【完結】旅の終わりに:TS転生者と転移勇者の話   作:WhatSoon

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3話:クソ親父

だりぃ〜っ。

 

毎日のように夜会……つーか合コンパーティに、俺とユースケは参加させられていた。

主役は誰かって明記されてる訳じゃねぇけど、実質的に邪竜討伐の功績人であるユースケと俺に誰かを当てがおうってのが暗黙の了解みたいだ。

 

それで一週間ぐらい夜会続きな訳だが……進捗どうですか?ダメですね。

 

ユースケは女性不信なのか一向に婚約できそうな女が見つからない。

そもそも、アイツ気が強い女が苦手っぽいしな。

典型的な草食系男子だ。

 

お淑やかな大和撫子の方が好きそう。

いや、ここは日本じゃねぇし、大和撫子もクソもないが。

 

この間、貴族令嬢どもの茶会を覗いたが、アイツらピリピリしてたぞ。

ユースケに悪感情を抱いてはなさそうだが、どうにかして落としてやろうと作戦会議をしていた。

恋の薬でも盛ろうかとか、何とか……。

 

おぉ、怖い怖い。

 

そんで、俺の方は……やっぱなー、男と結婚ってのはちょっとなー。

どいつもこいつも、下心満載のミッチミチで俺に話しかけて来やがる。

 

おいコラ、目線が顔から胸元に移動してるの気付いてるからな、俺は。

 

 

「はぁ……」

 

 

ため息を吐くと、メイドのジェーンに脇腹を突かれた。

 

 

「姫様」

 

「あ、わり……んんっ、気を付けますわ」

 

 

外で誰が見てるか分からねーしな。

はぁ〜、だる。

 

 

王城の中、日中だ。

なんでそんな所で歩いているかと言うと──

 

 

「では、姫様。私は外でお待ちしますね?」

 

「えぇ。ありがとう、ジェーン」

 

 

取り繕った外面のまま、俺はドアを開けた。

前世でも見た事がある応接室……を100倍華麗にした一室。

 

向き合うようなソファ。

その対面には、一人の初老の男が座っていた。

 

 

「よぉく来たな。ミリアレーナ」

 

 

俺相手にタメ口を叩ける奴は少ない。

これでも国王のご息女だからな。

 

だから、まぁ……こんな口を叩けるのはコイツしかいない。

 

 

「本日はどのようなご用件でございますか?父上」

 

 

この国の国王。

クソ親父だ。

 

 

「まぁ、座れ。今日は正式な面会じゃあない。ただの家族会議だ」

 

「では、失礼して……」

 

 

俺は向かいに腰掛ける。

コイツ、もう50越えてるっていうのに、筋肉質だし高身長だし、圧迫感あるんだよな。

 

 

「して、今日の話だが……どうだ?最近、元気してるか?」

 

 

なんだその会話は。

久しぶりに会った娘と距離感を取りづらそうにしている冴えない父親みたいな……冴えなくはないが、実際そうか。

 

 

「元気ですよ?父上」

 

「お、そうか。なら良いんだが……」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………?」

 

 

何とか言えよ。

メチャクチャ気まずいんだが。

 

 

「あー……そうだな。本題になるんだが、その……良い結婚相手は見つかりそうか?」

 

 

うげ。

 

 

「いえ、お恥ずかしながら……少し、殿方の方が怖くて……」

 

 

それっぽい言い訳、出撃!

 

 

「邪竜を討伐した女が、碌に身体も鍛えてない男が怖いなんて事あるのか?」

 

 

それっぽい言い訳、撃沈。

 

 

「え、ええ……怖い、というより苦手でして」

 

「あぁ……そうだったな。お前は幼い頃から、男の執事を避けていたな。メイドの尻ばかり追いかけていた」

 

 

メイドの尻を追いかけているのは、お前もだろ。

なんて言葉が喉までくる。

 

クソ親父の子供は合計で17人も居る。

男が8人、女が9人だ。

正妃以外にも愛人がメチャクチャ居る。

メイドにもめっちゃ手を付けてる。

チ○ポに脳が支配されている精力モンスター、それがこの国の国王だ。

 

 

「しかしなぁ……父親としては早めに結婚して欲しい訳だ。国王としてなら、可能な限り、早急に」

 

「……そうですね」

 

「…………うーむ、かなり嫌そうな顔をするな」

 

「あら?そんな顔をしていましたか?」

 

 

すっ惚ける。

 

 

「騎士団長の倅とかどうだ?好青年だろう」

 

