篠澤広のままならないヒーローアカデミア   作:唯野本仁

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いったん仕事が落ち着いたので投稿再開します。


ヒーロー基礎学①

 雄英高校、グラウンドβ。

 生徒たちは各々のヒーローコスチュームへと着替えて、その場所に集合していた。

 

「わぁぁ! やっぱり広ちゃんのコスチューム可愛いね!!」

「……ありがとう」

 

 葉隠の直球な感想に、篠澤は薄く頬を染めながら身をよじった。

 

 篠澤は薄緑色を基調とした、ドレスのように広がった服に身を包んでいた。

 一見すると動きにくそうに感じるが、ドレス風な衣装の裾は足の可動域を邪魔することなく、広がった腰下からはその下に履いているショートパンツが覗く。

 その姿はヒーローとしてのカッコよさというよりは、まるで妖精のような神秘的な魅力を見せていた。

 

 そして、ある程度誉め言葉を飲み込みやや冷静になった篠澤が葉隠の全身に目を走らせた。

 

「……透の衣装は?」

「私? 見ての通りだよ!」

「見ての通りって言われても」

 

 篠澤の視界の中に入っているのは、ただ浮かぶ手袋が一双とその下にある一足分の靴のみであった。

 

「裸ってこと?」

「そうだよ! 個性を活かすならこれが一番いいかなって!」

「まじかよ」

「いやいや、流石に乙女として駄目ちゃう?」

 

 たまたま周囲にいた切島と麗日が反応を示した。

 切島を含む一部男性陣は一斉に顔を赤らめて、あらぬ方向に逸らすのだった。

 

「ふっ、ヒーロー科最高……」

 

 一部の男は逆にガン見していたが。

 

「透、裸は流石に危ない」

「う~ん、でも服着たらせっかく透明なのに意味なくなっちゃうから……」

「特殊な個性を活かしたコスチューム開発を手掛けてる会社もあるから、一度相談してみたらどう?」

「そうなんだ……うん、ちょっと考えてみるね!」

 

 そうして少女同士の会話は平和に終わって……はいなかった。

 

「おい、なんて事をしてくれたんだ篠澤! たった今、お前は世界の宝を一つ奪い去ったんだぞ!」

「……? なんのこと?」

「しらばっくれやがって、お前はいま健全な青少年たちの夢と希望を奪い取ろうとしてんだ!」

 

 黄色いマントをたなびかせるコスチュームを着た峰田が、ビシリと葉隠の方を指さして言った。

 

「透明で見えなくても確かにそこにあるおっぱい、露出された下半身! あわよくば戦闘訓練やこれから先の学校生活の中の些細なアクシデントでその柔肌を掴み嘗め回す機会。そんな純粋な男たちの夢をお前は奪っあぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあああ!!?」

「死ね」

 

 熱弁をふるっていた峰田の首筋にプラグが突き刺さり、その体を震えさせるのだった。

 肉にめり込んでいたプラグがズボッと抜け、その持ち主の元へと戻って行く。

 

「大丈夫だった2人とも?」

「うん」

「私も平気だよ響香ちゃん!」

 

 耳郎響香:個性「イヤホンジャック」

 耳たぶが発達してできた有線イヤホンに似た器官から音を伝播させることができる個性。

 先端のプラグを差し込むことで対象の音を聞く聴診器のような使い方から、音を増幅させてぶつけることもできるぞ!

 

「まあ、こういう輩もいるわけだし。コスチュームの件は真面目に考えた方がいいんじゃない?」

「そうだね……見えないから良いって訳じゃないって身に染みたよ」

 

 こうして一人の男の尊厳とか評価とか、いろんなものを犠牲にしてまだ見ぬ本当に健全な子供たちの性癖を歪めかねない可能性は摘まれたのだ。

 

「お、さっそく全員集まってるな! って峰田少年はどうしたんだ?」

「あ、気にしないでください」

「そ、そうかい? まあ、みんなが大丈夫だというなら……」

 

 そして、初めての授業に緊張と楽しみを覚えながら颯爽と現れた先にあったこの惨状に、ただただ困惑するオールマイトであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 改めて、グラウンドに整列したA組の面々を見渡しながらオールマイトが話し出した。

 

「さて、気を取り直して今日の授業の説明をしていくぞ!」

「よっ、待ってました!」

「No.1ヒーローの授業、いったいどんな授業なんだ」

 

 期待と興味に満ちた21対の瞳に、オールマイトの額の上でたらりと汗が一筋たれる。

 少し考えた素振りのあと、オールマイトは自身のポケットから紙切れを取り出したのだった。

 

「……え~、本日はこれから『屋内戦闘訓練』を行っていく!」

「カンペだ……」

「めっちゃメモ見るじゃん」

「『屋内戦闘訓練』を行っていくぞ!!」

 

 生徒からの小さな突っ込みを誤魔化しつつ、話は進む。

 

