地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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我に返った渚は、麗華の命により龍二の傍へ寄り添い焔は彼女を背に乗せてぬ~べ~達の元へと行った。


鬼と陰陽師の力

梓は力を挽回し、あの時の化け物の姿へとなり口から毒槍を吐き攻撃していった。

 

 

「死になさい!全ての生き物は、この私の手で破壊してあげるわ!!」

 

 

高笑いを上げながら、梓は攻撃をし続けた。

 

 

彼女の姿を見ながら、焔はぬ~べ~の近くに降りた。背中に乗っていた麗華は飛び降り、彼の元へと駆け寄った。

 

 

「鵺野、頼む……力を貸して」

 

「もちろんだ」

 

「私の霊力を、鵺野先生に与えました。一応は」

「まだ」

 

「?」

 

「焔……」

 

「分かってる。

 

阿呆先公、鬼の手を出せ」

 

 

焔に言われ、ぬ~べ~は鬼の手を彼の顔の前に翳した。焔が鬼の手に触れると、彼の身体に纏っていた炎が鬼の手に吸い込まれるようにして消えていき、焔は元の白狼の姿へ戻った。

 

 

(す、凄い霊力だ……)

 

「焔の力を取り入れた……

 

けど、まだ足りない」

 

「待て。これ以上入れたら、鬼の手が暴走」

「大丈夫。私が抑えます」

 

「何を言っているんだ、麗…!」

 

 

目の色が変わっているのに気付いたぬ~べ~は、驚いている玉藻と鎌鬼、牛鬼の顔を見た。

 

 

「お前、誰だ」

 

「……人間の記憶から消えた者……とでも言っときますか」

 

 

何かを察したのか、龍二の傍にいた晴明は顔を上げ、麗華の方を眺めた。

 

 

(……まさか、梨乃?)

 

「ガハ!ゲホ!ゲホ!」

 

 

丙に治療されていた龍二は、息を吹き返したのか咳払いをしながら起き上がった。

 

 

「龍二!」

「龍二!」

「龍!」

 

「親父……お袋……それに丙に渚」

 

「よかった……」

 

 

起き上がった龍二は、ふらつく足で立ち上がり傍にいた渚の背に乗ろうとしたが、彼の手を優華は引き留めた。

 

 

「そんな傷で、何をするの」

 

「……」

 

「傷が完治するまで、ここにいなさい」

 

 

龍二は優華の手を振り払い、渚に飛び乗った。渚はすぐに飛び立ち麗華達の元へ向かった。

 

 

「龍二……」

 

「お前達が死んだ後も、龍はずっと麗の傍にいた……」

 

「……」

 

「だからいたいんだ……この一大事だからこそ。

 

麗の傍に」

 

 

渚はぬ~べ~の近くに降り立ち、自信の力を彼の鬼の手に取り入れた。渚は焔と同様に元の白狼の姿へ戻った。

 

彼等の元へ晴明が駆け付け、麗華を見詰めた。

 

 

「梨乃?」

 

「久しぶり……晴明」

 

「麗華の身体を借りたのか?」

 

「無断で借りました。

 

彼女は、少しの間眠ってもらっています」

 

「……」

 

「晴明、あなたの仲間……妖怪を集め、早うこの鬼に力を与えなさい。私がこの者と共に、あの少女を倒します」

 

「鵺野と一緒に倒すって、麗華をどうする気だ!」

 

「彼女も一緒の想いです。その思いを読み取り、私はこの者の中へ入り身体を借りたんです」

 

「……」

 

「梨乃、あんさんの気持ちは分かります。しかし、我々の子孫を犠牲にしてまで」

 

「ここで倒さねば、この国の未来はありまへん」

 

「……龍二はん、お願いします」

 

「……

 

 

条件がある」

 

「?」

 

「俺も一緒に行く。この条件を飲み込めば、俺が……いや、俺達の仲間の妖怪を集め、鵺野の鬼に霊力を与える」

 

「命の保証はできまへん……それでも、ええですか?」

 

「構わない。妹を独り、あの世に逝かせるよりはマシだ」

 

「……分かりました」

 

「雷光!氷鸞!残ってるお前等の霊力を、鵺野に渡せ」

 

「わ、分かりました!」

「し、承知しました!」

 

 

二人は鵺野の傍へ駆け寄り、獣の姿へとなると彼の鬼の手に触れ霊力を与えた。鬼の手は力を増し、服を破り左腕は鬼の腕へと変わった。

 

 

それに気付いた梓は、ぬ~べ~達の方に振り向き攻撃した。

 

 

「麗!」

「龍!」

 

 

炎と水の攻撃をしようと構えたが、霊力が無く渚と焔は人の姿へとなり彼等の前に立った。

 

 

「渚!焔!逃げろ!!」

 

「逃げるわけねぇだろ!」

 

「お前等二人は、私達がこの命に代えても」

 

「守って見せる!!」

「守って見せる!!」

 

 

死を覚悟した目付きで、焔と渚は迫ってくる攻撃を見つめた。その時、彼等の前に迦楼羅達が降り立ち、梓の攻撃を防ぐかのようにして炎と水を口から吐いた。

 

 

「お前等……死んでどうする」

 

「あなた達二人が死んだら、麗と龍はこの先どうするの?」

 

「先生、あなたは霊力を溜めるのに集中してください」

 

