呪術廻戦 会者定離(旧題:一人の術師と六眼なし五条家当主の話)   作:ソル

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「はあっ!」

 

「ぐうっ!」

 

 攻撃してきた呪詛師の一人に肘打ちを食らわせる。相手は声をあげながら気絶した。

 

「てめっ、があっ!?」

 

 遅い。仲間をやられて激高した相手の懐に入り込むと、そのまま顎をかちあげる。しかし、さっきの奴より頑丈らしく、それだけでは倒れない。反撃しようとしているのか、こちらへ手を向けるのが見えた。

 

「くらえ!」

 

 何らかの術式を使おうとしたのだろうが、もう遅い。俺はすでに右手で奴に触れている。

 

 こっちに向けた手を地面のほうへとそらすと、奴の手から炎が吹き出た。ここが建物や森の中でなくてよかった、あたりが大火事になっていた可能性もある。

 

「強駆」

 

 そのまま術式を発動する。今回は発動していた炎の術式を停止させた。

 術式が発動すると同時にこっちの攻撃を当てる。乱法葬術で強制的に術式を発動・停止させた時、相手の呪力操作はかなり乱れ、呪力強化にも影響が出る。

 

「ぐっ!?」

 

 相手が気絶するのを見届け、後ろを振り返る。

 

「そっちも終わったみたいだね、お疲れ様」

 

「…ええ、まあ」

 

 労いの言葉をかけてもらえたが、素直に喜べない。一緒に任務に来ていた当主様の周りには、かなりの数の呪詛師が転がっていたからだ。どう考えても10人以上はいる。俺が二人倒す間に、それだけの人数を一人で倒していたわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 五条家に来てから、数か月が経った。その間、使用人として家事をこなしつつ、乱法葬術についての実験をしていた。訓練場で発動訓練をしたり、今回のように呪詛師や呪霊相手に術式を使用するなど様々な形で術式について理解を深めていった。

 

「しかし、やっぱり便利だね。君の術式は」

 

「そりゃあガキの頃から使ってますしね」

 

 しかし、術式の威力や範囲については結局制御できなかったため、戦闘で無下限呪術を使えるほどにはならなかった。

前のように『蒼』が暴発したら被害を受けるのは敵だけではないかもしれないからだ。

 ただ、無下限を少しとはいえ使えるようになったということで、当主様の内外での権力はかなり大きくなった。色々と自由に動けるようになったらしく、今までできなかったこともできるようになった、と笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで任務を終え、五条家に戻ってきた。

 

「お帰りなさいませ、間宵様、禍転」

 

 いつものように華乃さんが出迎えてくれた。

 彼女なら信用できる、としてここにきてすぐにこっちの事情を教え、俺が任務へ行くことを許可してくれるようになったのだ。

 

「お疲れでしょう。禍転、今日はもう休んでいいですよ」

 

 もう日が落ちてからずいぶん経つし、気を使ってくれたようだ。ありがたい。

 

「ありがとうございます。ではお先に」

 

「あ、じゃあ私も…」

 

「間宵様は少しお待ちを。あなたあてに連絡が来ていましたのでその確認をお願いいたします」

 

「ちぇっ、私も疲れてるのになー。まあ仕方ないか」

 

 それじゃあまた明日ねー、とこちらに声をかけ、当主様は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。任務もなく、いつものように家事をこなしていると、当主様を見かけた。しかし、様子がおかしい。

 いつも楽しそうに笑みを浮かべているのに、今日は何か思い詰めたような表情をしている。

 

「おはようございます。当主様」

 

「…あぁ!おはよう、禍転。ごめんね、少し考え事をしていたよ」

 

 やはり何かあったようだ。いつもならあっちから積極的に話しかけてくるのに。

原因として考えられるのは…

 

「昨日来ていた連絡の件ですか?」

 

「…うん。ちょっといろいろあってね、まあ大丈夫さ」

 