「君達には今から3人づつヒーローチームとヴィランチームに分かれて、そこの建物内で一回、約5分間ほど戦ってもらう。戦闘のルールは簡単、建物内には核兵器を模した張りぼてがある。ヒーローチームは時間内にその核兵器を確保するかヴィランチームの全員を捕獲すれば勝利。ヴィランチームは時間切れさせるかヒーローチーム全員を捕獲すれば勝利だ!」

 

 オールマイトは一気にメモに書き連ねていた内容を読み切った。

 小さな達成感に、ふぅと一息つくもすぐに生徒たちから手が上がるのだった。

 

「はい、先生! 質問よろしいでしょうか!」

「あ、どうぞ……」

 

 特に誰とか指定することなく質問を促した結果、生徒たちは各々に質問をしだした。

 

「チーム分けはどのように行うのでしょうか!」

「ヒーロー側が不利じゃないですか?」

「戦闘ってどこまでやっていいんだ」

「1チーム余りません?」

「どう、ボクのマント、イカしてない?」

「ん~、聖徳太子ぃぃぃぃ!!」

 

 矢継ぎ早に投げられた質問に、かの歴史的偉人の名をあげながらオールマイトが答える。

 

「チーム分けはクジで行う! ヒーローが不利なのは仕方がないこと、いかに自分が不利だろうといつでもヒーローは立ち向かわなければいけないのさ! 戦闘に関しては建物を大きく破壊させたり、相手に大怪我を負わせなければ骨折程度までは目をつぶる、だからと言って積極的に相手を怪我させるような行動はNGだ! 余った1チームは改めてクジで対戦相手を決めることとする! そしてそのマントは……うん、良いんじゃないかな!」

 

 一息に返したオールマイトは思った以上の疲労に教師って大変なんだな、と噛み締めるのだった。

 

「チーム分けはクジなのですか? 運によって個性的に不利なチームが出来てしまうのでは?」

「ヒーロー同士のチームアップはその場で行われることもあるから、その予行ってことじゃないかな?」

「なるほど……申し訳ありません、差し出がましいことを言ってしまいした!」

「いいよ! それじゃ、さっそくクジ引いちゃおっか!」

 

 オールマイトの号令に各々がクジを引いていく。

 そのチーム分けの結果に応じて、生徒たちが移動する。

 篠澤が向かった先には、既に二人の男子が集まっていた。

 

「……よろしくね」

「ウィ、よろしくネ!」

「よ、よろしく」

 

 天を突くように鍔が伸びたサングラスをしたキラメキ系男子、青山優雅。

 大きな体と岩石のようにも見える頭を持つ物静かな男子、口田甲司。

 この2名が篠澤と一緒のチームとなる生徒たちだ。

 

「私は篠澤広、個性は頭がいい……よ?」

「あ……ぼ、僕は口田甲司です……こ、個性はアニマルボイス、動物と会話ができるよ」

「すごい……いい個性だね」

「し、篠澤さんも……ロボットを操作出来たりするって、凄い個性だよ」

 

 二人がお互いに個性を誉めあう中、もう一人の少年が割り込むように体をねじらせてお腹を突き出した。

 

「確かに二人とも良い個性だね! でも、ボクの方がもっと良いかな?」

「あ、そ、そうなんだね……」

「どんな個性なの?」

「よく聞いてくれたよ!! そう、このボク、青山優雅の個性はネビルレーザー! おへそからレーザーが出せるのさ!」

 

 青山はそう言うと実際にお腹に装着したベルトから直径20cmほどの太さのビームを披露した。

 

「おぉ……」

「岩とか鉄板くらいなら破壊できるレーザーさ。これがどういう事かわかるかい?」

「え、えっと……どういうことなのかな?」

 

 口田が聞くと、青山は分かりやすいほどに大きなウインクをして続けた。

 

「つまり、今回の戦闘訓練ではボクが花形ってことサ!」

 

 青山はもう一度空に向かってビームを放った。

 その直後、ぎゅるるるるという小動物の唸り声のような音が響き、青山はお腹を押さえてうずくまる。

 

「ウッ!」

「だ、大丈夫!?」

「どうしたの?」

 

 突然のことに口田と篠澤が声をかけると、青山がこう小さく返した。

 

「つ、使いすぎるとお腹が痛くなっちゃうんだよね!」

「……そうなんだ」

 

 この時、周りで見ていたクラスメイト達の大半は心の中でこう思っていた。

 あのチーム、締まりが無いなぁ、と。

 

 

 

 

 

 

 




チーム分けは緑谷麗日コンビと、爆豪飯田コンビ以外はクジで決めました。
クジの割には広らしくちょっとままならないチームになったなって思います。

以下、チーム表

Aチーム:緑谷、麗日、葉隠
Bチーム:耳郎、瀬呂、轟
Cチーム:障子、峰田、八百万
Dチーム:爆豪、飯田、尾白
Eチーム:芦戸、上鳴、砂藤
Fチーム:青山、口田、篠澤
Gチーム:蛙吹、切島、常闇
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