忍者になりたいと願ったら陵辱モノのエロゲ世界に飛ばされた男 作:goldMg
時計型の忍具が奴らの出現を知らせた。
こっそりと毒付く。
これで、高校生活20回目の呼び出しだ。
ただ、いつもとは違うこともある。
「こんな真っ昼間から……!」
陰日向に生きる魔の者達。
人の世の平穏を脅かし、命を奪う。
その存在を私たちはこう呼んでいる。
魔物。
やつらは主に女性を狙い、酷い目に合わせる。
他の街では、多くの被害が出ていた。
そして、魔物を使役する魔人達。
魔界から侵略してきた奴らを、天忍たる私たちが斃す。
世界はそうして紡がれてきた。
しかし、その活躍は表に立つことはない。
天忍も魔人も、裏の世界で日々争い続けているのだ。
「先生! トイレに行ってきます!」
「志村、お前もか……行ってこい!」
急いで席を立ち、廊下に。
教室から見られない位置で窓を飛び出した。
地面に着地すると、上の窓から人影が二つ。
「……サキ! ミク!」
二人は同じように上階から飛び降りてきた。
「ヒサメ、準備は良い!?」
「ばっちし!」
一瞬で忍装へと換装し、建物の屋根を駆ける。
魔物の反応が現れたのはビル街の一角。
私たちは急いでそこに向かった。
「何で授業中に来るかなあ!」
サキが愚痴る。
「狙ってるんだよ多分。昼間は忙しいって分かってるんでし」
ミクが返す。
「二人とも、何か情報は?」
天弓ハーケンを操る宵闇咲(ヨイヤミサキ)と、狼槍ギアーズを操る穂高未来(ホダカミク)。
そして私は神刀マサムネの遣い手、志村氷雨(シムラヒサメ)。
私達はこの街、竜胆市を護っている。
被害情報を得たのか、ミクが答えた。
「──第四等級でし! 攻撃は強く無いけど、状態異常タイプでし! 気をつけるでし!」
「じゃあ、私の出番だな!」
サキの天弓ハーケンには、身体の異常を遠ざける効果がある。
その加護を受けた私たちで一気に叩く。
大まかにはその作戦でいいだろう。
──────
「──見えた!」
ビルの上、コウモリ型の魔物が怪音波を発していた。
周辺の人々は狂気に陥って襲い合っている。
急いで止めないと……!
「結界!」
「っしゃあ!」
サキが張った結界により、現世とは隔離された空間に魔物や周辺の空間を閉じ込めた。
これで、外界から内部のことが認識されることはない。
私達も当然その中へ。
「オォォォォン!!」
コウモリの見た目に似合わぬ鳴き声。
魔物はビルの屋上から離れた。
魔力を使って、窓ガラスを走る私達の周囲を自在に飛び回る。
「こ、こいつ、速い!」
空中を全て自分の領域とできる飛行能力。
一方私たちは、ビルの壁がなければ流石に腰の入った一撃は放てない。
それでも、何とかするのが天忍の仕事だ。
「サキ!」
「おうよ! ──高きところに座す御方、尊き力を今こそ放ちたまえ!」
天弓ハーケンを空に向け、祈りを込めて矢を放つ。
程なくして無数の光の矢が空から降り注いだ。
光の矢は邪悪なるものを穿つ一撃。
普通の人間には全く効果が無い。
だけど、魔界からの侵略者には絶大な威力を誇る。
「──クゥゥゥア!」
魔物は音の玉を放った。
光の矢を相殺するように、衝突するたびに爆炎と爆風が撒き散らされる。
「隙ありぃ!」
そこにミクが飛びかかった。
狼槍ギアーズを上段に構え、一撃で葬るつもりだ。
空中ゆえ一撃の後は落ちるだろうけど、忍具がある。
「! ──カァッ!」
「なっ!? うわぁっ!!」
だけど、そう易々と討ち取られてはくれなかった。
あれだけ光の矢に集中していたのに、ゴキボキと骨格を無視して首を回すとミクの一撃を避けた。
そして、落下していくミクへと音の玉を放った。
煙に包まれ、吹き飛ばされる。
「ミク!」
「──だいじょーぶでし!」
