「うおおおォッ!」
少年が叫び、激情のままにレバーを倒す。
悪魔の両眼に力が満ち、真紅の巨体が勢い良く走り出す。
その巨大な体躯からは想像もつかない爆走に、大地が揺れ、路盤が砕ける。
だが、その段になっても、件のロボットは身じろき一つせず、
ただチカチカと両目を光らせるのみだった。
(気に入らねぇ……!)
少年がそう思った時には、既に体が反応していた。
赤い巨体が弾かれたように跳躍し、一息に怪ロボットの眼前へ躍り出ると、
気に入らない輝きを放つ両目の間めがけ、渾身の右ストレートを叩きこむ。
轟音が突き抜け大地が震え、操縦桿ごしに手応えが伝わってくるほどの会心の一撃に、
さしもの巨体も大きく揺らぎ、そのまま倒れるかと思われた…… が!
「なに!」
艦砲の釣瓶打ちにも耐えるタイタンの異常なタフネスは、
この一撃に対しても遺憾なく発揮された。
巨人は大きく腰を落とし、両股を広げて大地に踏み止まると、
丸太ん棒のような両腕を伸ばし、未だ中空にいる対手の巨体を、
プロレスのようにグワシと持ち上げた。
コックピットの中で、少年の視界が一回転する。
「うおああああ!」
超ヘビー級のボディスラムの炸裂し、赤い砲弾と化した機体が高層ビルに直撃する。
爆音が轟き、瓦礫の雨が悪魔の上へと降り注ぐ。
「や、野郎…… なんて馬鹿力してやがるんだ」
『やべェぞ、拓馬!
カムイの乗ってない今のゲッターじゃ、どうしてもパワー負けしちまう』
「へ、上等だ!」
乱入者の実力を見極めるべく、重低音を響かせタイタンが迫る。
やがて、瓦礫に埋もれた対手の姿を見定めると、その名に恥じぬ巨大な右足を振り上げる。
「調子に乗んな、メガネ野郎ッ!」
鉄槌の一撃が打ち下ろされんとした刹那、突如として爆風が巻き起こり
周囲の瓦礫が土塊ごと天高く舞い上がる。
衝撃で、バランスを崩したタイタンがたたらを踏む。
その間に、悪魔の姿は視界から消え失せていた。
ウィーンという独特の機械音を響かせながら、タイタンが周囲を見渡す。
「バトルショットカッタアァァ――!」
上空で鋭角に軌道を変えながら、真紅の機体が猛スピードでタイタンへと迫る。
同時に右腕を包む金属が変化を始め、肉厚の刃がジャキリと展開する。
敵の存在を認めたタイタンが、振り向きざまに裏拳を放つ。
剛腕と白刃が交錯し、ギンッ、という鈍い音が中空に響き渡る。
一瞬の静寂。
――やがて、ズシン、と一つ音を立て、はね跳ばされたタイタンの左手首が大地を揺るがした。
・
・
・
「タイタンを破壊するロボットだとッ! バカなッ そんな物がッ!?」
監視者の男が叫ぶ
未知なる機体の秘めたポテンシャルの高さに、男は一切の余裕を失い、
ビルの欄干から今にも身を乗り出さんばかりにして、
戦況を食い入るように見つめ続けていた。
確かに、いかに高度な治金技術で生み出されたタイタンと言えども、
関節の構造まで堅牢であるとは言えない。
装甲の継ぎ目に十分な衝撃を加えさえすれば、その巨体を分断する事も可能であろう。
高速で動く腕部の間隙に、正確に刃を合わせられる兵器があれば、の話だが……。
男の知る限り、この地球上にそんな兵器は存在しない筈だった。
それこそ、かの同朋の造り上げた六神体ですら、それ程の精密な動作は不可能である。
それに、遠目に見る悪魔の脅威は、ハード面のみに限った話では無かった。
あれ程の正確な動作を反射的に繰り出して見せる以上、
あの機体が自律制御や遠隔操作で動いているとは考え難い。
相当な訓練を積んだパイロットが乗り込んでいると考えるのが妥当であろう。
だが、あの物理法則を嘲笑うかのような悪魔の動きについていけるパイロットとは
果たして、一体どのような生物であろうか?
