【完結】旅の終わりに:TS転生者と転移勇者の話   作:WhatSoon

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本日は2回更新です。
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10話:結婚式後

飾り立てた式場で、大勢の人に囲まれて……僕はミリアを向き合っていた。

ミリアは純白のドレスを着ていた。

まるで花のように開いたスカートには、繊細な刺繍が施されている。

 

とても……似合っている。

彼女は今日、今までで一番……綺麗だ。

 

 

「では、誓いのキスを──

 

 

僕はそんなミリアの肩に触れる。

彼女は目を閉じて、唇を自然体にした。

 

緊張はしている。

心臓は早鐘のように鳴り響いている。

 

それでも、取り繕って……彼女に恥をかかせないように、口付けをした。

 

その瞬間は、周りにいる人も景色も全部遠くに行ったかのように感じた。

普段の口付けとは少し違う、『重さ』を僕は感じ取っていた。

 

これからも彼女の側に居たい。

そんな想いが僕の胸を占めた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

そんなこんなで迎えた結婚式だが──

 

 

驚くほど、すんなりと上手く行った。

 

ユースケは練習通りに俺をエスコートしたし、照れたり恥じたりもせず俺とキスをした。

 

……まぁ、なんだ?

ユースケは旅の時もそういう所あったからな。

本番に強いって言うか……決めるべき所は決めるというか……じゃなきゃ『勇者』なんて言ってられないしな。

 

ウチのクソ親父やら、公爵家の面々やら、俺の異母兄やらやらも参列したが、多分大丈夫だ。

 

一番めんどくさい行事が終わり、俺とユースケは式場を後にした。

もうマジで二度とやりたくない、結婚式。

 

そうして式後、夜になって……後は帰るだけ。

 

 

 

の、筈だったんだが?

 

 

俺とユースケはメイド達によって、風呂場に連行された。

……何でだ?

 

 

知らないメイドが主導してるし、俺は疑問には思っていたが……ジェーンも笑顔で着いてきてるし問題ないと判断した。

 

クソ親父の差金か?

いや、それとも結婚式の運営……いやだが、スケジュールには解散後の行事なんて書いてなかっただろ。

 

 

「……むむ」

 

 

風呂場で入念に洗われながら、俺は首を傾げた。

 

ちなみにユースケは別室だ。

当たり前だが。

……アイツも、メイドに身体洗われてんのか。

ちょっと複雑な気持ちだな。

揶揄ってストレスを発散させて貰うか──

 

 

「あっ」

 

 

そうして、俺が風呂場から出ると……居た、ユースケが。

顔を真っ赤にして俯いている。

 

 

「…………」

 

 

……やっぱり、弄ってやるのは可哀想か。

普通に嫌がってたんだろうな、アイツ。

家庭科の授業で女の子に囲まれてしまって死にかけてる陰キャって感じだ。

 

 

そんな訳で俺とユースケは、メイド達の指示のまま連れて行かれ……俺達に割り当てられている部屋とは、別の部屋に入れられた。

王城の居住区でも隅っこの方の、普段は来ないような場所にある部屋だな。

 

 

「では、私達は失礼致します。ごゆっくりと……」

 

「え、えぇ……ご苦労様です」

 

 

メイド達は帰っていき、残ったのは俺のお付きのジェーンだけだ。

 

部屋にはデカいベッド……後は水差しぐらいか。

ベッドもデカいと言っても、俺らが普段使ってるヤツより小さい。

ダブルサイズって所か。

 

……なんだ、この部屋。

何か違和感がある。

 

とりあえず、いつもの口調では喋らない方がいいか。

 

 

「……ジェーン、説明をお願いできますか?」

 

「はい、姫様」

 

 

ジェーンが恭しく頭を下げて……ちょっと申し訳なさそうな顔をした。

 

 

「結婚式後の新郎新婦はですね、こちらの部屋にお通しするのが決まりとなっているのです」

 

「……はぁ、そうですか?」

 

 

よくわからん。

困惑しつつ、部屋を見直して……既視感を感じる。

 

あ、この部屋……まさか──

 

 

「そこで結婚初夜をして頂く、となっていまして」

 

 

ラブホじゃん!

 

なんか妙に清潔感あると思ったが……足元の絨毯も、ベッドのシーツも新品じゃないか。

天井の魔道具灯の灯りも妙に薄い……というか、ムードを演出してるし。

 

あー、なるほどな。

そういう事か、そういう……ん?

