呪術廻戦 会者定離(旧題:一人の術師と六眼なし五条家当主の話)   作:ソル

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もうすぐ完結なのでせっかくだし書いてみた作品
色々ガバガバだと思いますがよろしくお願いします。


江戸編
邂逅


「クッソ~また失敗かよ」

 

 白い髪を持つ青年がぼやく。

 

「悟でもそんなに苦戦するとはね。術式反転は相当難しいらしい」

 

 まあでも、と黒髪の青年、夏油傑が続ける。

 

「とりあえず呪霊は祓えたんだ、また今度挑戦すればいいさ」

 

「つっても俺の前にも使えてたやつはいたみてえだしなあ、さっさと使えるようにならねえとムカつくわ」

 

 なんか切っ掛けでもいるのかねえ、と白い髪の青年、五条悟は考える。

 

「そういえば気になっていたんだが、悟以外の無下限呪術使いはどんな人たちだったんだ?その言い草だと文献などには残っているようだけど」

 

「人となりまではわかんねえけど、情報は残ってるぜ。禪院家の当主と相打ちになったやつとかな」

 

 あとは…と記憶をたどる五条。そして一つの記録を思い出す。

 

「そういや無下限持ちの女の当主ってのもいたなあ、江戸時代ぐらいだったか」

 

「その時代で女の当主?随分と実力のある人だったのかな」

 

「いや、そうでもねえ。呪霊の討伐任務で死んじまったらしいし」

 

そもそも、と続けて、

 

「無下限は持ってたらしいが六眼は無かったみたいだしな」

 

 六眼持ちだとどんな奴がいたかなーと考えていると、不意にあたりが暗くなる。今の時刻は6時半、日が沈んできたのだ。

 

 遅くなりそうだしそろそろ高専戻るか、と夏油に声をかける五条。

 

 話の続きは気になるが、それは帰り道に聞けばいいだろう、とうなずく夏油。

 

 帰路に就く二人を見送るように、セミの鳴き声が響いていた。

 

 これは、その程度の物語。少しの記録だけが残り、後の世に特に影響を及ぼさないような、どこにでもあるような話でしかない。

 

 

 

 

 セミの鳴き声がうるさい。

 

 山奥の村はこれが嫌だな、と青年は考える。

 

「あの~聞いておられますか?」

 

「ああ、申し訳ない。少し考え事を」

 

 目の前には、この村の村長がいた。なんでも、山に入った人間が戻らなかったり、化け物がいたと言い出す村民が出ててきたらしい。十中八九呪霊の仕業だろう。

 

「そこであなたに依頼したい」

 

「わかっていますよ。騒ぎの元凶を見つけ、いなくなった人が生きているなら助け出してきます」

 

 ありがたい、と頭を下げる村長。報酬の話がまだだが、それは解決してからでも別にいいだろう。

 

「それでは早速出発します」

 

 そういうとすぐに小屋から出ていく青年。あんな若造で大丈夫か?などの声が聞こえてくるが、気にせず山へと入っていった。

 

 青年の名は禍転(かてん)。呪いを用いて呪いを払う、呪術師と呼ばれる者たちの一人だった。

 

 

 

 

 

「とりあえず山に入ってみたが、どうしたものか」

 

 小屋を飛び出て数十分後、俺は山中で途方に暮れていた。とりあえず適当に山を歩けば呪霊の方から向かってくるだろうと山へ入ったはいいものの、呪霊どころか呪力の残穢すら見当たらない。

 

(村長の話だと山に入ってすぐにいなくなったって話だったんだけどなあ)

 

 実際、山へ向かう足跡は入ってすぐのところで忽然と消えていた。すぐに何かがあったのは間違いない。

 呪霊が人間を探し回っているのだろうと思っていたが、山に入った人間が運悪く偶然出会ってしまったのかもしれない。そうなると面倒だ。そこそこ広い山の中を歩き回って探さなければならない。

 

(村長に山の中を案内できる人紹介してもらえばよかった…)

 

 

 

 そうして山の中を数時間歩くと、違和感に気づく。

 

(この山に入ってから、呪霊どころか、動物を一匹も見ていない。)

