――ニューヨーク。
世界の経済・文化の中心地たるマンハッタン、そびえ立つ摩天楼の一室に
深刻な面持ちで卓を囲む、6人の男の姿があった。
――リーダー格と思しき、恰幅の良い白髪の老紳士。
――片目が隠れるほどに黒髪を伸ばした、痩せ型の男。
――丸みを帯びた輪郭の、サングラスをかけた男。
――顎の細い、ギョロ目のスキンヘッドの男。
――高級そうな葉巻を咥えた、片眼鏡のカイゼル髭の男。
――そしてもう一人、頬骨の張ったオールバック……、
先日マーズの元を訪れた監視者の男であった。
いずれも上等なスーツに身を包み、
紳士然とした印象の男たちであったが、彼らは皆、人間ではない。
並の人間を遥かに上回る身体能力に加え、
大陸一つを消し飛ばす程の力を秘めた兵器【六神体】の操縦者の資格を持ち、
時にその巨大な力で、人類の危険な進化の目を秘密裏に摘み取ってきた
【監視者】達であった。
「……すると、マーズはやはり、
早過ぎる目覚めの影響で、誤作動を起こしていたというのかね?」
老紳士の問いかけに対し、件の男が頷く。
「残念な事ですが、マーズは自分の使命を覚えては居ませんでした……。
ですが、望みが絶たれたわけではありません。
彼は短期間の内に人類の言葉を学習していましたし、
身体能力の方も順調に回復を始めていました。
機能面に関しては何の問題も無く、正常通り作動しているようです」
「という事は、おかしいのは記憶だけという事か。
それで、あいつに十日の猶予を与えたのだな
確かに、期間内に奴が自分の役割を思い出したなら、それに越したことは無い。」
傍らのサングラスが、納得した風に言葉を漏らす。
「うむ、マーズの件は分かった。
それで……、あの赤い機体に関する情報はどうかね?」
「それは……」
男が口を淀ませる。
しばしの沈黙の後、言葉を選ぶように、たどたどしく口を開いた。
「今の所、あの機体の所属組織、
及びその勢力に関する有力な情報は得られておりません、が、
僅かながら、一つだけ手がかりがあります」
「……手がかり、とは?」
「日本からの帰途、私は向こうであのロボットの関係者らしき男と遭遇しました。
……緑色の肌の、まるでハチュウ類のような俊敏な若者でした。
その男が、去り際に一言、こう言い残したのです。
『ゲッターの力を甘く見るな』と――」
「【ゲッター】?」
聞き慣れぬ言葉に、居合わせた一堂が思わず固まる。
「ゲッターが何を示す言葉なのか
あの機体の名称なのか、あるいは、
男の所属する組織なのか…… そこまでは分かりません。
ただ、男の言葉から推測するならば、
あの機体が我々の計画の前に立ちはだかる可能性は高いかと」
「……六神体の現在の状況は?」
「はっ」
スキンヘッドの男が奇妙な水晶球をまさぐる。
直後、ブウゥゥン、という音と共に、壁のスクリーンに世界地図が投影された。
「第四神体【シン】より送られてきたデータです。
画面中央、日本の秋の島新島付近で光っている、一際大きな点がガイアー。
各地に散らばった六つの点が、六神体の所在地です。
現在のところ、ガイアーは正常に機能しておりますが、
マーズから指令が下されていないため、待機状態となっているものと思われます。
他の六神体についてもプログラム通り、その起動に異常は見られません」
「ウム」
「――ただ、件の赤い機体に関しては、シンのセンサーを以ってしても
エネルギーを感知する事は出来ませんでした。
シンの起動したタイミングを考慮すれば、
おそらくは敵は、日本の近郊で機体を停止させているのでしょう。
尤も、あのロボットに関する有力な目撃情報が入って来ない事を考えると
敵は何処か、例えば山間部や海底の辺りに、機体を隠しているのではないでしょうか?」
