呪術廻戦 会者定離(旧題:一人の術師と六眼なし五条家当主の話)   作:ソル

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大変お待たせいたしました。難産だった…
あらすじと同じすぎたのでタイトル変えてます あんまり深い意味はないので気にせず読んで下さい


決意

 君は、もう必要ない。

 かけられた言葉が頭を離れない。俺の過去を知っている当主様がその言葉をかけるということは、本当に術師としての俺に価値がなくなったということなのだろう。

 本当なら、喜ぶべきなのだろう。呪術師であるということは、命をかけ戦わなければならないということだ。このまま術師をやめれば、安全な五条家で使用人として落ち着いて暮らしていくことができるだろう。

 

 けど、だけどだ。これまで、ずっと術師として戦ってきた。それしか生きる道がないとは言わない。けれど、たしかに、それに生きがいを感じていたのだ。こんな自分でも、だれかに求められ、だれかを助けていくことができた。

 それを、あの時、確かに俺が必要だといってくれた人に否定されるというのは、やっぱり、

 

(辛いなぁ)

 

 辛いし、そして悲しい。彼女の言っていたことは正論だ。俺が術師としてやってこられたのは術式のおかげでもある。

 ましてや、颶風は五体満足でもどうしようもなかったのだ。術式の大部分を削られた状態でどうこうできるわけがない。

 だからこそ辛い。「もっとうまくやれていれば」という後悔が頭の中をめぐっている。

 

 

 

 

「…お前、大丈夫か?やっぱりまだ寝ていたほうがいいんじゃ」

 

「大丈夫だよ。いつまでも世話になりっぱなしなのも嫌だしな」

 

 仁が心配してくれている。やっぱり外から見てもわかるぐらいには様子がおかしいようだ。

 

「無理はするなよ。…色々不便だろう、それじゃ」

 

 腕が無くなったことを言っているんだろう。明言は避けてくれているが、目が右手のほうを向いている。実際、結構不便だ。簡単な掃除なんかはともかく、料理など複雑な作業がいるものはかなり難しくなっている。

 

「…まあ、そうだけど。けど、ないものは仕方ないし慣れていかないとな」

 

 いつまでも嘆いているわけにもいかないし、今の自分にできることをしよう。そう考えて、いろいろと仕事をさせてもらっている。

 あれから、数日たった。その間、当主様と話していない。顔を合わせづらいのもあるが、どうも向こうの方からこっちを避けているように思う。

 

「仕事は終わりましたか?」

 

「あっ、華乃さん。もうすぐです」

 

「そうですか、では追加もお願いしますね」

 

 …マジか。この状態で仕事を増やされるとは。

 

「なんですか、その顔は。何か思い詰めているようですが、そんなことを考える暇があるなら働きなさい。…頭を空っぽにした方が、気分は楽になるものですよ」

 

「…はい、ありがとうございます!」

 

 どうやら、気を使ってくれているらしい。仁と言い、この家の人たちは本当に優しい人たちばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の仕事が終わったときのことだった。仁が慌てながら走ってくるのが見えた。

 

「おい、どうしたんだそんなに慌てて」

 

「か、禍転、はぁ、はぁ、間宵様が…」

 

 そして彼は、信じがたい言葉を口にした。

 

「当主の地位を別の方に譲ったって…」

 

「…は?」

 

 

 

 

 

 そこは、人気のない森の中。頭に縫い目のある男と、異形が会話を交わしていた。

 

「そんなわけで、五条間宵を逃げられないようにしておいたよ。これでいいかい?」

 

「ああ。協力感謝するぞ、羂索」

 

「気にしないでよ、こっちはこっちでやりたいことがあるからね」

 

(…どうも信用ならん男だ。まあ、『縛り』を結んだ以上余計なことはできないだろうが)

 

 颶風は、目の前の男と出会った時のことを思い出す。

 それは、五条間宵との戦いから撤退し、赫により傷ついた体を修復しているときのことだった。

 

 

 

 

 

 

『やあ、君が嵐の呪霊かい?』

 

『!?』

 

 突然男が話しかけてきたのだ。どこからも気配を感じなかった。まるでその場所にいきなり現れたかのように。

 

『まあまあ、そんなに警戒しないでよ、君に敵意はないからさ』

 

『貴様…何者だ?』

 

『今の肉体は違う名前だけど、君には本名を名乗ってもいいかな。私は、羂索という。君、五条間宵…髪の一部が白くなっている女にやられたらし…おっと、危ないなあ』

 

 無言で雷を放つが、涼しい顔をして避けられた。どうやら、相当の実力者らしい。

 

『チッ…何の用だ』

 

『さっきの反応的に、君、彼女を殺したいんだろう?こっちの望みを聞いてくれたら、五条間宵を引きずり出してあげるよ』

 

 魅力的な提案ではある。油断していたとはいえ、自分を撤退させた人間は自分の手で殺したい。先日の屈辱を晴らすとともに、術師との戦闘にもっと慣れておくためにも。

 

『…望みとはなんだ』

 

『私と契約してほしい。大きな儀式を始める予定でね。それに大量の呪霊が必要なのさ』

 

『『縛り』の内容はこうだ。私は君と五条間宵の再戦の場を用意する。もちろん、私は邪魔をしないしほかの術師にも余計な手出しはさせない。その対価として、君には私が行う儀式へと参加してもらう』