 どう見ても大丈夫そうには見えないが、これ以上追及するわけにもいかない。やけに距離が近いので忘れそうになるが、相手は雇い主なのだ。

 当主様と別れると、一人の男が話しかけてきた。

 

「おはよう、禍転。調子はどうだ?」

 

「ああ、仁か。ぼちぼちだよ」

 

 彼の名は仁。ここで働いている使用人の一人で、部屋が隣だったこともあり結構仲良くなった。

 

「なあ、聞いたか?ついにあの呪詛師が見つかったって話」

 

「? あの呪詛師って?」

 

「ああ、そうか。お前は間宵様に連れられてきたんだったな。それじゃあ知らなくても仕方ないか」

 

 どうも、俺がここへ来る前に何かがあったらしい。

 

「俺たちを拾ってくれた先代の当主、識様を殺した呪詛師が見つかったらしいんだよ」

 

 

 

 

 

『識様は、居場所のない俺たちのような奴を拾って、使用人として仕事をくれた方だった。今俺たちが住んでいるあの家も、識様の提案で建てられたんだぜ』

 

『術師としての実力も高くて、どんな任務でもあっという間にこなして帰ってきてたんだ』

 

『けど、ある呪詛師集団の捕縛任務に行って、そのまま帰ってこなかった。詳しいことはわからないが、相当な数の呪詛師の死体が一緒に倒れていたらしい。激しい戦闘の跡があったことと、その場に識様の右腕が残っていたことから、相打ちになったんだろうと思われていた』

 

『けど、そいつらを率いていた頭領だけが見当たらなかった。だから最終的に識様を殺したのはそいつだと考えられている』

 

 

 仁は、そう教えてくれた。

 当主様の様子がおかしかったのも当然である。自分の兄を殺したであろう仇の情報がいきなり入ってきたのだ。冷静でいられるわけがない。

 何かしてやれることはないだろうか。随分と長い付き合いになったのだ、ずっとあの調子だとこっちの調子も狂う。

 

「禍転…、禍転!」

 

「…!す、すいません華乃さん。少し考え事を…」

  

 華乃さんに呼ばれているのに気づかなかった。どうも自分で思うより動揺しているらしい。

 

 

「間宵様の件でしょう?あれはあの方本人の問題で、外野の私たちが騒ぐことじゃありません」

 

「…はい」

 

 そうはいっても、気になるものは気になる。自分でも理由はわからないが、何か力になりたいと思ってしまう。

 そんな気持ちを見透かされたのか、ため息をつきながら華乃さんが続ける。

 

「はぁ、そんなに気になるのなら本人に直接聞きなさい」

 

「えっ、いいんでしょうか」

 

 さすがに直接聞くのは不躾が過ぎると思うのだが…

 

「多分、あなたなら大丈夫でしょう。術式という秘密を共有している仲ですから」

 

 この私が言うんだから間違いありません。そう言い残し、華乃さんは業務に戻っていった。

 

 

 

(どうするかな…)

 

 今日の分の業務は終わった。しかし、時間も時間だし、やはり直接当主様のところへ行くのは気が引ける。

 

(とりあえず部屋に戻って考えるか)

 

 そうして部屋に戻ると、中からよく知った呪力を感じた。

 

「やあ、待ってたよ」

 

「やっぱり当主様でしたか。何してるんです?」

 

 前にもこんなことがあった気がするが、今はどうでもいい。とりあえずこっちの聞きたいことを聞こう。

 

「呪詛師の件、耳にしました」

 

「…まあ、そうだろうね。その件でいろいろと話したいんだ。内密な話だし、今から一緒に来てくれる?」

 

 当然、断る理由はない。はい、と即答すると、当主様に連れられいつもの訓練場へ向かっていった。

 

 




書き忘れてましたが大体20話ぐらいを予定してます
ストック切れそうですがなるべく毎日投稿したいと思っているのでお付き合いいただければ幸いです
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