「だとすると、日本の諜報機関を探ったとしても、
あの機体の情報を得る事は不可能か
どうだろう? もう一度日本を攻撃し、奴らの出方を窺ってみては……?」
「いや、それはやめておいた方がいい」
長髪の男の大胆な提案を、片眼鏡が遮る。
フゥー、と煙を吐き出すと、やや煩わしげに言葉を続ける。
「今、マーズの心情は人類側に傾いている。
ここで約束を反故にし、奴を下手に刺激したなら、
謎のロボットとガイアー、両方を同時に相手にせねばならなくなるかもしれん」
片眼鏡の冷静な判断に、一同が静かに頷く。
「左様、あのロボットの正体を暴くのは
マーズの選択を待ってからでも遅くは無い。
我らは各地へ散り、マーズがどのような決断をしても対応できるよう
万全の準備を整えておくのだ」
老紳士の打ち出した方針を結論として、男達が静かに立ち上がる。
既に各々の瞳に戸惑いは無く、代わって、どこか冷たい輝きが宿っていた。
「マーズとの約束から既に三日、決断までは残り一週間となった。
それでは諸君、運命の日に、再びここで会おう」
・
・
・
――熱狂が、周囲の全てを支配していた。
男達の歓声、怒号、絶叫、悲鳴……。
ありとあらゆる激情が奔流を生み、その場に居合わせた者たちを一体として呑み込んでいく。
彼らの想いを一心に受け、やがて、運命の時が刻一刻と近づいてくる。
そんな憑かれたような興奮の中、
深刻な面持ちでフィールドを臨む、二人の少年の姿があった……。
「なァ、拓馬、やっぱり無理だったんだよ。
俺の予知能力なんてたいした物じゃないし、こんな使い方をした事も無い。
なのにこんな大勝負を挑もうなんて、始めから無謀だったんだ……」
「うるせえな、だったら他に、何か手があったって言うのかよ!
もう賽は投げられちまったんだよ、ウダウダ言ってんじゃねぇ!」
「だが、だからって……
だからってッ! あ ん な 駄 馬 、来 る ワ ケ な い だ ろ ッ !?」
「うるせぇッ! お前もちゃんと応援しろ!!
うおおお~! 行けッ ジョークマンッ!」
『さァ、最終コーナーに入った!
先頭は依然としてシンコウタイホ、
その後ろから、
アステカイザー、クイーンフェニックス、ブラックオックス、
サザンクロスキッド、サンダーダイオウ、セイントデビル、
ムテキゴウリキ、バトルウルフ、そしてビックバンパワーショット、
揃いに揃った名馬達が、一団となって襲いかかる!
これは日本競馬史上、稀に見る大混戦となってきたー!!
……そして十馬身ほど離れて、ドベはもちろんジョークマン』
栄光のゴールを目指し、居並ぶサラブレットに一斉にムチが入る。
ただ一頭を除けば誰が一着で入ってもおかしくない、
まさに世紀の一戦と呼ぶに相応しい名勝負であった。
「うわあ~、もうダメだ~!?」
「フザけんなッ! 馬刺しにして喰っちまうぞジョークマン!!」
『シンコウタイホ懸命の疾走…… おっと! 大きく右にヨレた!
シンコウタイホ、これはトラブル発生か!?
ああッ!? 後続馬が次々と巻き込まれていく!?』
「「 !! 」」
『三頭…… いや、四頭が落馬!
密集状態の集団がパニックとなった、これは危険ですッ!
……うん?
げぇっ!? ジ、ジョークマン!
あわわ、さ、最後尾で難を逃れていたジョークマンが
大混乱となった集団の脇を通過していく!?』
「おおおおおおおおおおお!!」
『鞍上の大塚のムチが跳ぶ!
何というスピードだ! これは遅いッ!!
これが本当に馬の走りか!? でも誰も追いつけない!
ジョークマン! ジョークマン! ジョークマン!
ジョークマン、会場の大ブーイングを受けながら、今、一着でゴールイン!!