「……ええと」

 

 

確かに、まぁ……他の奴らよりは下品じゃなかった。

好青年……って呼ぶにはちょっと、ゴリゴリのゴリラだが。

私に比べて、体重2倍ぐらいあるんじゃないか?ってぐらいムキムキだ。

 

ザ・漢って感じ。

悪い奴ではなさそうだが──

 

 

「嫌そうだな」

 

「いえいえ、そんな事は……まぁ、ありますが」

 

 

容姿が嫌とかそういう訳ではないけど、何となくこう、性格が合わなさそうだな、とは思ってる。

ちょっと話をしただけで分かる。

 

女は守られるべきもの!って意識が強すぎる。

魔法も含めれば俺の方が強いのに……どこか、俺を下に見てる……と言えば聞こえが悪いが、そういう感覚を僅かに感じる。

 

 

「……うーん。しかしなぁ──

 

 

クソ親父は何とか云々唸って──

 

 

「あぁ。それなら、お前が勇者と結婚するか?」

 

 

爆弾発言が飛び出した。

極めて平静を保ちながら、俺は目を細めた。

 

 

「は?なんで?」

 

 

げっ、しまった。

素の口調が出た。

 

 

「お前も理解はしているだろう?」

 

「…………」

 

 

しかし、クソ親父は気にする素振りもなく自身の顎に手を置いた。

その表情は、さっきまでとは異なり真剣なものだった。

 

 

「勇者はこの国のどんな兵器よりも強力だ。国の兵士全員で掛かれば制圧できなくもないだろうが……少なからず血は流れるだろう」

 

「えぇ、まぁ……」

 

 

バーカ、制圧すらできねぇよ。

 

俺は邪竜と戦ってる時のアイツを見てたから知っているが……地面を蹴れば数十メートル飛んで、剣を振れば城壁すら真っ二つにできるぞ?

邪竜の吐き出した火球を無傷で受け止めた時は、流石に俺もドン引きした。

 

だから、まぁ……アイツなら。

本気を出したら1時間も掛からず、逆に王城が壊滅させられるだろうよ。

 

ま、そんな事、ユースケはしないし。

悪戯に危機感を煽っても良い事ねぇし、言わねぇけど。

 

 

「この国は勇者と共存していく事に決めたのだ。それがこの世界に彼を呼んでしまった者の責務だ」

 

「…………」

 

 

呼んでしまった……って。

呼んだのはお前らだろうが。

 

邪竜を討つまでは英雄だと持て囃してた癖に……こうして平和になれば、危険物扱いかよ。

 

ユースケは兵器じゃねぇよ。

危険な力そのものでもねぇよ。

アイツは人間だ。

血の通った、1人の人間だ。

 

 

「お前はあの勇者と仲が良いのだろう?ならば、この国に反抗しないよう、手綱を──

 

「お言葉ですが、父上」

 

 

自分で思ったよりも、大きな声が出てしまった。

クソ親父も少し驚いた顔で俺を見ている。

 

 

「ユースケは、この国の誰かと結婚しようと、しまいと……人を傷つけるような真似はしませんよ」

 

「……だが、なぁ」

 

 

この分からず屋のクソ親父が。

国の保身を第一に考えるその性根は評価してやるが、人の機微に疎過ぎる。

 

娘である俺を可愛がってるつもりらしいが、無意識でガンガン地雷を踏み抜くのはやめろ。

 

 

「……まぁ、勇者の方は後でいいか。それよりも、お前の方が先だな」

 

「……えぇ、まぁ」

 

「これから国も忙しくなる。邪竜討伐後、復興も含めて、討ち漏らした魔獣狩り……それら諸々も含めてな」

 

「……はい」

 

「あまり、色恋沙汰に時間は掛けられん。お前は国王の娘であると同時に、邪竜討伐の立役者でもある」

 

 

クソ親父が真剣な表情で、ソファに深く凭れかかった。

 

 

「1ヶ月後までに、婚約者を決めろ。自由恋愛を否定するつもりはないが、本来、貴族の令嬢というのは自由意志で婚約するものではない。情けも1ヶ月までだ」

 

「……承知致しました」

 

「もし相手が見つからなければ、こちらで相手を見繕う。無論、悪いようにはしないが……ほら、アレだ。結婚してから芽生える愛ってのもあるだろう?」

 

「…………」

 

「お前ももう子供ではない。王族に連なる女としての立ち振る舞いを、自覚しておけ」

 

 

そう言いたい事だけ全部言って、クソ親父は部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

……一人、部屋に取り残される。

 

