呪術廻戦 会者定離(旧題:一人の術師と六眼なし五条家当主の話)   作:ソル

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本日一話目の投稿です


瓢風

間に合った!

本当に危なかった。あと数秒遅れていたら当主様は死んでいたかもしれない。

 

「なんで、ここに…」

 

「胡散臭い男に協力してもらいました」

 

あの男の目的はまだわからないが、ここまで連れてきてくれたことだけは感謝しておこう。

 

「そうじゃなくて!なんでここに来たんだ!?」

 

返答しようとしたが、そんな余裕はない。奴はすでに体勢を立て直している。

顔に当たる部位をこちらに向けると、すさまじい風を放ってきた。どうやら距離を取らせたいようで、呪力強化で抗わなければ立っていられないほどだ。

こちらも一旦時間が欲しい。まだ立ちあがれていない当主様を抱え、風の勢いに逆らわず後ろへと飛んだ。

 

「すぐに逃げろ!君が引く時間ぐらいは稼いで見せるから!」

 

「無理なこと言わないでください。わかってるでしょ、自分でも」

 

立ち上がれもしない体で時間稼ぎなんてできるわけがない。俺の言葉に、悔しそうに唇を噛むのが見えた。そんな顔をしないでほしい、俺はそのために来たんだから。

当主様の足の怪我に触れる。

 

「…っ、禍転、これ!?」

 

白い光とともに、当主様の足の怪我が治っていく。どうやら成功したようだ。あいつの言っていたことは本当だったらしい。

反転術式。呪力を掛け合わせることにより正の力を生むそれを、俺は使えるようになっていた。

 

 

『そういえば、五条間宵が赫を使ったらしいね。彼女は反転術式を使えるのかい?』

 

『…使えないのか、おかしいな。正の呪力がなければ赫を使うことはできないはずだけど』

 

 

移動中にあの男が言っていた言葉を思い出す。おそらくだが、赫を撃ったあの時俺は、無意識に正の呪力によって術式を発動していたんだろう。その呪力により当主様の術式が反転し赫を撃つことに成功したのだ。

 

他人の体に呪力を流し込み、術式を発動させる。正と負の違いこそあれど、いつもやっていたことだ。なら、術式を発動させずにただ呪力を流し込むこともできると考えたのだが、うまくいってよかった。万全とはいかないが、多少は戦える所まで回復できたらしい。

 

「…なんで来たのかは今は聞かない。けど、この後どうするんだ?こっちの攻撃はほとんど通ら…」

 

そこまで言って気づいたようだ。そう、俺たちの攻撃は奴には効かない。殆どが風の障壁により遮られてしまう。あれを突破するには、自分たちも巻き込んでしまうような無下限を使うしかないだろう。

 

ただ、例外があった。俺がここに来た時、颶風は風の障壁をまとっていなかったのだ。だからやつに拳を当てて、当主様を助けることができた。

 

男はこう言っていた。

 

『颶風は、本当に最近生まれた呪霊だ。姿を隠すため呪詛師に戦闘を任せていたこともあって戦闘経験も少ない。力自体はすさまじいけど、戦闘時の術式の扱いなんかは全然だろうね。例えば―攻撃に集中している間は、それ以外がおろそかになったりするんじゃないかな?』

 

あの時、あいつは当主様を殺すために術式を使おうとしていた。だから、障壁を展開していなかったんだろう。

攻撃と防御を同時にこなすのが苦手であるという事実。これが突破口になるはずだ。

 

ただし、あまり時間はない。これは戦闘経験の浅さから生まれる悪癖だ。戦いが長引けばその弱みに自分でも気づき修正してくるだろう。

 

奴が動きを見せた。風がやむと同時に、周囲を濃い霧のようなものが覆う。

 

「俺が囮になります。あいつの溜めの時に全力で攻撃を」

 

時間が惜しい。手短に伝え、返答を待たずに飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 羂索の仕業か、間が悪い奴だ。だが、しっかり奴らをそろえてくれたことには感謝しておくとしよう。

 この再戦には、あの二人がそろっていなければ意味がない。

 何やら話し込んでいるが、どうやらまだあの時の技―羂索は赫と呼んでいたか―を撃つ気はないようだ。あれほどの攻撃をしようとするなら、相応の呪力の高まりが前兆として起こるはずだ。

 自分をも巻き込むほどの強力な技だ。そう簡単には使わないのかもしれない。だが、ある程度追い込めば自爆覚悟で撃ってくるだろう。

 

「雲煙」

 

