地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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鬼の手を持つぬ~べ~の姿に、闘いを観戦していた美樹達は驚いていた。


「鬼の手に予備があったなんて」

「……あ!

そうか、眠鬼よ!眠鬼ちゃんが、鬼の手になってるのよ!」

「眠鬼?

あ~、あの未熟鬼か」

「誰が未熟鬼ですって!!」

「お前が牛鬼達と闘っていた時……」


『!?私を鬼の手にするって……どおやって!?』

『鬼の手は鬼を封印したものだ。

お前の兄の覇鬼を封じた時と同じ封印術を使う。
あの時は、抵抗する覇鬼を美奈子先生と力を合わせて封じたが……
今回はお前が自分の意思で封印されてくれれば、ずっと簡単にすむ』

『何で私が、封印されなきゃなんないのよ!!』

『頼む!!このままでは、牛鬼が!!それに罪も無い妖怪達が殺される!!』

『……


ったく……覇鬼兄ちゃんをあんな馬鹿に盗まれて……今回だけだからね!!』

『はい……

よ、よしいくぞ!眠鬼!

南無大慈大悲救苦救難白衣観世音の力によりて、鬼を封じたまえ!!』


「……というわけだ」

「ふ~ん……面白い。

けど……その鬼、お前一人で使い熟せるのか?」

「心配御無用。俺は鬼の手の扱いには慣れてる……

どんなじゃじゃ馬をも、乗り熟すカウボーイのようにな」


その言葉を聞いた途端、眠鬼はぬ~べ~の顔面を殴った。


「ちょっと!じゃじゃ馬とは何よ!!」

「うるさい!!今お前は鬼の手なんだぞ!!黙って俺に従え!!」

「き~~!!そもそも何で私が、あんたに従わなきゃなんないわけ!?」

「逆らうな!!阿呆鬼娘!!」

「嫌だ嫌だ!べーだ!馬鹿!眉毛!おやじ!」

(使い熟せてねぇじゃねぇか)

「喧嘩してる場合があるなら、さっさと闘って麗の記憶を取り戻せ!!」


ぬ~べ~と眠鬼を渚は力を込めて思いっ切り殴った。

渚に殴られた腹いせか、眠鬼は勝手に動き攻撃した。秀二は攻撃を鎌で受け止めながら闘いを始めた。


渚は牛鬼の傍へ行き、意識を取り戻した彼の治療を始めた。


「言っとくけど、私の治療じゃ傷は癒やせない。あくまで霊気を送って力を戻してるようなものだから」

「それでもいい。闘えるようになれば、それで……

それより、安土達は」

「妖狐が治療している。心配ない……」

「そうか……

心配すんな麗華……お前の記憶は、必ず取り戻す」

「……」


治療を終えると、牛鬼は手から毒の槍を出しぬ~べ~の元へと行き戦闘に加わった。彼の後を追い駆けようとした麗華を慌てて渚は引き止めた。


「危険だ!ここにいろ!」

「……」

「大丈夫だ……牛鬼なら」

「……」


取り返した記憶

闘うぬ~べ~達……ぬ~べ~と眠鬼が攻撃をし、その後から牛鬼が槍で、秀二の腰目掛けて突いた。槍は見事に腰に掛かっていた巾着の紐に当たり地面へ落ちた。

 

 

「やったぞ!牛鬼!」

 

「させるか!」

 

 

巾着に手を伸ばした牛鬼に、秀二は鎌を振り下ろした。牛鬼に当たる寸前で、時雨が蛇の目傘で鎌の攻撃を防いだ。その背後から、ぬ~べ~が鬼の手で攻撃を仕掛け秀二は素早くナイフで防いだ。彼の隙を狙い、牛鬼は巾着を取り転がるようにして抜け出した。それを見た時雨は傘を取り、攻撃してきた鎌を難なく避け、牛鬼の隣へ降り立った。

 

 

「嬢さんの記憶は?!」

 

「大丈夫だ……ここにある」

 

 

巾着から出した玉を見ながら、牛鬼は安心したようにして話した。玉を握り締め立ち上がった時、突然背中に激痛が走り牛鬼は膝を付き後ろを振り返った。そこにいたのは、血塗れになった刀を持った、顔に麻布を巻いた男だった。

 

 

「悪いな。式はまだいるんでね」

 

「テメェ……」

 

 

刀を持ち直した男は、牛鬼目掛けて振り下ろした。当たる寸前の所へ、玉藻の治療を終えた安土が毒の刀を二本構えて攻撃を防いだ。

 

 

「安土!」

 

「早く、麗華の記憶を」

 

「あぁ!」

 

「肩掴まれ」

 

 

時雨の肩を掴み、牛鬼は立ち上がり麗華の元へと急いだ。

 

 

「牛鬼!」

 

「時雨、早く麗華に記憶を!」

 

「嬢さんを抑えてくれ。記憶が玉になってるとちぃとばかし手荒になる」

 

「分かった……麗」

 

 

渚が手を伸ばした途端、麗華は怯えた様子で後ろへ下がった。

 

 

「麗、大丈夫だ。何も痛いことはしないし、何も怖がることはない」

 

 

渚が優しく言うが、麗華は首を左右に振った。すると牛鬼は彼女の後ろに立ち手を拘束した。恐怖に見舞われた麗華は、拘束を解こうと暴れ出した。そんな彼女の頭に牛鬼は手を置き、宥めるようにして話した。

 

 

「大丈夫だ……俺がずっと傍にいてやるから」

 

「……」

 

「だから、安心しろ」

 

 