 

 

「……結婚初夜、ですか」

 

「はい、そうです」

 

 

ちら、とユースケを一瞥する。

……頭を抱えて蹲ってる。

やめろ、変な事をするな、バカ。

どこに目があるか、分かってないんだぞ。

 

 

「では、お二人ともごゆっくり……頑張ってください」

 

 

内心混乱している俺を見捨てて、ジェーンが部屋を出た。

いや、見捨てたというよりは……限界が来た、という事か?

本来なら他のメイド同様すぐに離席する予定だったのだろう。

 

彼女の足音に追従して、複数人の足音が聞こえたからだ。

 

やっぱ、いつもの砕けた口調じゃなくて良かったか。

 

 

「ミリア、その──

 

 

そんな中、口を開いたユースケの……唇に人差し指を置いた。

 

 

「んむっ……?」

 

 

そうして黙らせて……俺は体内に魔力を循環させる。

 

この違和感。

室内の雰囲気や、ドアの外にいたメイド達に対してではない。

 

魔法使いとしての俺が感じている違和感だ。

ならば──

 

 

「……ふぅ」

 

 

俺は室内に魔力を循環させる。

 

普通の魔術師なら魔力を展開するのは、物に直接通すぐらいしか出来ない。

 

だが、俺は違う。

ユースケが転移チート勇者なら、俺は転生チート魔術師だ。

 

他の奴らじゃ出来ない魔力操作も、並の人間の数千倍の魔力出力も可能だ。

 

 

「…………」

 

 

真剣な表情を浮かべる俺に、ユースケは頷いて黙った。

 

部屋に満たした魔力を、更に家具へと浸透させる。

水差し、魔道具の灯、ベッド、枕……扉、壁にかけられた絵画。

 

そして……。

 

 

「ユースケ、ベッドに行きましょうか」

 

 

俺は指を自身の口元に置いて、その後ベッドを指差した。

 

 

「え……っと、うん。分かったよ」

 

 

その意味を理解したのかユースケは素直に頷いて、俺の指示通りにベッドへ向かった。

 

そして──

 

俺はユースケをベッドへと押し倒した。

 

 

「ちょっ──

 

 

再び手でユースケの口元に触れる。

 

 

「ユースケったら、大胆なんですね……?そういう所も嫌いではないですが……♡」

 

 

媚びるような声を出しながら、ユースケへ密着し──

 

 

「……盗聴されてる。気付いてないフリしろ」

 

 

小声で忠告した。

それに、ユースケは目を細めて、数度頷いた。

さっきまでの頼りない顔ではなく、真剣な表情だ。

 

 

「……魔力探知で魔法が付与されている家具を二つ確認した。壁掛けの絵画と、ドア上の鷹の装飾だ」

 

 

ユースケが俺の言った家具を一瞥した。

 

 

「……そこには『盗聴』の魔法が掛けられている。精度はあまり高くないが、ある程度は拾われると思ったほうがいい」

 

「……うん」

 

 

そう話して、身体を起き上がらせ──

 

 

「もう少しだけ待っていただけませんか?ユースケ……準備、致しますので……」

 

 

なんて言いながら、俺は服の上着を脱いだ。

下着を露出する事になるが……そんな事を言っている場合ではない。

布が擦れる音をわざと大きめに鳴らしたかったのだ。

 

ユースケの視線が一瞬、俺の下着姿に向かうが……すぐに目線を下げた。

……まぁ、いいか。

 

また、密着し直して口を耳元に付ける。

 

 

「……盗聴してるのは、多分、他の貴族だ。俺達が変な事を口走らないか、盗み聞きしようとしている」

 

「……うん」

 

「……解析して、盗聴している奴らを探知する。時間は少し掛かるから、ヤってるふりするぞ」

 

「……う……うん?」

 

 

そこでユースケの真剣な表情が崩れた。

……もっと真剣に振る舞って欲しいんだが。

 

 

「……俺が逆探知してるってバレたら、魔法を解除して証拠ごと消される。それは避けたい」

 

「……わ、分かったよ」

 

「……じゃあ、するぞ。俺が良いって言うまで、お前は黙って寝ておけば良いからな」

 

「え、あ……う、うん」

 

 

さて……小っ恥ずかしいが仕方ない。

魔法の探知を進めながら、ヤってるフリをしなければならない。

 

 

「では……失礼致しますね、ユースケ♡」

 

 

媚びたような声を出しつつ、俺はユースケに跨った。

ゆっくりと、服越しに腰を揺らして……ベッドを軋ませた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「んっ♡あっ♡」

 