鉤縄が飛び出てきて、ビルの壁へと繋がる。
張った縄が勢いよく撓み、ミクが煙の中から現れた。
忍装の一部が煤けているけど、大きな怪我はないらしい。
ホッと息を吐き、耳をつんざく音に身がすくんだ。
「ギギャアアアアアアア!!!」
「う、うわあ……」
魔物の姿が変異していく。
頭が三つに増え、元は一つだった皮膜と腕が分離する。
飛ぶための羽が独立し、自由な腕ができた。
元の姿よりも、人に近い姿。
「ま、魔人……?」
「惑わされるなヒサメ! 魔人がこんなところにいる筈がねえ! 第三等級に上がっただけだ!」
「そうでし! アレは魔物でし! きっと、変異前だっただけでし!」
「──そうだね!」
私も自分の神刀マサムネを構える。
空中で悠然と佇む魔物は、先程よりも何某かの意思を感じられる瞳で私たちを見ていた。
三つの頭が、それぞれ私たちの瞳を覗き込む。
まるで深淵のような黒。
突然、声をかけられた。
「何怯えてんだヒサメ! これくらい、修行に比べたら大したことねえだろ!」
「──怯えてなんかないよ!」
「ならいい! 援護はする、いけ!」
サキがハーケンを構え、加護が私の力に漲る。
暖かくて、優しい力。
「──マサムネ、力を貸して!」
大きく、マサムネが脈打った気がした。
正眼に魔物を捉える。
先に動いたのは向こうだった。
「ゴアアアアアア!」
突っ込んできた巨体がビルの壁に激突した。
「意趣返しのつもり?」
私たちは忍術で壁に立つけど、やつは脚の力だけで壁面を掴んでいた。
腕組みで私を見る姿はやけに人間臭い。
額を冷や汗が伝って、横に落ちていく。
下手に動いた方が先にやられるのは見に見えていた。
その緊張を崩す一撃。
「──ふっ!」
ハーケンの矢が横を通り過ぎた瞬間、前へと足を踏み出した。
「カァッ! カァッ! ガァァッ!」
次々と放たれる音撃を、身を低くして避ける。
別の方向からはミクも接近している。
ビルの壁に張り付いたままなら、二人から切り崩されて終わりだよ!
「……クルルルル」
マサムネに光が。
魔のものを切り裂くための力が刀身へ宿り、眩く輝いた。
「やあああ!」
「ぜりゃあっ!」
ミクと息を合わせ、タイミングばっちりでその身体を切り裂い──その寸前に魔物は飛び上がり、槍と刀を透かされた。
私とミクの重心が流れ、体勢が崩れる。
もはや三つの頭は私たち二人を睨みつけ、その口元には十分なエネルギーが溜まっていた。
つまり…………
狙い通りって、こと!
「──喰らえやあ!」
天弓ハーケンから放たれた一撃。
太陽光を収束したようなビーム。
「──カッ……!」
わたしたちの頭上を掠めながら空へと向けて伸びていき、魔物を消し炭にしながら成層圏の彼方へと消えていった。
──────
「ふぃー……今日も搾られたなあ」
結局、授業をサボった私たちは怒られた。
「私たちは世界を守ってるんでし! あんなに怒らなくてもいいでし!」
「仕方ねえよ、パンピーは魔物なんて知らねえんだから」
「そんな話はしてないでし!」
「じゃあ天忍やめるか?」
「なんだと!?」
「あ?」
「ま、まあまあ二人とも……」
いつもこうだ。
意見が衝突した二人を収めるのは私の役目。
もう慣れた。
「取り敢えず、本部に報告に行こうよ」
「そうだな」
天忍の本拠地、服部ドームの地下へ向かいながら、三人で今日の戦闘の反省会を行う。
「やっぱりハーケン頼りなんだよね……」
「そんな事ねえよ。お前らが近接戦を請け負ってくれるから私も安心して詠唱出来るんだ」
「でも、サキがいつでもいてくれるわけじゃないでし」
三人の中で最も戦闘貢献度が高いのが誰かといえば、間違いなくサキだ。
珍しい弓の使い手。
絶大な威力を誇る天弓を十全に扱えるのは、彼女自身の研鑽の賜物だ。
