『オルクセン王国史/二次創作』オルクセン版宇宙戦争 作:koe1
代理で鉄道系歴史調査同人誌製作サークルTJ1914の資料担当が投稿しています。
アルビニー王国首都の東にあるこの小さな港町の沖合で、我らが第11戦隊こと屑鉄戦隊の3隻は、大小様々な雑多な船で編成されている、停泊中の避難船団の中をゆっくりと遊弋しつつ、警戒と管制を続けている。
日中かつ、べた凪であるので衝突の危険は少ないとはいえ、停泊船舶の中を進んでいるので気は抜けない。
そして小さな港町に似合うささやかな桟橋を挟む形で、これまたさほど大きくない貨客船が2隻横付けされており、その貨客船へアルビニー国民の避難民が続々と乗り込んでいくが、その速度は蝸牛の歩みの如くで全く進んでいないようにみえる。
幸いアルビニーの地元警察と、数は少ないがアルビニー陸軍が・・・どうもこの港町や近くの村落の後備兵を急遽招集したらしく、武器が行き渡っていないどころか軍服すらまとっていない兵が大半を占めている部隊だが、彼らがしっかりと押さえ込んでいるので、こんな時につきものである混乱だけが起きていないのが救いだ。
これまでオルクセンとグローワール、ロヴァルナの東西国境近辺やアスカニアとグローワール国境、オスタリッチとロヴァルナ、エトルリア国境付近、イスマル首都近郊の海岸付近を主戦場にしていた月星人との戦いだが、つい4日程前に後方と思われていたアルビニー王国各所に複数の月星人の輸送機械である『シリンダー』が、我がオルクセン風にいうのならば『ツリィンダー』が降下してきた。
それまで月星人の侵攻がなく、陸路や電信線のオルクセンとグローワール、キャメロット間を結んでいる重要な地域で、アルビニー国王はつい先日まで冗談交じりに『我が国は道路ではない』なんていう発言をしていたが、状況は一変した。
中州にあるアルビニー王国首都を包囲するような形で月星人のスターティフ・・・トライポッドが、でかい三本足共が多数迫っているような状況だ。
そんな状況下で数は決して多いとはいえないアルビニー陸軍は絶望的ともいえる遅滞戦闘を展開し、小型艦艇が主力のアルビニー海軍も、ベレリアント戦争時の先代の屑鉄戦隊のように河を遡っていき、決死の戦闘を続けているという。
首都やその近郊以外のアルビニー国内の各地域住人は陸路で我が国やグロワールに続々と避難しているが、アルビニー首都やその近郊は既に陸路での避難路は完全に断たれており、各国協力の下で海路からの必死の避難が続いているが、月星人共の水中兵器、通称『クラーケン』共の妨害もあるが、避難民の数と貧弱な港湾施設のためにアルビニー国民の避難は遅々として進まなかった。
そして我らが屑鉄戦隊こと第11戦隊も命令の下、このアルビニー首都東方にある、小さいながらも桟橋があることから避難港として指定されたこの小さい港町に荒海艦隊主力から分派され、護衛任務を果たしている真っ最中という状況だが、こんな小さな港町にも三本足共は迫りつつあるという情報が、臨時に我が戦隊の指揮下に入っている大鷲と彼に乗っている同族のコボルトから、つい先ほど私自身も直接感じた魔道通信と、その魔道通信とほぼ同時に投下された通信筒によって寄せられた。
やつらは港町の南側、6時の方角から迫って来ており、距離にしてまだ50㎞はあるそうだが、途中で足止めをしているアルビニー軍はなく、後3~4時間程でこの港町に到達する見込みだという。
もちろんささやかな桟橋だけではなく、沖合に停泊している船への艀や手こぎボートすらもを使った乗船を進めているが、三本足共がやってくるまで避難が間に合うかどうかは難しいところだ。
ただ避難が間に合わなければ、避難民達は文字通り奴らの餌になってしまう。
気持ちは焦るがこれ以上せかすわけにはいかない。
自国ではなく、他国へ協力している状況ではアルビニー側に対する命令権なんぞあるわけないし、そもそもこんな状況下で更に急がせたらどんな混乱が起こるかわかったものではない。
混乱が起これば避難は更に遅れてしまう。
気持ちは焦るが、今はただ避難民の乗船が間に合うように、そして我らが屑鉄戦隊が護衛していかなければならない、様々な船で構成されている雑多な避難船団がこの海域から無事に離脱できるように祈るしかない。
そんな焦る気持ちを表情に出さないようにしながら、港や海をゆったりと眺めているふりをしていると艦橋に同族であるコボルト族の通信長の中尉が戻ってきて口を開いた。
「艦長、荒海艦隊司令部より入電です。現在アルビニー沖100キロ付近にて複数のクラーケンが活動中。各避難船団は沿岸航行にて避難されたし。とのことです」。
それを聞き、まだ気持ちが暗くなったが顔には出さないよう努力した。
こんな状況で指揮官がそんな顔をしたり、焦ったりしたら周りにそれが伝わり、まったくもって良くないことになってしまうからだ。