「そこ、凄く良いですよ♡ユースケ♡」

 

「んっ♡きもちいい……♡」

 

「もっとしてください♡ユースケ……♡」

 

「愛してますよ……♡ユースケ♡」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ、もう良いぞ。魔法の解析は完了した……あと、音声もダミーに切り替えた。盗聴の心配はこれでなくなったな」

 

 

ミリアが僕の上から降りつつ、そう言った。

露出していた下着を隠すために、上着も着ながら。

 

 

「……ん?おい、もう喋って良いぞ?」

 

 

一言も喋らない僕に、ミリアが不思議そうに首を傾げた。

 

しかし、僕は……正気ではいられなかった。

それはそうだろう。

だって、さっきまで僕の上でミリアが……艶やかな声を出していたのだから。

 

好きな女の子が嘘の嬌声を僕の上でしていたんだ。

なのに僕は一言も喋る事を許されてなかったし、身動きも取れなかった。

多分、きっと拷問だった。

 

 

「おい、無視するな。ユースケ」

 

「いたっ」

 

 

頬をつねられた。

ようやく意識が現実に戻ったが、まだ鼓動の速度は戻っていない。

 

 

「……こんな事をしでかしたバカどもについては、明日あたりにクソ親父と話してくる。王族の情事を覗き見しようとしたんだ、お家取り潰しぐらいは行くだろ」

 

「う、うん」

 

 

ミリアがベッドから降りて、水差しからグラスへ水を注ぐ。

その様子をベッドで寝転がったまま見ていると……彼女が首を傾げた。

 

 

「……お前も飲むか?」

 

「うん……お願いしてもいいかな」

 

 

もう一つのグラスに水が注がれる。

 

 

「ほら」

 

 

それを机に置いたまま、ミリアが水を飲み干した。

僕に取りに来いって事だろう。

ベッドの上に水が溢れる事を心配してるんだ。

 

だから、そう、理由は分かるんだけど。

僕はベッドから降りられずにいた。

 

 

「……ん?どうした?」

 

「ご、ごめん、立てなくて……」

 

「は?俺が乗った程度で腰を痛める奴じゃないだろ、勇者サマなんだから」

 

「い、いや、そういう訳じゃなくて……」

 

 

立てないのは、別の所が……『た』って……いや、そうじゃなくて。

立つとバレてしまうからで。

 

……だってさ、好きな女の子が僕に跨って、あんな艶かしい声を出してたんだよ!?

仕方ないじゃないか……。

 

不可抗力……なんだけど──

 

 

「じゃあ、どう……いう……あ?」

 

 

ミリアが気付いたようで、目を瞬いた。

 

 

「あっ」

 

 

……し、しまった。

掛け布越しに、山なりに……こんなの見たら、一瞬で何がどうなってるかバレてっ──

 

 

「お、お前……」

 

「ご、ごめん、ミリア……!これは、その……!」

 

 

申し訳なくなって、股間を押さえつつ、僕は顔を逸らした。

 

 

「お、俺があんな恥ずかしい演技をしてる時に、なにしてんだ……?」

 

「だって……その、生理現象だから……」

 

「そ、そうか……せ、生理現象か……?」

 

 

ミリアが口元に手を置いて、視線を泳がせた。

 

 

「……俺で……そうか……意識してんのか……ふぅん……」

 

 

そして何やら、小声でボソボソと呟いた。

きっと僕宛てではない、独り言だ。

 

そんな彼女に頭を下げる。

 

 

「ご、ごめん……ミリア」

 

「……いや、別に、気にしてはいないが」

 

「……本当にごめんよ」

 

「……はぁ」

 

 

そして、ため息を吐かれた。

 

気まずい。

ミリアは僕を男友達として、害のない形だけの婚約者にしているというのに。

そんな、こんな……こんなにしてるなんて。

 

気持ち悪がられても仕方ない。

嫌悪感を抱かられても仕方ない。

嫌われたとしても仕方ない。

 

 

「……なぁ、ユースケ」

 

「な、なに?」

 

 

ついに死刑宣告をされてしまうのか。

そう思って、ミリアに視線を向けたら……少し照れくさそうにしていた。

 

 

「別に俺は……気にしてないからな?そんなに落ち込むなよ」

 

「……で、でも……その、気持ち悪くない?」

 

「は?いや……別に?まぁ、俺は元男だしな……そういうのが不可抗力だってのは、知ってるし」

 

「……そ、そっか。でも、申し訳なくて……」

 

 

そう言い切ると、ミリアは少しムッとした顔で……僕の頭を叩いた。

 

