The Gauntlet ~ゴブリンの巣、ソロで蹂躙してみた~ 作:和菓子工房
や、ちゃうんすよ。ちょっとよそででかめの創作活動が終わりまして、燃え尽き症候群みたいになってたとか、そういうわけじゃないんすよ。
あ、赤ゲージMAXまで行きました。評価をくださった皆様、ありがとうございます。
それでは、もしよろしければ最後までお楽しみください。
鳴子の音が、ゴブリンたちを目覚めさせる警報が、砦中に鳴り響く。ガラガラガラと、こちらをあざ笑うかのように鳴り響く。
別に誰が間違えたとか、誰がミスをしたとか、そういうわけではない。ただただ純粋に、どこまでも、運が悪かったのだ。運悪く、寝起きだったのであろうゴブリンが、誤って罠を踏み抜いたのだ。
鼠人の少女はとっさに、反射的に、そのゴブリンを
鼠人の少女の脳内は、その無表情さとは裏腹に混乱と後悔と焦燥に満ち溢れていた。
(どうしてこうなったのあのゴブリンに気が付いていればいや違うそうじゃない今はこの後どうするかどうやって切り抜けるか敵の数は上位種はどれだけいるそもそもどこから仕掛けてくる少しでも早く罠を解除していればそうじゃない後悔は後で迎撃逃走どれを選ぶそれとも隠れる今の手札は打撃投擲水薬鍵開けダメどれも役に立たない相手は多数いっぺんに相手は無理範囲攻撃も大量殲滅手段も無し地形戦で数を制限いやいずれ押し切られる迎撃は無理そう隠れるのも無理がある失敗したら一巻の終わりそもそも人海戦術で探されたらさすがに見つかるじゃあ逃げるどうやって向こうは大群で地の利もある知恵役もいそう回り込まれて包囲されて四方八方からになる可能性が高め投擲であのゴブリンを仕留められていればだからそうじゃないってばせめて今わかっている情報から策を練らなきゃ時間がかかるものはダメ罠なんて論外簡単にできて大軍を相手できる策そんなのそうそうないせめて少しでも生き残る確率を)
「全員注目!」
焦りと後悔が混じり、ぐちゃぐちゃになってパンクしかけた思考が、突然響いた声に引っ張られる。見れば、貴族令嬢が声を張り上げていた。先程までは隠密行動中だったため声は極力抑えていたが、警報が鳴ってしまった以上、大声程度ではどうこうならないと判断したのだろう。
その顔には緊張こそ滲んでいるものの、混乱や焦りの色は見受けられなかった。他の一党の面々も同じだ。
「陣形を組んで、移動しながら対策を練るよ! 急いで!」
「「「了解!」」」
「ぅ、うん」
貴族令嬢の指示に一党の面々は即座に反応し、ほんの少し遅れて鼠少女も隊列に加わる。進行方向に貴族令嬢と鼠人兵士の前衛組が立ち、隊列の中央に森人魔術師を配置、隊列の後方には只人僧侶と圃人野伏が構える陣形だ。
陣形を崩すことなく移動しながら、各々の口は回り続ける。この状況をどうにか打破できないかと、作戦を練り続ける。
「全方向に対応できるような陣形で迎撃する~!?」
「っ……、それ、だめっ。数で、圧殺されるっ。リソースっ、こっちが先に尽きるっ」
「では逃げましょうかっ? 幸い地図はあることですしっ」
「それも、むりっ。向こうにも、知恵役いるっ。回り込まれて、包囲されるっ」
「じゃあいっそのこと隠れましょっか!?」
「ろん、がいっ。見つかってタコ殴りにされて、慰み者がオチっ」
「とはいえ、一番勝ちの目があるのは迎撃だろう。次点で逃走か」
「う、んっ。なにか、向こうを、一掃できる方法があれば」
「範囲攻撃なら、私の術で何とかなるだろう。範囲が広い代わりに威力はかなり低いが、二発も打ち込めばゴブリン程度なら倒せるはずだ」
「っ! な、なら、ゴブリン、誘い込んで、術二回で一掃っ」
「オッケー、それで行きましょう! 他に必要なものは?」