私もミクも、そんなサキが後ろにいてくれるから前線で戦うことが出来る。
仮にサキがいなかったら、私たちの遠距離攻撃手段は天忍用の普通の弓や手裏剣だけだ。
もちろんそういった武器だって習熟している。
でもサキ程じゃない。
今回の魔物だって、サキがいなかったらどれだけ苦戦していた事だろうか。
「甘えたこと言ってんなよヒサメ!」
「え……」
「お前はリーダーなんだぞ! 私がいなかったらいなかったで、作戦を立てるのはお前なんだ!」
「う、うん」
「お前もだミク!」
「でしっ!?」
「お前の忍術なら、遠距離攻撃だって出来るだろうが!」
「あ、あれは奥の手でし……」
「奥の手だろうがなんだろうが、使えるものは全部使え! ──あーもう、お前らもう一回修行してこい!」
「そ、それは勘弁でし!」
「っ……! っ……!」
必死に頷く。
あの地獄を潜り抜けた身だけど、再びの参加など考えただけで心が折れそうになる。
「次、うだうだ言ったらヒバリさんに言い付けるからな」
「「はいっ!」」
──────
「良くやったなお前たち!!」
「「「!?」」」
満面の笑み。
あのヒバリさんが。
鬼教官、潮目雲雀。
どんなボンクラでも彼女の修行に組み込まれれば一人前の天忍になれる。
私たちも身をもって味わった。
笑っているところなんて、ほぼ見たことない。
それも微笑くらいのものだ。
その彼女が、「良くやったなお前たち」
私たちは、どんな事をしでかしてしまったのだろうか。
一体、どんな天変地異がこれから私達の身に降りかかるのか。
戦々恐々と顔を見合わせた。
二人とも泣きそうだ。
かくいう私も多分、泣きそう。
「どうした? もっと喜べ、お手柄だぞ!!」
恐ろしすぎて言葉が出てこない。
私たちは今から地獄に突き落とされるに違いない。
だ、だけど私はリーダー!
二人に代わってここは……!
「あ、あの……ヒバリ教官」
「なんだ?」
「一体、何のお話なのか聞い──「とぼけなくてもいい!」ピイッ!」
「私の口から言わせたいのか? 仕方ない奴らだ全く……」
「ひぃぃ……」
「第三等級の魔物の大量討伐! それも迅速! 人的被害はほぼ無し!」
「へ?」
「特別手当も降りるぞ!」
「へ? ……へ? へ? へ? ………………へぇぇぇぇえええ!?」
あまりにも驚きすぎて、素っ頓狂な声が口から溢れ出た。
ドタドタと二人も走ってきてヒバリさんに詰め寄る。
「なんだ? どうした?」
「な、ななな何の話っすかヒバリさん!」
「そうでし! 大量討伐ってなんでし!?」
「──はあ?」
──────
あの反応は、1匹じゃなかったらしい。
私達が持っている忍具はあくまで携行用のものであり、本部にあるものの劣化版と言ってもいい。
そして本部では大量の魔物の出現を探知していたようだ。
群れで現れた魔物の対処をどうするか、すぐに対策本部が設置された。
それは、私たち三人だけでは対処し切れないだろうという判断があったからだ。
当然だと思う。
私達は、三人で協力して1体を倒した。
一対三だから負けることは無かったけど、二対三ならどうだろう。
三対三なら?
もっと言うと、数が逆転したら?
とてもじゃないけど、私たちだけじゃ手が足りなかっただろう。それどころか、生き残るのすら難しかったかもしれない。
人々を守るなんてのは当然無理。
そもそも私たちは、天忍の中で特別強い訳じゃない。
今はサードオーダーに位置付けられている。
ファーストオーダー、セカンドオーダーの次。
第一等級や魔人と戦って勝てるのがファーストオーダー。
第二等級と戦って勝てるのがセカンドオーダー。
それ以下がサードオーダーだ。
もちろん、弱いなどとは思っていない。
まだ経験もあまり積めていないし、これからなのだ!
