忍者になりたいと願ったら陵辱モノのエロゲ世界に飛ばされた男   作:goldMg

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『あ゛あ゛っ……!』

 

 1時間前まで笑っていた子が塵と化す。

 

『たすけっ──』

 

 泣きそうだった子も煙に消える。

 

『……ごめんな』

 

 さっきまで手を繋いでいた子が、最後まで笑いながら燃え尽きた。

 

『いやあああ!』

 

 最初に声をかけてくれた子が触手の波に飲み込まれた。

 

『はぁっ……はぁっ……』

 

 逃げても逃げきれなくて、男達が手を伸ばしてくる。

 私は捕まって…………

 

『やだ……もう……いやだ……』

 

 暗く、澱んでいく。私の中にある暗い檻が、壊されていく。

 

『──もう、良いよね』

 

 胸から抑えきれない魔力が立ち上り、闇が世界を覆い尽くした。

 

『我が名は──』

 

 世を呪う終末を言祝ごうとして──視界にノイズが走った。

 

『お前の気配、本当に人間か?』

 

 あの人がいる。

 

『助けてくれた子に手を掛けようとするとは……情けない』

 

 大きな背中。

 

『世界を作るのはヒーローでは無い、メイガスでも無い。人だ……お前達のはずだ!』

 

 聞こえた声。

 

『ゲンジの名に恥じぬため、俺は戦い続ける。たとえ1人になろうとも』

 

 何かが違う人。

 

『アズラエル、もう寝ていいからな』

 

「──ん」

 

 目を開けると、そこにいた。

 ……何かの夢を見ていた気がする。

 

 私が寝ているのは慣れた匂いのするベッドで、ゲンジは椅子に座って私のことを見ていた。

 

 私とは違って、他の人間とも違う。

 何が違うかはわからないけど確実に何かが違う。

 きっと、この人がいたから……何かが決定的に変わってしまった。

 

「起こしたか?」

 

「ううん」

 

 手を繋いでくれていた。

 大きな手。

 手のひらを合わせたら、すっぽりと覆い隠されちゃう。

 

「魘されていたな」

 

「大丈夫だよ」

 

「──そうか、それならよかった」

 

 小さく笑むその顔は、年相応に見える。

 私たちと同じくらい。

 だけど、雰囲気はどこまでも大人の人だった。

 オーキス──あの性悪ロリババアみたいな? 

 だけど、あいつとは絶対に違う。

 

「お腹空いたよ」

 

「スープぐらいしか無いぞ?」

 

「あっためて」

 

「まったく、仕方ないな」

 

 手を繋いだまま、一緒にキッチンまで行く。私のスリッパにはウサギさんの耳がついている。

 歩くたびにピョコピョコと揺れて、目が吸い寄せられた。

 

「──あうっ」

 

「下向いてると危ないぞ」

 

「うー……」

 

「見せてみろ……ほら、どこも腫れてないぞ」

 

 ゲンジがいきなり冷蔵庫の前で立ち止まったせいで、壁におでこをぶつけた。

 ムカついたのでゲンジのお尻を殴っていたら、無視してスープを火にかけ始めた。

 

「そういえば、お前の家の近くを彷徨いていたやつはしょっぴいといたぞ」

 

「え?」

 

「何を他人事みたいな……お前が言ってたんだろうが」

 

「ああ、うん」

 

 確かに報告はしたけど、もうゲンジの家にいるし関係ないと思ってた。どうせゲンジから逃げられるわけないし。

 

「あの程度ならお前達でも十分に対処できただろうに……まあ、良いけどな」

 

 なんか言ってるけど、無視しても問題ない。

 

「──だから、もう帰っても大丈夫だぞ」

 

「え」

 

 ちょっと、無視できない。

 

「……」

 

「もう不審者はいないから帰って良いぞ」

 

「…………」

 

「おい、聞いてるのか?」

 

「実は、もう1人変な人が……」

 

「いなかったぞ。念のため半径数百mを全て捜索したから間違いない」

 