 

 そうして、羂索は儀式の内容を語りだした。なかなか面白そうなものではある。多くの人間が死に、世が混乱するのは間違いないだろう。呪いとして存在する颶風にとって、それは協力に値するものだった。

 

『…いいだろう。『縛り』を結んでやる。ただし、一つだけ条件を追加しろ。五条間宵と言ったな。あの女のそばに、もう一人男の術師がいたはずだ。そいつも俺との戦いに誘い込んでもらう』

 

『了解。それじゃあ、早速…』

 

 

 

 

 

 

 

「しかし貴様、一体どうやったのだ?」

 

「ああ、簡単だよ。君と痛み分けしたという情報をほかの御三家に漏らした。」

 

 それがあの女とどうつながるというのだろうか。相手は御三家の当主らしい。そう簡単に動かせはしないはずだが…

 

「禪院家とは数代前の当主のせいでかなり険悪だからね、『無下限を持つ当主が呪霊相手に負けかけた』という事実を上に報告して五条家の立場を危うくしたんだ。そうすれば名誉挽回のためにも、君を討伐するために動かなきゃならない。」

 

 なるほど、そういうことか。家としての名誉がかかっている以上、ほかの術師に協力を求めることもできない。あの女が一人でこっちを討伐しに来るしかないわけだ。

 

「しかし、それではもう一人の方はどうするつもりだ?」

 

「安心してよ。私も『縛り』を失敗するのは怖いからね。ちゃんと考えてあるさ」

 

 そう言い残し、羂索はその場から消えていった。

 

(…まあ、あの二人を見る限り何もしなくてもいいかもしれないけどね)

 

 

 

 

 

「何ですか騒がしい」

 

「華乃さん、あの…当主様の件なんですが」

 

「…あれですか。正確には、引継ぎの準備をしている段階です」

 

 どうも、今回の任務に失敗すれば当主の座を譲るという話だったらしい。

 当主様が呪霊相手に痛み分けで終わったことで、家の内外で敵対していた勢力が動き始めたようだ。そいつらを抑えるためにも今度こそ颶風を倒さなければならないんだろう。だから、今回の任務に失敗すれば当主の座を他に譲るという形で話をまとめたらしい。

 

 だが、絶対に勝てはしないだろう。二人がかりでもどうにもならなかった相手だ。当主様がそれをわからないはずがない。なのになんで…

 

(…『縛り』か?)

 

 彼女が当主を目指した理由を思い返す。兄が拾ってきた使用人たちを守るためだと話していたはずだ。俺の予想が正しければ、当主の座を譲る代わりに使用人を雇用し続けるような『縛り』を結んだんだろう。

 その方法なら、確実に俺たちを守ることができるだろう。他人との『縛り』を破れば、何が起こるかわからない。そんなリスクを冒すほど馬鹿ではないはずだ。

 

「華乃さん、わかってますよね。当主様が何を考えているか」

 

「…これは、あの子が決めたことです。私が口をだせるようなことじゃありません」

 

「だからって…」

 

「どのみち、私たちにできることはないでしょう」

 

 …その通りだ。今から止めることはもうできないし、かといって加勢したところで死体が増えるだけだ。

 

「そう、ですね」

 

 そうだ。今の俺じゃ何もできない。だからせめて、あの人の邪魔にならないように… 

 

『君はもう必要ない』

 

 当主様が言った言葉が、頭によぎった。

 今思えば、当主様は俺を突き放してくれたんだろう。俺を死なせないために。

 あの人との会話があれで最後になってしまう。それは嫌だな、と素直に思った。

 

 識様が、最後に遺していった言葉を思い出す。

 

『妹をお願いします』

 

 あり得るだろうか。彼は確かに絶命していたのだ。幻聴だったのかもしれない。素性もわからない男にそんなことをいうのもおかしい。それでも、最後に俺にそう言ったのだ。

 

「当主様の向かった場所を教えてください。あなたなら知ってますよね」

 

「知って、どうする気です」

 

「分かりません。何もできないかもしれない。そのまま死ぬだけかもしれない。それでも、あの人を一人で死なせたくない」

 

 ここで腐っているのはもうやめだ。あの人を一人にしてやらないと、そう決めた。

 

「…」

 

 華乃さんの表情は変わらない。けど、表に出していないだけで苦しんでいるんだろう。その証拠に、手が少し震えている。

 当然だ。当主様がこの人を親代わりと紹介していたんだから、華乃さんにとっても彼女は自分の娘のようなもののはずだ。それが自分から命を捨てようとしているのに、冷静でいられるはずがない。

 

「約束したんです。当主様と。お互い無事に帰ってこようって。だから、行かせてください」

 

 目を見て、話す。

 

「…わかりました」

 

 そういうと、当主様が向かった場所を教えてくれた。

 

「ありがとう。行ってきます」

 

 そうして、当主様を追って走り出した。

 

「あの子を、お願いします」

 

 後ろから、そんな声が聞こえた。返事をするまでもない。振り向かずに進んでいった。

 

 




急な予定が入ったりで忙しいのでかけた分を土日に投稿する形に切り替えます
エタることはないと思うのでよろしくお願いします
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