呪術廻戦 会者定離(旧題:一人の術師と六眼なし五条家当主の話) 作:ソル
右腕の痛みによって目を覚ます。見慣れた自分の部屋の天井だ。どうやら生き残れたらしい。だが、
(やっぱり、ないか)
包帯がまかれた右腕が、肩口からなくなっているのが見えた。生き残っただけ儲けものだと思いたいが、さすがに四肢が一本亡くなったのはこたえる。
「っそうだ、当主様!?」
俺が生きているなら問題ないと思うが、それでも心配だ。あそこで死ななかったのはほとんど奇跡に近い。もし彼女に何かあったら…
「禍転!起きたのか、良かった!」
「仁!当主様は!?」
「安心しろ、無事だよ。それより自分の心配しろ、1週間も寝たきりだったんだぞ!」
どうやらかなり寝ていたらしい。道理で体がだるいと思った。
仁に話を聞くと、俺たちの帰りが遅かったことと、轟音(おそらくあの時の赫によるものだろう)が聞こえたことで、心配した村の人たちが倒れている俺たちを見つけてくれたのだ。比較的軽傷だった当主様が五条家まで連絡を頼んで、こっちに運び込まれたということらしい。
(今度礼を言いに行かないとな)
かなり重症だったのは間違いないし、村の人たちがいなかったらそのまま死んでいたかもしれない。
「そういうわけだから、まだ寝てろ。ほかの人には俺から伝えておく」
飯や包帯の替えやらも用意してくるから。そういって、仁は部屋から出て行った。
(あいつは、どうなったんだろう)
颶風と名乗った呪霊。俺たちよりも近い位置で『赫』が直撃していたが、あれで倒せたとはとても思えない。それほど恐ろしい強さだった。しかも、奴の言葉を信じるならあれで生まれたてだったかもしれない。あれ以上に成長する余地があるとは考えたくないが、最悪の想像もしておかなければならないだろう。
そんなことを考えていると、部屋に誰かが入ってきた。
「禍転、起きたんだね」
「当主様」
彼女には目立った怪我がないようだ。本当に良かった。
「とりあえず、先に礼を言っておこう。ありがとう、討伐任務が成功したのは君のおかげだ。兄の遺体も回収できたしね」
どうやら識様の遺体はあまり傷ついていなかったらしい。『赫』の発生地点から離れていたおかげだろうか。
「嵐の呪霊、颶風は現在捜索中だ。けど、それはひとまず置いておこう。今どうこうできるような状況じゃないしね。それより、今後の話をしようか」
「単刀直入に言う。君の術師としての雇用契約を破棄する」
「…は?」
何を言われているのかわからなかった。右腕を失ったとはいえ、動けなくなったわけでも体に大きな不調があるわけでもない。なのに、どうして…?
「もともと、君を雇ったのは無下限呪術を発動させて、私の力を大きくするためだった。兄を殺した奴を倒した以上、もう無下限を使う必要はなくなったんだよ」
「っでも、識様を殺すのに加担した颶風はまだ倒せてないじゃないですか!」
「確かにそうだね、けど、今の君に何ができる?右腕を失った以上、強駆は使えない。それはつまり、自分をまきこんで暴走させるような使い方でしか術式を発動させられなくなったということだ。前はたまたま生き残れたけど、今後どうなるかはわからない」
「…」
確かに、そうだ。前回は、二人とも呪力が切れかけていた状況で使って、それであの威力だった。もし、互いに万全な状態で使っていたら自分の術式で死んでいたかもしれない。
「ああ、使用人としては雇用し続けるつもりだから、安心して。腕がなくなったとはいえ、簡単な雑事ならできるだろう?」
「けど…」
「こう言ったほうがいいかい?君は、もう必要ない。少なくとも、術師としてはね」
話は終わりだ。そういって、当主様は部屋から出て行った。
そこは、五条家にも劣らない豪邸だった。その一室で、頭に縫い目のある男がだれかと話していた。
「どうやら、噂は本当らしいな」
「ええ。五条間宵は無下限呪術を使えるにもかかわらず、呪霊に敗北した」
「これは使えるな。おい、加茂家に文を出せ。目障りなあの家を追い込むいい機会だ」
現在の禪院家当主は、野心に満ちた笑みを浮かべながらそう言った。
ストックが尽きたのとリアルが忙しくなるので次は多分来週になります。
見ていただいてる方には申し訳ないんですが、なるべく早く投稿できるよう頑張るのでよろしくお願いします。