「その外にもう1人……」

 

「無理があるぞ」

 

「ぐぬぬ」

 

「……嘘を吐くな、まともな大人になれないぞ」

 

「うるさい」

 

 

 ──────

 

 

「アズラエル、お前追い出されたんだって?」

 

「……うるさい」

 

 どこで聞きつけたのか。

 放課後、ウリエルがニヤけ面で話しかけてきた。

 肩を突いてくる指を払いのける。

 

「チンチクリンじゃ、相手にもしてもらえないだろ! ハハッ! ……いででででで!」

 

 この脂肪に、コイツの脳みそに行くはずの栄養が吸われてしまっている。

 コイツは悪くないけど、コイツの胸を叱ってあげないと。

 具体的には、つねる。

 つねりあげる。

 ちぎれろ。

 

「何すんだテメエ! 痛えだろうが!」

 

「ばーか」

 

「……ぶっ殺す」

 

「やってみろ、ざこ」

 

 立ち上がったウリエルと対峙する。

 身長と胸と尻は負けているけど、魔力操作も、魔力量も、技のレパートリーも、全て私の方が上。コイツが私に勝てる道理は無い。

 私はスーパーパーフェクト人間だから。

 

「おい、屋上で何をしている」

 

「あ、ゲンジッ!」

 

 途端にメス顔でゲンジに擦り寄るムダ乳赤髪低脳ゴミアホ女。涙目なんか浮かべて、媚びている。

 

「聞いてくれよ! コイツ、俺のおっ──」

 

「おっ……?」

 

「……い、いやっ、なんでも無い」

 

「? ……何も無いなら良いが、喧嘩するなよ」

 

 ゲンジが何をしに来たのかと思えば、稽古の話だった。

 

「ウリエル、アズラエル、今日は稽古だが……忘れてはないな?」

 

「お、おうっ」

 

「ならばヨシ!」

 

「へへっ……」

 

 頭を撫でられたウリエルは顔が蕩けていた。

 ズルいので、私も撫でてもらった。

 

 ゲンジは修行している時、とてもイキイキしている。いつもの8割り増しぐらいで表情が豊かだ。

 だけど……ゲンジの修行はすごいキツイ。

 

 最初の日。

 

「今日は最初だから軽めに100km走だ」

 

 とか言ってた。100m走の間違いかと思って聞き直しても同じことを繰り返した。私たちは耳か、あるいは頭がおかしくなったのかと思った。

 

「稽古をつけて欲しいのだろう? 殊勝な奴らだ!」

 

 自分が楽にこなせるからって、私たちにも同じことをやらせないでほしい。必死に説得をしたら、ブツブツ文句言いながら内容を少し楽にしてくれたけど。魔法でこっそり体重軽量化や肉体強化をかけると、魔力が視認できないくせにメニューが追加される。

 

「組み手、1時間だ!」

 

 女の子がゲロ吐くのを見て何が楽しいのか。

 

「元のメニューを3年こなせばお前らも一人前のエージェントになれる! やる気になったらいつでも言え!」

 

 おーばーうおっちの一員をエージェントって言うらしい。私はエージェントになれなくていい。そんなのを熟さないとなれないなら、絶対にならない方がいい。

 リリエル達も顔を青ざめさせていた。

 3年は絶対に死んじゃう。

 

 

 ──────

 

 

 お昼休み、ゲンジが無言で立ち上がって歩き出したからリリエルと2人で着いてきた。

 ウリエルとサリエルは調子が悪いらしい。

 やっぱり雑魚。

 

「どうやら、雨に乗じて現れた奴らがいるらしい」

 

 秋。

 倭の国では長雨が降る。

 その雨の中、何か知らない奴らがゲンジの探知網に引っかかったみたいだった。

 

 ゲンジは私たちみたいに子宮を持ってないから、魔力を貯められない。

 魔力探知の技能はないし、レーダーも持ってない。

 どうやって魔力を認識しているのか、ユーロにいるときに聞いてみたことがある。

 