男が額の汗を拭う。
早過ぎるマーズの目覚めも、その機能の障害すらも、
巨大な運命の前では、所詮は修正の効く範囲の出来事と推測していた。
だが、タイタンに対し明確な敵意を見せる、真紅の悪魔の乱入が、
同朋達の仕組んだプログラムの遂行に、果たしてどれほどの影響をもたらすものか……
状況は既に、予断を許さないものへと変わっていた。
(いや、こうなってしまえば、マーズの誤作動は我々にとっての僥倖であったかもしれん。
マーズの目覚めが予定通り百年後であったならば、
恐らくは、全てが間に合わなかっただろう……)
・
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・
『 く わ あ 』
ケダモノの咆哮の如き金属音を一つ上げ、赤い悪魔が牙を剥く。
これは比喩では無い。
拘束具のようだったマスクがガギャンと展開し、中から肉食獣のような獰猛な牙が現れる。
指先から鋭利な爪が瞬時に飛び出し、無骨な刃がジャキリと両椀に生え揃う。
瞬く間に一匹の魔獣と化したその機体は、左右の平衡を失ったタイタン目掛けて飛びすがり、
勢いのままに押し倒すと、その太い首筋を狙い、獰猛なる牙を突き立てた。
だが、片手を失ったとはいえ、タイタンのパワーも衰えてはいない。
右手で獣の頭部を鷲掴みにすると、恐るべき馬力でもって引き剥がしにかかる。
極端なパワーの集中に、異物を挟み込んだ機械の如く、両機の体躯が痙攣し、
ギギギギギッ、と、金属の擦れて軋む不快音が響き渡る。
タイタンの頸部がベゴンと陥没し、ドス黒いオイルがブシュゥと吹き上がる。
同時に真紅の悪魔の頭部が、ミシミシと音を立て始める。
『た、拓馬……』
「へ、こうなりゃ根くらべといくまで――」
『――やめろ! やめるんだッ! タイタン!!』
「――ッ!?」
突如、耳元に響いてきた男の声に、思わず少年が動きを止める。
直後、タイタンの外装が大きく剥れ、とっかかりを失った魔獣が勢い良く跳ね飛ばされる。
我に返った少年の操作に合わせ、咄嗟に片手で大地を弾いて、機体が体勢を立て直す。
「これ以上はやめろ、引き返すんだ、タイタン!」
「……あいつ?」
『お、おい! 見ろよ、拓馬』
頸部を半ばまで喰い千切られたタイタンは、しばしの間、小首を傾げるような不気味な体勢で、
ウィーン、ウィーン、という独特の機械音を立てていたが、
やがて、ゆっくりと背を向けると、重低音を響かせながら、瓦礫の先へと消えて行った……。
『ロボットが去って行く…… ン、どうした、拓馬?』
「今、そこに赤い髪の男が……」
『赤い髪? ……なんだよ、そんなヤツ、どこにもいないじゃないか?』
確かに、視線を足元へと戻した時には、赤毛の少年の姿はそこには無かった。
その代わり、入れ替わるように彼方の空から、プロペラの旋回音が聞こえてきた……。
・
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キュラキュラとキャタピラの音を響かせながら、戦車の大軍が砲身を並べる。
自衛隊の第二陣が戦場へと到着した時、既に標的は赤色の乱入者へと変わっていた。
先の戦いの反省もあり、一団は砲撃の射程距離いっぱいで停止し、
巨大な魔獣の癇癪を恐れるかのように、遠巻きに包囲網の完成を進めて行く。
「英雄の帰還に総出で祝砲を、なんてワケねえよな…… 気付いてるか、獏?」
『ああ、こんだけ軍隊が出動してるってぇのに、なんでゲッターが出て来ないんだ?』
少年が首を傾げる。
かつて、彼らが時空を超える戦いに望んだ際、
地上に残ったゲッターチームの面々は、地球防衛のための戦闘を続けていた筈である。
怪ロボットの上陸という日本の危機に対し、彼らが後手を踏むとは考えがたい。
あるいは、地上のゲッターロボは全滅してしまったのではないか、
という思考すら脳裏をかすめたが、それも即座に否定できた。