……とはいえ、セカンドオーダーとの差は大きいけど。
でも、ヒバリさんは私達がやったと勘違いしていた。
実際はやっていないのに。
私達三人はあの一体を倒した後、満足して学校に戻った。
曰く、現れてから5分ほどして数が減っていったらしい。
別の街や本部から人員を追加しようと連絡し始めた矢先だったところでの事だから、驚いたそうだ。
マップに表示された赤い点がドンドンと消滅し、最後の一体になった。
その1体だけ逃げて、さらに10分後にその一体もいなくなった。
おそらくその最後の一体というのが、私達が倒したあの個体なのだろう。
「──じゃあ、誰があの大量の魔物を倒したんだ?」
ヒバリさんの言葉は、私達全員の言葉でもあった。
──────
「…………」
「…………むぅ」
「うーん……」
良いことだった。
無辜の民が大勢傷付くような事件に発展する前に対処できたんだから。
だけど、それをしたのは私達三人じゃない。
天忍の誰かでも無い。
他のみんなには黙っているように言われた。
あの場にいた四人と上層の人間だけの秘密。
特別手当も出る。
口止めだ。
口止めされた事は良い。
むしろ有情だとすら思う。
サキもミクも私も。
気になって首を捻って仕方が無いのは、誰がそんな事をしたのか。
すぐに思い付くのは、私達のように日陰から国体を支える組織が天忍以外にいるという事。
だけど、そんな事があるのかな。
もしそうならば、これまでバッティングしなかったことが不思議だ。
だから、この可能性は低いと思っている。
でも……他の可能性なんて思い付かない。
「あ゛ぁ゛〜! なんなんだよ、もう!」
「サ、サキ……人がいるから……」
花も羨む女子高生がダミ声なんか出して……
でも、そうしたくなるのはわかる。
モヤモヤとした消化不十分な感情。
何の問題も起きなかったけど一方で、知らないことが水面下で起きていた。
「誰なんでしかね……」
「わっかんねえ。分かんねえけど、どうせなら声くらい掛けてくれりゃいいのによ!」
「それは流石に……」
「くっそー気になる!」
みんなが納得し切れないままに日を終えた。
──────
天忍
魔人や魔物と呼称される敵対勢力からの侵攻を受ける日本──倭の国において守護する役割を負っている組織。
一般人に対しては完全に秘匿されており、それは忍術と呼ばれる異能の技術によって成されている。
天忍には女性しかいない。これは魔力が女性にしか無い臓器──つまりは子宮へと溜まる性質を持っているから。魔力自体は男女問わず作り出しているが、それを貯められるか否かは大きな差を生み出している。
海外においては別の名前で戦っている者達がいる。
また、敵の呼び方も異なる。
今は海外においての侵攻は沈静化している。
志村氷雨(シムラヒサメ)16歳
志村家の長女として、天忍になる為に修行を積んできた。
現在は無事天忍になり、竜胆市の守護を任されている。
操る武器は神刀マサムネ。
とある存在より預かりし、志村家の家宝。
雰囲気が、どこかにいる少女に似ている。
宵闇咲(ヨイヤミサキ)15歳
宵闇家は代々、影と呼ばれる天忍の補助役を務めてきた家系。
突然変異的に才能を獲得したのがサキ。
特筆すべきは弓術の才能であり、同世代の中で随一の狙撃能力を誇る。
操る武器は天弓ハーケン。
海外の遺跡で発掘された武器であり、秘めた能力が多くあると思われる。
男勝りなところが、彼女に似ている。
穂高未来(ホダカミク)15歳
家系は天忍の全く関係しない一般家庭。
天忍の情報をクラックして、強制的に天忍にされた。
面白いことを探していたので、意外と馴染んでいる。
操る武器は狼槍ギアーズ。
野心を秘めたものが扱うことで、強力な身体能力を得ることができると記述がある。
シズオカ県 竜胆市
天忍のシズオカ本部がある。
各県の本部は、かつて魔界の大侵攻があった時の本部をそのまま用いている。
潮目雲雀(シオメヒバリ) 25歳
潮目家は日本海側を主に活動拠点としていた天忍の一族。当代において最も才能があったのが彼女。ファーストオーダーにまで到達した事で名声を得たが、とある任務にて大怪我を負い第一線を退いた。それ以降は後進の育成に取り組んでいる。
有事の際の司令も兼任。
若く、そして才能が無くなったわけではない為、現場に戻るように請う声も未だに多い。