「敵の進行方向、制限できるような、細い道っ」
「それなら確か、さっき通ったよね~。地図のこの辺りに、……あった!」
「あと、敵を惹きつけている間、耐えられるだけの壁っ」
「よーし、盾役の出番ね」
「その前に《聖壁》、貼りますからね。上位種が出てくると厳しいですが、普通のゴブリンには破られないはずです」
そう。鼠少女は混乱のあまり忘れかけていたが、今は一党を組んでいるのだ。当然取れる手段も、切れる手札も一人の比ではない。剣も使える、盾も使える。弓も構えられるし、術だって神への祈りだって使える。そんな簡単なことを、忘れかけてしまっていた。
「そ~なると、移動にせよ待ち構えるにせよ、時間がいるよねっ。足りそ~?」
「なに、足らないなら足すまでだ」
そう言うと、森人魔術師は走りながら呪文を練り始める。
「
主要な道、地図で確認したところ様々な道へとつながる大通りへと、練り上げた術を放つ。《
「ゴブリンではこの巣はそうそう突破できないだろう。少しではあるが、時間が稼げるはずだ」
「んっ、有能っ」
「ようし、今のうちに細道まで移動するわよ!」
森人魔術師が稼いだ時間で、目的の細道まで駆け抜ける。隊列を組んでいるため全速力に比べるとやや遅くはなるが、それでもゴブリンよりは速いだろう。
「GORB、GOB!」
「GOGYAGYA、aっ!?」
「じゃ、まっ!」
「雑魚に構ってる暇はないの、よっ!」
散発的にゴブリンが飛び出してくるものの、群れでなければただの弱兵だ。打狗棒と片手剣で打ち払い、特に足を止めることもなく突き進む。後ろから飛び出してきた敵には、圃人野伏が
「ささ、ついたよ~!」
「全員、準備開始!
「ついでだ、小便も出しておこう」
「!? ……へ、へんたぃ?」
「違うぞっ!? これはゴブリンをおびき寄せるためにだな……」
「い~から、とにかくみんな動こ~!」
~~~~~
ゴブリンは憤っていた。
この砦に忍び込んだ冒険者共に対し、どうしようもないほどに憤っていた。
自分たちがこれまでしてきた悪事を棚に上げて、好き勝手に憤っていた。
臭いからして女の冒険者だろう。寝ている隙にこそこそ襲ってくるなんて、卑怯な奴らだ。
だが、奴らは罠に引っかかった。鳴子を鳴らし、自分たちに気づかれてしまった。なんて間抜けで、馬鹿な奴らなんだ。
自分たちが罠を作ったわけでも、作戦を考えたわけでもないのに、ゴブリンは当然のごとく冒険者たちを下に見ていた。ゴブリンたちの頭の中では、自分だけが賢く他のやつらは総じて間抜け、というのが常識なのだ。
ドタドタと駆ける通路には、その冒険者共にやられたのであろう同胞たちの死体が転がっている。きっと不意打ちされたのだろう、なんて愚かで愚図なのだ。アホ面を晒してくたばっている同族を指さしてゲタゲタと笑う。
にしても、自分の仲間をこんな目に合わせるなんて、冒険者たちはなんてひどい奴らなんだ。そんな奴らにはやり返して当然だ、女どもを仕留めて服をはぎ、孕み袋として存分に遊んで、最後は存分に使いつぶしてから捨ててやろう。
未だ冒険者を捕らえたわけでもなく、ましてや勝ったわけでもないというのに、ゴブリンの脳内はそんな妄想で満ち溢れていた。過去を顧みることも、現在を見ることも、未来を予測することもなく、ただただ下卑た都合のいい妄想で頭を満たす。それがゴブリンという種族であり、どうあがいても変わらない習性であった。
冒険者たちを血眼になって探していると、同族の歓喜の鳴き声が聞こえた。同時に漂ってくるのは、豊潤で刺激的な香り。間違いない、小便の匂いだ、それも女の! ゴブリンたちの醜く尖がった鼻は、とりわけそういった臭いには敏感であった。恐怖のあまりに漏らしたのだろうか。その光景を想像してゲヒゲヒと笑う。