『そこにあるはずの無いものがある、それならば必ずそこには何かがある』

 

 言っている意味がわからなさすぎて理解を放棄した。

 ゲンジは説明する能力が低い。サリエルも苦笑いをしていた。

 でも、感覚自体は確かだから疑う必要は無い。

 

「ゲンジさん、何が紛れ込んだんですか?」

 

「異質なものだ」

 

「アンチドートですか?」

 

「違う、魔物でもない」

 

「え? じゃあ、なんですか?」

 

「さてな…………或いは、天忍なら何か知っているかもしれない」

 

「…………」

 

「リリエル」

 

「……はい」

 

 ゲンジは、リリエルに向き直った。

 

 私たちメイガスからすれば、やっぱり天忍は気に入らない相手だ。閉鎖的な組織で、伸び代が少なくて、私たちがこの国に来るのを邪魔した奴ら。あのババアの借りが無ければ、今も外で歯噛みしていたはず。

 それは内気なリリエルでも変わらない。

 

 リリエルが、一番最初にゲンジと出会って、一番近くで見てきた。だから……突然に目の前からいなくなって、リリエルは半狂乱だった。

 ゲンジを探すことを決めるまで、宿の部屋から出ることもせずに泣いてばかり。

 東洋で謎の存在がいるという情報を見つけた時は、膝から崩れ落ちていた。

 

 だから、こうして隣にいるだけでこの子は幸せなんだと思う。

 手を握られただけで嬉しそうにしているのがその証拠。

 

 それを邪魔しようとした天忍に対して良い印象なんて、持てるはずがない。

 

「個人的な感情はわかる──だが、ときには抑える必要があるというのも分かるな?」

 

「はい」

 

「これからヒバ──天忍に会いに行くが、抑えられるな?」

 

「頑張ります」

 

「良い子だ」

 

「じゃあ、ご褒美をください」

 

「……参ったな」

 

 それはそれとして、リリエルは卑しい。

 ワールドイーターの時だってそうだ。

 最初に出会ったくらいで大きな顔をしないで欲しい。

 たかが数ヶ月のアドバンテージ。

 私は天才だからすぐに覆せる筈。

 

「ぎゅーっ!」

 

「人に見られると……非常にまずいな」

 

 覆せる、筈…………

 

「えへへ、小さな結界を貼ってるので大丈夫です!」

 

「用意周到だな……」

 

 は、筈……

 

「ゲンジさん、ゲンジさん、ゲンジさん、ゲンジさん、ゲンジさん、ゲンジさん……」

 

「なんだ」

 

「なんでもないですぅ……ふへへ──うわっ!?」

 

 許し難い。

 

「どいて」

 

「いてっ!」

 

 リリエルの匂いを上書きしていく。

 猫ちゃんがやってるみたいに、身体を擦り付ける。

 

「お前ら、何をしているんだ……?」

 

「動かないで」

 

「お、おう……だけど雨が……」

 

「良いから──むぎゅっ!?」

 

 横から顔を押された。

 お邪魔虫。

 

「なにするの」

 

「わ、私のセリフだから!」

 

「邪魔しないで」

 

「それも私のセリフだよ!?」

 

 言い合っていたら、デコピンされた。

 

「いったーい!」

 

「脳みそ砕けた」

 

 抗議。

 私のせいとーな権利を阻害することは、ゲンジにもできない。

 

「……喧嘩両成敗という言葉がここまで似合うことも稀だな」

 

「わ、わたしはわるくないです!」

 

「わたしもわるくない」

 

 あと、オデコが痛い。

 多分30cmくらい膨らんでる。

 さするとジンジンする。

 

「……そうか」

 

「なんで投げやりなんですか! まだご褒美終わってないです!」

 

「………………ゲンジだ、司令に繋いでくれ」

 

「ゲンジさん!」

 

 完全にリリエルのことを無視して、インカムで通話を始めた。

 やっぱり、リリエルはバカ。

 こういう時は言葉よりも行動の方が──

 