 周囲に俺の呪力により構成された雲を展開する。お互いに敵の姿をとらえられなくなったが、俺は雲の中に入ったものの呪力を感知、位置を特定することができる。

 男のほうがまっすぐ突っ込んできている。俺の位置が分かっているのではなく、より呪力の強い方に当たりをつけているんだろう。それは正しい、雲煙は俺に近いほど濃くなっていく。

 風により距離を取らせたとはいえ、そこまで離れているわけではない。この速さなら、あと十数秒といったところだろうか。近接戦闘に持ち込んでもいいが、女の方は動く気配がない。それでは赫を撃てないだろう。

 

ならば、

 

「霹靂」

 

 バリッ!という音とともに、奴の動きが停止する。

 俺の近くにある雲の内部に、雷を発生させたのだ。当然、そこに突っ込んできていた男は雷に身を焼かれることになる。

 …さすがだな、どうやら俺が直接放つものより威力が低いことに気づいたようだ。足を止めたのは一瞬。雷を食らいながらもそのまま前進し続けている。

 だが、その影響は大きい。怪我と火傷により明らかに速度が落ち、感じる呪力も小さくなってきている。呪力で肉体を強化しているとはいえ、限界は近いだろう。

 さらに呪力を込め、雷の威力を上げた。奴の体が地に伏せる。生きてはいるが、動くことはできないようだ。

 

「こんなものか、あっけない」

 

 このまま殺すのは簡単だが、それでは俺の気もすまない。俺を一度追い込んだ赫を打ち破れなければ、本当の意味で屈辱を晴らすことはできない。

 女の方もあの怪我で動けないようだし、ここまで追い込めば赫を撃たざるを得ないだろう。奴らを合流させるため、一旦雲霧を解除する。

 

「ッ今!」

 

「何ッ!?」

 

 その瞬間、男が勢い良く跳んできた。そっちに顔を向けると、奴の怪我が治っていくのが見えた。…反転術式か!

 だが何故だ、奴の呪力はほとんど消えていたはず。

 

(…まさか!?)

 

 奴は、雷の中で自らの呪力をぎりぎりまで制限していたのだ。俺が撃つものより威力は低いとはいえ、雷は雷。いくら反転術式があるとはいえ、そんなものを呪力強化なしで受ければ、使う間もなくそのまま絶命していてもおかしくない。

 イカレている。そんな賭けに命を載せたのだ。すべては、俺の不意をつくためだけに…!

 

「ちいっ!」

 

 距離を取ろうとするが、間に合わない。さっきので近づかせすぎたのだ。奴の腕が俺の腕をつかもうとする。

 まずい、奴の術式は…。咄嗟に暴風を起こす。先ほどよりも勢いが弱いが、男を少し後退させた。

 

(…遊んでいる余裕はないか)

 

 赫を攻略したいという気持ちは強いが、万が一もある。すぐにとどめを刺してしまおう。男の体の周りだけに雲を生む。ここで雷を発生させても治癒されてしまうだろうが、隙を作れればそれでいい。

 

「雷霆」

 

 直接雷を叩き込んで殺す。頭部に直撃させれば、3秒程度の溜めでも十分だろう。

 

「終わりだ」

 

「ああ、そうだな」

 

 男の言葉に違和感を覚える間もなかった。

 立ち上がれなかったはずの女が、俺の背後で拳を構えていたのだ。

 

(こいつは餌か!?)

 

 反転術式を使える、と分かった時点で警戒しておくべきだった。奴が、女の足を治している可能性に…!

 

(駄目だ、障壁が間に合わな―)

 

 

黒閃

 

 

 

 女の拳が俺に届く。黒い火花とともに、俺の意識も明滅した。

 

 

 

 

 

 

 作戦自体はうまくいった。当主様の攻撃は効いている。だがまだだ!

 颶風はまだ消滅していない。ここで畳みかけなければ勝機はもうないだろう。吹き飛ばされた奴に対し追撃を仕掛けようと踏み出した、その時。

 

ゾクッ

 

 

 背筋が凍るような悪寒がした。

 

 

 

 

 憤怒。殴り飛ばされた瞬間、俺の頭にあったものはそれしかなかった。

 この期に及んでまだ奴らを侮っていた自分への怒り。死の間際に頭を埋め尽くしたそれに従うまま、体を動かし、呪力を練る。

 死の間際での覚醒。それは、人間だけに限った話ではない。

 颶風が掌印を結び、呪力を込める。それは、まぎれもなく―

 

 

 

「領域展開」

 

 

 

天嵐鳴響

 

 

 

 

 

 




出来はともかくバトルシーンのほうが書きやすいな…
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