彼らの上官、過激なまでの行動力に満ちたあの男が生きていたならば、
例え本拠である早乙女研究所が壊滅していたとしても、
何らかの形で自分達とコンタクトをとろうとする筈だった。
二人が改めて周囲を見渡す。
眼下に広がる風景は、やはり彼らの故郷とそっくりであったが、
同時に、何がしらの違和感を胸中に沸き上がらせるものでもあった。
どこかが違う町並み、何かレトロな感じのビル群、そして、奇妙に前時代的な軍隊……。
かつてアルバムの中で見た、自分たちの生まれる前の日本の風景。
彼らの受けた印象を言葉にするなら、それが最も近い答えだった。
『……もしかして俺達、過去の日本に来ちまったんじゃないのか?』
「奇遇だな。俺も今、それを考えてた……」
【――国籍不明の兵器の搭乗者に告げる。速やかに武装を解除して投降せよ。繰り返す――】
大音量のスピーカーから、日本語の降伏勧告が伝わってくる。
これにより、二つの事実が明らかとなる。
少なくとも、自分達のいる場所が日本である事だけは間違いない。
さらに言うならば、その地は日本の誇るスーパーロボット、
【ゲッターロボ】が、存在しない世界であった。
『あんな事言ってるぜ。
どうする拓馬、ここはひとまず、おとなしく従っておくか?』
「……いや」
長考の後、少年が口を開いた。
現在、ゲッターはあの怪ロボット同様、侵略者と見做されている。
未来から時空を超えてやってきた、などと言う自分たちの主張が通じるとは思えない。
最悪の場合、ゲッターを取り上げられてしまう可能性すら考えられた。
「もし今、アークを奪われちまったら、元の世界に戻る望みが無くなっちまう
ある程度状況が分かるまでは、こいつから離れない方がいい」
『それもそうか…… だがそれなら、やるべき事はひとつだな』
「ああ」
少年の決心に合わせ、アークの背面にある巨大な刃のような翼が扇状に展開する。
巨体の抵抗の意思を見てとり、ざわり、と周囲を包む気配が一変する。
「とりあえず…… この場は逃げるッ!」
直後、ドゥッ、と大地を揺らし、
色めきだつ軍用ヘリを掻き分けながら、アークが一直線に飛び上がる。
地上の混乱を一瞥もせず、空中で軌道を垂直に変えると、
驚くべき速度で雲の彼方へと消えて行った。
「飛んだ…… 逃げたのか、それとも……?」
二機目の怪ロボットの逃走により、現場に慌ただしい空気が溢れだす。
人だかりを避け、雑踏に優しく少女を下ろすと、
マーズはしばしの間、飛行機雲の行方を眼で追い続けていた……。
・
・
・
一方、海上では未だ戦闘が継続していた。
真紅の乱入者に手傷を負わされ撤退を始めた怪ロボットを仕留めるべく、
日本の艦隊が追撃を掛ける。
日本の防衛力を世界に示さんと、ありったけの爆雷を浴びせ、
大型の対潜ロケットを叩きこむ。
だが、それだけの集中砲火を浴びせられても、鋼鉄の巨体は動きを止めようとはしない。
「艦長、これ以上は爆雷が足りません」
「むむむ…… せめて首の破損部に直撃させる事が出来れば」
「か、艦長ッ! 後方より高速で接近する物体がッ!?」
「何だとッ! うおッ!?」
補足より数瞬、驚くべき速度で飛来した真紅の悪魔が海上を通過する。
衝撃で海面が大きく割れ、大型の戦艦が揺れる。
悪魔は艦隊を顧みもせず、標的目掛けて飛び去っていく。
「今のが二体目の怪ロボットか……
クソッ! 日本はどうなってしまったと言うのだ」
艦長の口ひげが忌々しげに吐き捨てる。
同時に傍らの通信士が、うっ、と低いうめきを漏らした。
「アメリカ駆逐艦より通信…… こッ、これは!?」
「何だと? そんな、ま、まさか……!」
・
・
・
漲る激情の赴くままに、少年が操縦桿を力一杯に押し倒す。
繰り手の命ずるままに、真紅の悪魔が水飛沫を巻き上げて海中へと突入する。
『どうする気だ、拓馬?』
「あのデカブツを追うッ! 状況を掴むには、それが一番手っ取り早い」
『…………』
「どうした、獏?」
『何か、周りの動きがおかしくないか?