「あっ……」

 

 手を握ったら、ちゃんと握り返してくれた。

 色々考えていたのに……何にも考えられなくなった。

 本当は振り解かれるって思ってたから。

 

「ゲンジ……」

 

「……」

 

 呼んだら少しだけ見てくれた。

 笑ってた。

 我慢できなくて、腕に抱きつく。

 振り解かれない。

 

「むぅぅ……!」

 

 リリエルが羨ましそうにしている。

 でも、残念ながらここにいるのは私。

 

「……えいっ!」

 

「しーっ」

 

 リリエルは逆の手を握った。

 静かにするように言われて、お口にチャックをする。

 それでも嬉しそう。

 ゲンジは両手を繋いだまま、あの女と話し始めた。

 

「ヒバリ、俺だ、聞きたいことがある。今から行ってもいいか?」

 

 あの女は、すごく嫌な感じがする。

 横から全てを掻っ攫っていきそうというか……油断したら、全部ひっくり返されそう。

 

 

 ──────

 

 

「……お前は、私を怒らせたいのか?」

 

「何の話だ」

 

「そいつらだ」

 

「ああ、改めて紹介しよう、リリエルとアズラエルだ」

 

「そんなことは求めてない! 私が聞いているのは、どうしてメイガスなんぞを連れてきたのかということだ!」

 

「どうしても何も……」

 

 ゲンジは、潮目雲雀と喧嘩をしていた。

 というより、一方的に潮目雲雀が突っかかっていた。

 

「せめて、一言ぐらいあっても良いだろって言ってるんだよ!」

 

「?」

 

「な、何で意味がわからないみたいな顔をするんだ……」

 

「影が監視しているのに、意味あるか?」

 

「…………そういうことじゃないし」

 

「どういうことだ?」

 

「もういい!」

 

「そうか」

 

「ちっ」

 

 勝手にキレて、勝手に拗ねていた。

 ウリエルみたい。

 

 ──小さく声が聞こえた。

 

「コイツら真面目にやる気あるのか……?」

 

「「「……は?」」」

 

「まあ良いか、本題に入ろう。時間の無駄だ」

 

 3人の視線に含まれる心が合致した。この、天忍の頭目とも。

 後で詰めよう。

 

 2人詰めのソファーが向かい合わせで置いてあった。潮目雲雀の隣に私たちが座るのはなんだか気まずいので、やむを得ずゲンジがその隣に座った。

 

「ヒバリ、魔物やアンチドート以外で化け物は存在するのか?」

 

「…………」

 

「ヒバリ?」

 

「…………まって」

 

「分かった」

 

「確か! ……うんっ、んんっ……確か、妖怪がいたと思うが」

 

 明らかに声が裏返っていた。

 

「ほう、妖怪」

 

「あっ」

 

 興味を惹かれたのか、ゲンジがズイと詰め寄った。

 

「特徴は?」

 

「わっ、わっ、あっ」

 

「どうなんだ」

 

「や、やっ、あのっ、ちょっと、待って……」

 

「…………書籍や記録があるのであれば、それを貸してくれたら時間を取ることはしないが」

 

「そっ、それには及ばんっ!」

 

 隣にいるリリエルの顔を見た。

 

「…………」

 

 シラーッとした顔になっていた。

 分かる。

 何を見せられてるんだろう、私たち。

 もう20超えてるくせに子供みたいな情緒をしてるあの女もおかしいし、全然気づかないゲンジもよく分からないし、それを眼前で繰り広げられている私たちは可哀想。

 誰か助けてくれないかな。

 

 

 ──────

 

 

「魔界からの侵攻より以前から存在していた化外……なるほど、それならば彼奴等とは全く異質な気配だったのも頷けるな」

 

「う、うん」

 

「ありがとうヒバリ」

 

「ひゅっ……」

 

「どうした?」

 

「な、なんでも、ない」

 

「明らかにおかしいが……まあ、あの時ほどおかしくはないか」

 

