呪術廻戦 会者定離(旧題:一人の術師と六眼なし五条家当主の話)   作:ソル

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勧誘

「は?」

 

「だから、君を五条家で雇いたいといったのさ」

 

 意味が分からない。その辺の家系や集団ならともかく、御三家の一つが俺のような野良の呪術師を、それも当主自ら勧誘に来るなどどう考えてもおかしい。

 

「…何が目的ですか?」

 

 もう遅いかもしれないが一応敬語を使う。相手は雲の上の人間だ、機嫌を損ねたらたまったもんじゃない。

 

「君の噂が結構届いていてね。なんでも結構な場所で呪霊を倒して、たいした報酬も取らずに去っていくそうじゃないか」

 

 それに続けて、

 

「野良の呪術師が噂になるほど戦って、五体満足で普通に旅している。君の実力はかなり高いんじゃないか?

 正直今の五条家は人手不足でね、猫の手も借りたい様な状況なのさ」

 

 それで興味をもってここまで来たんだ、という。明らかに噓だ。その程度の理由でこんな山奥の村まで来るはずがない。

 

「…どうやら信用されてないみたいだね」

 

 

 当たり前である。ここでホイホイついていくような馬鹿ならここまで生き残っていない。

 

「悲しいなあ、せっかくここまでわざわざ出向いたっていうのに」

 

 ヨヨヨ、と泣きまねをし始めた。こいつ本当に当主なんだろうか。

 

(どういうことだ?俺を殺したいならこんな回りくどいやり方をする必要はない、直接つぶすなり指名手配を出すなりやりようはいろいろある。

となると勧誘自体は本当か?けどわざわざ当主がここまで来るとは思えない。外部の術師を雇うとなるとせいぜい使い捨てだろうし…)

 

と、ここまで考えたところで気づく。

 

「…ほしいのは俺の術式ですか?」

 

「!」

 

 ビクッと彼女の肩が跳ねる。あまりにもわかりやすい反応だ。逆に噓かと疑ってしまうほどに。

 

「はぁ、こんなにすぐ見抜かれるとはね。ま、どっちにしろ説明はしなきゃいけないしいいか」

 

 そして、彼女は自分の目的について語りだした。

 

「私の術式はね、五条家相伝の無下限呪術なんだ。けれど、その術式を使うための六眼を持っていない。いろいろと試しはしてみたけど、結局発動させることすらままならなかったんだ」

 

 無下限呪術のコントロールには原子レベルの精密な呪力操作が要求される。たとえ術式を持っていようと、六眼がなければ使い物にならないのだ。

 

「そして、前当主だった兄が任務で行方知れずになって私が当主に抜擢されてしまった。」

 

 術式や血縁の関係もあるけど、私が一番強かったからね、と笑う。

 つまり彼女は、実質術式なしで五条家の頂点に上り詰めていることになる。

 

(感じる呪力で分かってたはいたけど、やっぱりこいつは化物だな)

 

「けど、やっぱり術式もまともに使えない女が当主となると周りからの反応が悪くてね。家の為にもどうにか無下限を使えるようにならなきゃならない」

 

「…そこで俺に目を付けたと」

 

「うん。君の術式は相手の術式を強制的に発動させるものと聞いている。どうにか君をこっちに引き入れたいんだ」

 

(どこで情報が漏れたかな、術式を開示したことはあるがそんなに多くはないんだが)

 

 まあ五条家の地位なら情報収集ぐらいは朝飯前だろう。それに術式が完全にわかっているわけでもないらしい。

 

「残念ですが、ご期待には沿えません」

 

「な、何故だい?野良で活動し続けるよりもずっと条件はいいぞ、三食に寝床、けがの治療などの術師としての補助も保証する!だから…」

 

「ああ、条件についての話ではなく、術式についての話です」

 

 俺の術式は、そんなに便利なものではないのだ。

 

「俺の術式…乱法葬術は、確かに術式を強制的に発動させるものです。けど、それを制御することはできない。無下限呪術なんてとんでもないものを暴走させたら何が起こるかわかりませんよ」

 

 無下限呪術についての詳細は知らないが、五条家がそれ一つで御三家に上り詰めるほどの術式だ。そんなものを制御もなく暴走させてしまえば、最悪俺も彼女も死んでしまうかもしれない。

しかし、

 

「それでもかまわない。重要なのは、無下限呪術を使用できるかもしれないと周りに思わせることだ。一度でも発動したという事実があれば、あとは周りが勝手に勘違いするように仕向ければいい。」

 

 無下限を完全に制御するのではなく、発動できる状態にあると思わせることが目的らしい。

それなら俺でも役立てるかもしれないが…

 

「頼む。君の術式(ちから)が必要なんだ」

 

 まっすぐ目を見て、そう言われた。

 

「…」

 

『お前など生まれてこなければよかったのに』『忌子め』『必要ないんだよ、お前は』

 

かけられてきた言葉が頭をよぎる。その間も、彼女の視線はこちらを外れない。

 

(まあ、仕方ないか)

 

「わかりました。その話、受けさせていただきます。その代わり、待遇はきちんとお願いしますよ」

 

 当主様の表情がぱあっと明るくなる。

 

「ありがとうっ!それじゃあ早速五条家(うち)へ行こうか!」

 

 

 

 話を済ませ、外に出る。すると、誰かが声をかけてきた。

 

「あのっ、禍転さん」

 

「君は…」

 

「知り合いかい?」

 

「ええ、俺をこの村に連れてきた子です」

 

 疑問に答える。呪霊が出そうな場所を探して旅している途中、道端で出会ったこの子から、父親が突然消えたという情報を聞きこの村にやってきたのだ。

 

「父さんを助けていただき、ありがとうございました!あなたに依頼して本当に良かった…」

 

 涙ながらに感謝を伝えてくる。結構危ない戦いではあったが、無茶をした甲斐があったというものである。

 

「何とか助けられてよかったよ。けどかなり弱っていたし、元気になるまでしっかり診てあげて」

 

「はいっ!」

 

 そんな会話を交わしていると、当主様が微笑ましそうな目でこっちを見ているのに気付いた。

 

「少し、似てるなあ」

 

「何か言いました?」

 

「なーんでも」

 

 

 

 村長から報酬をうけとり、五条家へと向かう道すがら、当主様に問いかける。

 

「…今更ですけど、そもそも拒否権なかったですよね?」

 

「無いね☆あそこまで内部の事情を話した以上、君を放置するわけにはいかないし」

 

 満面の笑みで言っているのが恐ろしい。子供のような態度をとっていたが、しっかり当主をやっているようだ。

 

 

 




(本誌微ネタバレ注意)












乙骨が戦闘時(おそらく『蒼』)を不発に終わらせていたことから、無下限呪術に関しては六眼が無ければ制御ではなく発動ができないものとして解釈しています。
間違ってたらゆるして
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