突然砲撃をやめちまって……
それに、まるであのロボットから距離をとっているような……?』
「へっ、アイツにゃ何発ブチ込んだって効きゃあしないからな
お偉いさんたちも、ようやく税金のムダ使いに気付いたんだろうぜ」
相方の懸念を気にも留めず、少年が機体を海中へと潜らせる。
だが、獏と呼ばれた大柄の少年の胸中には、不吉な予感が鎌首をもたげていた。
それは、予知と呼ぶにはささやかな力だが、
それまでも幾度となく彼の危機を救い、そして、彼をゲッターへと導いてきた能力であった。
――やがて、二人の眼前に、悠然と海底を行く怪ロボットの機影が近付いてきた。
「よし! 追い付いたぜ、まずは……」
その瞬間、獏の脳裏に恐るべきビジョンが浮かび上がった。
海面を覆い尽くす閃光、蒸発する鋼の機体、
轟き渡る破壊音、そして、天高く立ち上るキノコ雲……。
『ヤベェーッ!? 逃げろッ 拓馬!』
「何!」
『核だッ! 連中、ロボット目掛けて核魚雷をブチ込みやがった』
「なッ! 何だとォ~!?」
程なく、轟音を海中に響かせながら両機目掛けて加速する、
流線型の金属の塊が少年たちの視界に飛び込んできた。
「チクショオオォォォ――ッ!!」
少年が力の限りレバーを引く。
件の怪ロボットは、身じろきもせず悠然とそれに突っ込んでいく。
やがて……
―― カッ ――
と、目も開けていられない程に強烈な閃光が海域を包む。
直後、爆音、衝撃、高熱、津波――。
周囲の海水を鋼鉄の残骸ごと蒸発させながら、巨大な黒煙が天空を覆い尽くした……。
・
・
・
『ごらん下さい、あの天高く立ち上るキノコ雲。
先ほど東京湾に上陸し、破壊の限りを尽くした国籍不明のロボットに対し、
遂にアメリカ籍の駆逐艦による、核魚雷の攻撃が敢行されてしまいました……』
日本の領域内で再び放たれた、悪夢の如き核の一撃。
無人の海域、それも憎い怪ロボット相手とは言え、
その凄惨なる映像は、日本人の中にある潜在的なトラウマを抉るのに十分であった。
道行く人々は立ち止まり、
皆一様に、何かを堪える様な表情で、街頭のテレビを見つめ続けていた。
――そして、その観衆の中に、一連の騒動の中心人物である二人の姿もあった。
「マーズ、先ほどはなぜ、タイタンの攻撃を止めた?」
「…………」
「フン、まあいい
結果から見れば、あれが怪我の功名となったのだからな」
「怪我の功名?」
「ああ。
あの謎のロボットの正体が探れなかった事だけは残念だが、
これで我々の計画を邪魔できる者はいなくなった。
……我等が恐れ続けた人類の狂気に助けられるとは、なんとも皮肉な結果ではあるが」
『あッ!? お、お待ち下さい!? あそこだッ! あの煙の中を映せ!』
突如、レポーターが色めき立ち、周囲にたちまち喧騒が満ちる。
マーズ達も会話を中断し、食い入るように画面を見つめる。
混乱で大きくブレるテレビカメラが捉えたのは、
黒雲をブチ抜いて飛び出してくる、赤、白、黄色の戦闘機――。
戦闘機、と言っても、
今日の軍隊で採用されているような、近代兵器としてのそれではない。
艶やかな光沢を備えた流線型のフォルム。
科学の常識を覆す、翼を持たないデザイン。
漫画の中でしかお目にかかれないような、超推進力をもたらす大型ブースター。
報道の取材ヘリの眼前を爆走していくのは、
あたかも、空想科学の世界から飛び出してきた、秘密兵器のような機体だった。