 最初はもっと凛とした空気感を作っていたくせに、今は内股でモジモジしてる。

 トイレ行きなよ。

 あと、ゲンジもこの空気に気付かないのはどうかしてる。

 色々おかしいよ、この人。

 

「異質であって、邪悪とはあまり……一度、接触を図る必要が……?」

 

 ブツブツと考察を吐き出しながら、潮目雲雀には目もくれない。この雰囲気、知ってる。

 人間じゃなくて、ゲンジ。

 新たな存在への興味と世界への脅威度を測るだけの機械がいた。

 

「うむ、やはりコレは一度出動する必要がある』

 

 言葉の途中で、白い鎧を身に纏った。

 もう、私たちのことなんて見ていない。

 ヨーカイと接触する気だった。

 

「わたしもいく」

 

『……そうか』

 

「わ、私も行きます!」

 

『よし、ならばハクを呼ぶか』

 

「なんで? 天忍なんかいらないよ」

 

「……待て、そもそもここは倭の国だ。勝手な行動をしているのは貴様らメイガスだということを忘れるな」

 

『お前ら、ふざけるのは後にしろ』

 

「っ……だ、だが、こうもメイガスが勝手に動き回ると……」

 

『その為にハクを連れていく』

 

「そ、そもそもなんで直江のことを呼び捨てにしてるんだ!」

 

『約束したからだ──では出発する』

 

 スイッチが切り替わったように、感情の色が薄れた声。

 潮目雲雀をその場に置いて、出発した。

 

 

 ──────

 

 

『お初にお目にかかる。俺はオーバーウォッチ所属のゲンジ、人間だ。あなたは?』

 

「ほえーっ、偉くご丁寧にどうも……アンタそれでも人間なんじゃなあ! ワシは一旦木綿じゃ!」

 

『一旦木綿、だな? 何故ここにいるのか聞いても良いだろうか』

 

「そりゃあ、すんごいのが出てきたから起きてきちまったんじゃよ」

 

『すんごいの?』

 

「おうよ! 東の方からとんでもない気配がバシリとな」

 

『なるほど……貴方達と敵対するものか?』

 

「うーん、まあ〜広義には?」

 

『では、魔物達のことは分かるか?』

 

「それはまあ、天忍達から聞いてたしの。そっちの嬢ちゃんも天忍じゃろ?」

 

「そ、そうです……あの、私たちのこと知ってるんですか?」

 

「知ってるも何も、設立の時に立ち会ったからの」

 

「!?」

 

 空をひらひらと舞っていた妖怪に話しかけると、イッタンモメンのお爺さんだった。

 あと、寝ていたから正確には分からないけど、少なくとも数百歳らしい。天忍という組織ができた時から生きていて、当時のこととかはよく知っているんだって。

 

 ……イッタンモメンってなに。

 

『貴方の他に妖怪はいるのだろうか』

 

「おお、いるいる! そりゃあいるよ!」

 

『……人類の味方……少なくとも敵ではないと考えて良いか?』

 

「まあ、良いとこ中立じゃ」

 

『やはり怨念か?』

 

「よく分かってんなあ、にいちゃん! ワシらは人間の怨念から生まれ出でた存在。本来なら敵になるところじゃけど……まあ、色々事情があってな」

 

『それならば助かる、俺としても無闇な殺生は控えたい』

 

「うぅーん……それにしてもにいちゃん、目覚めてから思ってたけど……何ちゅう気配を撒き散らしとるんじゃ」

 

『気配?』

 

「口に出すのも憚られる清廉な気配……ワシらとは対極に位置する存在じゃよ」

 

『なるほど、そういうことか』

 

「あんましワシらの前で直接に出さないでくれると助かるわい。びっくりして心臓が止まっちまう」

 

『気を付けよう』

 

「そうしてくれ! じゃあ、色好みもほどほどにな!」

 

『色好み……』

 

 言うだけ言って、どっか行っちゃった。

 何だったのかな。

 ゲンジは最後に言われたことが少し引っ掛かったようで、顎に手を当てていた。

 

