篠澤広のままならないヒーローアカデミア   作:唯野本仁

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HIFシナリオ良かった……


USJ①

 トコトコとバスに揺られて数分。

 篠澤たち一行はヒーロー科の授業の一環としてある施設を訪れていた。

 

「すっげ~、まるでUSJじゃん!」

 

 切島が思わず漏らしてしまった言葉の通り、そこは一見すると遊園地と見まがうほどに雄大な物だった。

 

 常に燃え盛り続ける火災エリア。渦を巻き、高波の立つ水害エリア。いつでも崩落を起こせる土砂エリア等々。

 雄英高校の無駄に洗練された無駄のない無駄な技術によって作られたここは、救助訓練を行うために作られた特別授業施設。

 その名も……

 

「ようこそ『USJ(嘘の災害や事故ルーム)』へ!」

「USJだった!?」

 

 いろいろとアウトな名前を出しながら人影が姿を現した。

 生徒たちの前に姿を現したのは宇宙服を模したヒーロースーツに身を包んだ性別不詳の大人、スペースヒーロー13号と呼ばれる雄英高校の教師の一人だ。

 

「篠澤ちゃん、見て見て! 13号先生だよ!」

「お、お茶子。酔いそう」

 

 麗日は憧れのヒーローを前にただでさえ浮ついていた気持ちが更に高まっているのか、無意識に隣にいたシノサワの肩を掴み前後に揺らす。

 そのあまりにも無遠慮な興奮に、笑みを浮かべながらも徐々に顔を青く染める篠澤であった。

 

「初めまして、知ってる人もいるようだけど自己紹介しておきますね。僕はスペースヒーロー13号、個性はブラックホール、主に災害現場なんかで瓦礫などを塵に変えて救助活動を行ってます」

「改めて聞いてもとんでもない個性だよな……」

 

 ポツリと零した上鳴の言葉に、13号は宇宙服越しにニコリと微笑む。

 

「そうです。僕の個性は自分で言うのもなんですがとても強力です……それこそ、人を簡単に殺せる程度には」

「ッ!?」

 

 13号の優しげな声からは想像もしていなかった苛烈な言葉に、浮ついた空気は一瞬で霧散する。

 引き締まった空気の中で、変わらずに優しげな声のまま13号の話は続く。

 

「今の世の中は個性の使用を規制する事で成り立っていますが、ヒーローとして自分の個性が一歩間違えれば安易に命を奪える事を忘れてはいけません」

 

 雄英に来る子供達は、ヒーローを目指しているだけあり強力な個性を持っている者たちが多い。

 それゆえに13号のその言葉に感じるものがあるのだった。

 

「この授業では各々の個性をどう人命救助に生かすのかを学んでいきましょう。君達の個性は他者を傷付けるだけのものではない。是非その事を学んで帰ってください」

「「「はい!」」」

 

 生徒達の元気良い返事に頷くと、13号はあらためて空気を切り替えるように明るい振る舞いを見せる。

 

「いい返事です! さて、それでは今日の授業ですが……」

「待て13号……何か来る!」

 

 13号が授業を続けようと口を開いたその時、相澤が声を荒げると同時にUSJ内の開けた場所に黒い霧のような何かが現れ渦巻きはじめる。

 それからはその色もさることながら、それ以上に禍々しい何かが現れるような予感と怖気を感じる風が漏れ出ていた。

 

 思わず全員が立ち尽くし渦を見ていると、そのの中から様々な恰好をした人々が続々と姿を現し始めた。その人物達は刀剣や銃火器を所持し何処か剣呑で下卑た表情を浮かべた、どう見ても一般人とはいえない雰囲気の集団だ。

 やがて数秒が経ち渦が収まってきたころ、最後に人の手を全身に張り付けた一際異様な出で立ちの人物が現れて辺りをゆっくりと見渡した。

 

「なんだよ、オールマイト居ないのか……生徒を殺せば来るのか?」

 

 呟くように発された声を聞き取る事は叶わなかったが、あからさまな程に異様な空気を感じた生徒達はその顔に冷や汗を一つ垂らす。

 

「な、なんだあれ?」

「授業の一環か何かなの?」

 

 突然の出来事に現状を咀嚼しきれていない一部生徒達が混乱する中、相澤が鋭く声を荒げる。

 

「あれはヴィランだ! 13号、生徒達を頼む!」

「ッ、承知しました!」

「え、は? ヴィランだって?」

 

 広場の中央に陣取ったヴィラン達は周囲を見渡した後、こちらの存在に気が付きニヤリと牙をむくように笑みを浮かべる。

 その様子にようやく生徒達は現状を飲み込む。

 