その言葉に、麗華は暴れるのを辞め大人しくなった。その隙を狙い、時雨は手に持っていた玉を麗華の額に当てた。すると玉は、青く光り出し彼女の体を包み込んだ。

 

 

麗華を包んでいた光は消え、彼女はゆっくりと目を開け顔を上げた。

 

 

「麗?」

 

「……な…ぎさ?」

 

「麗華」

 

「……牛…鬼」

 

 

ボーッとする麗華の手から自身の手を離した。麗華は辺りを見回し頭を抑えた。

 

 

「頭痛いのか?」

 

「……大丈夫。頭がボーッとしてるだけ」

 

「どうやら、記憶は戻ったみたいだな。

 

頭がボーッとするのは、ちょっとした後遺症のようなものだ。すぐ治る」

 

「何で、時雨が……

 

ねぇ……焔達は?あいつ等、あの男の式神と狼にやられて、それで!」

「落ち着け、麗。

 

三人なら大丈夫だ。今闘っている」

 

 

渚が見る方に目を向けると、そこでは焔達が陽炎達と闘っていた。

 

 

「……麗、あの男は何者なんだ?」

 

「神田秀二……

 

月神家の兄姉(弟妹)だった家だって」

 

「神田?聞いたことない」

 

「いきなり襲ってきて……それでいきなり……うっ!」

 

 

突然激しい頭痛が襲い、頭痛と共にある記憶が蘇った。

 

血の海となった場所……その中に横たわる死体となった人間。その真ん中に立つ、血塗れになった薙刀を手に握る自分……

 

 

「……渚」

 

「?」

 

「私……私」

 

「どうした?麗」

 

「……殺した」

 

「?!」

 

「兄貴を……真二兄さんを……緋音姉さんを……皆を……」

 

「何を言ってるんだ!!

 

龍も真二も緋音も……皆生きてるぞ!!」

 

「嘘!!だって!」

「嬢さん、少し大人しくしてな」

 

 

麗華の肩を掴み、時雨は彼女の額に指を当て目を閉じた。しばらくして目を開けた時雨は、舌打ちをしながら秀二の方を睨んだ。

 

 

「あの野郎……自身の記憶を混ぜやがったな」

 

「自身の記憶?それって」

 

「アイツが犯した事が、嬢さんの記憶に書き加えられてんだ。嬢さんは兄貴……あの兄(アン)ちゃんと二人の人間を殺したって」

 

「そんな……

 

 

麗、龍は生きてる……真二も緋音も」

 

「じゃあ連れて来てよ……

 

兄貴達に会わせてよ!!」

 

 

渚の体を揺らしながら、麗華は強く訴えた。その時、爆発音が聞こえ、渚達は音のした方に顔を向けた。

 

風で煙が晴れ、そこにいたのは校庭で観戦していた郷子達の前に氷鸞と雷光が立ち攻撃を防いだ。

 

 

「あなた方は、早く建物の中へ!!」

 

「ここは危険です!」

 

 

二人に怒鳴られた郷子達は、急いで校舎の中へ逃げ込んだ。

 

 

「人の子を心配する必要があるのか?」

 

「あります……私達の主からの命令ですから」

 

「そんなものに従っているのか……」

 

「不愉快」

 

「?!」

 

「人の子……我が地を犯し…奪った」

 

「それなら、某達も同じ」

 

「なら何故、人の子の下に就く」

 

「就くならば、有能な者だけ」

 

「我が主も、有能な方だ」

 

「あの人の子……無能」

 

「敵だった妖共を、殺さず残すとは……

 

陰陽師の名が汚れる」

 

「麗様は心の優しい方……路頭に迷った妖達に、手を差し伸べ救っているだけだ」

 

「綺麗事並べてるだけじゃねぇか……」

 

「貴様等……即殺す」

 

 

武器を構え、先端に雷と水を出し二人に攻撃した。氷鸞と雷光はその攻撃を防ぎ、同時に同じ技を出した。月影達は手で氷鸞達の技を弾き返し、そして素早く二人に刃を入れた。

二人は体から血を流し、膝を付いた。その様子を見た麗華は駆け寄ろうとしたが、目の前に黒い毛に覆われた焔が倒れ落ちてきた。

 

 

「焔!!」

 

 

麗華は焔に駆け寄り、体を揺らした。焔の毛は黒から白へと変わり、彼の前に黒狼の姿をした陽炎が降り立った。

 

 

「黒い毛に覆われても、その程度の力か」

 

「……」

 

「……主を殺せば、多少はマシになるかな?」

 

 

人の姿になり刀を持った陽炎は、瞬時に麗華の背後へ周り刀を振り下ろした。麗華が刀に当たる寸前、焔は人の姿になり彼女と陽炎の前に立ち攻撃を受けた。攻撃を受けた焔は、体から血を流し倒れた。

 

 

「主のために命を捨てるとは……」

 

「……」

 

「主が弱いから、式神や白狼がこういう目に遭うんだよなぁ」

 

「……」

 

「あそこで秀二と闘ってる元鬼の持主も、そろそろ限界が来るだろうな?」

 

 

秀二の方に目を向けると、ぬ~べ~は凍ってしまった眠鬼を守るようにして、秀二の攻撃を受けていた。鎌を持ち直しぬ~べ~の背中目掛けて、勢い良く鎌を振り下ろした。

 

 

“キーン”

 

 

「……?」

 

 

攻撃が止んだのに、疑問を持ったぬ~べ~と眠鬼は後ろを見た。二人の前にいたのは、薙刀で秀二の鎌を抑えている麗華だった。

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