呪術廻戦 会者定離(旧題:一人の術師と六眼なし五条家当主の話)   作:ソル

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別離

「お、終わった?」

 

 颶風の消滅を確認し、三輪がその場に座り込む。簡易領域を張り続けていたことによる消耗は大きかったのだ。

 

「うん。ありがとね、三輪さん」

 

「間宵さん。お疲れさ…どうしたんですかそれ!?」

 

 間宵の姿を見て、声を張り上げる。

 

「あっはっは、もうちょっと綺麗な消え方がよかったんだけどなー!」

 

 これじゃホラー映画だよ、と苦笑する間宵。その体からは、肉片のようなものが剝がれ落ちていた。

 

「消えるって…」

 

「さっき、私達は自分の魂を代償にした。私たちが消え去ることで受肉も解けて、元の人格が目を覚ますはずだ」

 

「…そう、ですか」

 

「簡易領域、助かったよ。三輪さんが頑張ってくれたから、私は彼と話す時間がもらえた。あ、そうそう、日下部さんにもお礼言っておいて」

 

 これは、遺言だ。探していた人には出会えたんだろう。だから、笑っている。だから、未練を残さずに消えていける。

 それでも、悲しいと思う気持ちがある。さっきまで一緒に戦っていた人に、消えてほしくないと思う。三輪霞は、普通の善性を持った人間だったから。

 

「三輪さん」

 

 そんな三輪を見て、間宵が声をかける。頼んでおかなければならないことがあったからだ。

 

「…はい。何でしょう?」

 

「一つ、頼んでおきたくて。私たちが消えた後も、この結界の中には泳者や呪霊が残る。この二人と、それに民間の人たちを守ってあげてくれないかな」

 

 死んでいく術師の、最後の頼み。これに応えられなければ、術師としてやっていく資格はないだろう。少なくとも、三輪はそう考えた。

 

「っ任せてください…、ありがとうございました!」

 

 頼んだよ、と笑いながら、間宵は三輪に背を向けた。

 

 

 

 

「いろいろと、話したいことあったんだけどね。ちょっと、時間、なさそうかな」

 

「そう、みたいですね」

 

 こうして話している間にも、少しずつ意識が消えていく。体が、元の姿へと戻っていく。これが最後の会話になることを、二人とも理解していた。

 

「いろいろと、無茶しすぎだよ。禍転」

 

「当主様が、それ言います? 未来での受肉なんて、無茶なことしたくせに」

 

「あはは、確かに、そうだね」

 

 誰にとっても、迷惑にしかならないことだった。体を奪ってしまった二人はもちろん、そのせいで心配をかけた人だっていたはずだ。呪物と化していたことで、被害を出してしまった可能性だってある。

 

(…それでも)

 

 それでも、受肉してよかったと思っている。今度は、あんな別れ方じゃない。呪いを残さずに消えていけるから。

 

「ありがとう。ずっと、私と一緒に戦ってくれて」

 

「俺の方こそ、ありがとうございました。当主様と一緒にいられて、楽しかった」

 

「当主様、か。…最後ぐらい、名前で呼んでよ」

 

「…間宵様。ははっ、なんか、しっくりこないですね」

 

「あはは。たしかに、違和感あるなあ――」

 

 それが、最後だった。ドサッ、と二人が倒れる。その体は、すでに幸基と明のものへと変わっている。消えていった二人の面影は、どこにもない。

 そうして、二人の物語は幕を閉じた。

 

 

 

 しかし、回游はまだ終わってはいない。

 残った泳者の鎮圧や、侵入してきた他国の軍との戦闘。名古屋結界だけではない。東京や仙台、桜島。高専術師たちは、それぞれの力で戦いを乗り越えていった。

 そして、

 

 11月20日 呪術高専 

 

「あなたが、五条悟さんですか」

 

「ああ、君たちか。話は聞いてるよ、先祖が迷惑かけたね」

 

 現代最強の術師、五条悟。幸基と明は、封印から解き放たれた彼と初めて対面していた。

 

「迷惑なんかじゃないですよ。二人が力を貸してくれたおかげで、助けられた人もいたので」

 

 名古屋結界内での一般人の死者数は、他の結界と比べ少ない。強い呪霊や泳者が少なかったこともあるが、一般人の命を守るために動いていた者がいることも、要因の一つといえる。

 

「…そっか、そうかもね。それで、僕に話があるって?」

 

「はい。間宵さん…私に受肉してた方が、『私の子孫に会えたら、言っておいてくれ』って」

 

「へえ、聞かせてよ」

 

「えっと、『悔いのないように生きなよ。それと、誰かを置いていかないように』」

 

 その言葉を聞いた五条は、一瞬目を見開くと口元に笑みを浮かべた。

 

「…ははっ!ありがとね、伝えてくれて」

 

 

 

 幸基と明の背を見送りながら、先ほどの言葉を思い出す。

 

(置いていく、か。なーんか、見透かされてるみたいだね)

 

 その頭に、たった一人の親友の姿が浮かぶ。自身を置いて行ってしまった男。

 一月後、新宿にて始まる決戦。負けるつもりはさらさらないが、負けたとしてもかまわないと思っていた。後を託せる生徒たち(強く聡い仲間)がいると、彼にはもうわかっているからだ。

 

(ご先祖様がそう言うんなら、なるべく頑張ってみようか)

 

「まずは、皆に色々と教えるところからかな」

 

 そうして、最強の術師は仲間のもとへと向かっていった。仮に自分が死んだとしても、呪いではない何かを残していけるように。

 

 

 

 




出会いがあるなら、必ず別れる時が来る。それでも、別れ方はいくらでも変えていけるよね、そういう話でした。

結構駆け足になってしまったんですが、これにて完結です。
この後はどうなるかな… 
宿儺の指を日下部が回収して原作より弱体化しているので五条がストレート勝ちするかもしれないですし何も変わらないかもしれません。羂索は笑ってる。裏梅はキレた。

見てくださった方、お気に入り登録、評価してくださった皆様、ありがとうございました。
また何か書くかもしれないのでその時はよろしくお願いします。

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