……」

 

キリキリと言う音と共にラーの底部が観音開きを始め、

アームで固定されたラグビーボール状の鉄塊がゆっくりと姿を見せる。

 

ヒロシマ、人間の業、滅亡――。

監視者の言葉が、拓馬の脳内で一つの答えを導き出す。

 

「……まさか!?」

 

「さあ、地球が滅ぶ前に、まずは貴様を地獄に送ってやる、ゲッター!」

 

ガタン、とアームがひとつ大きく揺れ、黒色のラグビーボールが自由落下を始める。

 

「うおおおおォォ―――ッ!!」

 

かろうじて上体を起こしたアークだが、翼を広げ損ね、大きくたたらを踏む。

片膝を付いたアークの上に、ゆっくりと黒色の爆弾が迫る。

 

――と、

 

不意に、爆弾の動きが緩やかになり、中空でピタリと静止すろ。

一同があっけにとられるなか、

爆弾は地上の細かな瓦礫を巻き込みながら、ゆっくりと上昇を始めていく。

 

「これは……、アイツの重力装置、か?」

 

「しまった!? 来たのか、ガイアー!」

 

爆弾の行方をラーが見上げる。

上空には既に、両腕を掲げて爆弾を迎え入れる巨神の姿があった。

 

「今だ! ガイアー、核を安全な所まで運ぶんだ!」

 

「くっ、どこだ! マーズ!」

 

慌てた監視者が地上を見渡す。

しかし、マーズは一面の瓦礫の中へと巧みに身を隠しているようで、

姿を捉えるのは容易ではない。

その間にも、爆弾を抱えたガイアーは見る見る上空へと飛び去っていく。

 

「くそっ、核を大気圏外に捨て去る気か! ……ならば!」

 

キッと上空を見上げ、監視者が手元のスイッチを動かす。

黒球はただちに加速を始め、驚くべき急上昇でガイアーの行方を追った。

 

「アイツ、一体なにをする気なんだ?」

 

「分からねぇ、だが…… ヤツを追うぞ、獏」

 

「待て! アイツをこれ以上追撃してはダメだッ!」

 

「――ッ!? マーズかッ!」

 

かろうじて体勢を立て直し、上空へ飛ばんとしたアークの足元に、マーズが姿を現す。

 

「ヤツを追うな、とは、どう言う事だ?」

 

「今は詳しい事情を話している暇はない。

 だが、六神体すべてが全滅した時、ガイアーの爆弾が起動してしまう事が判ったんだ」

 

「な、何だと!?」

 

「神体は残り一体…… ヤツを倒してしまうと、自動的に地球は消滅する!」

 

「だ、だが、それじゃあ、打つ手がないじゃねぇか……?」

 

弱気な獏の言葉に、マーズが沈黙する。

しばし、静寂が周囲を包んだが、やがて拓馬が、はっとした表情で頭上を見上げた。

 

「ダメだッ! やはりここは、アイツを追い駆けるぞ!」

 

「拓馬!」

 

「マーズ、アイツは核を奪い返して、そのまま自爆する気かもしれねぇ!」

 

「!?」

 

望外の拓馬の言葉に、マーズが目を見張る。

確かに、監視者たちの狙いはあくまで地球の消滅であり、

マーズの抹殺は手段の一つに過ぎない。

神体が残り一体となった現在、

自らの兵器による自爆は、乱暴だが最も効率の良い裏技と言えた。

 

「だが! どうやってヤツを追撃しようって言うんだ?

 ゲッターは、もう……」

 

「へっ、ゲッターの本気は、これからさ!!」

 

「ああ! やってやれ、拓馬!」

 

アークが大きく腰を落とし、両腕を広げて静止する。

大きくひしゃげた頭部の。かろうじて残っていた隻眼に光が宿り、

やがて、半ば骨格標本と化した胸元から、緑色の輝きがあふれ出す。

ギュイイイィィィンという機械音と共に、

高温の蒸気がマーズを吹きつけ、奇妙な高揚感が辺りを包む。

 

「もっとだ! こんなもんじゃねぇだろう、アーク!