 

 いるのはせいぜい虫ぐらいで、ここまで歩いて狐や猪を一匹も見かけていない。何か関係があるかもしれない、と動物の痕跡を探す。

 足跡や糞、不自然に折れた木の枝などの痕跡を探していくと、あることに気づく。

それらの痕跡が、20mほどの円状に突然消えている。そして、その円が移動しているのがわかる。

 

(多分これが呪霊の痕跡だ)

 

 おそらくは自分の周りから一定の範囲に結界のようなものを張り、そこに入ったものををどうこうする術式なのだろう。周りの樹木が消えていないあたり、対象を自分で選べるか、動物のみが対象になっていると考えられる。

 

「よし、この円を追っていけば呪霊にたどり着くはずだ」

 

 そうと決まれば話は早い。呪力で肉体を強化し、痕跡を追って進み始めた。

 

 

 

 数分後、痕跡が消えている地点の端へとたどり着いた。身を隠しながら様子をうかがう。山に入ってすぐに襲われなかったということは、ほかの獲物を追っていたか呪術師である自分を警戒している可能性が高い。ならば、相手がほかの獲物を狙ったところで結界の中へ飛び込む。

 そうして気配を殺していると、一匹の狐が近くに見えた。呪霊もそれを見つけたのか、今まで隠していた姿を一部さらす。何もない空間にいきなり異形の腕が生えると、狐の体をつかんだのだ。

 

(今だ!)

 

 それを見逃さず呪霊の腕に飛びつく。すると、周りの景色が急に変化する。山のように積まれた動物の死骸や、衰弱しきっている二人の男などがいきなり現れたのだ。そして、その中心には粘土細工で作った顔に手足をつけたような怪物がいた。

 

「お前が元凶か」

 

 その言葉には答えず、禍転へと攻撃を仕掛ける。長い腕を振り回し、鞭のようにたたきつけてきたのだ。

 飛びのいてそれを避けるも、

 

「痛って!」

 

 見えない壁のようなものに背中をぶつけ、よろめいてしまう。すぐに体制を立て直し、呪霊のほうを向く。

 

(見えない壁…あれがこいつを隠していた結界だな)

 

 そして、この呪霊の術式も何となく理解した。動物の死骸や衰弱した人間は、端のほうに集まっている。そして、先ほど背中をぶつけたことから、

 

(こいつの結界は外側から自分の姿を見えなくした上で中に入ったものを出られなくするものなんだろう。そして、結界の中心はこの呪霊だ。)

 

 ここにいた人や動物たちは、外にできることができなくなって衰弱していき呪霊の移動に合わせて引きずられていたのだろう。

 

(あいつを派手に動かせるとあの人たちが危ないな、あの状態で壁にたたきつけられたらたまったもんじゃないぞ)

 

 衰弱しきっている人たちをかばいながら戦うとなると厳しいが、やるしかない。

 

「ふっ!」

 

 地面を蹴り、呪霊との距離を詰める。さっきまでの攻撃方法なら、距離をつぶしてしまえばそうそう当たることはない。そのまま殴りつけようとするが、

 

「がっ!」

 

 見えない何かに殴り飛ばされる。

 

(何が…っ、そうか!結界で自分の一部を隠してやがったのか!)

 

 おそらくは腕だろう。こぶしで殴られるような感覚があった。

 

(厄介だな、隠してるのが一本だけとは限らないし)

 

 呪霊の姿は人間からかけ離れていることが多く、手足が一対ずつとは限らない。もしかしたら十や二十の手足を持っているかもしれない。

 

 こうなるとこちらの術式を使ってみるしかないが、効果があるかはわからない。それでもこのままやられるよりはましだろう。

 動かないこちらに対し、また腕を振りかぶる呪霊。それにタイミングを合わせ、右手を構える。奴の腕に右手が触れた瞬間、術式を発動する。

 

「逸走!」

 

 

 

