「〜〜〜♪」
「上機嫌だな、相棒」
鼻歌を歌う可愛らしい相棒に手を引かれながら歩く。
確かこの曲はペロロのファースト・アルバムの収録曲だったか。
かなり上機嫌な時しか彼女はこの曲の鼻歌を歌わない。
「勿論ですよ!!タイガ君との一ヵ月ぶりのデートですからっ!!」
「そうか。相棒が嬉しそうで俺も嬉しい」
久々のデート。
つい頬が緩んでしまいそうになる。
「ふふ、タイガ君も楽しそうで良かったです!」
「ああ。俺は相棒と居られるだけで楽しいよ」
「あはは・・・・・私以外にそんな事を言わないでくださいね?」
ヒフミが立ち止まり、振り向いて言う。
心做しか瞳が暗く見えるが。
「言う相手がいないが?」
「あはっ。それでもですよ」
そんな他愛のない会話をしながら行きつけのカフェに入る。
空いている席は・・・・・あそこか。
俺達は空いている席に向かい、座る。
すると横から声が掛けられた。
「お久しぶりですね、お二方」
「・・・・・うわあ」
「どうした、相棒。台所でゴキブリが動いているのを見た様な顔をしているが」
「黒くて何処にでも現れる面倒な
「相棒、うまく笑えてないぞ。気分はわかるが」
「クックック・・・・・酷い扱いですねえ」
一旦俺とヒフミは飲み物を頼む。
彼は黒服。
ブラックマーケットやカイザーを手中に収めるために暗躍していた時に知り合った人外で、ゲマトリアという組織に属する研究者・・・・・振り切れた趣味人の同類だと俺は思っている。
黒服と俺達はある契約を交わしており、その影響で偶にこうやって奴と遭遇すると情報交換をしていたりする。
「・・・・・で、
隣の席でコーヒーを飲んでいる黒服は肩を竦めた。
「お熱いことですね・・・・・要件と言っても長い時間は取らせません。ああ、勿論貴方達に利益のある話ですよ・・・・・
「あはは・・・・・あまり外でその名前は出して欲しくは無いのですが。タイガ君、お願いできますか?」
「ああ。幸い、店内に知らない奴は居ない」
俺は店内に響き渡る様にフィンガースナップ。
――パチン
その騒音に店内の客は何も言わない。
きっと彼らは俺達には気付いてないし、これから話すことも聞いていないだろう。
そして店主は何も言わずに開店を示す看板を裏返した。
「相変わらず見事なお手前ですね」
「あはは、なんのことでしょうか」
「クックック・・・・・なんでもありませんよ、ヒフミさん。では、お二方のデート時間を削らない様に手短に要件を済ませてしまいましょうか」
「ふむ・・・・・成る程、アリウスのバックにはゲマトリアが付いていたのですか。通りでキヴォトス内での金の流れが掴めないわけです」
「外からとなると厄介だな。そう何度も連邦生徒会を動かすのも骨が折れる」
「ええ。ですがそれならそれでやり方もあります。私達としては万魔殿を手中に収めるのに苦労した分、エデン条約はすんなりと締結してもらわないといけないんです。ですから、アリウスは邪魔です。最悪、タイガ君にも負担を掛けてしまいますが・・・・・」
「それぐらい大丈夫だ相棒。話は変わるが、風紀委員会は良いとして不確定要素の空崎ヒナの方は良いのか?」
「うーん。
「了解した。連絡しておく」
「ああ、あとミレニアムの方はリオさん
「ああ」
◆◆◆◆◆
早朝。
私はホテルのベッドで目を覚ます。
隣にはタイガ君がすやすやと寝ている。
「ぐう・・・・・」
(ふふふ、タイガ君は寝言も可愛いですね)
昨日のデートはとても楽しかった。
勿論夜も。
(一ヶ月振りなので少しはしゃぎ過ぎちゃいました・・・・・ちゃんとシャワーで匂いを落として置かないと勘繰られちゃいそうなぐらいです)
昨日の余韻に浸るのも程々に、私はタイガ君のほっぺをつつきながらこれからの事を考える。
(私達の楽園を作るまでの道程は遠く長い・・・・・ですがタイガ君のお陰で計画は着々と進んでいます。エデン条約、三大校の掌握、連邦生徒会の実効支配・・・・・やることは山盛りです。それにアビドス高等学校の件も手を打っておかないと・・・・・まあ、最悪の場合は・・・・・アビドスの皆さんは運がなかった、それだけですね。揉み消す用意もしておきましょうか。今カイザーが揺るぎすぎても計画に支障が出ます)
私はタイガ君のほっぺをつつくのを止め、彼をぎゅっと抱き締める。
(だけど、もう少し・・・・・具体的にはタイガ君が起きるまではこうやってくっついていても良いですよね?)