 

「いたっ」

 

「あのな……俺はユースケのこと、ちょっとやそっとで嫌いになんかならないからな」

 

「……ミリア?」

 

 

急な発言に、僕は目を白黒とさせる。

 

 

「そんな事で嫌いになるぐらいなら、婚約者にしてねぇよ」

 

「……うっ」

 

「な?もっと、俺の事を信用しろ。そんなに身勝手な奴に見えるか?」

 

「見えない……」

 

「だろ?だから、謝るのは良いが……落ち込むなよ。俺の婚約者なんだろ?」

 

 

そう言い切って、ミリアは笑った。

彼女の言い分は理解した。

 

僕があの長い旅でミリアを好きになったように、ミリアはあの長い旅で僕を信頼してくれるようになった。

僕の彼女に対する恋慕は、多少の事では揺らがない。

それと同様に、彼女からの信頼も揺らがないのだろう。

 

僕は叱られていると言うのに、嬉しくなって頬を緩めながら頷いた。

 

 

「うん……分かった。ごめん、それと、ありがとう……ミリア」

 

「……おう、分かれば良いんだ」

 

 

笑いながらミリアが水を飲んだ。

……公務をしている時の笑みと、結婚式の時の笑み……そして、今浮かべている笑み。

全部が全部違うけど……どれも、僕の心を揺さぶるような笑みだ。

 

……僕って、やっぱり、ミリアの事が……好きなんだ。

そう実感する。

 

 

「……まぁ、そろそろ寝るか。こんな運動した所為で眠たくなってきた」

 

「そうだね、夜も遅いし……」

 

 

ミリアがシーツを整えながら、僕の側に座った。

そして、目線を向けた。

 

 

「じゃあ、ほら……ん」

 

「……ん?」

 

「ほら、いつものだろ」

 

「……いつもの……」

 

 

な、なんだろう?

戸惑っていると、ミリアが眉を顰めた。

 

 

「なにを惚けてるんだ。寝る前のキスだろ……?」

 

「でも、結婚式は終わったし……もう練習しないと思ってたんだけど……」

 

 

僕がそう言うと、ミリアは目を瞬いて……そして、顔を真っ赤にした。

あ、まずい、めちゃくちゃ怒ってる。

 

 

「こ、これからもそういう機会がないとは限らないだろ……!?なら、間を空けず普段から慣れておいた方がいいだろ……!」

 

「そ、そうだよね?ごめん……!」

 

「それとも俺とキスするのは嫌だって言うのか……!?」

 

 

そう声を荒げながらも……どこか、ミリアは心配そうな顔をしていた。

僕は息を呑んで、首を横に振った。

 

 

「ううん……嫌な訳ないよ」

 

 

真剣にそう謝ると、ミリアは息を深く吐いて……後頭部を掻いた。

 

 

「……分かればいいんだ、分かればな」

 

 

今のは失言だった。

君とキスするのは嫌だって言ってるみたいだった。

僕の本心は全然そんな事なくて、ミリアとのキスは……す、好きだけど。

だけど、言わなきゃ分からない。

ちゃんと言葉にしなければならなかった。

 

 

「じゃあ……するね?」

 

「……おぅ」

 

 

僕はいつも通りミリアの肩を抱いて……そのまま抱きしめるように、キスをした。

 

 

「ん……っ♡」

 

 

……何だかいつもより艶やかな声が聞こえた気がする。

さっきの、嘘の嬌声に釣られてだろうか。

 

指摘はしないでおこう。

恥ずかしいかも知れないし。

 

 

「……ぅ」

 

 

唇を離せば、少し潤んだ目で僕を見上げていた。

……この瞬間のミリアは、なんだかこう、凄く可愛い。

庇護欲を刺激される感じがする。

 

……さっきの、僕の上に跨っていた時の、刺激的な光景が目に浮かぶ。

僕の自制心を、内側から何かしらの欲が蹴り壊そうとしてくる。

 

慌てて目を逸らす。

危ない、危ない。

 

 

「そ、それじゃあ、おやすみ……ミリア」

 

「……おう、おやすみ。ユースケ」

 

 

そうして僕達は同じベッドに入った。

……けれど、いつもよりベッドが狭いから、密着した状態で眠る羽目になった。

 

彼女の匂いと時折触れる柔らかな感触。

綺麗な彼女の姿と、唇の感触。

淫靡な姿と……嬌声。

 

それらが入り混じって……僕は翌日、寝不足になってしまった。

 

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