「ヴィ、ヴィランンンンンン!?」

「おいおい、マジか!? ここは雄英高校だぞ。ヒーローの本拠地にカチコミとか馬鹿かよ!?」

「逆だ、何とかする自信があるから仕掛けてきたんだ! いいか、お前たちは余計なことはせずに避難することだけ意識していろ!」

「で、でも相澤先生! 先生の個性は多対一には向いてません。ここは全員で協力して---」

「いいか緑谷、ヒーローは一芸だけじゃ務まらない」

 

 そう言って相澤は目線を隠すように首元に掛けてあったバイザーを被ると、素早い動きでヴィラン達へと向って行く。

 

「あ? なんだコイツ?」

「へっへっへ、自殺志願者かよ」

 

 数十人へと無手で向かって来る相澤を鼻で笑いながらヴィラン達は各々の個性を発動しようとし……

 

「ッ!? なんだ個性が発動しねぇ!?」

「がら空きだ」

 

 戸惑いを隠せないヴィランの懐に入り込むと、相澤が流れるような身のこなしで肘を打ち込む。

 

「ぐぉ……」

「クソ! こいつ資料にあったイレイザーヘッドだ、奴に見られると個性を消されるぞ!」

「ほぉ、こちらについて随分と詳しいようだな」

 

 その能力がばれてもなお、二人、三人と相澤は次々にヴィランを制圧していくが、その前に大型の異形系個性が立ちはだかる。

 

「個性を消せるねぇ。俺みたいな異形系も消してくれるのかい?」

「そりゃ無理だ、が」

 

 言うと同時に相澤は異形系ヴィランが掴もうと伸ばしてきた腕を躱し、即座に首元に巻いていたマフラーのような特殊捕縛布を巻き付け瞬く間に拘束してしまう。

 

「当然、お前のような個性の対策もしているさ」

 

 バイザーを用いた目線隠しを使ったいつ個性を消されるかわからない戸惑い。歴戦の戦いの中で鍛えられてきた実戦式格闘技。そして並の異形系でも振り切ることの出来ない特殊捕縛布を使った拘束術。

 それらは全て相澤がヒーローとして長年磨いてきた技術の結晶だった。

 

「す、凄い! 先生の本領はむしろ多対一の状況にあったんだ!」

「皆さん、感心している場合ではありません! すぐに避難を!!」

「あ、すいません!」

 

 緑谷を含め相沢の戦いぶりに見惚れていた生徒達を13号が叱責し避難を促す。

 A組の全員が避難をしようと動き出した時、目前に黒い霧の渦が巻きその中から一つの影が滲み出す。

 

「皆様、はじめまして……我々は“(ヴィラン)連合”と申します」

 

 その見た目はまさに黒霧。光さえも飲み込むようなモヤが全身を包見込んでいる人型の異形が立っていた。

 

「な、なんだぁ!?」

「くっ、皆さん下がってください!」

「我々の目標の一つはオールマイト、平和の象徴の抹殺……でしたが、どうやら今はいない様子」

 

 まるで独り言のように呟きながらその人影は無機質な瞳で、ぐるりと辺りを見渡した。

 

「ですので、先ずはあなた方を---」

「の前に俺らに殺られるって考えねぇとなぁ!」

「オラァ!!」

 

 瞬間的にヴィランの前に躍り出た爆豪の個性と切島の拳が相手に突き刺さる。

 勢いそのままに爆豪が追撃を仕掛けようと拳を振り上げて……

 

「いけない! 二人とも下がって!」

「あ?」

 

 言うならば若気の至り。後先を考えず躍り出たその場所は13号の個性の直線上、生徒を塵にするわけにもいかず13号は個性を使う事が出来なくなってしまった。二人の行動は結果的にプロヒーローの行動の妨害になっていたのだ。

 誰よりも素早い対策が必ずしも最善ではない。それも相手が個性不明のヴィランであるならば……

 

「クックック、危ない危ない。しかしまだまだ経験不足、かえってヒーローの邪魔をしてしまいましたね」

「なっ、テメェ!」

 

 爆炎の隙間から余裕の声色を出しヴィランは笑う。

 

「そう生徒といえどヒーローの卵、ですので私の役割はこれ」

 

 黒い霧が辺りを包み込む。

 

散らして殺す

「ッ! 皆、僕の後ろに下がって!」

 

 13号が慌てて生徒達を庇おうとするも、それよりも速く霧は生徒達を飲み込んでいく。

 篠澤も急いで13号の方へと近づこうとするも、その瞬間に後ろから襟首を掴まれ引き倒される。

 

「あっ」

「篠澤ちゃん!」

 

 誰かから伸ばされた手を掴んだ感触を最後に、篠澤の体は霧に飲み込まれていった。

 

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