同族が女どもを見つけたのだろう。早く向かわねば手柄を取られてしまう。そうなってしまっては、この後のお楽しみに参加できない。女どもを玩具に遊べない。それは避けなくてはと、ゴブリンは戦場へ向かう足を速めた。
その頭の中には、自分が殺されるかもしれないなどという思考は存在しなかった。根拠なく、自分だけは大丈夫だと確信する。ゴブリンとはそういう生き物だった。
すっとろい同族どもを押しのけ、時に押しのけられ、やっとこさついた細道の奥に、……目当ての冒険者共を見つけた。
豊作だ。冒険者の人数は五人、いずれも女だ。高貴そうな身分の騎士に、神に仕える僧侶、小柄な野伏と斥候に、極めつけは森人の術師だ。どれも上玉、組み伏せ犯して蹂躙すれば、さぞ気が晴れることだろう。
気丈な騎士を心が折れるまでなぶってもいいし、神に祈り助けを乞う僧侶を絶望させてもいい。小柄な少女共の手足を折って悲鳴を楽しんでもいいし、森人の端正な体を汚すのもたまらない。まだ戦闘は始まったばかりだというのに、ゴブリンはそんな妄想を楽しんでいた。
まぁ実際、ゴブリンからは冒険者たちが行き止まりにはまって、必死に抵抗しているように見えるため、そんな捕らぬ狸の皮算用をしてしまうのも、仕方ないと言えば仕方ないのだが。
どうやら冒険者たちは、何か不思議な壁を出して耐えているらしい。僧侶であろう女が、錫杖を握りしめて必死に祈っている。神様に願って助けてもらおうなんて、馬鹿な奴らだ。
しかしどうやら、その壁の向こうから投石や弓矢で攻撃してきているらしい。なんて卑怯でずるい奴らなのだ。ますます苛立ってきた、ひっ捕まえた暁には奴らから真っ先に遊び道具にしてやろう。隣で矢に射抜かれて倒れた同族を踏みつけながら、身勝手な怒りを募らせる。
と、愚鈍な同族共が見えない壁に苦戦していると、後ろから大柄なゴブリンがやってきた。
斧を持ったこの群れの長と、つるはしを持った大柄な戦士、そして杖を待った術師だ。もっともゴブリンは、長を敬いも尊びもしていないし、何なら自分の方がリーダーにふさわしいと、本気でそう思っているのだが。
重役出勤したリーダーが、ぎゃいぎゃいとゴブリンたちに指示を飛ばす。それは指示と呼ぶにはあまりにもお粗末なものであったし、策略も何もあったものではなかったが、統制が取れずバラバラに襲い掛かるよりはよっぽどマシでもあった。
そんな、群れの長からの指示が、やけに五月蠅かったからだろうか。
「
それともゴブリンらしい不真面目さで、戦闘に集中していなかったからだろうか。
「
はたまた、森人の声がやけに小さく抑えられていたからだろうか。
「
いずれにせよ、ゴブリンは最後まで詠唱に気が付くことなく、強風によって吹き飛ばされた。
~~~~~
(まったく、なぜあの実力で白磁にいるのだ)
《
その視線の先には、
彼女に課されたのは、自分たち鋼鉄等級が
全く以て、白磁の実力ではない。少なく見積もっても黒曜、下手すれば自分らと同じ鋼鉄になれるだけの実力を持っていた。
剛腕によって振るわれる
頭に血を登らせたファイターの渾身の振り下ろしも、すれ違うように動いた鼠人の少女には当たらない。振り返りざまの一閃もあえなく空を切り、無茶な連撃後の隙を狙って胴を打ち据えられる。
何とか踏ん張りを効かせ苦し紛れの蹴りを放つも、ひょいと身を捻じって躱される。破れかぶれになって戦嘴を矢鱈滅多らに振り回すが、技巧も糞もない攻撃は当たることなく、むしろ手痛い反撃をもらってしまった。
一方的だ。ゴブリンファイターの重い一撃は悉く外れ、少女の打撃は的確に当たり続ける。
(……これは、放っておいても勝ってしまうのではないか?)