……そして大きく遅れて、二番手はどうやらモンスターか。
まさかの大穴ジョークマンが、横石Sを制しました!』
「「きッ、き、来たアアアァァアアァァァァ――!?」」
ありえない超大穴馬の逆転劇に、周囲が深い絶望に包まれる。
馬上、ガッツポーズで応える大塚に、
容赦なく会場から物が飛ぶ中、少年二人が鬨の声を上げる。
「は、はは、ワハハハ――ッ!! 見たか拓馬、俺の予知能力の凄さをッ!」
「ハーヒャハハハ! 今さら調子の良い事言ってんじゃねぇぞ!」
狂ったかのように興奮する二人、
その体を覆っていたマントのようなボロ布が、馬鹿騒ぎではらりと落ち、
中から特撮の地球防衛軍のような、ブルーのパイロットスーツ姿が飛び出す。
直後、二人目掛けて、けたたましいホイッスルの音が浴びせられる。
「コラァー! こんな所で何やってんだッ!? クソガキィ!!」
「ヤベェ! 警備員だッ!!」
「ズラかるぞッ! 獏、うおおお! どけどけぇ~! オッサンども!!」
混乱する人だかりを掻き分けながら、二人は会場の外へとまっしぐらに駆け抜け
逃走用に確保しておいた捨てチャリへと勢い良く飛び乗った。
「ま、待て! 拓馬ッ まだちゃんと乗ってねぇ!!」
「ムリ言うなッ! お前の体重で2ケツなんぞしたら、パンクしちまうだろーがッ!?」
「は、薄情モン! フザけんな!? 俺達ゲッターチームだろうがッ!」
互いを口汚く罵り合いながら、とても人力とは思えぬ速さで、二人が旋風となる。
砂ぼこりの晴れた後には、呆然と立ち尽くす警備員だけが残った。
・
・
・
――東京競馬場より、北東に3kmほどの所にある浅間山(せんげんやま)。
標高80mを誇る大山の頂に、
ブルーシートを巡らして作られた人類最後の砦【真・早乙女研究所】が存在した。
総面積3㎡という広大な研究所の中では、
ゲッターチームの隊員全二名が、現在、寄せ鍋を突きながら今後の対応を検討していた。
「――まったく、過去とはいえ、勝手知ったる日本だからと油断してたら、
まさか、紙幣が通じないとは思わなかったよな」
猫の耳のような遅れ毛が特徴的な少年が、
無用の長物と化した野口英世の肖像をヒラヒラさせながら溜息をつく。
少年の名は、流 拓馬。
かつて、人類を襲う侵略者達と戦いを繰り広げたゲッターチームの一員、
流竜馬の息子であり、現在の一号機・ゲッターアークのパイロットを務める少年であった。
「まぁ、気付かない俺たちも迂闊だったけどな
そもそも、この時代の人達は、平成なんて言う年号すら知らないんだから
……って、オイ! 拓馬、その肉は俺んだ!!」
隙あらば箸を割り込ませようとする拓馬に対し、
大柄な坊主頭の少年、三号機パイロットの山岸獏が抗議の声を上げる。
「ケチケチすんなよ
どうせ、食い物なら食い切れないほど買って来たんだからよ」
拓馬がチラリと目を向ける。
確かにそこには、ただでさえ狭い室内を限界まで圧迫する山積みのダンボールがあった。
三日前、東京湾内にゲッターを隠し、夜陰に乗じて再上陸を果たした二人。
ビニールで防水して持ち込んだ虎の子の三千円が、
ただの紙切れに過ぎないのに気付いたのは、上陸より半日後の事だった。
以後、二日の間あちこちの自動販売機をまさぐり、かき集めた資金が三百八十円。
奇跡的な万馬券によって、ついた配当が十二万六千円。
警備員のせいで換金に行けなかったため、やむなく近くの中年に売りつけて得たのが八万円。
その大金も、最低限の衣類と大量の食糧の購入に費やした結果、
手元の軍資金は殆ど尽きかけていた。
三人一組のゲッターチーム、その内で最も重要な『頭脳』を失ってしまった結果、
今の彼らの辞書からは、【計画性】の三文字は無残にも消え果てしまっていたのだ。
「……しかしよぉ、拓馬、
早乙女研究所に連絡がつかないってのはどういう訳だ?
