桜が舞っている。
俺たちがこれから背負う旭日章はこの花の形にも例えられるらしい。
「──伊達?」
入校式会場に向かう途中で同郷人の姿を目に留め、思わずその名を口に出していた。こちらに気付いたらしき相手はしかし、目が合うと何だか半笑いになった。
「おう? 何だ島お前、幽霊見たような顔しやがって」
「あれ、覚えてくれてたんだ」
今度は噴き出させてしまった。
「保育園から大学まで一緒だった奴忘れる程ジジイになったつもりはねえぞ」
「同クラ率一割なくない? 俺文転とかでフラフラしたし。大学なんてキャンパス違わないっけ」
「そう言うお前は覚えてるんだろうが」
「確かに」
いや、俺が彼の存在を覚えてるのは些か偏った理由だと思う。でも多分失礼でさえあるからこんな往来で垂れ流したくはなくて、それ以上の言葉を呑み込んだ。
──俺は、彼がここにいないかもしれなかったのが淋しくて、覚えてただけにすぎない。
しょうらいのゆめ:けいさつかん
目指す職業が同じで俺たちは初め意気投合していた。
父親が警察官だった伊達は俺の憧れでもあったんだ。
でも、ある時から彼は、その話題で少し暗い顔をするようになった。
事情をよくは知らない俺は踏み込むことができなくて……ああ、きっと、だから無意識に避けたんだ、多分お互いに。
でもここでこうして顔を合わせられたってことは、あの妙な距離感は、今からでも吹き飛ばせるんだろうか。
友達に──あの頃のような、はっきりと幼馴染と呼べた仲に、戻れるだろうか。
そんな期待でそわそわして、入校式では全部話半分にしか聞けていなかった。
更に、同じ教場どころか同じ班に振り分けられてますます俺は嬉しくなった。
「島
思わず浮かれてにこにこ自己紹介したら皆気さくに応えてくれたんだけど、伊達はぎこちなく微笑んだだけだった。少し俺は冷静さを取り戻す。
俺たちがぎくしゃくしたのは、さっき考えたような理由じゃなく、俺が無自覚に彼に何かしでかしたからだったりしないだろうか。
俺はそんな不安を新たに抱えながら、今まで通りできるだけ笑っていることにした。そういう奴のほうが、話しかけやすいらしいし……。
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「鬼塚教官、厄介な連中を引き受けてしまいましたねぇ……」
言われた当の鬼塚教官は増々眉間のシワを深め、自身の教場に所属するとある班の面々を改めて列挙する。
降谷零、諸伏景光、伊達航、萩原研二、松田陣平、そして。
「島美志、へらへら笑ってばかりで何を考えているかまるで分からない」
彼をここに送り出した『教育学部体育科』は、「良い体力作りになりました」なんて言ってのけられていい気はすまい。
結果的に、であればまだいいが、最初から『
全く、何でどいつもこいつもこう、一癖も二癖も捻くれてやがる。
「先が思いやられるよ……」
教官のぼやきは、疲労感の滲む溜め息とともに吐き出された。
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班長にも幼馴染がいたら! って思いました。