 残りのゲッター線エネルギーを、ありったけ炉心に注ぎ込め!!」

 

「――ッ! 無茶をするな、拓馬!

 それに、そんなボディで大気圏外に出たら……」

 

「構わねぇ! やれッ!!」

 

「うおおおおッ! 行けッ、いけぇッ! アーク!!」

 

マーズの叫びも空しく、炉心をフル回転させたゲッターが、八枚の翼を雄大に広げる。

緑色の輝きに包まれ、あたかも一個の生命のように胎動する悪魔の姿に、

ぞくり、とマーズの本能が震える。

直後、衝撃と熱風を吹き上げながら、緑色の流星が、天空を目指し一条の光となった。

 

 

「我ながら迂闊だったものだ。

 ガイアーに核を奪われるまで、この手段を思い付かなかったのだからな」

 

高速飛行を続ける神体の中で、監視者が自嘲の笑みを漏らす。

マーズ達は知らない事だが、ガイアーの爆発条件は、

六神体の『外部からの破壊』でなければならない。

 

自爆や内部からの攻撃では、神体の故障と判断され、ガイアー体内の爆弾は起動しない。

その意味で、一度投下した核に自身をぶつけるというのは、まさしく考慮外の裏技であった。

 

尤も、装甲の厚さでは六神体随一を誇るラーである。

下手をすれば、機体を破壊し損なって、貴重な核を無駄にするだけかもしれない。

仮に思い付いていたとしても、

現実に核を奪われるような事態にならなければ、実行しない策であったろう。

 

「む! しまった、間に合わなかったか!?」

 

監視者がモニター越し舌打ちをする。

宙の彼方に捉えたガイアーは、既に爆発寸前となった核を投下した所であった。

 

「まだだ! こうなれば、核爆発の中心に飛び込んで――」

 

その時、不意に機内に警報が鳴り響いた。

慌てた監視者が省みたレーダーに映っていたのは、

通常兵器にあるまじき加速で、神体に肉薄する熱源であった。

 

「な、何だッ!? こんな物体は、つい先刻まで……」

 

「ジ ャ マ だ あ ア ァ ア ア ア ァ ァ ―――ッ!!」

 

男には驚く暇さえなかった。

一瞬の内に地上から駆け上がってきた緑色の稲妻が、

強烈な衝撃波と共に神体を追い抜き、眼前へと立ちはだかる。

 

「げえっ!? ゲ、ゲッターッ!」

 

「うおああああ――ッ!!」

 

息つく暇もなく、再び雷光と貸した悪魔が神体を襲う。

ゲッター炉心のフルパワーがもたらした強烈な一蹴りにより、

最強の神体は勢いよく弾き飛ばされ、重力に惹かれるままに、急速に地上へと落下していく。

 

「ゲ、ゲッタアアァアァァ――!!」

 

監視者の彷徨。

だが、敵を重力圏へと叩き落したゲッターにも、それに応える余裕は無かった。

 

渾身の一撃を叩き込むと同時に、衝撃でアークの各部位を支えていた関節が砕け、

人形の糸が切れたかのように、アークが機能を停止する。

 

ラーとは逆に、反動で重力圏から突き飛ばされた巨体は、

成すすべも無く地球から遠ざかっていく。

慣性に流されるままとなった二人の前に、

忌まわしき、黒色のラグビーボールがゆっくりと近付いてくる。

 

「くそっ、今度ばかりは……」

 

「仕方がねぇな、すまねぇ、獏……」

 

拓馬の眼前で、鉄塊が一瞬、終わりを告げる閃光をあげる。

 

「クソったれぇ! 地球を頼むぜッ マーズゥッ!!」

 

閃光は瞬く間に周囲を白色に包み、やがて、全ての音を奪い去った……。

 

 

「な、何だ……? 僕は一体、何を見ているんだ?」

 

突然の異常事態に、マーズが驚きの呻きを漏らす。

彼は広島の大地から、アークが核の閃光の渦に飲み込まれる様を見ていた。

勿論、本来ならばそんな事ができるはずも無い。

地上から捉える事ができるのは、

朝焼けの空に星のように煌く、爆発の残滓が精々といったところであろう。

 

だがこの時、彼の体は地上にありながら、手を伸ばせば届きそうな位置にアークを捉え、

眩いばかりの閃光を瞼の裏に感じていたのだ。

 

(これは…… この視界は僕のものではないのか?