この時代には、確かに研究所が存在してたって筈なのによォ」
「…………」
「カムイを探す手がかりも無いし、これから俺達どうすりゃいいんだ?」
「うるせぇな、俺だって考え中さ」
箸を止め、拓馬が傍らの新聞へと目を通す。
一面には、怪ロボットに喰らい付くアークの写真がデカデカと写っていた。
ここ三日、各メディアの報道は怪ロボットの話題で持ちきりであった。
だが、にも関わらず、かのロボットの所属や目的は、未だ明らかにはなっていない。
このまま事態が推移すれば、ジリ貧に追い込まれるのは拓馬達の方であろう。
早乙女研究所が存在しないという事は、アークに安住の地が無いという事と同義であった。
と、不意に何かに気付いた様子の拓馬は、暫くの間、
一つの記事を食い入るように見つめ続けていたが、
突如として鍋に向きなおると、猛烈な勢いで胃袋にかきこみ始めた。
「お、おい! だからその肉は俺の……」
「こいつを食ったら出掛けるぞ、獏」
「うん! 何かアテがあるのか?」
獏の問い掛けに対し、拓馬は紙面をビリリと引き裂くと、その記事を眼前へと差し出した。
「その写真の男さ、この間見た赤い髪の男ってのは。
野郎と怪ロボットの間にどんな関係があるのか……?
とりあえず、そいつが収容されたって言う病院から当たってみようぜ!」
・
・
・
「やぁ、春美ちゃん」
校門の外で待ち受けていた人影を目に止め、
春美と呼ばれたロングヘアーの少女が、思わず苦笑を漏らした。
「こんにちは、岩倉さん
新聞記者って言うのは随分と仕事熱心なのね」
皮肉の混じった少女の挨拶に、岩倉と呼ばれたスーツ姿の男が
やや困った風に角刈りの頭をかく。
「いやぁ、まあ、確かに特ダネが欲しいって言うのもあるけど、
でも、それだけじゃなくて、第一発見者として、彼の事はなんとなく気になってさ」
「ええ、信じるわ」
漸く陽光の照らすようになった春先の通学路を、とりとめの無い話をしながら二人が歩く。
「それでどうだい? その後の彼、マーズの様子は」
「別に、戻ってきた時のままよ
世界史、とりわけ戦史を中心に一心不乱に勉強していたり、
スフィンクスを始めとした各地のモニュメントが消えたというニュースを
食い入るように見つめていたり……
理由を尋ねてみても、何も教えてくれないのよ」
「そうか……」
「でも、十日たったら事情を話してくれるって言ってたから
今日には何か分かるかも知れないわね」
「へぇ! それはツイてたな。
僕にも話を聞かせてくれれば良いが」
ただならぬ特ダネの予感に、また、純粋な知的好奇心から、岩倉が瞳を輝かせる。
半月前、火山報道のために秋の島新島を訪れた岩倉は、
その地で赤い髪の少年、マーズを保護した。
発見時、まったく口を聞く事が出来ず、一切の身元が分からなかった少年は、
いくつかの精密検査の後、病院長のはからいにより、
その後は彼の家で経過を見る事となった。
春美はその家に住む病院長の一人娘であった。
家に来て以来、マーズは順調に回復しているように見えた。
来た当初は片言程度だった日本語も、
いつしか流暢な物へと変わり、自分の名前も思い出した。
世間の情報や様々な事象に対しても、興味を持つようになって行った。
にも拘らず、自分の事を一切語ろうとしないマーズに対し、春美は一抹の不安を感じていた。
特に昨今の勉学に打ち込む彼の姿を見ていると、
何かマーズが大変な事に巻き込まれているような気がしてならなかった。
それだけに、約束の十日を迎えた今日、
岩倉が同行を申し出てくれた事を、春美は内心頼もしく感じていた。
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・
珍しい事に、その日、マーズは玄関先にいた。
