【Buriedbones Continue】鰭 作:猫乃湯和
奥夕陽村は夕陽山に寄り添っており、静かで薄暗い農村だ。だが村外れに集う人々は皆勇ましい。
村外れの空き屋敷はセドニア軍の拠点となり、浜夕陽村奪回を目的とした『美しき夕陽』作戦が始まろうしている。司令官はフェアリーのソーマス・シベリウス、その下に着くのは中隊と傭兵団『黒鷲旅団』。強者だらけのそこに奥夕陽村の有志、ヴィンセントと団蔵も拠点へ向かっている。作戦会議のためだ。
「俺はこの日をずっと待っていた」
ヴィンセントの右目は眼帯に隠されている。体にはあの日から2年分の傷と苦労の皺が刻まれ、別人のようにも見える。
「戦えそうか?」
昨日に回復したばかりの団蔵に問う。
「大丈夫だ。仇討ちは必ず果たしてみせる」
彼の顔に涙の跡はもうなく、目は澄みきっている。
昨日に団蔵は石化から解放されたが、その間の訃報と悲劇を多く聞かされることになった。
昔から知っていると錯覚さえした人々、滅んだ故郷と同じ匂いがする風景。まだ話し足りない話題、まだ居たかった場所が『覇王の鮫』によってたった1日で失われてしまった。
全てを知らされた団蔵は感情を堪えることが出来なかった。
「キャシー、みんな、済まぬ。許せ。許してくれ」
何も言わぬ頭蓋骨を抱き締めて許しを乞う。
***
魔法の馬、飛竜、または魔法の箒に跨がる戦士達は朝日を浴びながら勇ましく浜夕陽村に飛ぶ。ここから既に朝日に煌めく海が見える。
「今度こそ連中を蒲鉾にしてやるぜ」
馬上のヴィンセントは鼻息荒く言うが、隣の団蔵は珍しく笑っている。
「何だよ」
「以前は『カマポコ』って言っていたから、成長したんだなって」
「それは止めろよ」
過去を弄られて頭に血が上り、
「新種の料理だ」
話を聞いていた戦士達が笑う。
「飯テロリストがこんなにも増えたとは想定外だ。司令官殿、作戦後に全員を拘束せねばならんぞ」
旅団の団長のイングスがエルフの美貌を崩さずに茶化し、
「囚人服の代わりにコック服が要るな」
明るく笑い飛ばしたソーマスも言葉のキャッチボールを楽しんでいる。
「全員厨房で強制労働かな?おっそろしいんね」
副長のミヒャエルが追い討つ。このハーフリングは大体脳天気だ。
愉快な時はヴィンセントを一瞬だけ過去に引き戻した。村を取り戻し、宿を修理し、皆を自慢の東屋に招けたら、酔っ払って浜に寝そべることができたら──キャシーも、トビーも、ジャスティもいないけど、それでもそれが叶うなら──違う。叶えるんだ、俺達が、これから。
ヴィンセントは晴れやかに笑い、
「そこまで言うなら皆さんがひっくり返るような食事を作りますよ。先ずは漁が先ですけどね」
と自分の腕を叩いて示す。
「テロ予告だわ!」
女達が混ぜ返し、団蔵も笑った。