カンピオーネ! 内海の乙女   作:nasta

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第2話

 

 

「でも、やっぱり私はR32の魅力はリアウィングというより寧ろフェンダーにあるんじゃないかと思うんです。だってリアウィングなんて所詮かっこよさの為のものでしかないじゃないですか。トライピオもそうですけど、結局ダウンフォースとかいう言葉をつけるためのものでしかないんですよ。それよりもむしろコーナリング性能を高めるために盛り上がったフェンダーの造形とか、そういった細かい機能美にこそ――」

「なるほど」

「R32の魅力はコックピットの異様な佇まいにもあって、まず、ウインカーやワイパーのレバースイッチ。普通これらはステアリングコラムの両側に取り付けられているんですけど、R32の場合はダッシュボードのメーターフードの両下端に直接固定されていて。そして、そのメーターパネルのカバーにはハザードランプの作動スイッチとかも装着されていて――」

「なるほど」

 

……十数分後。

護堂はよつなの隣でひたすら相槌をうつ赤べこと成っていた。

護堂が車に少し興味を示したとみるや、よつなは畳みかけるように語り始めた。その熱量たるや護堂が全く口を挿めないほどだった。

 

ろくな返事をしない護堂の隣でひたすら車について語り続けるよつなは、護堂がこれまで相対したどの神よりも不気味で恐ろしかった。あの後耐えられなくなった護堂が無理矢理話を変えていなければ、今でもまだ喋り続けていたかもしれない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岡山は中国地方で一番ゴルフ場が多い。これは、山地であるがそれほど険しくなく平地が多いこと。土地が安いこと。未開発の土地が多かったからだろう。

 護堂たちが現在向かっているのも、高度経済成長期に生まれ、バブル崩壊とともに倒産していった市街にほど近いゴルフ場である。

 

「えっと、狼の神様でしたっけ? そいつってなんでここに現れたんですかね?」

 

 郊外に着き、車を降りてから、護堂は訊ねた。

 時刻はすでに六時を回っている。

 若干暗み始めた空の下、コンクリートで舗装された坂道をふたりきりで登っていく。

 ちらりと横を見やると、市街が見下ろせるいい眺めだった。

 

「一昨日の夜ここへ唐突に現れまして、それからじっと伏せていますね。ここのゴルフ場は元からあまり客足の多いところでも無かったので、すぐに対応できました。なので今のところは問題は起きていないですね。けれど、ここへ居座る理由もわからず、常に見張り役をつけていますが、いつ何時どこへ向かうのかわからない状況ですね」

 

 よつなもどうやら狼の目的についてはわからないようだ。

 

「どうやらこの先にいるようですね。ここからは歩きましょう」

 

 数時間ずっと運転していたよつな嬢だったが、おもむろに路肩に停めると車を降りて歩き出した。

 護堂もすぐに車を降りると、スタスタと歩き出す。

 その足取りは何かに導かれているかのように淀みない。

 歩いてどれほど経っただろうか、()()が目に入ってきた。

 護堂の身長と同じくらいはある巨大な牙。二階建て住宅に迫ろうかというほどの背丈。そしてどこかの絵画から抜け出してきたかのように美しい白一色の毛並み。

 そこにいたのは“巨狼”とでも言うべきか、まさしく怪獣のように大きな狼であった。

 

 

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