そんな考えまで浮かんできてしまうほどに、少女は敵を圧倒していた。これで純粋な戦闘職ではなく、あくまで
まったく、頼りになる後輩を連れてきたものだと、やや引き気味に独り言ちる。
しかし、後輩におんぶに抱っこな先輩というのも、いささか情けない。せめて手早く自分たちの相手を倒し、強力な後輩を援護してやらなければ。
そんな心意気とともに、森人魔術師は残り二回分の術を練り始めるのであった。
~~~~~
「戻りましたっ!」
「あっ、お帰りなさい。冒険、お疲れさまでした」
時刻は夕暮れ時。日が沈みかけ、二つの月が顔を覗かせ始めたころ。依頼を終わらせた冒険者たちで賑やかになっているギルドに、新しく一組の冒険者たちが帰ってきた。
受付嬢は業務の手を止め、戻ってきた冒険者への対応に回る。窓口に顔を出したのは、あの鼠の少女がついていった貴族令嬢たちの一党であった。そこには、疲労を顔どころか、体全体に滲ませている例の少女の姿もあった。
「ほら~、ギルドに報告するまでが冒険だよ~」
「うぅ……、そんな余力、残ってなぃ」
「駄々をこねるな、あと少しだから、な?」
「ぅにゅ……」
前言撤回、滲ませているどころの話ではなかった。今にも意識を落としてしまいそうな状態で、鋼鉄等級の二人に支えられている。
とはいえ、昇級試験の一環でもあるため、報告は少女自身がするべきだろう。どれほど正確に、かつまとめて冒険内容を報告できるかも、冒険者として大事なポイントなのだ。
「……ゴブリン、倒してきた」
「はい」
「……数はおおよそ三十。リーダーとファイターと、あとマジシャンが二体」
「ふむ」
「……日の高い時間帯に忍び込んで、砦内を探索」
「堅実ですね」
「……途中で警報を鳴らされて、正面戦闘」
「おや」
「……細道で防衛戦して、呪文で一掃」
「おぉ、機転を利かせましたね」
「……生き残った上位種を、正面から倒して終わり」
「はいはい」
「……その後は、砦内を探索して攫われた女の人を救出。ゴブリンの生き残りも、砦内にはいなかった」
「はい、分かりました」
なんとか意識を持ち直した少女は、淡々と今回の冒険内容を語る。少女は何でもないように語っているが、大冒険であったことは報告の内容からも、一党の面々の様子からも見て取れた。
当初予定していた作戦がアクシデントで失敗したものの、そこから立て直して何とか勝利を収めたのだろう。きっとギリギリの戦いだったはずだ。危険な冒険だった分見返りも大きかったのか、彼女らの背には多くの戦利品が担がれていた。鼠人の少女も、よく見れば首元に防毒面をかけている。
「なんにせよ、無事に帰ってきてくれてよかったです」
「ん、らく、しょー」
「そんなフラフラの状態で言われても、説得力ありませんよ。全く」
「ぅ、も、げんかぃ……」
「て、ちょっとっ」
「おっと、危ない危ない」
今度こそ、本当の本当に限界だったのだろう。ふらりと足取りがおぼつかなくなったかと思えば、そのまま倒れてしまう。ギルドの硬い床に身を打ち据える前に、貴族令嬢がキャッチしてくれたからよかったもののと、あきれ半分にため息をついた。
「それで、……貴女方の目から見て、彼女はどうでしたか?」
すやすやと寝息を立て始めた少女を見守りながら、昇級試験に付き合ってくれた鋼鉄等級の面々に質問を投げかける。新米を脱した一人前の冒険者である彼女らの目から見て、あの白磁等級はどう映ったのかを。
「ん~、まぁ、色々と言いたいことはあるけど~」
「そうだな、とりあえずは」
「えぇ、なんというか」
言い淀む他の面々を代表して、一党の頭目たる貴族令嬢が率直な意見をぶつけた。
「なんであの子が、まだ白磁にいるの?」(震え声)
最後まで読んでいただきありがとうございます。
(やはり書き貯めもプロットも一切)ないです。
いつも誤字報告や感想、評価の方ありがとうございます。励みになっております。
今後も当作品をよろしくお願いします。
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い つ も の お ま け
圃人野伏
・第一能力値
体力1
魂魄3
技量4
知力2
集中2
持久1
反射5
・第二能力値
生命力12
移動力27
呪文回数0
・経歴
【庭師】【貧困】【家族】
・職業レベル
【野伏】5
・冒険者技能
(1が初歩、2が習熟、3が熟練、4が達人、5が伝説)
隠密1
機先1
弩弓2
狙撃2
刺突2
体術1
・一般技能
調理1
農業1
生存術1
工作1
・武技
《視線の罠》《迎え撃ち》《疾風撃ち》《守りの矢》
・装備(命中判定/威力)
弩 2d6+13/1d6+11
狩人の外套 装甲値2/回避+1
・その他判定値
回避 2d6+11(+3)
観察 2d6+9
第六感 2d6+12
手仕事 2d6+11
まとめ:
純粋な