【Buriedbones Continue】鰭 作:猫乃湯和
二人の黒衣の者達は街道から廃墟を見下ろす。
眼下には白く枯れた植物、毒々しい色で腐った土の上に焼け滅んだ漁村がある。漁村の向こうの内海では巨大な鰭が周回している。それらの状況を理解し、頷き合って確認した二人は『倉庫』から護符を出し、瘴気避けと防壁の結界を展開した。今度は空跳ぶ魔法の馬で不規則な傾斜を下る。
二人は村の中に進み、小さな聖なる結界の前で止まり、魔法の馬を異界に戻した。例の結界の中には奇妙なものがある。
男の石像は顔以外全裸だ。その覆面の中の目は驚愕し、低い姿勢で手刀を構えたままである。
「マスターニンジャだ」
黒衣の男がフードの中で呟いた。我々の世界では奇妙若しくは変態と呼ばれる出で立ちだが、この世界においては忍者の頂点、一騎当千の英雄だ。
話を戻す。
黒衣の女も聖なる結界に入り、石像の傍らに膝を着いた。石像に寄り添うかのように、枯れ草に守られるかのように上半身だけの骸骨が横たわっている。女がそれに撫でるように触れた途端、凍り付いたかのように息を飲んだ。
「どうした、ビビ?」
そう呼ばれたダークエルフの女が顔を上げた。
「彼女、事件の一部始終を伝えたがっている。そしてこの忍者の生存も願っているわ。でも情報が多いからキャンプでじっくりと読み取りたいわね」
「生存者に情報を持つ仏さん。素晴らしいね。大収穫じゃないの」
男がフードを脱ごうとして会話が中断された。男に巨大な鮫が飛び掛かってきたが、聖なる結界によって阻まれた鮫の体躯は弾き飛ぶ。
「くたばりなっ」
少し姿勢を崩した男は素早く番えた矢を放つ。毒が仕込まれた矢は口腔の奥に突き刺さり、地面に落下した鮫は悶えてのたうっている。『倉庫』の魔法を併用していなかったとしても彼なら早撃ちを成功させたであろう。獲物に気付いた鮫達は二人を丸呑みにしようと飛び掛かるか電撃を放つが、予め仕込んだ結界のお陰でこちらは無傷だ。とは言え限度を超えれば防壁は砕ける。
女は反撃の間に頭蓋骨と石像を『倉庫』に入れ、
「速人」
「あいよ」
人間族の男の手を取り、瞬間移動で安全圏へと跳躍した。
口腔から止まらぬ血を吹き出し、地面で暴れ悶える鮫に他の鮫達が飛び掛かる。唸りながら同族の皮膚に食い付き、共食いするために瞬間移動してきたのだ。鮫は食われていてもなお、唸り、吠え、足掻くが、頭と尻尾だけになった時点で完全に動かなくなった。
***
時は覇王戦争中。しかし終戦と言う夜明けが400年後に迫っていることは誰も知らない。夜明け前は最も暗い。