 まるで、何者かが目にしている光景を、ダイレクトに脳に送られているように……)

 

我が身を襲った異変に戸惑いながらも、光が薄れていくのを感じたマーズが瞳を開ける。

この高熱の中、すでに大破寸前だったゲッターが無事である筈も無いが、

せめて、その痕跡だけでも探そうと、必死になって目を凝らす。

 

(……なんだ? あの光)

 

白一色の世界の中に、ポツンと浮かんだ緑の点に、マーズが視線を落とす。

美しくもおぞましい輝きが、光の収束と共に、徐々に鮮明なものとなっていく。

 

(あれは…… ゲッター……?)

 

 

(獏…… こいつは、一体……?)

 

(わ、わからねぇ、 俺に聞くなよ……?)

 

コックピットの中で、二人が呆然と言葉を漏らす。

眩いばかりの閃光に、彼岸を感じて瞳を開けてみれば、そこはいまだ核の放つ輝きの中で

にも拘らず、シートも計器も蕩けもせずに、そこに存在した。

モニターの先では、鋼すら溶かす超高熱の輝きから守るように、

緑色のヴェールが視界を包んでいた。

 

(なあ獏…… 何だかこの光、ガイアーに似てないか?)

 

(まさか! 緑色のコイツは、ゲッター線のバリヤーだとでも言うのか!?

 だが、俺たちは一切の操縦をしていないし、それに、そんなをエネルギーどこから……)

 

そこまで言いかけて、モニターを見た獏が気付いた。

力の全てを使い果たした筈のアークの炉心に、膨大なエネルギーが注ぎ込まれているのを。

 

(翼だ! 拓馬、

 背中の八枚の翼が、宇宙に満ちたゲッター線を取り込んでいるんだ!?)

 

(何だと! だが、神さんはそんな能力の事は一言も言わなかったぞ)

 

(……もしかしたら、アークを建造した研究所のヤツらすらも、

 こんな能力が備わっている事を知らなかったんじゃないか?)

 

(そんな筈が……)

 

だが、目の前の現実に対し、二人にそれ以上の推測が出来る筈も無い。

呆然とモニターを見つめる二人の前で、緑のヴェールが怪しいうねりを見せ始め、

やがて、映画のスクリーンのように、奇妙な映像を投影し始めた……。

 

 

『百鬼帝国 これで最後だ!』

 

『太陽のおかげでエネルギーが上昇しているぜ!!』

 

(な、なんだ!? この映像は)

 

アークの周囲の宇宙がうねり、

拓馬達の眼前で、別の宇宙、異なる戦いが次々に展開されていく。

視線の先、太陽の如き金色の輝きを纏ったゲッターが、

己の体をエネルギーそのものとして、巨大な戦艦めがけ、流星となって突っ込んでいく。

 

『ゲッター最後の武器 シャインスパーク!!』

 

ゲッターの全身より放たれた一撃は、

小型の太陽のように戦艦を包み、やがて閃光が周囲に満ちる。

 

(シャインスパーク…… スゲェ威力だ……

 やっぱりゲッターは、宇宙で戦うための潜在能力を備えているのか……?)

 

(……親父)

 

 

 

 

 

『さあ、旅立ちだ!!』

 

(兄貴!?)

 

視界が再びうねり、モニターに現れた坊主頭の少年に、獏が驚愕する。

その少年の名はタイール、十数年前にゲッターを導き、地球の危機を退けた謎の少年。

そして、写真や映像でしか知らない、山岸獏の実の兄であった。

 

(敵を…… 喰っている。 あれも、あれもゲッターなのか?)

 

いや、その様は喰うと言うよりも、同化すると言ったほうが正解に近いかもしれない。

強大な敵を丸ごと取り込み、機械の概念すら超えた鋼鉄の生命が、

一つのエネルギーとなって虚空と飛び立っていく。

 

 

『友よ、また会おう!』

 

 

遥か虚空に、一個の意思となった男達の声が響き渡った……。

 

 

 

 

 

『エンペラー、敵がサードムーンから出撃してきます』

 

『まかせろ! 月ごと吹き飛ばしてやる!!』

 

(うっ!?)