私は艦橋の後方にある小さい海図台の前に張り付いているドワーフ族の航海長に向かって、元々予定していたオルクセンの避難港への最短ルートである航路を破棄し、沿岸ルートでの新たな航路を定めるように指示を出しつつ、通信長に対しても我が屑鉄戦隊こと第11戦隊の、私が艦長を務めている旗艦『メーヴェ』以外の2隻『コルモラン』と『ファザーン』にも月星人のクラーケンの行動についてと、オルクセンへは新たな沿岸ルートでの避難をすることを伝えるように指示を出した。
ああ、クソ・・・やはり戦隊旗艦の艦長が戦隊長を兼任するのではなく、戦隊長やその幕僚を別に手配して貰うべきだったかもしれんな・・・一介の退役間近な艦長には荷が重いぞ。
まぁ今更か・・・それにこんな情けないことを考えていたら先代の屑鉄戦隊のみんなに笑われてしまうな。
大鷲達からの第1報から約3時間ほどだった頃だろうか、彼らによる南から港町へ接近しつつある月星人共への航空偵察は継続されていたが、高く飛ぶと奴らの熱線に狙われてしまうので低空からの偵察にならざるのを得ないのと、魔道通信の到達距離の問題から我らが戦隊と通信をとる際は一旦月星人から離れてこの港町に近づかなければいけないという制約から、どうしても月星人共の行動を把握するのは途切れ途切れとなってしまい、奴らが接近しつつあるという恐怖感と共にもどかしさを感じていたが、幸いなことに避難民の乗船があと少しで終わるというときにこの艦橋とマストにある見張り台とを繋ぐ伝声管から『9時の方向、敵三本足3機みゆ!』という声が聞こえると同時にコルモランとファザーンからも敵発見の汽笛が鳴り、港町の教会の鐘が激しく鳴らされ始めたことに気がついた。
『奴らは南から来ているのじゃなかったのか!』と大鷲達に罵声を浴びせたくなるのを我慢しつつ、周りから慌てていると思われないようにゆっくりと双眼鏡を9時の方角・・・西に向けるとでかい三本足が3機、海に入りつつあるのがみえた。
この辺の水深は10~20m程で、約30mの高さがあるでかい三本足では問題がない深さだ。
どうやらあの海に入っていく3機の三本足は避難船団の退路を断つつもりのようだ。
西からやってきたということは・・・大鷲達が張り付いている奴とは別な奴らか?
落ち着いたせいかそう思いつくと隣にいた通信長が「艦長!フッケバイン01より通信!町に向かって6時の方角よりも大型三本足2機接近しつつあり!間もなく町の外周分に到達とのことです!」と、私も同時に感じ取った魔道通信の内容を、騒がしくなってきた艦橋内の音に負けないように、他の艦橋内の牡達にも伝わるような大きな声で伝えてきた。
フッケバイン01・・・我が戦隊の指揮下に臨時で入っている大鷲族とチワワ種のコボルトの符丁だ。
貴重な航空偵察手段がフッケバイン01しかいないことと、おそらく低空偵察が仇となって、西側から接近する三本足共には気がつかなかったのだろう。
いや、この町に接近したタイミングが同じということは、元からどちらかのグループが発見されるという前提の作戦だったのかもしれん。
発見された方が町へ向かって一直線に進んでいきこちら側の注意を引き、発見されていない方が避難船団の退路を断つという作戦で、発見された6時の方角・・・南から向かってきた奴らがこちらの注意を引きつけるおとりだったかもしれんな、クソ!
私は、私自身がまだ4等水兵だったときに起こったべレリアント戦争・・・先代のメーヴェに乗っていた時に、あの恐ろしいリョースタと戦ったときに伝声管越しに聞いた声と全く同じ内容を発した。
「総員戦闘配置!」
続いて残る2隻にも同様の命令を伝えるように通信長に指示しつつ、荒海艦隊司令部へ敵接近の電信を打つように、さらに停泊していたもののいつでも動けるように汽罐は炊いていた避難船団の各船舶に対して旗旒信号や手旗信号、魔術通信にて出港するように伝えると、私自身に直接、避難船団の旗艦に指定されている大型貨客船の船長の白エルフから魔道通信が入った。
『こちら貨客船ブラバゾル船長!中佐、でかい三本足は5機もいるそうじゃないか!こちらはどうすればいい?オクレ!』
慌ててはいるが混乱はしていない。
流石はあのサイズの貨客船の船長を務めている海の男・・・いや、海の女か。
これなら安心して避難船団を任せられる。
『申し訳ありませんが、まだまともにやっていない護衛ですが、ここまでということで。これから海軍の仕事をさせて頂きます。オクレ』
『正気かお前ら!相手は5機だぞ!でかいのが5機もいるんだぞ!一緒に逃げよう!オルクセンに帰ろう!オクレ!』
ああ、いい白エルフだな・・・こっちのことも、私たちのことも心配してくれている。
しかし私たちは海軍、軍隊だ。
無辜の市民は、例えそれが外国人であっても守らないといけない。
『デカいと言っても勝てないわけじゃありません。先の月星人のキャメロット侵攻時じゃ、このメーヴェのお友達の触角水雷艦がたった1隻が3機のでかい三本足を撃退したというじゃないですか。こちらは3隻で相手は5機。少々食べ応えがないぐらいですよ。それではブラバルゾルの船長殿、そしてみなさん。オルクセンまでのご安航をお祈りいたします。またの御用命がありましたら屑鉄戦隊まで。オワリ』