 呪霊が腕を当てると同時に、目の前の術師どころか閉じ込めていた人間、果ては獣の死骸までもが忽然と消えてしまった。何が起こったか分からず、動揺するように後ずさる。すると、何かをつぶすような音とともに呪霊の視界が暗くなる。目をつぶされたと理解した時にはすでに遅く、禍転の腕が呪霊の頭部を貫いていた。

 

 

 呪霊の消失反応を見届けると同時に、見えなくなっていた姿が元に戻る。

俺の術式は、他者の術式の強制的に発動、停止、暴走させる乱法葬術(らんほうそうじゅつ)という。

 術式の暴走は俺自身にもコントロールができないため何が起こるかわからなかったが、今回は周りのすべてにそれぞれ結界が張られるという形で奴の術式が暴走したらしい。奴がもう少し賢ければ術式の暴走に気づいたかもしれないが、知能自体はそこまで高くなかったようで助かった。

 

「っと、それより早くあの人たちを連れて行かないと」

 

 かなりの時間何も食べられなかったはずだ、むしろここまでよく生きていた。早く連れ帰って医者に見せてやろうと二人を背負う。

 

(たしか村はあっちの方角だ、急ごう)

 

 なるべく二人に衝撃を与えないように村へと向かう。

山を抜けたころには、もう日が落ち始めていた。村の明かりが見えてくる。

 

「あと少しですよー、頑張ってください」

 

と、二人に声をかけながらここまで来た。これなら何とか間に合いそうだ。

 村につくと、村民が声をかけてくる。

 

「いなくなっていた二人だ!あんた本当にやってくれたのか、ありがとう!」

 

「かなり衰弱しています、早いとこ医者に見せてください」

 

「任せろ、すぐに麓から呼んでくる!村長のところへ連れて行ってくれ、簡単な応急処置ならできるはずだ」

 

 そんな会話を交わし、それぞれ目的地へと向かっていく。

 

 村長の家につき、二人の処置を済ませると村長が頭を下げてきた。

 

「本当にありがとうございました。これで安心して暮らしていけます」

 

「いえいえ、間に合ってよかったです。それで報酬の話なのですが…」

 

「もちろんお支払いいたします」

 

と村長が再び頭を下げる。

 とはいってもここはかなり山奥の村で、その日を生きるので精いっぱいだろう。そこまで多くの報酬は得られないはずだ。それを考えると、

 

「では、今日の寝床に食事、3日分の保存食をいただきたい」

 

「!? た、たったそれだけでよろしいのですか!?そこまで多くはないとはいえ、金もありますが…」

 

「いえ、このご時世、このような事件は多いのでそこまで路銀には困っていないのです」

 

 これは本当で、とくに江戸や京から離れた場所では術師が少なく、稼ぎやすい。なにより、

 

「助けた二人を医者に見せるにも金が要る、そちらに使ってあげてください」

 

 せっかく助けた相手に死なれてしまっては寝覚めが悪い。かなり衰弱していたし、薬や食料もばかにならないだろう。

 

「…本当にありがとうございます。では、まず食事を用意いたします。少々お待ちください」

 

 

 食事が終わると、寝床に案内された。

 

「あ~疲れた」

 

とぼやきながら布団に寝転がる。来客用の布団らしく、山奥の村としてはかなり上等なものだ。食事の質も高かったし、満足である。

 今回はかなり危なかった。何発か直撃をもらってしまったし、少しでも回復できるようにしようと眠りにつく。

 

 

 翌朝、鶏の声により目が覚めた。あたりはすっかり明るくなっており、早起きな村民たちが農作業に精を出している。

 いつもの袴と羽織に着替え、家を出る。保存食をもらって、さっさと次の村へいこう。

 

「ちょっといいかな?」

 

 声をかけられ、振り返る。

 

 美しい女だった。かなり身分が高いのだろう、普通の人では着られないような上等な着物を着ている。だが、それより目を引くのはその髪である。前髪の一部だけが、新雪のように白くなっている。

 俺は、その女に心当たりがあった。

 

(聞いたことがある。最近、五条家の当主が女に変わったって…)

 

 たしか、その名前は…

 

「私は五条家当主、五条間宵(まよい)だ。禍転君だったかな、君を術師として勧誘したい」

 

「は?」

 

 

 

 

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