BlueArchive -アイビスの残響-   作:μs

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初投稿なので初投稿です。


漂着

 薄暗い実験室、唯一明かりの灯る手術台を2体の人影が囲んでいる。

 とても人とは呼べない異形の男たち、一方はぎしぎしと軋む木偶人形、もう一方は影そのもののような黒尽くめ。

 そしてもう一人、手術台に横たえられた少女を巡り、碌でもない企みが動き出そうとしていた。

 

「これが今度の実験体か」

 

「ええ、資料では元ティーパーティーだとか」

 

「成程、例の学園だな」

 

「立場は然程でもなかったようですがね」

 

「夢破れたり、か

 だがこの実験で生まれ変わるだろう」

 

「クックック……生きていれば、ですが」

 

「そういうことだ では始めよう」

 

「その恐怖を見せてもらおうか…『ルビコンの火』よ」

 


 


 

 ルビコン3──人間がそう呼ぶ惑星で、私はひとりぼっちだった。

 

 生体エネルギー物質『コーラル』の変異波形として発生した私──エアは、自我を持ちながらも疎通する相手を持たなかった。だから、寄り添い歩む彼ら(人間)を眺め、その有り様に憧れてしまったのだ。

 

 そして私は、嵐の中に火種を見た。闘争だけを目的に造られた、一途で、無垢で、どこまでも純粋な彼女を。

きっと彼女は私を導いてくれる──そう思って、今にも消えそうな灯火を掬い上げた。

 

──それが全てを灼き尽くす、災厄の炎とも知らずに。

 

 気付いた時には手遅れだった。私と彼女は正反対の方向を向いていて、対立は避けられなかった。

 

 灼けた空を越えた先で彼女と相対した私は───自分自身が爆ぜる音と共に意識を手放した。

 


 

「……ぅ……うーん……」

 

 彼女が意識を取り戻して最初に聞いた音は、意識を失う直前に聞いたのと同じような爆発音だった。

殆ど反射的に目を開き、周囲を確認する。

 

「こ……これ……は……?」

 

 見渡せば、そこは周囲をビルに囲まれ、廃材と投棄物が乱雑に積み上げられた、いわゆる路地裏であった。そして目の前では、明らかに年端もいかぬ少女たちが激しい銃撃戦を繰り広げているのだった。

 

手前(テメー)ら!ウチのシマで白昼堂々仕掛けてくるとはいい度胸じやねえか!」

 

巫山戯(ザケ)んな!アタシら善良な通行人に襲撃(カマ)してきたのはそっちだろうが!」

 

 路地の端に座ったまま、治安の悪い会話と鳴り止まない銃声を聞きながら意識をハッキリさせていく。そして同時に、いくつもの疑問と困惑がエアの脳を支配していった。

 

 ここはどこなのか?自分は死んだのではなかったのか?目の前の少女らはなぜ撃たれても当然のように生きているのか?彼女らの頭上の光輪は何なのか?ルビコンは、同胞は、『彼女』はどうなったのか?

 

そして最も不可解なのは──肉体(これ)はなんなのか?

 

 エアは、エネルギー物質・コーラルの作り出す特殊な波形、そこに宿る人格である。自己の連続性のみを拠り所とする彼女に肉体と呼べるものは存在しない。しない、はずだったのだが。

 自らの意志で動き、地面の硬さを、硝煙の臭いを感じる肉体が、ここに存在していた。

 

AC(ECHO)C兵器(SOL)に搭乗したことはありますが……これはどう見ても人体ですね……感覚にも随分と違いがあります)

 

 動きを確かめがてら、自分自身の眼で体のあちこちを観察する。

 薄汚れた服──恐らくは手術着のようなものを纏った体は健康とは言えない状態だった。

四肢は十全に動くが、やや痩せているように見える。肌は荒れ気味で白磁のように白い。腰ほどまである長髪は赤みがかった白。頭上を見れば、光輪と思わしき赤い光がかろうじて見て取れた。

 ふと背中に違和感を感じ目をやるとそこには、髪と同様に薄紅色の、鳥のような翼が存在していた。エアの知る限り、有翼の人間というものが存在していたという確かな記録は無い。

 

(光輪に翼……まるで神話の天使のようですね……ここがいわゆるあの世であれば納得できなくも──)

 

 自らの両手を眺めながらそんなことを考えていると──

 

「今日こそ決着(ケリ)つけたるわ!!おどれら往生せいやああああ!!!」

 

 少女たちの一方から妙に気合の入った怒号が響き、数発の手榴弾が──盛大に失投され、そのうちの一つがエアの目の前にぽとりと落ちた。

 避ける間はない。襲い来る爆風と飛来物に備え、エアが身を強張らせた瞬間──

 

「こっちです!」

 

 背後からの声と同時に、ぐいと腕を引っ張られる。エアの身体は建物の陰に滑り込み、手榴弾の被害範囲から逃れることができた。

 

「だ、大丈夫ですか?どこか擦りむいていたりは……」

 

「……ええ、おかげさまで傷一つありません。ありがとうございます」

 

 勢い余ったか、尻もちをついている目の前の少女の問いに、手を差し伸べながら応える。

 

「あ、あはは……お恥ずかしい……」

 

 エアを救ったのは、髪を二つ結びにし、奇妙な鳥(?)のバッグを背負い、そして先程の少女らと同様に頭上に光輪を浮かべた少女だった。

 

「そ、それよりもです!あんなところで座り込んでいたら危ないですよ!ただでさえこの辺りは治安があまり良くないですし、ましてあんな銃撃戦の真っ只中で……」

 

「少し混乱していたもので……ところで、『この辺り』とおっしゃいましたが、ここはどこなのでしょうか」

 

「ええっ?ここは見ての通りブラックマーケットですが……そ、そういうことじゃないですか?ブラックマーケットのどこなのかという……それとも記憶喪失!?やっぱりどこか打ちどころが悪かったんじゃ……」

 

「落ち着いてください。私はエアといいます。まずはあなたの名前を伺っても?」

 

「そ、そうですね、自己紹介がまだでした!」

 

 少女はひとしきり騒いだのち、姿勢を正して名乗った。

 

「私はトリニティ総合学園2年生、阿慈谷ヒフミです!」

 




設定ミス、解釈違い、誤字脱字などあるかと思われますがご容赦下さい。
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