『そんな言われることしてないのに』

 

「ゲンジさん、調査は終わりですか?」

 

 直江白。

 天忍。

 どんなやつかはあんまり知らない。

 志村氷雨とか穂高未来と違って、コイツは学校にはいないから見ることが少ない。

 

 天忍としては、鉄のワイヤーを使って攻撃を行う、あまり見ないタイプのやつ。

 天忍は基本的に武器を揃えて戦うやつらだから、技量特化型は珍しい。

 

『一応、他の気配にも当たってみようとは思う』

 

「じゃあ、継続ですね!」

 

『ああ』

 

「どっちにいくんです?」

 

『気配は四方八方から来ているが……お前らには分からないのか?』

 

「あんまり……」

 

「もう慣れたので、私はわかります!」

 

「私も」

 

 天忍は魔力探知がお粗末だ。

 私たちメイガスと違って、モノに頼っているからこうなる。もう少し魔力を意識して生活した方がいい。

 

「ゲンジさん、あの子達意地悪です……」

 

『リリエル、アズラエル』

 

「わ、わたしは分かるって行っただけですよー?」

 

「うん」

 

『はあ……』

 

 少し俯いて首を振っていた。

 頭が痛いのかもしれない

 

「よしよし」

 

『お前らは、本当に……』

 

 

 ──────

 

 

 この町で一番大きな、竜胆運動公園。

 ベンチに座っているのは綺麗な女の人だった。

 疲れ切っている。

 そしてやたらと色白。

 服も白い。

 その人のことをゲンジは注視している。

 

「あの人?」

 

「ああ」

 

「人違いじゃない?」

 

「いいや、間違いない」

 

 この辺りには確かに変な魔力が漂っているけど、あの人からはあんまり感じ取れない。

 だけどゲンジは首を振って、いきなり近付いた。

 いきなり男の人が女の人に近付いたら、警察を呼ばれると思う。

 

「突然失礼する。俺はゲンジというものだ」

 

「……大きな気配の方は、貴方だったのね」

 

「名前を伺っても良いだろうか」

 

「氷見 雪(ヒミ ユキ)」

 

「純粋な人間では無いな」

 

「そうね、ご推察の通り……覚醒した雪女よ。この名前は依代の子の名前」

 

「事情を聞いても良いか?」

 

「とある人を探しているの」

 

「特徴は?」

 

「分からない……だけど、人間なことは間違いないわ」

 

「協力はできそうだな」

 

「──ちょちょちょちょーっと! 待っててくださいねーヒミさん!」

 

 直江白が突然、ゲンジの腕を引っ張って距離をとった。

 リリエルと顔を見合わせて、ついていく。

 

「ゲンジさん、妖怪ですよ!? いきなり協力とか──」

 

「俺はかつて、ロボットとかけがえのない時間を共にしたこともある。未熟な俺は、彼から色々なことを学んだ」

 

 言外に、妖怪だろうと関係無いと言っていた。

 

「彼は言った。融和こそ、虹彩が全存在に与えた運命であり、俺が望む未来なのだと」

 

「こう、さい……?」

 

「……全てを理解して欲しいとは思わない。だが、俺はより良い未来を目指すことを諦めてはならないんだ」

 

 それはきっと、ゲンジにしか分からないことだった。そして、私たちに伝えたいとは思っていないみたい。

 眼差しの先にはやっぱり、ここにはいない誰かがいた。その誰かに向けて、決意を新たに伝えていた。

 

「──それで、協力してくれるのかしら」

 

「ああ、だけどコイツらは所属している組織の都合上、すぐに協力というわけにはいかない。まずは俺だけだ」

 

「…………私が探しているのは、大恩ある御方の子孫よ」

 

「それは……早く探してやらねばな」

 

 ゲンジはそのことについて、何か思うところがあるようだった。その日はそれで解散となった。

 

 




書きたいものが他にもあって、少しずつしか更新できないよぉー;;
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