「梓の相手は、父さんと母さんに任せて」

 

「先に逝って、アンタ達二人に何もできなかった……何もしてやれなかった。

 

 

本当は……龍二と麗華の傍にいたかった。二人の成長を見届けたかった……ちゃんと大人になって、成人式上げて……花嫁花婿姿見て……孫の姿、見たかった」

 

 

涙を流しながら、優華は言った。彼女に釣られて、輝二も涙を流していた……二人の後ろ姿を見た龍二と麗華は、自然に目から涙が流れた。

 

 

意を決意したかのようにして、優華と輝二は懐から紙を札を取り指を噛み血を出し、札に着けた。札八に反応するかのようにして、煙を出し中から槍と長刀が出てきた。

 

 

「迦楼羅!援護を頼む!」

「弥都波!援護を頼む!」

 

「承知」

「承知」

 

 

四人は梓目掛けて攻撃を繰り出した。四人の姿を見たショウは、瞬火たちと顔を合わせ、ぬ~べ~の元へ駆け寄り、鬼の手を触った。

 

 

「霊力なら、俺等も渡す!瞬火!」

 

「はい!」

 

「我等も与えよう」

 

「さっさと倒して、俺様達に舞いを見せてくれよ。譲さん」

 

 

次々に取り入れられる霊力……鬼の力はどんどん増し、とてもぬ~べ~一人じゃ抑えきれなくなっていた。すると彼の手の上に、龍二が自身の手を置きそして麗華も手を置き、霊力を自身の中へ流した。

 

 

「お前等」

 

「いいから、集中しろ」

 

「父さんと母さんの力を、無駄にしないで」

 

「麗華……」

 

「梨乃さんに頼んだ。止めは私がやる……

 

牛鬼、安土。アンタ達二人の力もお願い」

 

「もちろん」

 

「合点承知だ!」

 

 

二人の霊力を与えると、鬼の手の力はさらに増しぬ~べ~の腕だけでなく龍二と右半身と麗華の左半身が鬼の姿へと変わって行った。それに気付いた優華と輝二は、迦楼羅と弥都波に乗りその場から離れた。

 

梓は麗華達に気付くと攻撃しようと手を上げた瞬間、手に糸が絡み付き身動きが出来なくなった。下に目を向けると素早い動きで、牛鬼と安土が糸を出し梓の動きを封じていた。

 

 

「己ぇ!!」

 

「梓!お前は罪もない者達を殺していった。

 

その報いを受けろ!」

 

「何が罪も無い者だ!!

 

生き物は皆、罪を持ち生きている!私はその生き物を殺しただけに過ぎない」

 

「罪を犯しても、許される生き物もいる!

 

その罪を償い、生きている生き物がこの世には大勢いる!」

 

「黙れ!!全員、ここで死ぬがいい!!」

 

 

口から無数の槍を吐き攻撃してきた。槍の元へ、桜雅と皐月丸が前に立ち、手から桜の花弁を混ぜた風の技を放った。槍は勢いを失くし、地面へと落ちた。

 

 

「貴様がこの者達を殺そうというのであれば……我々が相手するまで」

 

「こちらも救われた身……」

 

「……」

 

「闇に埋もれた哀れな影よ……」

「闇に埋もれた哀れな影よ……」

 

 

二人の言葉に反応するかのようにして、鬼の手が赤いオーラを纏った。

 

 

「罪を償い、無へ還れ!」

 

 

拳を握り、ぬ~べ~達は鬼の手で梓を攻撃した。梓は糸の盾を作り上げ、その攻撃を防いだ。ぶつかり合う二つの力……その波動で、辺りに強風が吹き荒れた。

 

 

「お前は俺が誕生させた女だ……

 

生まれ変われるなら、俺達の元へ来い」

 

 

糸の盾が破れ、鬼の手は梓の腹へと入った。その時、麗華と龍二はぬ~べ~と鬼の手を離れさせ、強力な霊気を纏った鬼の手の残像に自身の手を置き、突っ込んでいった。

 

 

「自分達で起こした事は」

 

「自分達で片づける……鵺野」

 

「?」

 

 

二人は外の世界へ戻っていく、ぬ~べ~に口を動かし『ありがとう』と呟き、梓の中へと入って行った。

 

 

ぬ~べ~は彼女の中から飛び出てくると、彼を玉藻が受け止めた。その時、梓の身体から光線が飛び交い、辺り一面が光りに包まれた。




白い空間……梓はそこでゆっくりと目を開けた。


(ここは……)


『梓!起きて!』


元気のいい声が聞こえ、梓はその声の方を見た。そこには笑顔を見せる安土と壁に寄り掛かり、自分を待つ牛鬼がいた。


「何で……」

『やっと起きた!ほら、早く川に行こうぜ!』

「え?」

『お前がいないと、面白くないんだ。早く行くぞ』

「何で……だって」


言葉を続けようとしたが、梓はそれを止めた。今までの事を話したら、全てが消える……そう思えた。梓は今、なぜか幸せの気持ちでいっぱいだった。


「行こう!安土、牛鬼!」


梓は笑顔を浮かべながら、先に外へ出た安土の後を追いかけた。そんな二人の後を牛鬼も追い駆けて行った。


(あぁ……これが、幸せなんだ……

生まれ変われるなら……二人……ううん。


彼等の傍にいたいわ)
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