『こ、これはい…… ワアァーッ!?』
衝撃波でヘリが大きく揺れ、テレビカメラがひっくり返る。
映像は大きく乱れ、やがて、ザーッという砂の嵐を映すのみとなった。
「……今のは何だ?」
突然の異常事態に周囲が唖然とする中、マーズが問いとも言えない呟きを漏らす。
傍らの男は答えもしない。
不振気に視線を向けたマーズが思わず目を見張る。
監視者の男は動揺の色を露にしながら、物映さぬテレビ画面を必死で睨み続けていた。
謎の物体の正体を男が推し量る。
タイタンやガイアー、六神体ではない。
彼の知る同胞達の超兵器は、
そのいずれもが近未来的なデザインとは真逆のセンスで作られていた。
人類の兵器とも考え難い。
仮にどこかの勢力が、秘密裏に技術開発を進めていたのだとしても、
それがこの状況で姿を見せる理由がない。
……つまり、考えられる可能性は、ただ一つであった。
「バカなッ!? 変形したと言うのかッ! あのロボットが……!」
後方からの突然の絶叫に、居合わせた者達が一斉に振り返る。
だが、周囲の目もマーズの不信も気にも留めず、男は呟きを漏らし続ける。
「信じられん…… アレは、あのロボットは何だと言うのだ……?
なぜ、あんな物が、今更になって我等の前に立ちはだかるのだ……」
男の問いに答える者はおらず、ただ、呟きが中空に消えるのみだった。
・
・
・
『バッチリ映っちまったみたいだぜ。 どうする? 拓馬』
「どうするったって、ズラかるしか無ェだろ?
ほとぼりが冷めるまで、どっかにコイツを隠さなきゃな」
爆走する戦闘機の中で、興奮冷めやらぬ二人の通信が続く。
『それにしてもよ…… 状況を探る手がかりもさっきのでパァだぜ
これからどうすりゃいいんだ、俺達……』
「…………」
相方の巨体に似合しくないぼやきに対し、少年は暫くの間、無言で俯いていたが、
やがて、何事かを決心したかのように、キッ、と顔を上げた。
「……カムイを探すぞ、獏」
『カムイ? アイツがこの世界にいるって言うのか?』
「さあな
だが、俺達はあの時、一緒に時空を超えたんだ。
カムイがこの世界に迷い込んでいたって不思議は無いハズだ」
『……うん、まあ、そうだよな』
「いずれにせよ、俺達二人で考え込んでたってラチがあかねぇ
こういう厄介ごとを考えるのはアイツの仕事だ
早いとこ、あの迷子を探し出すとしようぜ」
通信機の向こうで、相方の少年も、しばし考え込んでいるようだったが、
やがて、明るい声を出して返答した。
『カムイ…… カムイか!
ウン、そうだな、見つかると良いな、アイツ』
「おい! なに他人事みたいに言ってんだよ?
お前の予知能力だけが頼りなんだぜ」
『いっ!? オ、俺かよッ!
知ってんだろ拓馬、俺の予知なんかじゃこの状況は……』
「そうと決まったら、今日の寝ぐらとメシの方もどうにかしないとな……
おい獏、お前、いくら持ってる?」
『それも俺かよ! 持ち合わせなんかあるワケないだろ』
「そういや、この時代ってコンビニはあるかな?」
『人の話を聞けぇ~~!!』
遥か遠い時空の最果てから、この世界へと流れ着いた二人の漂流者は、
その境遇の過酷さからは思いもよらない陽気さを以って、夕日の彼方へと消えていった……。
――同時刻、
秋の島新島の海底では、タイタンからのデータが途絶えた事を認識し、
人類と世界に最後の日をもたらすであろう究極の巨神が、
永い沈黙を破り、遂に動き出そうとしていた……。