 

「はぁ……くっだらねぇ。なーにが王族だ」

 

 

そう口に出しつつも、頭では理解している。

この状況……結婚相手を選べるというのは、破格の待遇だという事も。

 

俺は国王の娘だ。

普通なら、政治によって結婚相手が決まるだろう。

 

それをクソ親父は色ボケしてるから、自由恋愛をさせてくれているんだ。

それは情けみたいなもんだ。

国益だけを考えるなら、やっぱり立場の高い男に嫁がせた方がいい。

 

分かっている。

分かってはいるが……。

 

 

「……男と結婚なんて、なぁ」

 

 

誰も彼も、嫌だ。

 

会話するのは良い。

コミュニケーション取るぐらいなら、嫌悪感はわかない。

だがなぁ、こう、手が触れ合ったり……腰に自然と手を回されたりすると、生理的悪寒がヤバイんだよな。

 

大体、誰も彼もが俺の中身を見ようとしてない。

立場やら、容姿やら……力とか。

そういった上っ面でしか俺を見ていない。

 

貴族家の嫁つったら、後継者作りもいるが……あんな男どもと身体を重ねる?

……無理だ。

想像するだけで目眩と吐き気がしそうだ。

 

 

「……はぁ」

 

 

それでも、ここからは逃げ出せない。

何か、どうにか、良い手はないものか。

 

モヤモヤとした思考の中、ちらちらと脳裏にユースケの顔が浮かんだ。

 

俺は舌打ちをして、ソファに寝転がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しリフレッシュしてから、部屋を出た。

ジェーンを引き連れて、王城を歩く。

 

政務的な場所から、さっさと逃げ出したい気分だ。

どれもこれも、俺を不快に……不安にさせる。

 

そうして、歩いていると……ふと、外が少し騒がしい事に気付いた。

遠くから声が響いている感じだ。

 

 

「……なんか催し事でもあったか?こんな日中に」

 

 

廊下の端まで足を運び、バルコニーにから見下ろす。

庭園の外……普段、騎士達が使ってる修練場が賑わっているようだ。

 

……こんな遠いのに、騒がしいな。

 

俺は自分の目に視力強化の魔法をかけて、修練場の様子を覗き見る。

 

踏み固められた土の上で、一人の男が複数人の騎士相手に立ち振る舞っていた。

どちらの手にも木剣……稽古か模擬戦か、そんな感じだな。

 

騎士達と相対しているのは……勇者、ユースケか。

 

 

「ぷっ。なーにやってんだ、アイツ……」

 

 

騎士達に頼まれてか、それとも挑発されたかなのか知らないが……まぁ、どちらも納得しているのならいいだろう。

 

先程のクソ親父が言っていた騎士団長の倅も居る。

居るには居るが……地面に転がされていた。

ユースケがやったんだろうな。

 

そのまま視力強化した目で見ていると──

 

一人、二人と、どんどん騎士が転がされていく。

側から見ても、ユースケが手加減しているのが分かる。

まるで赤子をあしらう大人に見える。

 

 

そんなユースケ相手に、転がされても、転がされても騎士達は向かって行った。

……プライドが許さないんだろうな。

でも、気迫はあれど、負の感情はなさそうだ。

負けたくない!勝ちたい!ってだけなんだろう。

 

ほんっと、男ってバカなんだな。

……ま、俺も元・男だし人のこと言えないけどさ。

 

あ、また騎士団長の倅が転がされた。

ちょっと面白いな。

ざまぁみろ。

 

 

「随分と嬉しそうですね、姫様」

 

「ん?まぁな」

 

 

メイドのジェーンに声を掛けられて、俺は視力強化の魔法を解いた。

 

 

「私は生憎、そんな遠くは見えませんので……」

 

 

そりゃそうか。

魔法なんて使ってないし当然だ。

何が起こってるのかも分からないだろう。

 

 

「あー……そうだな。ユースケの奴が、騎士団相手に稽古かなんかしてるんだよ」

 

「あぁ、やはり勇者様でしたか」

 

「ん?『やはり』って何だよ」

 

 

俺が首を傾げると、ジェーンはニコりと笑った。

 

 

「姫様は、勇者様の話になると随分嬉しそうにしますので」

 

「……いや、そんな事ないだろ」

 

「いえいえ。そんな事ありますよ?」

 

「……チッ」

 

 

ふてぶてしいメイドだな。

俺は少しイライラしながら……だけど、清々しい気持ちでその場を後にした。

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