 

眩い閃光と共に再び視界が揺らぎ、

気が付いたときには、二人は凄惨なる宇宙戦争の渦中にあった。

人知を超えた凄まじい兵器の数々、虚空を覆いつくさんばかりゲッター達。

 

そして……

 

『ああ、ダビィーンが押し潰されるッ!?』

 

『ゲッター線指数が上がっていく!

 ウォォ、この指数はビッグバンを引き起こすだけの!?』

 

 

『 チ ェ ー ン ジ   ゲ ッ タ ー エ ン ペ ラー !!』

 

 

(エンペラー!?)

 

そして……、星一つを押し潰しながら合体を敢行する、究極のゲッターの姿。

 

拓馬たちは知っている。

これは、幻でも、先ほどまでの過去の記憶でもない、

拓馬達とアークが到達するであろう、遥か未来の光景である事を。

 

『なぜ、人類が存在するのか? 宇宙はゲッターに何を求めているのか?

 かつて人類がそうであったように、ゲッターの進化はとまらぬ!!』

 

拓馬の脳裏に、かつて未来で出会った男の言葉が響く。

 

『見てみようではないか…… ゲッターの行き着く先を……!

 そこに結論が待っているやもしれぬ!』

 

 

やがて光は消え去り、虚空に静寂が戻った。

軋みを上げるアークのコックピットの中で、憔悴しきった拓馬が大きく息をつく。

 

「アーク、お前は……」

 

悄然として拓馬が呟く。

元来、宇宙空間に満ちたゲッター線を、

宇宙開発のエネルギー源とする事すべく開発されたゲッターロボ。

そして、ゲッター線研究の第一人者たる早乙女博士が作り上げた最後の遺産、アーク。

 

先のバリヤーは、それらの因子が神体と出会った事で急速に発現した、

ある種の必然だったのではあるまいか?

 

「お前は、既に進化を始めているのか……?」

 

噴出す疲労と睡魔が、拓馬から思考を奪い去っていく。

やがて、力の全てを出しつくし、その機能を停止したアークが、

引力に導かれるままに、ゆっくりと青い惑星へと吸い込まれていった……。

 

 

 

 

 

「何だったんだ…… 今見た光景が、全ての真実だと言うのか?」

 

がくり、と、マーズが両膝を大地につく。

彼の問いに答えられるものは、そこにはいない。

彼もまた、何者かの眼を通じて、先の光景を見ていたのだ。

 

遥かな星の海に飛び出し、生物のように無限の進化を続けるゲッター。

そして、その庇護の元、宇宙の脅威となって文明の破壊を重ねる人類。

 

怒り、迷い、戸惑い――。

 

たちまちマーズの心中に、

様々な感情がうねりを上げて吹き上がり、脳中を割れんばかりに刺激する。

 

(な、何だ、この感情の奔流は……)

 

マーズの体内に溢れる奇妙な怒り。

自分は何に怒っているというのか――?

気を抜くと意識すら朦朧として、まともに思考を巡らす事が出来ない。

 

(この怒りは何だ? 人類の監視者であった頃の残滓なのか……?

 あるいは……、あるいは、嫉妬……?)

 

それは嫉妬。

プログラムとしての性分を捨て去り、

自らの意思で進化を始めようとしているロボットに対して。

そして、自身の役割を失う事を恐れ、自らの意思を得られずにいる自分自身の……、

 

「違う……! これは僕の……、僕自身の感情ではない!?」

 

不意にマーズが気付いた。

遥か空の彼方でマーズの眼となり、

今また彼の思考に、強烈な感情を流し込んでいた自我の持ち主。

 

「お、お前か…… ガイアー……?」

 

意識が混濁し、視界が揺らぎ、どすんと頭部が地面に横たわる。

 

「ゲッターとの遭遇が…… お前を変えたと言うのか? ガイアー……」

 

マーズの意識もまた、そこで途絶えた。

 

 

 

 

 

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