「やあ、お帰りなさい、春美さん」
「ええ、ごめんなさい、マーズ、帰りの通学路で岩倉さんと会っちゃって……」
「いや、春美ちゃんは悪くないんだ。
……どうだろうマーズ、不躾な話だが、
彼女との『約束』の件、よければ僕にも話して貰えないだろうか?」
岩倉の懇願に対し、マーズは少し首を傾げたが、やがて、にこりと笑って言った。
「ええ、構いませんよ。
岩倉さんは、僕にとって命の恩人ですし、
この話はいずれ、報道関係者の人にも聞いて貰いたいと思っていましたから」
「ほ、本当かい!」
「でも岩倉さん、特ダネをスッパ抜こうと思うなら、
もっと自分の身辺にも気を使った方が良いと思いますよ」
「えッ!?」
マーズの言葉に、二人がギョッ、として背後を振り返る。
なるほど、確かに家の門の前には、見知らぬ二人の少年の姿があった。
一人は獣の耳のような後れ毛が特徴的な、強い意志を感じられる瞳の少年。
袖なしのジーンズジャケットに黒のタンクトップというラフな格好で
なぜか背には、サンドバッグのように大きい、薄汚れた荷物を背負っている。
もう一人は愛嬌のある顔立ちの坊主頭の少年。
相方同様ラフな服装だが、大柄な体躯にあうサイズがなかったのか
ニッカポッカのような裾の膨らんだズボンを履いていた。
「よォ、また会えたな ……ええと、マーズ、か?」
「あ、あの……、あなた方は?」
やや怯えた風の春美の声を気にも留めず、小柄な方の少年がずんずんと歩いてくる。
咄嗟に岩倉が身構えたが、マーズはそれを片手で制し、一歩前へ出た。
彼らが一体何者であるか、マーズには一つの確信があった。
このタイミングでマーズに接触を図ってくる組織など、監視者を除けば一つしかない。
マーズにとって、それは本来ならば警戒せねばならない相手だったが、
不思議と敵愾心は沸かなかった。
紳士然とした態度で近づいてきて、
家人に問答無用で催眠術を掛けた上でマーズを連れ出した同胞に比べれば、
はるかに好感の持てる相手にすら思えた。
「僕に何か用ですか?」
マーズの問いに対し、少年は実に爽やかな満面の笑みを向け……、
突如、荷物を投げ捨て、勢い良く大地を蹴ってマーズに襲い掛かった。
「オオッ!」
「なっ!?」
思い切りのけぞったマーズの眼前を、豪腕が唸りを上げて通過する。
人類とは思えない驚異的な瞬発力にマーズが肝を冷やす。
少年は既に左手を放つタメを作っている。
マーズに迷っている暇は無かった。
「くっ」
体を開く少年の動きに合わせ、マーズが踏み込む。
中国拳法で言う所の掌底のような、平手での一撃。
相手を怪我させまいとするマーズの優しさゆえの動きであったが、
なにぶん彼にも余裕が無かった。
一切の加減が無い無性生殖人間の一撃が水月に炸裂し、
少年は一直線にブッ飛んで、そのままコンクリート塀に激突した。
「キャ、キャアアアァァ――ッ!」
「イ、イカン!? 警察、いや救急車をッ!?」
「まあまあ、お二人さん、そんなに慌てないで」
突然の事態にパニックに陥りそうになる二人の肩を、大柄の少年が優しく叩く。
「どうした? 拓馬、ホームレス生活でナマっちまったか?」
「ヘ、バーカ、単なる腕試しだよッ、と!」
相方の軽口に揚々と応え、少年が何事も無かったようにハネ起きる。
さすがのマーズも、これには呆然として少年を見つめる。
「キミは…… 今のをくらって、大丈夫なのかい?」
「へへ、俺は不死身さ!
尤も、この程度で参るようじゃ、ゲッターチームは務まらないがね」
少年は得意げに鼻先を擦ると、唖然とする一同に高らかと自己紹介した。
「俺は流拓馬、未来から来た、ゲッターアークのパイロットだ!
立ち話もなんだから、中で茶菓子でもご馳走してくれないかな、マーズ?」